5-AXIS NC SIMULATOR5軸 NC シミュレータ
回転軸(A・B・C)を含む 5 軸の NC プログラムをブラウザの中で動かし、削れた形を 3D で確かめられます。工具先端点制御(G43.4・G43.5)、傾斜面加工(G68.2・G53.1)、カスタムマクロ B まで FANUC 系の書き方で読みます。素材は 3D の格子で持つので、横穴や、上からは見えないアンダーカットもそのまま削れます。登録もインストールも要りません。
TCP を外すと
先端が
ふくらむよ。

自由に試す
最初のプログラムは、同じボールエンドミルを工具先端点制御あり(G43.4)となし(G43)で 30° 傾けます。X-15 では先端が止まったまま工具だけが傾き、X15 では先端が大きな弧を描いて上面をえぐります。「機械基準で見る」を押すと、テーブルが実際にどう傾くかが分かります。機械の構成を切り替えると、A 軸で書いたプログラムがヘッド形の機械では動かない(エラーになる)ことも確かめられます。
回転の向き(符号)や C 軸の 0 の位置、回転中心の位置は機械によって違います。ここでは考え方を見るための仮の値です。
このシミュレータで読める指令
| 指令 | 意味 | ここでの扱い |
|---|---|---|
| G43.4 H_ | 工具先端点制御(タイプ 1)。X・Y・Z を工具の先端の位置、A・B・C を回転軸の角度で書く | 先端はワーク座標の直線で動き、角度は 1 ブロックの中で均等に変わる |
| G43.5 H_ I_ J_ K_ | 工具先端点制御(タイプ 2)。工具の向きをベクトル I・J・K で書き、回転軸の角度は NC が機械の構成から求める | I・J・K は 3 つとも書く。角度の 2 つの解のうち、今の角度に近い方を選ぶ |
| G49 | 工具長補正と工具先端点制御の取消し | 取消し後の X・Y・Z は機械の直線軸の位置として読む |
| G68.2 X_ Y_ Z_ I_ J_ K_ | 傾斜面の座標(特徴座標系)を決める。X・Y・Z は原点、I・J・K はオイラー角(Z → 新しい X → 新しい Z の順に回す) | オイラー角の書き方だけ。ロール・ピッチ・ヨー角や 3 点・2 ベクトルの指定は読まない |
| G53.1 | 工具を傾斜面に垂直に向ける(回転軸の割出し) | 直線軸は止めたまま回転軸だけ動かす。工具が素材の近くにあれば注意を出す |
| G69 | 傾斜面の取消し | 取消し後はふつうのワーク座標に戻る |
| A・B・C | 回転軸。テーブル・テーブル形は A(X まわり)と C(Z まわり)、ヘッド・テーブル形とヘッド・ヘッド形は B(Y まわり)と C | 機械に無い軸を書くとエラー。傾ける軸の範囲は ±120°、C は何回転でもよい |
| G41・G42・G73〜G89・#・WHILE | 工具径補正・固定サイクル・カスタムマクロ B は 3 軸と同じ | 傾斜面の中では面の座標で動く。傾けた工具の 3 次元工具径補正は扱わない |
同じ働きの機能は、NC メーカーごとに名前と書き方が違います。このシミュレータが読むのは FANUC 系の書き方だけです。
| NC | 工具先端点制御 | 傾斜面加工 |
|---|---|---|
| Siemens SINUMERIK | TRAORI | CYCLE800 |
| Heidenhain TNC | M128 / FUNCTION TCPM | PLANE SPATIAL ほか |
| Haas | G234(TCPC) | G268 |
| 三菱電機 | G43.4 / G43.5 | 傾斜面加工指令 |
G コードの番号や使えるかどうかは、NC の機種と機械メーカーの設定(オプション)で変わります。実機では必ず取扱説明書で確かめてください。
練習問題
13+2:45° の傾斜面と、面に垂直な穴
素材の +Y 側の上の角を 45° に削り落とし、その面の真ん中に、面に垂直な φ6・深さ 12 mm の穴をあけます。G68.2 で座標を傾け、G53.1 で工具を面に垂直に向ければ、あとは 3 軸と同じ書き方です。
ヒント
G68.2 X0 Y15. Z0 I0 J-45. K0 で、原点を斜面の上の辺に、Z を斜面の外向きに置けます。斜面の幅は Y' で 0〜21.2 mm、穴の中心は Y' 10.607 です。
