マシニングセンタの不調の早見表

症状から、考えられる原因・点検する所・処置を引く。周期・油種・数値は機械メーカー・機種ごとの指定が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例(とくに Haas・Hurco・牧野の機械の値)で、手元の機械の取扱説明書・定期保守説明書を必ず確かめること

主軸が熱くなる共通

Haas:潤滑テストと暖機をしてから、ダミー工具を入れて 40 分の試験プログラムを回し、主軸前面の温度を測って 60℃ を超えないこと。Hurco:慣らし運転では軸受部の温度 55℃ 以下(3か月以上止めた電動主軸は 50℃)[1][2]

考えられる原因点検する所処置
主軸の潤滑油の過不足・油種違い主軸潤滑タンクの油面、潤滑ポンプの詰まり、指定油か指定の油に替え、潤滑の量を直す。配管・継手の漏れを探す[1][2][3]
ぶつけて主軸の前キャップがずれ、主軸にこすれている前キャップ周りに 0.025 mm のシムを入れて全周のすきまを見るキャップをゆるめて芯を出し、締め直す[1](資料1件・参考)
主軸冷却機(オイルコントローラ・チラー)の凝縮器・フィルタの汚れ、液不足フィルタ・フィンのほこり、チラーの液量清掃、補充。牧野は清掃を怠るとオイルコントローラの寿命が極端に縮むとしている[4][2]
軸受の予圧・すきま・取付けの不良、損傷高い音を伴うか、振動の測定メーカーに診断・修理を依頼する[5][6]

主軸から異音がする・振動する・びびる共通

考えられる原因点検する所処置
主軸の駆動ベルト・エンコーダのプーリ・ベルトの摩耗・損傷(ベルト駆動の主軸)ベルトのほつれ・伸び・歯欠け、プーリの摩耗交換・張り調整(電源を切りロックアウトしてから)[1](資料1件・参考)
工具(ホルダ+刃物)のアンバランス回転数とバランス等級(Hurco:12000 min⁻¹ 以下 G6.3、超えると G2.5)工具を付けた状態でバランスを取る。取れなければ替える[1][2]
工具の突出しが長い突出しと径の比短い工具を使う(Haas:突出しは径の3倍以下)。切込みを減らす[1][7]
ドローバー力の不足、ホルダのフレッチング引込み力を測る。ホルダのテーパにこすれ跡(フレッチング)がないか皿ばねが傷んでいればドローバー(ビルトインなら主軸ユニット)を替える[1][8](資料1件・参考)
主軸軸受の損傷振動解析メーカーに診断・修理を依頼する[1][5]
治具が工作物を十分支えていない段取り治具を強くする。切削負荷を下げる[1](資料1件・参考)

工具(ホルダ)が主軸から抜けにくい・放すときにポンと音がする共通

考えられる原因点検する所処置
機械を止めている間、工具を主軸に入れたままにしていた(冷たいホルダを温まった主軸に入れると熱で固着する)終業時に工具を外しているか使わないときはホルダを主軸から外す[1][9]
プルスタッドにグリースがないプルスタッドの表面うすくグリースを塗る(Haas 毎月、TSC なら毎週。Hurco 毎月)[1][10][2]
ホルダと主軸テーパの汚れ・傷テーパの汚れ・打痕清掃し、傷んだホルダは使わない[8][1](資料1件・参考)
工具解放ピストン(TRP)へのエア圧・流量不足、TRP センサのずれTRP の圧力(Haas 6.21 bar)、工具交換中の圧力降下 0.7 bar 以内か供給エアの改善、センサの調整[8][11](資料1件・参考)
ドローバーの保持ボールが乾いている—保持ボールに給脂する[8](資料1件・参考)
スルースピンドルクーラントにパラフィン系の成分を含むクーラントを使っているクーラントの種類別のクーラントで試す[1](資料1件・参考)

ATC・マガジンで工具が落ちる共通

考えられる原因点検する所処置
ポケットのフィンガ・ばね・プランジャの摩耗・損傷ポケット部品の摩耗ポケットを組み直す・部品交換[12][11](資料1件・参考)
プルスタッド・ホルダが機械の仕様と違うプルスタッドの形機械指定の形に替える[12][11](資料1件・参考)
工具が重すぎる・長すぎる、重い工具でポケットの動きが速すぎる工具の重さ・長さとマガジンの許容許容内にする。重い工具の設定(Haas の H フラグ)や減速の部品[12][11](資料1件・参考)
ATC がつかむ前にホルダが落ちる:クランプ力不足、TRP プリチャージ圧の設定不良引込み力、プリチャージの空気圧調整・修理[8](資料1件・参考)

