ケズリバ(kezuriba.net)/maintenance/machining-center/accuracy/ より印刷
マシニングセンタの精度の点検
水平出し・主軸の振れ・ボールバーなど。規格と測り方。周期・油種・数値は機械メーカー・機種ごとの指定が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例(とくに Haas・Hurco・牧野の機械の値)で、手元の機械の取扱説明書・定期保守説明書を必ず確かめること
⌖点検のしかた
- 水平(レベル)の点検共通
道具精密水準器(Hurco は分解能 0.020 mm/m)
やり方Hurco:テーブル中央に水準器を X 方向に置き、X・Y のストロークを3等分した9か所にテーブルを動かして読み、次に Y 方向に置いて同じく9か所読む。牧野:気泡は温度変化や振動で長さが変わるので、測る前に気泡の長さを調整する(方法は水準器メーカーの取説)
許容値Hurco の3軸機:どの位置も 0.020 mm/m を超えないこと(超えたらサービスへ)
オークマ(米国)は水平を「ほかのすべての精度の土台」とし、基礎の動きで変わるので年1回の点検に入れるよう書いている
- 基礎(床)共通
道具—
やり方牧野の機械納入手続きの例:床厚は機械本体重量 4 t 未満で 300 mm 以上、4 t 以上で 400 mm 以上(大型機はさらに厚く)。剛性は床厚の3乗で効く。鉄筋を入れ、ほかの機械の振動と縁を切る。地中梁をまたがない。床の平面度 ±5 mm/3〜5 m 角。施工後は機械を置けるまで4週間
許容値—
1社の例。機械メーカーの据付仕様に従う
[29](資料1件・参考)
- 温度環境共通
道具温度計
やり方機械まわりの温度を一定に保つ。出入口・直射日光・天井近くの暖気・空調の風が直接当たる場所を避ける。結露させない
許容値牧野の推奨:室温 10〜40℃(最適 20±1℃)、湿度 35〜70%(結露しない)、粉じん 0.3 mg/m³ 以下、照度 150 ルクス以上
鋳鉄 1 m は 1℃ の温度変化で約 10.5 µm 伸び縮みする(牧野)
- 精度を測る前の暖機の条件をそろえる共通
道具—
やり方牧野が工場で精度を測るときの条件:測定の少なくとも3時間前に電源を入れておき、決まったプログラムで30分運転し、すぐに測る。早朝に測るときは前日から電源を入れたままにする。検査・立会い・据付・試運転のときも同じ条件で測る
許容値—
精度(とくに直角度)は据付の条件で大きく変わるので、出荷時の精度と比べるには条件をそろえる(牧野)
[32](資料1件・参考)
- 主軸テーパの振れ・テストバーの振れ共通
道具0.0025 mm(0.0001")読みのダイヤルゲージ、精密テストバー
やり方非常停止を押す。インジケータをテーパ面に当てて主軸を手で回す。次にテストバーを入れ、ゲージラインの直下と、そこから 150 mm 下で読む(Haas、毎月か必要時)
許容値Haas の値:テーパ部 TIR 0.005 mm 以下、テストバーのゲージライン 0.013 mm 以下、ゲージラインから 150 mm で 0.025 mm 以下
牧野は主軸の振れ精度を静的精度、振動測定を動的精度として区別している。Haas の有償点検(HFO)にも主軸の振れ(スイープ)の確認が入っている。許容値は機械メーカーの基準
- テストインジケータを斜めに当てたときの補正共通
道具てこ式ダイヤルゲージ(テストインジケータ)
やり方測定子は測る方向に直角に当てるのが原則。できないときはなるべく小さい角度(牧野は 20° 以内)にし、真の値 ≒ 読み × 補正係数
許容値補正係数:10°=0.98、20°=0.94、30°=0.86、40°=0.76、50°=0.64、60°=0.50
取付けを間違えるとテーブルを傷つける(牧野)
- 円運動精度(ボールバー試験)共通
道具ボールバー(両端に精密球のある伸縮式の変位センサ)、主軸側とテーブル側の磁石ソケット
やり方主軸とテーブルの間にボールバーを付け、G02・G03 の円弧補間で時計回り(CW)と反時計回り(CCW)を1回ずつ測る。加減速のぶん前後に余分な円弧(90° か 180° など)を足す。半径は 100・150 mm が標準(延長バーで大きく、小円キットで 50 mm も可)
許容値円の最大半径と最小半径の差が「円運動偏差」(ISO 230-4)。機械側の許容値は規格本文(有料)で確かめていない
図形のゆがみから原因を見分けられる:バックラッシ(段差)、反転時のスパイク、横方向のガタ、周期誤差、サーボのゲイン差(サーボミスマッチ)、軸どうしのスケール差、真直度、直角度、スティックスリップ。東京農工大学の報告は、ボールバーをマシニングセンタの精度検査に広く使われる測定器と紹介している
- 試験片の加工(円・ひし形・四角)共通
道具試験片、三次元測定機
やり方ISO 10791-7 は円・ひし形・四角の形をもつ試験片を決まった条件で削り、三次元測定機で測る試験を定めている。大きさは 80・160・320 mm 角の3種類(M1_80・M1_160・M1_320)
許容値Renishaw の白書が紹介する ISO 10791-7:2014 の 320 mm 試験片の例:中央穴の円筒度 0.015 mm、円の真円度 0.020 mm、四隅の穴の位置 0.050 mm、各辺の真直度 0.015 mm、直角度・平行度 0.020 mm
Renishaw は、切削前にボールバーで円の真円度や穴位置が公差に入りそうか見当を付けられるとしている。ただし切削には主軸のたわみ・振動・工具交換の繰返し性などが加わるので、結果は直接には対応しない
- 位置決め精度・繰返し性共通
道具—(規格の試験方法の本文は確かめていない)
やり方試験は JIS B 6336-4/ISO 10791-4、通則は JIS B 6190-2/ISO 230-2 による
許容値—(有料の本文で未確認)
THK は、ボールねじの位置決め誤差の原因として、リードの精度、軸方向すきま、送りねじ系の軸方向剛性、発熱による熱変位、移動中の案内の姿勢変化(ピッチング・ヨーイング)を挙げている
- バックラッシ(送りの向きを変えたときのロストモーション)共通
道具ボールバーなど
やり方ボールバーの図では片方の軸に沿った段差として出る(Renishaw)。調整・補正はメーカー・販売店に依頼する(オークマ(米国)は精度とジオメトリの調整を販売店に相談するよう書いている)