O5001 (3+2 KEISHAMEN TO ANA) G21 G90 G17 G40 G49 G80 G69 G54 G00 A0 C0 T1 M06 (FLAT D12) S5000 M03 M08 G68.2 X0 Y15. Z0 I0 J-45. K0 G53.1 G43 H1 Z50. #1 = 7. WHILE [#1 GE 0] DO1 G00 X-40. Y2. Z[#1 + 5.] G01 Z#1 F600 X40. F1200 Y10. X-40. Y18. X40. G00 Z[#1 + 5.] #1 = #1 - 3.5 END1 G00 Z50. M05 M09 G69 G49 G00 Z100. A0 C0 T2 M06 (DRILL D6) S2000 M03 M08 G68.2 X0 Y15. Z0 I0 J-45. K0 G53.1 G43 H2 Z50. G00 X0 Y10.607 G98 G81 Z-12. R3. F150 G80 G00 Z50. M05 M09 G69 G49 G00 Z100. A0 C0 M30
23+2:側面の横穴と溝(真上からは見えない形)
+Y の側面の真ん中(Z-20)に φ8・深さ 15 mm の横穴、-X の側面に幅 10・深さ 5・長さ 30 mm の溝を入れます。上から見た高さで削り方を表す方式では描けない形ですが、ここでは横向きの穴もそのまま削れます。「断面」で中を見てみましょう。
ヒント
-X の側面は G68.2 X-30. Y0 Z-20. I90. J-90. K0。I(最初の Z まわりの回転)で向きを回すと、Z' が -X を向きます。このとき X' はワークの +Y、Y' はワークの -Z です。
O5002 (3+2 SOKUMEN NO ANA TO MIZO) G21 G90 G17 G40 G49 G80 G69 G54 G00 A0 C0 T1 M06 (FLAT D10) S6000 M03 M08 (-X NO SOKUMEN : Z' GA -X MUKI) G68.2 X-30. Y0 Z-20. I90. J-90. K0 G53.1 G43 H1 Z50. G00 X-15. Y0 Z3. G01 Z-2.5 F200 X15. F800 Z-5. F200 X-15. F800 G00 Z50. M05 M09 G69 G49 G00 Z100. A0 C0 T2 M06 (DRILL D8) S1600 M03 M08 (+Y NO SOKUMEN) G68.2 X0 Y30. Z-20. I0 J-90. K0 G53.1 G43 H2 Z50. G00 X0 Y0 G98 G83 Z-15. R3. Q5. F160 G80 G00 Z50. M05 M09 G69 G49 G00 Z100. A0 C0 M30
3同時 5 軸:抜き勾配 10° の側面をスワーフ加工
円柱の素材(φ56)を、底の直径 50・抜き勾配 10° の円すい台に仕上げます(深さ 20 mm)。工具の側面を壁に沿わせるので、工具の向きを I・J・K で指令する G43.5 を使い、5° ごとに先端の位置と向きを変えながら一周します。底の隅(Z-20〜-17.6)は採点しません。
ヒント
壁の外向きの法線は(cos10°・cosφ, cos10°・sinφ, sin10°)、工具の向きは(−sin10°・cosφ, −sin10°・sinφ, cos10°)。先端の中心は、壁の下の端から法線の向きに工具の半径だけ離した所です。
O5003 (DOUJI 5JIKU SWARF) G21 G90 G17 G40 G49 G80 G69 G54 G00 A0 C0 T1 M06 (FLAT D10) S6000 M03 M08 #1 = 10. (KOUBAI) #2 = 5. (KOUGU NO HANKEI) #3 = 25. (SOKO NO HANKEI) #4 = -20. (SOKO NO Z) #10 = #3 + #2 * COS[#1] #11 = #4 + #2 * SIN[#1] G43.5 H1 X[#10 + 20.] Y0 Z50. I[-SIN[#1]] J0 K[COS[#1]] G00 Z#11 G01 X#10 F400 #5 = 5. WHILE [#5 LE 360.] DO1 X[#10 * COS[#5]] Y[#10 * SIN[#5]] I[-SIN[#1] * COS[#5]] J[-SIN[#1] * SIN[#5]] K[COS[#1]] F800 #5 = #5 + 5. END1 G01 X[#10 + 20.] F800 G00 Z50. G49 M05 M09 G00 A0 C0 M30
