ケズリバ(kezuriba.net)/maintenance/milling/troubles/ より印刷
汎用フライス盤の不調の早見表
症状から、考えられる原因・点検する所・処置を引く。周期・油種・締付けトルク・許容値は、手元の機械の取扱説明書が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例(海外の小形タレット形フライス盤の取扱説明書や、国内メーカー 1 社の検査成績表など)で、機種によって違う。ギブ・主軸頭の調整は、主軸と送りを止め、電源を切ってから行う
テーブル・サドル・ひざが重い、動かない共通
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| クランプ(ロック)が締まったまま | テーブル・サドル・ひざのクランプレバー | クランプをゆるめる。サドルのクランプを強く締めすぎると、それだけでもテーブルが少し渋くなる[1](資料1件・参考) |
| 切りくずが案内面に詰まっている | 案内面の端、切りくず払い(ワイパ)のまわり | こまめに切りくずを取る。圧縮空気で吹くと、切りくずがシールの下やはめあい部に入り込む[1][2] |
| 案内面の油が足りない | ワンショット給油器・自動給油装置の油面と吐出 | 給油器で案内面に油を送る。自動給油装置は吐出量を十分にする(少ないとギブと案内面の摩耗が早い)[1][3] |
| ギブの締めすぎ | ギブの調整ねじ、手で動かしたときの重さ | 少しゆるめてガタを測り直す。締めすぎると油膜を保てず摩擦が大きくなる[3][4] |
| ギブの調整のあと、ゆるめた側のねじを締め忘れた | ギブの両端のねじ | くさび形のギブがすき間に食い込んで動かなくなる。両端のねじを締め直して調整をやり直す[3](資料1件・参考) |
寸法・直角が出ない、穴が長穴になる共通
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| サドル(Y)のギブの当たりが悪い | サドルの前後の振れ(目安 3〜4 µm、悪いと 10〜30 µm) | Y 軸のギブを調整する。当たりが出ていないと、Y 方向に削ったとき X 軸に対する直角が出ない[3](資料1件・参考) |
| ひざ(Z)のギブの締めすぎ | ひざを上下させたときの振れ(上下ギャップ) | 締めすぎるとひざが上下のたびに傾き、穴加工で長穴になる。5 µm 以内を目安に調整する[3](資料1件・参考) |
| ひざ(Z)のギブのゆるめすぎ | テーブル上面とひざ運動の直角度(前端が低くないか) | ひざ全体が下がって前下がりになり、片減りが進む。調整し、片減りが進んでいれば修理を相談する[3](資料1件・参考) |
| 送りねじのガタ(バックラッシ)を下向き削りで拾った | ロストモーションの量、削る向き | ふつうは上向き削りで送る(切削力でガタが片寄せされる)。下向き削りではガタとたわみをできるだけなくす[5][4] |
| バイスの固定口金がテーブルの動きと平行でない | 固定口金にインジケータを当ててテーブルを送る | バイスの直角出しをやり直す(6 インチの口金で 0.0005 インチ以内が目安:ワシントン州の教材)[6][7] |
| ガタの原因の取り違え(Z のギブのゆるみを、主軸頭やコラムの傾きと思い込んで直した) | 直す前に、何が原因かを測って確かめたか | 原因を決めつけず、ギブのガタと直角度を分けて測ってから直す[4](資料1件・参考) |
正面フライス・フライカッタの送りごとに段差が出る、削った面が傾くタレット形
段差は工具の径が大きいほど大きく出る(トラムのずれは角度なので)[8]
びびる・振動が大きい・仕上げ面が悪い共通
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| ベルトの張りが合っていない、ベルトの摩耗むら(硬い所)、モータや主軸のプーリのアンバランス | ベルトの張りと状態、プーリ | 張りを調整する。ベルトを替える。プーリのバランスを取るか替える[1](資料1件・参考) |
| ギブがゆるい | 各軸のガタ。Tormach は、ある軸の直線送りでびびるときは、反対の軸のギブのゆるみを疑うとしている | ギブを調整する[1][9] |
| 工具・工作物の保持の剛性が足りない | コレット・ホルダの合い、工具の突出し、バイス・クランプのくわえ方 | 合ったコレット・ホルダを使い、工具の突出しを短くする。工作物はしっかりくわえる。使わない軸はクランプする(Baileigh)[9][1] |
