金属加工の会社が米国で航空機部品の加工に参入するには:入口・AS9100D と IA9100・FAA Part 21・初回品検査・Nadcap・輸出管理・ハードル
FAA は部品屋を直接は承認しない。AS9100D と記録で信頼を取ろう


米国の航空宇宙・防衛産業の売上は 2025 年に 9,886 億ドルで、そのおよそ半分は国内のサプライチェーンで生まれています。航空機の生産はコロナで大きく落ちたあと戻ってきましたが、FAA は部品の供給の制約が機体の納入を抑えているとみています。とはいえ航空機は、自動車や一般機械とは「品質の証明のしかた」がまるで違う世界です。この記事では、Tier 2・3 と特殊工程・MRO の入口、AS9100D の取り方と IA9100 への移行、FAA の規則が部品の会社に求めること、初回品検査(AS9102)、Nadcap、ITAR・EAR と防衛向けの追加の要求、MEP センターや州の支援、現実のハードルを、AIA・BLS・FAA・IAQG・PRI などの公開資料と連邦規則の本文をもとに順番にまとめました(2026 年 10 月時点)。
いま米国の航空機部品に目を向ける理由
米国航空宇宙工業会(AIA)が 2026 年 6 月に出した Facts & Figures によると、米国の航空宇宙・防衛産業の 2025 年の売上は 9,886 億ドルで、うち直接の生産が 5,060 億ドル、国内のサプライチェーンでの活動が約 4,830 億ドルです。輸出は 1,727 億ドル(前年比 25%増)、業界が支える雇用は約 210 万人で、そのうち 110 万人がサプライチェーンの仕事です[1]。数字は民間機と防衛を合わせた業界団体の集計です。
製造の現場に近い統計では、米国労働統計局(BLS)の産業別生産性統計が、航空宇宙製品・部品製造(NAICS 3364)の産出額と雇用を毎年出しています。産出額(名目)は 2018 年の 2,184 億ドルから 2021 年の 1,584 億ドルへ約 27%落ち、2025 年は 2,141 億ドルまで戻りました。雇用は 2021 年の 48.3 万人を底に、2025 年は 57.6 万人です[2][3]。
需要の先行きについて、FAA の 2026〜2046 年度の予測は、米国の航空会社の国内旅客が今後 20 年で年平均 2.4%伸びるとし、その一方で機体メーカーの納入を抑えているサプライチェーンの制約が今後数年続きうる要因だとしています[5]。商務省の SelectUSA は、米国のサプライチェーンの強みとして MRO(整備・修理・オーバーホール)・複合材・金属加工・アビオニクス・試験装置・コーティングを挙げています[4]。
通商面では、商務省が 2025 年 5 月に民間航空機・エンジン・部品の輸入について通商拡大法 232 条の調査を始め[6]、2026 年 7 月 9 日の大統領布告 11040 は、輸入が安全保障を損なうおそれがあるとしつつ、すぐには関税をかけず貿易相手との交渉を進めると決めました。交渉が不調なら関税などの追加措置もありうるとしています[7]。国内の部品の作り手にとっては追い風になりうる一方、先行きは確定していません。
どこから入るか:Tier 2・3、特殊工程、MRO・PMA
| 入口 | どんな形か | 必要なもの | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| A 下請け加工 (いちばん多い) | Tier 1・2 の協力会社になり、図面どおりの部品・工程を納める | 取引先の監査(品質・設備・財務)。多くは AS9100D を条件にする | 切削・研削・板金など特定の工程に強く、記録の管理ができる会社 |
| B 特殊工程 | 熱処理・化学処理・非破壊検査・溶接・ショットピーニングなどを受託する | AS9100D(または Nadcap の品質システム監査)と、工程ごとの Nadcap 認定[35] | 処理設備を持ち、工程の記録と試験を回せる会社 |
| C MRO・PMA | 修理事業者(リペアステーション)や、交換部品の承認(PMA)を持つ会社の下で、修理用・交換用の部品を加工する | 相手の品質システム(FAA の規則で決まる)に沿った管理。自社で PMA を取るのは別の大きな話 | 多品種少量の旋削・フライス、リバースエンジニアリングに強い会社 |
| きっかけ | MEP センター、州の経済開発の窓口、業界の展示会・調達説明会 | 自社の強みを 1 枚で言える資料 | どの会社も最初の一歩に |