4アンダーカット:15° のあり溝を傾けた工具で
上の幅 16・深さ 10 mm で、壁が 15° 内側に倒れたあり溝(ダブテール)を X 方向に通します。壁が上にかぶさるアンダーカットなので、まっすぐの工具では削れません。φ12 で中央を溝にしてから、φ6 を A 軸で ±15° 傾け、工具の側面で左右の壁を削ります。底の隅は採点しません。
ヒント
右の壁は A-15.、左の壁は A15.(C0)。工具の先端の中心は Y±7.366・Z-9.224。降ろすのも上げるのも素材の外(X±40)で行えば、かぶさった壁を削り込みません。
O5004 (ARIMIZO 15DO) G21 G90 G17 G40 G49 G80 G69 G54 G00 A0 C0 T1 M06 (FLAT D12) S5000 M03 M08 G43 H1 Z50. G00 X-40. Y0 Z2. G01 Z-5. F300 X40. F800 Z-10. F300 X-40. F800 G00 Z50. M05 M09 G49 T2 M06 (FLAT D6) S8000 M03 M08 (MIGI NO KABE : A-15) G43.4 H2 X-40. Y7.366 Z50. A-15. C0 G00 Z-9.224 G01 X40. F600 G00 Z50. (HIDARI NO KABE : A15) G00 Y-7.366 A15. Z-9.224 G01 X-40. F600 G00 Z50. G49 M05 M09 G00 A0 C0 M30
5 軸のプログラムを書くときのポイント
- 3+2 は「G68.2 → G53.1 → G43」の順。傾斜面を決める前に工具長補正(G49)を取り消し、工具を素材から離してから G53.1 で回転軸を割り出します。G53.1 で回るのは回転軸なので、素材のすぐ上で指令すると工具が素材に当たります。CAM の汎用ポストプロセッサも、退避 → 補正の取消し → G68.2 → G53.1 の順に出力します。
- 機械に依存しない書き方を選ぶ。G68.2 と G43.5 は工具の向きで書くので、同じプログラムが別の構成の機械でも動きます(練習 1 と 3 は、自由に試す欄でヘッド形に切り替えても同じ形に削れます)。A・C を直接書く G43.4 は、その機械の構成と回転の向きに合わせたプログラムになります。
- アンダーカットは逃がし方に注意。傾けた工具をそのまま真上(Z)に上げると、かぶさった壁を削り込みます。素材の外で上げ下げするか、工具の軸の向きに逃がします。断面で見ると、どこで削り込んだかがすぐ分かります。
- 垂直の近くで向きを変えない。工具がほぼ垂直のまま向きを少し変えると、C 軸が一気に大きく回り(特異点)、送りが落ちたり面に跡が残ったりします。シミュレータは C 軸が 1 ブロックで 30° を超えて回ると注意を出します。
- TCP なしで回転軸を動かさない。工具先端点制御がないと、回転軸が回っても直線軸は追いかけません。先端は回転中心のまわりに弧を描くので、回転は素材から離れた安全な高さで行います。
このシミュレータの決まりと限界
- 素材は 0.5 mm 間隔の 3D 格子(各点に表面までの距離を持つ)で表します。0.5 mm より細かい形はなまって見えます。採点は図面から 0.15 mm より外れた所を数え、0.25 mm 以上外れると不合格です。
- 当たりを調べるのは、工具・シャンク・ホルダと素材の間だけです。治具・テーブル・主軸頭・機械の本体との干渉は見ていません。
- 回転の向き、0 の位置、動く範囲(±120°)、回転中心(テーブル上面のおよそ 80 mm 下)、主軸頭の回転中心から工具の先端までの長さ(150 mm)は仮の値です。G53.1 で直線軸がどう動くか、G43.5 で 2 つの解のどちらを選ぶか、回転軸を含む送り速度の計算は、実機では NC のパラメータで変わります。
- 逆時間送り(G93)、3 次元工具径補正、オイラー角以外の傾斜面の決め方、インチ(G20)は使えません。
- 実機で削る前には、機械メーカーや CAM の干渉チェックのできるシミュレーションと、空運転・シングルブロックで必ず確かめてください。このページは書き方と動き方を学ぶためのものです。
よくある質問
- 5 軸の NC プログラムを無料でシミュレーションできますか?