工具交換が途中で止まる・ATC の警報が出る共通

考えられる原因点検する所処置
切りくずが近接センサ・ガイドレール・ポケットのスライドの動きを邪魔しているセンサ・レール・ATC シャッタの切りくず清掃。牧野は切りくずの放置で ATC シャッタが故障した例を挙げている[12][11][13]
エアの圧力・流量不足工具交換中の圧力計の落ち込み(Haas:0.7 bar 以内)、エアの元圧ホースの太さ・コンプレッサを見直す。ATC アームやシャッタはエアで動く(牧野)[11][14][15]
主軸オリエンテーション(定位置停止)の位置ずれ・弱さオリエンテーションの設定、ベルトの張り、電源電圧・配線のゆるみ設定し直す、配線を締める[12](資料1件・参考)
モータのブラシの摩耗、クーラントの侵入、ケーブル断線・接触不良、リレー不良モータ電圧・抵抗、ブラシ、ケーブル(動作中・断続的な不調なら特に)清掃・部品交換[12](資料1件・参考)
古い作動油を使い続けている(油圧で動く ATC)作動油の交換時期作動油を交換する(牧野 2000 時間)[16](資料1件・参考)
前回の工具交換が途中で中断された、ポケットが下がったまま交換しようとした交換の途中状態工具交換の手動復帰を行う[11](資料1件・参考)

主軸のクランプ不良(工具が引っ張られて抜ける・クランプの警報)共通

考えられる原因点検する所処置
皿ばね(ベルビルばね)の割れ・破損で引込み力が落ちた引込み力(公称の約 50% まで落ちていればこの故障)ドローバーを交換(ビルトイン主軸はユニットごと)[8][17](資料1件・参考)
古い作動油を使い続けている(油圧で工具をアンクランプする機械)作動油の状態・交換時期作動油を交換する[16](資料1件・参考)
HSK 仕様のコレット・スリーブのグリース不足給脂の周期(牧野 500 時間)コレットに給脂する。工具密着・工具有無の検出異常もこれで出ることがある[18](資料1件・参考)
エア容量の不足供給エアの量・圧力機械の必要エアを満たす[8][1](資料1件・参考)

送り軸の異音・位置ずれ・加工精度の悪化共通

考えられる原因点検する所処置
ワイパの劣化・破損でカバー内に切りくず・クーラントが入ったワイパの傷・亀裂・すき間、カバーの傷ワイパ交換(傷が大きければカバーも交換)。リニアガイド・ボールねじ・配線を点検[19][13][20]
潤滑不足、違う油・グリースを混ぜた給油・給脂の記録、油量指定油で給油。銘柄の違う油・グリースを混ぜない[21][22][23]
バックラッシ(ボールねじの軸方向すきま)ボールバーの段差メーカー・販売店で調整・補正[24][25]
汚れたエアがスケール(位置検出器)に入り読取り不良エアフィルタの変色・目詰まり、配管の水・油エア品質を改善しフィルタを交換[14][26](資料1件・参考)
機械の水平が狂った精密水準器レベル出し(Hurco:0.020 mm/m を超えたらサービスへ)[2][20]
水溶性液を使う機械を長く止め、研磨粉・スラッジが動く部分に固着して負荷が増えたサーボの過負荷警報止めている間も定期的に暖機・空運転する(セイコーインスツルの研削盤の例)[27](資料1件・参考)

潤滑・油量の警報が出る共通

考えられる原因点検する所処置
油量不足・漏れ油面計、機械まわりの油だまり補給。異常に減るなら漏れ・故障を疑いメーカーへ[28][2]
主軸潤滑油のラインフィルタの目詰まりラインフィルタの目詰まりサインエレメントを交換(牧野は予備品を持っておくことをすすめる)。変色・濁った油は継ぎ足さず交換[29][30][31](資料1件・参考)
自動グリース装置のカートリッジ切れ「圧力低下」「カートリッジ交換要求」の警告カートリッジを交換[21](資料1件・参考)
自動給油タンク・吸込みフィルタの汚れ給油口のフィルタスクリーン(毎月)タンクと吸込みフィルタを清掃(年1回)[2](資料1件・参考)

