ケズリバ(kezuriba.net)/maintenance/machining-center/toolholder/ より印刷
マシニングセンタのツールホルダ・主軸テーパ
テーパ面の清掃・プルスタッド・ドローバー力(引込み力)・ATC の点検。周期・油種・数値は機械メーカー・機種ごとの指定が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例(とくに Haas・Hurco・牧野の機械の値)で、手元の機械の取扱説明書・定期保守説明書を必ず確かめること
⊓手入れと点検
- 主軸テーパを清掃する(エアガンは使わない)主軸テーパ
糸くずの出ない布や清掃治具(テーパ用のクリーニングワイパ)で拭き、うすく油を付ける。Hurco は清浄な軽い油、Haas は汎用機械油。周期は Hurco 毎日、牧野は使う前、Haas は毎月
テーパに切りくずが付くと工具の振れが大きくなる。MST は、主軸に 1 µm の切りくずが付くと刃先は 10 µm 振れると説明している 圧縮エアで吹くと主軸内に切りくずや切削液が入り、シールやビルトイン主軸の軸受を傷める(牧野・Hurco)[1][2][3][4]
- 主軸テーパの摩耗・損傷を見る主軸テーパ
ライトで照らして摩耗・傷・打痕を見る(Haas は毎月)
テーパの汚れ・傷・芯ずれは加工精度と面粗さを悪くする(Haas)。傷んだホルダが主軸テーパに傷を移す(オークマ(米国))[3][5]
- ホルダのテーパを清掃し、軽いさび・打痕を直してから主軸に入れるツールホルダ
軽いさび・汚れは研磨パッドで、小さな打痕・盛り上がりは柔らかい砥石で直し、糸くずの出ない布で拭く(Haas)。Hurco は軽い機械油の布で拭いてからマガジンに戻す
- 機械を使わないときはホルダを主軸から外しておくツールホルダ
終業時・長期休止の前に主軸の工具をマガジンに戻す
冷たいホルダを温まった主軸に入れたまま置くと、熱膨張の差で固着し、外すときにポンと音がする(Haas)[3][8][9]
- プルスタッドにうすくグリースを塗るプルスタッド
Haas:毎月(スルースピンドルクーラントを使うなら毎週)。Hurco:ホルダに毎月、NLGI 1 のグリースをはけで
ドローバーを潤滑するため。グリースがないと工具が固着して抜けにくくなる(Haas の主軸の診断表) 周期は平均的な使い方の目安で、状況に合わせて調整する(Haas)[6][1]
- プルスタッドの損傷・摩耗・締付けを点検するプルスタッド
ホルダを外して、プルスタッドの傷・摩耗・締付トルクを見る。Haas の機械のプルスタッドは 45° の面を持ち、そこに荒れ・損傷があると工具がスムーズに放れない。頭の縁にボールの跡があればドローバーが完全に開いていない
- プルスタッドの交換時期プルスタッド
Haas:使用時間で約 6000〜8000 時間を寿命の目安とし、交換する
交換しないで折れると、ホルダと主軸を傷める ほかの公開資料で交換時期を確かめられなかった(ツーリングメーカーの資料は見つからず)[6](資料1件・参考)
- 機械に合った形状のプルスタッドを使うプルスタッド
ホルダ(シャンク)とプルスタッドの形・寸法は JIS B 6339 / ISO 7388 で決まっている。機械メーカーが指定する形を使う
違うプルスタッドを使うと、工具がマガジン(ポケット)から落ちる原因になる(Haas の2つの診断表) JIS は書誌(題名と対応 ISO)だけを確かめた[11][12][13]
- 引込み力(ドローバー力・クランプ力)を測るドローバー(工具クランプ)
ホルダを外して非常停止→主軸テーパを清掃して薄く注油し点検→クランプ力ゲージをメーカーの手順で組んで主軸に入れ、測る(Haas)。ゲージは0から始まらなくてよく、クランプ前後の差が引込み力。周期は Hurco 毎週、Haas 年1回
引込み力の低下はふつう皿ばねの割れ・破損で起こり、公称の約 50% まで落ちるのがこの故障の目安。なじみによるわずかな低下は正常(Haas)[1][14][15][16]
発行元 対象 周期 目安 Haas Automation VMC など 年1回 機種ごとの値(下の表) Hurco マシニングセンタ 毎週(引込み力)、毎月(解放位置の寸法・クランプと解放の動作順序)、3か月(O リング交換) 記載なし - ドローバーの保持ボールに給脂するドローバー(工具クランプ)
プルスタッドの上にグリースを置いてホルダを主軸に入れ、4〜5回クランプ・アンクランプしてボールに行き渡らせる。ホルダを外し、ホルダと主軸テーパの余分を拭く(Haas)
保持ボールが乾いていると、工具がスムーズに放れない[10](資料1件・参考)
- HSK 仕様の主軸のコレット・スリーブに給脂する主軸テーパ(HSK)