- はい。このページのシミュレータはブラウザだけで動き、登録もインストールも要りません。プログラムを貼り付けて「実行」を押すと、工具の動きと削れた形が 3D で出て、TCP なしのずれ・特異点・早送りやホルダの当たりなどを行番号つきで知らせます。書いたプログラムはリンクにして共有できます。
- G43.4 と G43.5 の違いは何ですか?
- どちらも工具先端点制御で、X・Y・Z を工具の先端の位置として扱います。G43.4(タイプ 1)は工具の向きを回転軸の角度(A・C や B・C)で書き、G43.5(タイプ 2)は向きをベクトル I・J・K で書いて角度は NC に求めさせます。G43.5 は機械の構成に依存しにくい一方、角度の 2 つの解のどちらを使うかは NC 任せになります。
- G68.2 の I・J・K は何を表しますか?
- 傾斜面の向きを表すオイラー角です。座標を Z まわりに I 度、その新しい X まわりに J 度、さらに新しい Z まわりに K 度回します。たとえば G68.2 X0 Y15. Z0 I0 J-45. K0 は、原点を Y15 に置き、X まわりに -45° 傾けた面(法線が +Y・+Z の間を向く 45° の面)になります。
- 3 軸のシミュレータで見えないアンダーカットや横穴も確かめられますか?
- 確かめられます。多くの 3 軸のシミュレータは「上から見た高さ」で削れ方を表すので、横向きの穴やかぶさった壁は描けません。このシミュレータは素材を 3D の格子で持つので、どの向きから削ってもそのまま残ります。「断面」ボタンで X=0 や Y=0 で切って、中の形を見られます。
関連ページ
出典
指令の名前と働きは、NC メーカー・機械メーカーの公開資料と、CAM メーカーの FANUC 用ポストプロセッサの出力で確かめました。マニュアルの文章や例題は写していません。
- FANUC America Corporation「5-Axis Machining — CNC systems for high-performance machine tools(MBA-025-EN_03_1308, 2013)」
- Fuji Technology Press(著者:須藤雅子、ファナック株式会社)「Development Report: Advanced Control Technologies for 5-Axis Machining, Int. J. of Automation Technology Vol.1 No.2, pp.108-112, 2007(DOI 10.20965/ijat.2007.p0108、CC BY-ND 4.0)」
- ファナック株式会社「FANUC Series 30i/31i/32i-MODEL B Plus カタログ(英語版 FS30i-BPlus(E)-01)」
- Autodesk「FANUC generic post processor(fanuc.cps、Fusion のポストライブラリ。CAM メーカーの出力で、FANUC 自身の資料ではない)」
- 三菱電機株式会社「NC Specification Selection Guide M800V/M80V/E80/C80 Series(BNP-A1244 ENG D)」
- Siemens AG「Milling with SINUMERIK — 5-axis machining Manual, Edition 05/2009(DocOrderNo. 6FC5095-0AB10-0BP1)」
- DR. JOHANNES HEIDENHAIN GmbH「TNC 640 User's Manual Conversational Programming, NC Software 340590-01 / 340591-01 / 340594-01, 4/2012(892903-20)」
- Haas Automation, Inc.「G234 Tool Center Point Control (TCPC)(G-code 解説ページ)」