| 工具の摩耗・欠け | 刃先の摩耗・欠け・熱き裂 | 研ぎ直すか替える。切れ味の落ちた刃は熱で刃先が軟らかくなる(米国陸軍の教本)[9][1][5] |
| パワードローバーの空気圧不足、ドローバーの皿ばねの割れ・不足 | エア圧(90 psi 以上)、皿ばねの枚数と割れ | 空気圧を合わせる。皿ばねを替える(Tormach は年1回の交換を勧める)[9](資料1件・参考) |
| 回転速度・送りが合っていない、工具の回転方向の誤り | 条件、主軸の回転方向 | 正しい回転速度・送りにする。回転方向を工具に合わせる[1](資料1件・参考) |
工具がコレットの中で滑る・抜けてくるタレット形
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| コレットが主軸テーパの奥まで入っていない | ドローバーの締まり | ドローバーで引き込んで締める[1](資料1件・参考) |
| コレットの径が工具のシャンクに合っていない | コレットの呼び径 | シャンク径に合ったコレットを使う[1][6] |
| コレット・主軸・シャンクの油やごみ(新品の防錆油を含む) | コレットの内側と工具のシャンク | 油とごみを落とし、コレットの内側とシャンクは乾いた状態にする[1][10] |
| ドローバーのねじ・座面・座金が乾いている、かじっている | ドローバーの座面のかじり、ねじの摩耗 | 焼付き防止剤を塗る。かじった座面は旋盤で直し、ねじが減っていればドローバー(とコレット)を替える[10](資料1件・参考) |
工具が熱をもつ・工作物が焼ける共通
主軸のモータが止まる・回転が上がらない共通
音が大きい・主軸頭からガラガラ音がするタレット形
クイルの自動送りが止まらない(自動で外れない)タレット形
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| フィードトリップの調整のずれ | トリップロッドの下の止めねじ、クイルストップのナットの位置 | 止めねじで調整し、上下両方向で自動的に外れることを確かめる[1](資料1件・参考) |
機械が動かない共通
加工条件・工具の側の原因は 加工トラブル事典 にまとめています。
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- Baileigh Industrial(JPW Industries)「Operator's Manual VM-1054-3 Vertical Milling Machine(Rev. 3/2013)」
- ワシントン州コミュニティ・テクニカルカレッジ委員会(WA Open ProfTech、Wenatchee Valley College 制作)「Introduction to Machining 9.2 Machine Maintenance(手動立てフライス盤。CC BY 4.0、LibreTexts 掲載)」
- 厚生労働省「技能競技大会を活用した人材育成の取組マニュアル フライス盤職種編(巻末参考資料2:株式会社エツキ提供のギブ調整手順・静的精度検査方法・検査成績表を含む)」
- Tormach「PCNC 440 Knowledge Base: Lost Motion Testing and Gib/ACB Adjustment」
- 米国陸軍(TRADOC)「TC 9-524 Fundamentals of Machine Tools(1996-10-29)第8章 Milling Operations(everyspec.com の写し)」
- カリフォルニア大学リバーサイド校 機械工学科「Machine Shop Standard Operating Procedures for Manual Milling Machines(V5、2011-11-15)」
- ワシントン州コミュニティ・テクニカルカレッジ委員会(WA Open ProfTech、Wenatchee Valley College 制作)「Introduction to Machining 9.5 Work Setup(主軸頭のトラミング・バイスの直角出し。CC BY 4.0、LibreTexts 掲載)」
- Tormach「770M Knowledge Base: Spindle Tram Adjustment」
- Tormach「770M Knowledge Base: Chatter」
- Tormach「770M Knowledge Base: Preventing Collet Slip(R8・TTS のコレットの保持力試験と推奨)」