ケズリバ(kezuriba.net)/nc/g32/ より印刷
G32
旋盤モーダル・グループ 01ねじ切り(1 回ぶんの送り)
書き方と注意点
G32 X(U)_ Z(W)_ F_(F はリード。多条ねじは Q_ で開始角)
- 主軸の 1 回転の信号に合わせて送り始めるので、何回くり返しても同じ溝に刃が入る。切込み・逃げ・戻りは自分で G00 で書く(G92 は 4 つの動きをまとめた単一形のサイクル、G76 は切込みの割り振りまで NC が計算する複合形のサイクル)
- F はリード(主軸 1 回転で進む量)。1 条ねじならピッチと同じ、2 条ねじならピッチの 2 倍
- G97 で回転数を一定にしてから使う。1 本のねじを削り終えるまで回転数を変えない(主軸と送りの追従の遅れでリードが狂う)。テーパねじでも周速一定(G96)にしない
- 毎回転送り(G99)が前提。Siemens の ISO 方言は毎分送り(G94)のまま指令するとアラーム、Haas は G99 が必要と書いている
- ねじの始めと終わりは送りが追いつかず、リードが正しくならない(不完全ねじ部 δ1・δ2)。必要なねじの長さに、助走 δ1 と抜け δ2 を足して指令する
- ねじ切り中は送りオーバライドとフィードホールド(送りの一時停止)が効かない。途中で止めるとねじ山が崩れるため(三菱電機)。止めたいときは G32 の連続が終わるまで待つ
- G32 を続けて書くと、行の切れ目で止まらずに「平行ねじ → テーパねじ」のような連続したねじを削れる。G92・G76 では書けない形やウォームに使う。途中で F を変えない・M コードを挟まない(Siemens の ISO 方言)
- テーパねじのリードは長い方の軸の向きで指令する。傾きが 45° 以下なら Z 方向のリード(Siemens の ISO 方言。Haas は「2 つのリードのうち大きい方」)
- G32 はモーダル。終わったら G00 で切る。切り忘れると、次の「X だけの行」(逃げのつもり)もねじ切りの送りで動く
- 多条ねじの開始角 Q の小数点の付け方は、機種で正反対(Siemens の ISO 方言は Q180. と付ける、Haas は Q180000 と付けない)
例
G97 S600 M03 ; (回転数を一定に。G96 は使わない) G00 X25. Z5. ; (端面の 5 mm 手前=助走 δ1) X19.4 ; (1 回目の切込み) G32 Z-22. F1.5 ; (ねじ切り 1 回分。逃げ溝の中まで=δ2) G00 X25. ; (逃げ) Z5. ; (戻り) X18.9 ; (2 回目の切込み) G32 Z-22. ; (F は前の値が続く) G00 X25. ; Z5. ; X18.16 ; (仕上げ:谷径 ≒ 20 − 2×0.6134×1.5) G32 Z-22. ; G00 X25. ; Z5. ;
M20×1.5 の外径ねじ(G コード体系 A)をケズリバで書いた例です。説明のため切込みは 3 回だけにしています。実際は 1 回の切込みを少しずつ減らしながら 6〜10 回に分けます。
図解:G32(旋盤):ねじ切り 1 回分の動きと不完全ねじ部
図解:多条ねじの開始角 Q(端面から見たところ)
計算:ねじ切りの回転数の上限と、多条ねじの開始角 Q
回転数の上限 F ÷ L—min⁻¹
ピッチ(L ÷ n)—mm
| 何本目 | 開始角 | Siemens の ISO 方言(小数点を付ける) | Haas(0.001° 単位の整数) |
|---|
回転数の上限 R = 最大切削送り速度 ÷ リード(三菱電機の説明書の制約) 開始角 Q = 360 ×(k − 1)÷ n
主軸エンコーダの許容回転数・チャックの許容回転数でも頭打ちになります。低い方を使ってください。リードが大きいねじほど回転数を上げられません。開始角の書き方(小数点を付けるか、どの単位か)は機種で正反対なので、表の右 2 列を取り違えないでください。
検算例:F 5000 mm/min、L 1.5 mm → 3333 min⁻¹。L 3 mm(ピッチ 1.5 の 2 条)→ 1667 min⁻¹。2 条の 2 本目は 180°、3 条は 0°・120°・240°。
- NC 旋盤プログラム入門:溝とねじ(G04・G32・G92)
- 複合形ねじ切りサイクル G76(切込みの割り振りを NC が計算)
- G92(旋盤):4 つの動きをまとめた単一形のねじ切りサイクル
- 小数点の読み方(開始角 Q の小数点が機種で正反対な理由)
メーカー・機械による違い
同じコードでも、NC 装置や機械メーカーで書き方や割り当てが違うことがあります。必ずお使いの機械の取扱説明書で確かめてください。
「資料1件・参考」は 1 つの資料でしか確かめられなかった行、「CAM ポストの出力・参考」は CAM メーカーのポストプロセッサが出力する書き方で、NC メーカー自身の公開資料では確かめられなかった行です。
| 資料 | 機械 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|---|
| Siemens(ISO 方言) | 旋盤 | 番号 | G コード体系 A は G32、体系 B・C は G33 |
| 三菱電機 | 旋盤 | 番号 | G コード一覧 2・4・6 は G32、3・5・7 は G33 |
| Siemens(ネイティブ) | 旋盤 | 書き方 | G33 Z_ K_(K がリード)。多条ねじは SF=(開始角) |
| LinuxCNC | 旋盤 | 書き方 | G33 Z_ K_(K は主軸 1 回転あたりの移動量) |
| Haas | 旋盤 | 書き方 | Q は 0.001° 単位の整数で、小数点を付けない(180° は Q180000)。Q はモーダルでなく毎回書く。G99 が必要 |
| Siemens(ISO 方言) | 旋盤 | 書き方 | Q は度で、小数点を付けて書く(最小単位 0.001°。2 条ねじの 2 本目は Q180.) |
| 三菱電機 | 旋盤 | 書き方 | Q(開始角)は 0.001〜360.000° |
| Haas | 旋盤 | 補足 | シングルブロック停止とフィードホールドは、G32 の連続の最後の行まで遅れる。M23・M24(ねじの終わりの面取りの切り替え)は G32 には効かない |
| Siemens(ISO 方言) | 旋盤 | 補足 | 毎分送り(G94)のまま指令するとアラーム |
| 三菱電機 | 旋盤 | 補足 | 回転数 R は「1 ≤ R ≤ 最大切削送り速度 ÷ リード」で、さらに主軸エンコーダの許容回転数以下資料1件・参考 |
出典
このコードの意味は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。説明はケズリバの言葉で書いています。
- Siemens AG「SINUMERIK 802D sl/840D/840D sl/840Di/840Di sl/810D Programming Manual ISO Turning, 04.2007 Edition」 cache.industry.siemens.com
- 三菱電機(Mitsubishi Electric)「MITSUBISHI CNC 700/70 Series Programming Manual (Lathe System)(IB-1500057)」 mitsubishielectric.com
- Haas Automation, Inc.「G32 Thread Cutting (Group 01)(旋盤、コード別解説ページ)」 haascnc.com
- Siemens AG「SINUMERIK 840D sl/840D/840Di sl/810D Fundamentals, Programming Manual, Edition 08/2005(6FC5398-1BP10-0BA0)」 cache.industry.siemens.com
- LinuxCNC project「G-Codes(LinuxCNC Documentation)」 linuxcnc.org