牧野の例:500 時間ごと。主軸の工具をマガジンに戻し、マシンロックと補助機能ロックをかけ、ハンドルモードで扉を開けて工具アンクランプにし、コレットの先と根元にスプレー式の固体潤滑剤を吹く。終わったらクランプに戻す
グリースが切れると、コレット・スリーブが動かない、工具密着・工具有無の検出の不良が出る 作業中は扉スイッチのリリースキーを作業者が持ち、警告札を付け、手動パルス発生器を携帯する(牧野)[17](資料1件・参考)
- 高速で使う工具はバランスを取るツールホルダ
Hurco:12000 min⁻¹ 以下は G6.3 未満、12000 min⁻¹ を超えたら G2.5 未満。Haas:10000 min⁻¹ を超えて回す工具はすべてバランスを取る(工具を付けた状態で)
- 工具の突出しを短くするツールホルダ
Haas:できるだけ短い工具を使い、突出しは原則として径の3倍以下。長さ/径の比を 10% 減らすと工具の剛性は 25% 上がる。牧野:工具の突出し量と振れを確かめる
- ホルダと主軸テーパの当たりを確かめる主軸テーパ
ホルダのテーパ全面に青の当たり用ペーストを塗って主軸に入れ、外す。75% 以上がこすれていれば当たりは良好(Haas)
当たりが悪いと振れやフレッチングにつながる[3](資料1件・参考)
- 重い工具・長い工具はマガジンの制限内で使い、設定するATC
工具がマガジンの許容を超える重さ・長さにならないようにする。Haas のサイドマウント式では、重い工具に H(heavy)の印を付けるとアームが 25% の速さで回る。重い工具でポケットの上下が速すぎる場合は減速の部品がある
- 工具交換中の空気圧の下がり方を確かめるATC
工具交換を指令して、機械の空気圧計の針が 0.7 bar(10 psi)より大きく下がらなければ、供給エアの圧力と流量は足りている。TRP(工具解放ピストン)の電磁弁の圧力は 6.21 bar(90 psi)(Haas)
- ATC 動作時のクーラントノズルとの干渉に注意し、マガジンへの装着を正しく行うATC
牧野は、工具ホルダを ATC マガジンへ付けるときの注意と、ATC 動作時のノズル干渉を安全運転のチェック項目に挙げている。Haas は ATC の切りくず清掃を毎週としている
- パレットのワイパと扉を点検するAPC
Haas:パレットワイパの点検と扉の動作確認・ガイドレールの給脂は毎月。パレットプールは扉の動作を半年ごと。パレットを抜いて受け側を洗う運転(M50P0)がある
▦Haas の主軸ドローバー力(引込み力)の推奨値(RD0067 Rev D)
| 主軸 | 機種シリーズ | 推奨ドローバー力 N | 推奨ドローバー力 lbf |
|---|---|---|---|
| 20 番 | OM・CM | 1245 超 | 280 超 |
| 30 番 | VF・VM(30000 min⁻¹) | 2669〜4003 | 600〜900 |
| 30 番 | DT・DM(2019-05-20 以降の製造) | 4092〜6316 | 920〜1420 |
| 30 番 | DC | 2446〜3025 | 550〜680 |
| 40 番 | VF・VM・EC・UMC・GM(3軸) | 6494〜10231 | 1460〜2300 |
| 40 番 | DM | 4092〜6316 | 920〜1420 |
| 40 番 | DC | 5880〜6863 | 1322〜1543 |
| 40 番 | GR・TM・MM・SMM | 3470〜6228 | 780〜1400 |
| 50 番 | VF・EC | 12499〜19572 | 2810〜4400 |
| HSK-A63 | Haas の HSK 主軸 | 12610〜18015 | 2835〜4050 |
同じ 40 番でもシリーズで値が大きく違う。他社の機械にこの値を当てはめないこと。公称の約 50% まで下がっていれば皿ばねの割れ・破損を疑う(Haas)[15](資料1件・参考)
≡関係する規格
- JIS B 6339-1:2011・-2:2011・-3:2011 自動工具交換用 7/24 テーパシャンク(第1部 A・U 形、第2部 J 形、第3部 プルスタッド)。第1部は ISO 7388-1:2007、第3部は ISO 7388-3:2007 と一致(IDT)7/24 テーパの ATC 用シャンクとプルスタッドの形・寸法の規格。題名と対応 ISO だけを確かめた。どの形が市場の呼び名(BT・CAT など)に当たるかは確かめていない[19][20][13](資料1件・参考)
- JIS B 6064-1:2013・-2:2013 2面拘束形中空テーパシャンク及び主軸端(第1部 シャンク、第2部 主軸端)。ISO 12164-1:2001・-2:2001 と一致(IDT)2面拘束形の中空テーパ(HSK)。第3部・第4部は静止工具用。題名と対応 ISO だけを確かめた[21][22](資料1件・参考)