クーラントが出ない・あふれる・切りくずが詰まる共通

考えられる原因点検する所処置
リフトアップコンベヤのドラムフィルタの目詰まり、逆洗浄ノズルが出ていないドラムのまわりの切りくず、逆洗浄の吐出切りくずの清掃、ドラムフィルタの点検(1年ごとに交換)、逆洗浄量の調整[32](資料1件・参考)
タンク内のスラッジの堆積・固着タンクの底、メッシュフィルタタンクを清掃(移動式のスラッジ除去装置もある)[33][34](資料1件・参考)
スルースピンドルクーラントのフィルタの詰まりポンプフィルタ清掃・交換[35][2]
タンクの入れすぎレベルゲージ上限を超えて入れない(戻ってくる液であふれる)[36](資料1件・参考)
泡立ち(濃度が高い、希釈水が軟水)濃度、水質濃度を直す[34](資料1件・参考)

朝と昼で寸法が違う・加工中に寸法がずれる(熱変位)共通

考えられる原因点検する所処置
機械まわりの温度の変化(外気・直射日光・空調の風)室温の記録、設置場所温度を安定させる。熱変位補正のある機械はその機能を使う[37][38]
暖機をしていない(主軸など機械自身の発熱)始業時・段取りで止めたあとの暖機の有無暖機してから加工・測定する[2][39][40][38]

電源を入れたら原点復帰要求・原点消失の警報が出る共通

考えられる原因点検する所処置
アブソリュートエンコーダ(パルスコーダ)用バッテリの電圧低下・切れバッテリ低下の警報履歴、交換時期バッテリを交換し、原点が失われていれば手動原点復帰(できなければサービスへ)[41][42][27]
電源を切った状態でバッテリを外した交換の手順交換は NC 電源を入れたまま行う[41][42]
電源を入れない状態が長く続いた休止期間長期休止の前にバッテリを替え、原点を出し直しやすい位置に軸を置いて電源を切る[42][9](資料1件・参考)

NC のパラメータ・プログラムが消えた共通

考えられる原因点検する所処置
NC メモリのバックアップ用バッテリの電圧低下バッテリの警報、交換時期(牧野:1年ごと)交換。交換前に SRAM・プログラムを保存しておく。ブラザーはデータを USB や PC に保存するよう案内している[43][44][42]

エアシリンダの動作不良・スケールの読取り異常・エア漏れ共通

考えられる原因点検する所処置
圧縮空気に水分・油分・ごみが混ざっているドレンの水・油、配管の変色、ワンタッチカプラの汚れ、エアブローから水・油が出ないかコンプレッサのドレン抜き、フィルタ交換、配管の見直し(主管に 1/100 の傾き、枝管は主管の上から取る、末端にオートドレン)[15][14][26](資料1件・参考)
エアドライヤのオートドレンのカップ・継手の割れ(休暇明けに多い)エア漏れの場所カップ交換。コンプレッサ起動後はレギュレータをゆっくり開ける[45][46](資料1件・参考)

長期休暇明けに警報が出る・動かない共通

考えられる原因点検する所処置
室温が低く、潤滑油・クーラントが冷えすぎてオイルコントローラの警報室温室温を整えてから警報リセット[46](資料1件・参考)
制御盤の放熱器冷却ファンの停止(汚れ・故障)ファン停止の警報清掃・交換[45](資料1件・参考)
バッテリ低下・原点消失警報バッテリ交換、原点調整[27][9]

パレット交換で密着異常・クランプ異常が出る横形

考えられる原因点検する所処置
パレットまわりの切りくずがテーパ・クランプスイッチにかみ込んだテーパコーン・パレット側テーパ・クランプスイッチウエスで清掃(エアガンは使わない)。Haas は毎週の清掃項目[47][35]

工具の振れが大きい・仕上げ面が悪い共通

考えられる原因点検する所処置
主軸テーパ・ホルダの汚れテーパ面清掃(エアガンは使わない)[48][49][2]
ホルダ・主軸テーパの傷打痕・フレッチング傷んだホルダは使わない。主軸テーパの修理はメーカーへ[8][20]
軸受の予圧の狂い(ほかの点検をすべてしたあと)主軸のたわみ試験メーカーに依頼[1](資料1件・参考)

