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放電加工機の保全作業の安全
止めて・錠を掛けて・札を付ける。法令と規格が求めること。周期・設定値・油種は機械メーカーの取扱説明書が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例。危険物を加工液に使う放電加工機は市町村の火災予防条例の対象で、設置の届出や貯蔵量の扱いは管轄の消防署の指導に従うこと
⚠法令・規格が求めること
- 市町村の火災予防条例(放電加工機。火災予防条例(例)第10条の2)
危険物を加工液に使う放電加工機には、①液温が設定温度を超えたら自動で加工を止める装置、②液面が設定より下がったら自動で止める装置、③炭化生成物の成長などの異常を検出したら自動で止める装置、④加工液に着火したら自動で消火する装置を付ける
消防庁は 1991 年に火災予防条例準則へ放電加工機の基準を加えた。条番号は市町村で違う(例:船橋市・うるま市は第10条の2、広島市・福山市は第11条の2、札幌市は第14条の2)。水系の加工液を使う機械は対象外[1][2][3][4][5][6][7]
- 市町村の火災予防条例(放電加工機の管理)
引火点 70℃未満の加工液を使わない。吹きかけ加工など火災のおそれのある加工をしない。工具電極を確実に付けて異常な放電を防ぐ。必要な点検・整備をする
「火災のおそれのある加工」には、タンクが空のまま位置決めのために放電する空放電や、安全装置を外した加工も含まれる。点検では自動停止装置・自動消火装置が働くかを定期的に確かめ、結果を記録しておく[3][4][5][7][2]
- 火災予防条例の運用基準(液温・液面の設定値)
液温で加工を止める設定温度は 60℃以下。液面の設定は、加工物の上面から液面まで 50 mm 以上
危険物保安技術協会の基準も最高許容液温を 60℃以下としている。地震による液面の揺れで液面が下がった場合も含めて止まる構造が求められている[4][3][5][7][2]
- 火災予防条例(火花を生ずる設備の基準の準用)
壁・天井・床の機械に面する部分を準不燃材料で仕上げた室に置く。可燃性の蒸気を除く換気装置を付ける。室内を整理・清掃し、火気を使わない
危険物保安技術協会のマニュアル記載事項にも、暖房器・溶接機・グラインダなど着火源になる設備を作業場の周りに置かないことが挙がっている[3][2]
- 消防法 第10条・第11条の4、危険物の規制に関する政令 別表第三
放電加工油の多くは第4類 第3石油類(指定数量 2,000 L)。指定数量以上は許可を受けた施設でしか扱えない。指定数量の 1/5 以上 1 未満は少量危険物として市町村条例の基準と届出の対象
放電加工機で扱う危険物の量は加工液タンクの容量で考える。量が 1/5 未満でも、放電加工機そのものの条例の基準はかかる[8][9][10][11][3]
- 火災予防条例(火を使用する設備等の設置の届出)
危険物を加工液に使う放電加工機を設けるときは、管轄の消防署に設置の届出をする
- 火災予防条例(消火器の設置)
政令で消火器が要らない建物に放電加工機を置く場合でも、消火器を設ける
札幌市の解説では、放電加工機に至る各部分から歩行距離 20 m 以下、加工液に合う消火剤、能力単位 1 以上としている[3](資料1件・参考)
- 危険物保安技術協会の放電加工機型式試験確認
条例の構造基準を含む安全確認の試験に合格した機械には「放電加工機型式試験確認済証」が貼られる
消防の運用基準は、構造の確認にこの確認済証を活用するのが適切としている。機械を買うとき・移設するときに確かめる[4][3][5][6][2]
- 放電加工機の火災予防に関する基準(自動消火装置の構造)
自動消火装置は、加工液に着火したら自動で火災を感知し、加工を止め、警報を出し、消火する。手動でも放射できる
消火薬剤の量は加工槽の液面の広さ(最大防護面積)に応じて決まる。装置には薬剤の種類と量、最大防護面積、放射時間、感知部の種類と作動温度などが表示される[2][3]
- 労働安全衛生規則 第107条(掃除等の場合の運転停止等)
機械の掃除・給油・検査・修理・調整で危険があるときは運転を止め、起動装置に錠を掛け、表示板を付けるなどしてほかの人が動かせないようにする
ガイドの清掃、給電子の位置替え、フィルタ・樹脂の交換、加工槽の掃除などの保全作業に当てはまる。牧野も機械を長く止めるときは電源を切って錠をかけるよう勧めている[13][14]
- 感電の防止(放電加工機の電極側に触れない)
放電中は、ワイヤ・電極・ローラなど電極側の部分に体を触れない