BT・HSK などシャンクの種類と寸法は ツーリングのデータベース にまとめています。
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- Hurco「Maintenance and Safety Manual for i-Series Machines v573EN(2017年12月。VMC・HMC・TM 系を含む)」
- 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「再稼働前の確認ポイント」
- Haas Automation「Spindle - Taper - Maintenance - VMC(How-To)」
- MSTコーポレーション「クリーニングツール(主軸テーパ用クリーニングワイパー)カタログ 1904J」
- オークマ「4 Things to Check on Your Okuma Machine Tool(Okuma America、2019)」
- Haas Automation「Tooling - Maintenance - Mill(How-To)」
- 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「安全に機械をお使いいただくために」
- Haas Automation「Mill Spindle - Troubleshooting Guide - TG0101(Rev B 11/2025)」
- ブラザー工業「年末年始コールセンター休業期間のお知らせ/機械の長期間休止に備えて(2022年)」
- Haas Automation「Spindle - Drawbar - Troubleshooting Guide - TG0132(Rev A 12/2025)」
- Haas Automation「Umbrella Tool Changer - Troubleshooting Guide - TG0155(Rev A 08/2025。Mill Tool Changer Service Manual 9.1)」
- Haas Automation「Side Mount Tool Changer (SMTC) - Carousel and Pocket - Troubleshooting Guide - TG0127」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6339-3:2011 自動工具交換用7/24テーパシャンク―第3部:AC,AD,AF,UC,UD,UF,JD及びJF形ツールシャンク用プルスタッドの形状・寸法(対応 ISO 7388-3:2007 IDT)書誌」
- Haas Automation「VMC Maintenance Schedule - RD0080(Rev B 5/2025)」
- Haas Automation「Spindle Drawbar Force Reference Table - RD0067(Rev D 04/2026)」
- Haas Automation「Spindle - Drawbar - Force Measurement - VMC(How-To)」
- 牧野技術サービス(牧野フライス製作所グループ)「主軸コレット・スリーブへの給脂(HSK仕様)」
- Haas Automation「HMC - Pallet Pool - Operator's/Service Manual 8.1 Maintenance」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6339-1:2011 自動工具交換用7/24テーパシャンク―第1部:A,AD,AF,U,UD及びUF形ツールシャンクの形状・寸法(対応 ISO 7388-1:2007 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6339-2:2011 自動工具交換用7/24テーパシャンク―第2部:J,JD及びJF形ツールシャンクの形状・寸法 書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6064-1:2013 2面拘束形中空テーパシャンク及び主軸端―第1部:中空テーパシャンク―寸法(対応 ISO 12164-1:2001 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6064-2:2013 2面拘束形中空テーパシャンク及び主軸端―第2部:主軸端―寸法(対応 ISO 12164-2:2001 IDT)書誌」