許容値—
THK:軸方向すきまは一方向の送りでは位置決め精度に効かないが、送りや荷重の向きが反転するとバックラッシになる
- 熱変形共通
道具—
やり方試験は JIS B 6336-10/ISO 10791-10(熱変形試験)による。日々の管理としては室温を安定させ、暖機してから加工・測定する
許容値—
鋳鉄 1 m は 1℃ で約 10.5 µm 伸びる(牧野)。工作機械技術振興財団は、熱的に安定するまで一般に2時間以上かかるとされてきたとしている
- 年1回の精度・ジオメトリの点検共通
道具精密水準器、テストバー、ダイヤルゲージなどの精度測定器
やり方オークマ(米国)は、水平とともに精度・ジオメトリを工場出荷の基準に合わせることを年1回の点検に入れるよう書いている。Haas の有償点検は、水平、主軸の振れ(スイープ)、主軸オリエンテーションの位置合わせ、工具交換装置の点検などを含む
許容値機械メーカーの基準
≡関係する規格
- 横形JIS B 6336-1:2018 マシニングセンタ―試験条件―第1部:水平主軸をもつ機械の幾何精度(水平Z軸)/ISO 10791-1:2015(JIS は修正採用=MOD)[1][2]
- 立形JIS B 6336-2:2025 同―第2部:垂直主軸をもつ機械の幾何精度(垂直Z軸)/ISO 10791-2:2023(一致=IDT)ISO 10791-2:2023 の説明では、X 5000 mm・Y 2000 mm・Z 2000 mm までの3軸機を対象にし、回転・傾斜テーブルの試験は附属書にある[3][4]
- 共通JIS B 6336-3:2000 同―第3部:固定又は連続割出万能主軸頭をもつ機械の静的精度(垂直Z軸)/ISO 10791-3:1998(IDT)[5][6]
- 共通JIS B 6336-4:2000 同―第4部:直進及び回転運動軸の位置決め精度/ISO 10791-4:1998(IDT)。試験方法の通則は JIS B 6190-2:2016/ISO 230-2:2014ISO 10791-4 は 1998 年版のまま(ISO の一覧で確認)[7][8][9][10]
- 横形JIS B 6336-5:2000 同―第5部:パレットの位置決め精度/ISO 10791-5:1998(IDT)[11][6]
- 共通JIS B 6336-6:2018 同―第6部:速度及び補間運動の精度/ISO 10791-6:2014(IDT)。円運動試験(ボールバーなど)の通則は JIS B 6190-4:2025/ISO 230-4:2022[12][13][14][15]
- 共通JIS B 6336-7:2018 同―第7部:工作精度/ISO 10791-7:2014(IDT)ISO 側は 10791-7:2020 が出ていて、JIS は1つ前の版に対応している(版ずれ)[16][17][18]
- 共通JIS B 6336-8:2002 同―第8部:直交3平面内での輪郭運動性能の評価/ISO 10791-8:2001(IDT)[19][6]
- 共通JIS B 6336-9:2002 同―第9部:工具交換及びパレット交換時間の評価/ISO 10791-9:2001(IDT)[20][6]
- 共通JIS B 6336-10:2025 同―第10部:熱変形試験/ISO 10791-10:2022(IDT)。熱変形試験の通則は JIS B 6190-3:2023/ISO 230-3:2020[21][22][23]
- 共通JIS B 6190 工作機械試験方法通則(第1部 幾何精度、第2部 位置決め精度、第3部 熱変形、第4部 円運動精度)。それぞれ ISO 230-1・-2・-3・-4 と一致JIS B 6336 の題名は、2000〜2002 年版が「検査条件」、2018 年以降の版が「試験条件」で揺れている[24][9][23][14](資料1件・参考)
規格の本文は有料のため、許容値は機械メーカーが公開している社内基準などで書いています。規格の対応は 規格の対応表 も見てください。
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-1:2018 マシニングセンタ―試験条件―第1部:水平主軸をもつ機械の幾何精度(水平Z軸)(対応 ISO 10791-1:2015 MOD)書誌」
- ISO「ISO 10791-1:2015 Test conditions for machining centres — Part 1: Geometric tests for machines with horizontal spindle (horizontal Z-axis)」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-2:2025 マシニングセンタ―試験条件―第2部:垂直主軸をもつ機械の幾何精度(垂直Z軸)(対応 ISO 10791-2:2023 IDT)書誌」
- ISO「ISO 10791-2:2023 Test conditions for machining centres — Part 2: Geometric tests for machines with vertical spindle (vertical Z-axis)」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-3:2000 マシニングセンタ―検査条件―第3部:固定又は連続割出万能主軸頭をもつ機械の静的精度(垂直Z軸)(対応 ISO 10791-3:1998 IDT)書誌」
- ISO「ICS 25.040.10 Machining centres(規格一覧)」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-4:2000 マシニングセンタ―検査条件―第4部:直進及び回転運動軸の位置決め精度(対応 ISO 10791-4:1998 IDT)書誌」
- ISO「ISO 10791-4:1998 Test conditions for machining centres — Part 4: Accuracy and repeatability of positioning of linear and rotary axes」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-2:2016 工作機械試験方法通則―第2部:数値制御による位置決め精度試験(対応 ISO 230-2:2014 IDT)書誌」