新潟大学の実習テキストは、ふつうの状態で 50 V、手足が濡れていれば 20 V で危険になりうるとし、電極側(アース側の反対)に絶対に触れないよう教えている。設計側の安全要求は JIS B 6032 が扱う[15][16]
- 形彫りの吸引加工でのガス
吸引で液処理をするとき、ガスが残ると引火・爆発のおそれがある
吸引する位置と力に注意する[17](資料1件・参考)
- 放電加工油の安全データ(製品資料の注意書き)
保護手袋・保護眼鏡などを着ける。飲み込んで気道に入ると生命に危険のおそれがある。皮膚に付いたら石けんと水でよく洗う
- 黒鉛の安全データシート(電極を削るときの粉じん)
黒鉛の粉じんが出る場所では局所排気装置か全体換気装置を使う。粉が空気中に一定量以上浮かぶと粉じん爆発のおそれがある
ACGIH の許容濃度(TLV-TWA)は黒鉛で 2 mg/m³。グラファイト電極をマシニングセンタなどで加工するときに当てはまる[21](資料1件・参考)
- JIS B 6032:2025(工作機械-安全性-放電加工機)
機械の設計者・製造業者向けの安全規格で、製造業者が使用者に渡す情報(取扱説明書の内容など)も決めている
2025 年の改正で ISO 28881:2022 に合わせつつ、日本の火災予防条例などに合うよう内容を変えている。リスクアセスメントの事例は TR B 0035 にある[22][16][23](資料1件・参考)
条文は要点をケズリバの言葉でまとめたものです。正確な文言は e-Gov 法令検索の原文で確かめてください。
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- 総務省消防庁「消防予第198号(平成3年9月30日)火災予防条例準則の一部改正について(放電加工機の基準の新設)」
- 危険物保安技術協会「放電加工機に係る試験確認基準の見直しに関する検討報告書(平成28年3月)」
- 札幌市消防局「札幌市火災予防条例 第14条の2(放電加工機)の趣旨と解説」
- 船橋市消防局「第16 放電加工機(条例第10条の2)の運用」
- 広島市消防局「広島市火災予防条例 第11条の2(放電加工機)の解説」
- 福山市(福山地区消防組合)「火災予防条例 第11条の2(放電加工機)の解釈及び運用」
- うるま市消防本部「消防同意・消防用設備等設置審査基準 第16 放電加工機(条例第10条の2)」
- 総務省消防庁「消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第11条の4・別表第一 備考 e-Gov 法令検索」
- 総務省消防庁「危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)別表第三(指定数量) e-Gov 法令検索」
- ENEOS「商品紹介 IND-6005-2405 メタルワーク S(放電加工専門油)」
- 危険物保安技術協会「Safety & Tomorrow No.148(2013)危険物関係用語の解説(第23回)放電加工機」
- ソディック「よくあるご質問(サプライ品):ワイヤガイド・フィルタ・イオン交換樹脂・パイプ電極・加工液」
- 厚生労働省「労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第107条 e-Gov 法令検索」
- Makino Inc.(牧野フライス製作所の米国法人)「Machine layup suggestions(2020年3月23日。機械を長く止めるときの勧め。形彫り・ワイヤ放電加工機を含む)」
- 新潟大学「工学部 機械実習テキスト 第5章 放電加工(ワイヤ放電加工の注意事項・感電)」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6032:2025 プレビュー(目次・序文・適用範囲)」
- ソディック「よくあるご質問(ワイヤ放電加工・形彫り放電加工)」
- ENEOS「商品紹介 IND-6019-2405 メタルワーク EDF-K2(三菱電機放電加工機推奨加工油)」
- 出光興産「潤滑油製品資料 ダフニー マーグプラス ED5-MF(高引火点放電加工油)」
- 出光興産「潤滑油製品資料 ダフニー カット HL-25(放電加工油)」
- 産業技術総合研究所「化学物質等安全データシート 熱拡散率測定用等方性黒鉛 NMIJ CRM 5804-a」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6032:2025 工作機械-安全性-放電加工機(書誌)」
- 日本規格協会(JSA)「TR B 0035:2019 工作機械―放電加工機のリスクアセスメントの実用的ガイダンス及び事例(書誌)」