加工条件・工具の側の原因は 加工トラブル事典 にまとめています。

📚出典

印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。

  1. Haas Automation「Mill Spindle - Troubleshooting Guide - TG0101(Rev B 11/2025)」
  2. Hurco「Maintenance and Safety Manual for i-Series Machines v573EN(2017年12月。VMC・HMC・TM 系を含む)」
  3. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「主軸軸受の潤滑と、パフォーマンス維持のためにできること」
  4. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「オイルコントローラの清掃」
  5. 日本精工(NSK)「11. 異常・損傷と対策(転がり軸受の基礎知識)」
  6. NTN「Care and Maintenance of Bearings(CAT.No.3017-II/E)」
  7. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「安全に機械をお使いいただくために」
  8. Haas Automation「Spindle - Drawbar - Troubleshooting Guide - TG0132(Rev A 12/2025)」
  9. ブラザー工業「年末年始コールセンター休業期間のお知らせ/機械の長期間休止に備えて(2022年)」
  10. Haas Automation「Tooling - Maintenance - Mill(How-To)」
  11. Haas Automation「Side Mount Tool Changer (SMTC) - Carousel and Pocket - Troubleshooting Guide - TG0127」
  12. Haas Automation「Umbrella Tool Changer - Troubleshooting Guide - TG0155(Rev A 08/2025。Mill Tool Changer Service Manual 9.1)」
  13. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「日常点検まとめ②」
  14. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「エアの役割、エアフィルタ点検のキーポイント」
  15. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「工作機械に望ましい圧縮空気」
  16. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「油圧ユニットの点検」
  17. Haas Automation「Spindle Drawbar Force Reference Table - RD0067(Rev D 04/2026)」
  18. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「主軸コレット・スリーブへの給脂(HSK仕様)」
  19. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「送り軸カバー用ワイパの点検」
  20. オークマ「4 Things to Check on Your Okuma Machine Tool(Okuma America、2019)」
  21. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「グリスの点検」
  22. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「摺動面潤滑油点検のキーポイント」
  23. 日本精工(NSK)「精機製品カタログ CAT.No.3162(リニアガイド・ボールねじ。A-3-6 潤滑)」
  24. THK「Studying the Positioning Accuracy(Ball Screw Selection)」
  25. Renishaw「Technical white paper TE336: Ballbar testing in tandem with circle, diamond, square machining tests(Rev 1)」
  26. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「圧縮空気の清浄度」
  27. セイコーインスツル「精機事業部 工機部 保全ニュース 第32号(2020年10月)」
  28. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「日常点検まとめ①」
  29. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「予備品の購入交換」
  30. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「主軸潤滑油/冷却油の定期点検」
  31. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「主軸潤滑油・送り軸冷却油点検のキーポイント」
  32. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「ドラムユニットの点検」
  33. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「切りくずの除去」
  34. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「水溶性切削液のメンテナンス」
  35. Haas Automation「VMC Maintenance Schedule - RD0080(Rev B 5/2025)」
  36. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「クーラント(切削液)の管理」
  37. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「工作機械に望ましい温度環境」
  38. オークマ「サーモフレンドリーコンセプト(熱変位の考え方と制御)」
  39. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「工作機械のウォーミングアップ」
  40. 工作機械技術振興財団「プロジェクト研究課題 RU-22「暖機運転時間を『零』とする熱変形低減設計」」
  41. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「バッテリ交換:アブソリュートパルスコーダ/スケール用」
  42. ブラザー工業「機械の長期間休止前のバッテリー交換について(2020年5月、SPEEDIO・タッピングセンター)」
  43. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「バッテリ交換:NCバックアップ用」
  44. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「バッテリ交換:PANEL i用」
  45. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「長期休暇明けに発生しやすい障害事例」
  46. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「再稼働前の確認ポイント」
  47. 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「テーブルパレットの清掃」
  48. MSTコーポレーション「クリーニングツール(主軸テーパ用クリーニングワイパー)カタログ 1904J」
  49. Haas Automation「Spindle - Taper - Maintenance - VMC(How-To)」