- ISO「ISO 230-2:2014 Test code for machine tools — Part 2: Determination of accuracy and repeatability of positioning of numerically controlled axes」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-5:2000 マシニングセンタ―検査条件―第5部:パレットの位置決め精度(対応 ISO 10791-5:1998 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-6:2018 マシニングセンタ―試験条件―第6部:速度及び補間運動の精度(対応 ISO 10791-6:2014 IDT)書誌」
- ISO「ISO 10791-6:2014 Test conditions for machining centres — Part 6: Accuracy of speeds and interpolations」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-4:2025 工作機械試験方法通則―第4部(数値制御による円運動精度試験。対応 ISO 230-4:2022 IDT)書誌」
- ISO「ISO 230-4:2022 Test code for machine tools — Part 4: Circular tests for numerically controlled machine tools」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-7:2018 マシニングセンタ―試験条件―第7部:工作精度(対応 ISO 10791-7:2014 IDT)書誌」
- ISO「ISO 10791-7:2020 Test conditions for machining centres — Part 7: Accuracy of finished test pieces」
- Renishaw「Technical white paper TE336: Ballbar testing in tandem with circle, diamond, square machining tests(Rev 1)」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-8:2002 マシニングセンタ―検査条件―第8部:直交3平面内での輪郭運動性能の評価(対応 ISO 10791-8:2001 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-9:2002 マシニングセンタ―検査条件―第9部:工具交換及びパレット交換時間の評価(対応 ISO 10791-9:2001 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6336-10:2025 マシニングセンタ―試験条件―第10部:熱変形試験(対応 ISO 10791-10:2022 IDT)書誌」
- ISO「ISO 10791-10:2022 Test conditions for machining centres — Part 10: Evaluation of thermal distortions」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-3:2023 工作機械試験方法通則―第3部:熱変形試験(対応 ISO 230-3:2020 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-1:2016 工作機械試験方法通則―第1部:幾何精度試験(対応 ISO 230-1:2012 IDT)書誌」
- Hurco「Maintenance and Safety Manual for i-Series Machines v573EN(2017年12月。VMC・HMC・TM 系を含む)」
- オークマ「4 Things to Check on Your Okuma Machine Tool(Okuma America、2019)」
- 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「精度測定・測定機材」
- Haas Automation「Preventive Maintenance Program(Haas Factory Outlet 資料)」
- 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「工作機械に望ましい基礎・地盤」
- 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「工作機械に望ましい温度環境」
- 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「再稼働前の確認ポイント」
- 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「工作機械のウォーミングアップ」
- Haas Automation「Spindle - Taper - Maintenance - VMC(How-To)」
- 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「テストインジケータ(てこ式ダイヤルゲージ)使用時の注意点」
- シンワ測定「ダイヤルテストインジケーター 品番73751 取扱説明書」
- Renishaw「QC20 ballbar(パンフレット)」
- 東京農工大学「崔成日・堤正臣・茨木創一ほか「5軸制御マシニングセンタにおける同時3軸制御運動測定装置の互換性」(精密工学会 講演論文、茨木創一 研究室公開)」
- THK「Studying the Positioning Accuracy(Ball Screw Selection)」
- 工作機械技術振興財団「プロジェクト研究課題 RU-22「暖機運転時間を『零』とする熱変形低減設計」」