汎用フライス盤の主軸・アーバ・送りの手入れ

R8 コレットとドローバー、横フライス盤のアーバ、ギブとバックラッシ、主軸頭の傾き(トラミング)と変速レバーの扱い。周期・油種・締付けトルク・許容値は、手元の機械の取扱説明書が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例(海外の小形タレット形フライス盤の取扱説明書や、国内メーカー 1 社の検査成績表など)で、機種によって違う。ギブ・主軸頭の調整は、主軸と送りを止め、電源を切ってから行う

⚙手入れと点検

▦ギブのガタ(振れ)の測り方と目安(エツキのひざ形立てフライス盤の例)

軸測り方出荷時の値調整の目安
Y(サドル)サドルの左端に 1 目盛 2 µm のインジケータを当てて 0 に合わせ、テーブルの端を力いっぱい前後に振る3〜4 µm当たりが悪いと 10〜30 µm 振れる。前後のねじで調整し、振れをできるだけ小さく
X(テーブル)テーブルにインジケータを当てて前後に振る(サドルの振れを含む総合の値。8 µm ならサドル 4 µm を引いてテーブル 4 µm)総合 4〜8 µm10 µm 以内
Z(ひざ)ブロック(またはバイスの基準側)にインジケータを当て、Z のハンドルでひざを上下させて最大の振れ(上下ギャップ)を読むバイスの口金付近で 4〜5 µm5 µm 以内

厚労省のものづくりマイスター用マニュアルの巻末資料(株式会社エツキの提供)。サドルのギブの当たりが悪いとテーブルの左右運動と上面の平行度(JIS では左右全移動で 0.03 mm 以内。出荷時は 0.01 mm 前後)が出ないが、この値は Z・X のガタを含んだ総合の値なので、締めればよいわけではない。ほかの機械では取扱説明書の値に従う[8](資料1件・参考)

▦資料に出てくる締付けトルク(ft·lb)と N·m の換算

箇所資料の値N·m(1 ft·lb = 1.356 N·m で換算)発行元
主軸頭を傾ける止めナット(VM-949)25 ft·lb約 34 N·mBaileigh Industrial
手締めドローバー(ふつうの加工)30 ft·lb まで約 41 N·mTormach
手締めドローバー(きびしい加工)40 ft·lb約 54 N·mTormach
主軸頭のチルト・ノッドの締付けボルト50 ft·lb約 68 N·mワシントン州の職業教育教材

機種によって値が違う。手元の機械の取扱説明書の値を優先する[9][10][1]

÷トラミング(主軸頭の直角出し)の手順と調整量

  1. バイスを外し、テーブルを中央に置く。クイルを一番上に上げてロックし、主軸頭は中立にする(ワシントン州の教材)
  2. 主軸にトラミング用の腕を付け、先にインジケータを付ける。腕は主軸の中心から 4 インチ(約 100 mm)以上とどくものを使う
  3. ひざを上げてインジケータを 0.020 インチ(約 0.5 mm)ほど押し込み、ひざをロックする。押し込みすぎると T 溝を越えるときに強く当たって読みが狂う。きさげの跡や傷のない所で測る
  4. 主軸を手で回し、左右(3 時と 9 時)、前後(12 時と 6 時)の読みを比べる
  5. 左右の傾き(チルト):主軸頭の正面の 4 個の締付けナットをゆるめ、ウォームで読みの差の半分だけ戻す(回転の中心が 2 点の真ん中にあるため)。締め付けて測り直す
  6. 前後の傾き(ノッド):ラムの 3 個(6 個の機種もある)のボルトをゆるめて調整する。回転の中心が遠いので、2 点の読みが同じ向きに違う速さで動き、半分戻しでは合わない。少しずつ動かして測り直す
  7. 4 点の読みがそろうまで繰り返す。片方を直すと、もう片方がずれることがある
左右の調整量
戻す量 =(右の読み − 左の読み)÷ 2(ワシントン州の教材・カリフォルニア大学リバーサイド校の「読みの半分」)
調整を始める目安
左右・前後の差が 0.001 インチ(約 0.025 mm)を超えたら(ワシントン州の教材)
検査成績表の許容値
振り回し直径 300 mm について 0.02 mm。テーブルの前端が低くてはいけない(エツキのひざ形立てフライス盤の検査成績表。精度の点検の項)
計算例:条件
左右の読みの差が 0.04 mm だったとする(説明のための例)
計算例:結果
ウォームで 0.02 mm 分だけ戻すと、左右が同じ読みに近づく。そのあと前後を合わせ、もう一度左右を確かめる

Baileigh は、テーブルはふつう前側がわずかに(約 0.0005 インチ=約 0.013 mm)高く仕上げてあると書いている。主軸頭を大きく傾けたあとは、ウォームだけで頭を起こそうとしない(安全の項)[10][3][2]

📚出典

印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。

  1. Tormach「770M Knowledge Base: Preventing Collet Slip(R8・TTS のコレットの保持力試験と推奨)」
  2. Baileigh Industrial(JPW Industries)「Operator's Manual VM-1054-3 Vertical Milling Machine(Rev. 3/2013)」
  3. カリフォルニア大学リバーサイド校 機械工学科「Machine Shop Standard Operating Procedures for Manual Milling Machines(V5、2011-11-15)」
  4. Tormach「770M Knowledge Base: Chatter」
  5. 米国陸軍(TRADOC)「TC 9-524 Fundamentals of Machine Tools(1996-10-29)第8章 Milling Operations(everyspec.com の写し)」
  6. 日本規格協会(JSA)「JIS B 6104:1998 フライス盤用アーバ及びその附属品―形状・寸法 書誌」
  7. Tormach「PCNC 440 Knowledge Base: Lost Motion Testing and Gib/ACB Adjustment」
  8. 厚生労働省「技能競技大会を活用した人材育成の取組マニュアル フライス盤職種編(巻末参考資料2:株式会社エツキ提供のギブ調整手順・静的精度検査方法・検査成績表を含む)」
  9. Baileigh Industrial(JPW Industries)「Operator's Manual VM-949-1/3 Vertical Milling Machine(Rev. 04/2015)」
  10. ワシントン州コミュニティ・テクニカルカレッジ委員会(WA Open ProfTech、Wenatchee Valley College 制作)「Introduction to Machining 9.5 Work Setup(主軸頭のトラミング・バイスの直角出し。CC BY 4.0、LibreTexts 掲載)」
  11. 新潟大学 工学部「第10章 万能フライス盤による加工(実習テキスト、操作盤説明の主軸ブレーキ)」