入口 C の「PMA」は FAA の生産承認の一つで、交換部品・改造部品の設計と生産をあわせた承認です。型式証明を持つ航空機に付ける部品を作って売ることを認めるもので、承認済みの部品は FAA のデータベース(DRS)で調べられます[8][9]。PMA を取るには、図面・材料・工程と、耐空性を示す試験と計算(または元の設計と同一であることの証明)を出し、FAA 規則 21.137 と同じ品質システムを持つ必要があります[10]。まずは PMA を持つ会社の供給者になるのが現実的です。
防衛の仕事との関係米国では航空宇宙と防衛が同じ業界にまとまっていて、AIA の数字も両方を含みます[1]。品質の仕組み(AS9100D・AS9102)は共通ですが、軍用機の部品を作ると ITAR の登録やサイバーセキュリティ(CMMC)、特殊金属の調達制限が加わります(後の節)。
まず AS9100D:取り方・お金・IA9100 への移行
航空・宇宙・防衛の品質マネジメント規格「9100」は、ISO 9001 に業界の要求を足したもので、米国では SAE が AS9100D(2016 年 9 月 20 日改訂)として出しています。中身は欧州の EN 9100、日本の JIS Q 9100 と同じです[14][15]。2025 年には世界で 9100 の初回認証が 1,792 件、再認証が 5,301 件出ました[16]。
- ISO 9001 の仕組みを固める:手順書・記録・校正・不適合の処置・内部監査が回っていれば、AS9100D はその上に積み増す形で作れます。
- 追加要求を仕組みに入れて運用する:構成管理、特殊工程の管理、キー特性、偽造品の防止、外部提供者の管理、納期と品質の実績などです。PRI は、仕組みを 6 か月ほど運用してから審査を受けることを勧めています[24]。
- OASIS にアカウントを作り、認証機関を選ぶ:IAQG の手順では、組織は IAQG のデータベース OASIS に利用者アカウントを作り、IAQG の認証制度に参加する認定済みの認証機関(一覧は OASIS にある)から見積りを取って契約します。審査は ISO/IEC 17021-1・9104/1・9101 に沿って行われます[20]。米国の認定機関 ANAB は、AS9100 の認証機関を認定する機関として IAQG に認められています[21]。
- 証明書が OASIS に載る:顧客は OASIS で証明書と審査の結果を確かめられ、不適合への回答も OASIS で行います[20]。
- 3 年ごとに再認証:3 年の周期の中で毎年サーベイランス審査があります[24]。
| 費用の項目 | 金額(公開されているもの) |
|---|---|
| 認証機関の審査料 | 審査の日数(会社の規模や拠点の数で決まる)で変わり、公的な目安はない → 複数の認証機関に見積りを取る |
| OASIS の証明書の料金 | 初回認証・再認証の証明書ごとに 700 ドル、拠点の追加などの変更は 300 ドル。請求は認証機関に出る[22] |
| IAQG のデジタル関連の料金 | 2025 年 5 月 15 日以降に始まる初回・再認証・サーベイランス審査ごとに 250 ドル。認証機関から認証を受けた会社に転嫁される想定[23] |
AS9100D は「IA9100」に変わる次の改訂版は IAQG の新しい番号の付け方で IA9100 という名前になります[18]。土台の ISO 9001:2026 は 2026 年 9 月 16 日に発行され[19]、IAQG が 2026 年 4 月に公開した年次報告は、9100 の改訂版の発行を2027 年第 1 四半期の予定としています[16]。移行の期限は、2026 年 10 月時点で IAQG のニュースに正式な発表が見当たりません[17]。発行されても今の認証がすぐ無効になるわけではなく、移行期間の中で通常の審査に合わせて切り替えるのが普通なので、これから取る会社は今の AS9100D で進めてかまいません。
FAA の規則:部品の会社に承認は要るか
航空機の部品の品質に法律上の責任を負うのは、FAA から生産承認を受けた会社(機体・エンジンメーカー、PMA 保持者など)です。生産承認には生産証明(PC)・PMA・TSO 承認の 3 種類があります[8]。FAA 規則 14 CFR 21.137 は、保持者の品質システムに、供給者が出す製品・部品・サービスが保持者の要求に合っていることを確かめる手順と、出荷後に不適合が見つかったときに供給者から報告させる手順を含めるよう求めています[12]。
- FAA は供給者を承認しない:FAA の通達 AC 21-43A は「FAA は供給者を承認しない」と書いたうえで、保持者と供給者の両方の工場で供給者管理を監視することがあるとしています[13]。
- 責任は委ねられない:保持者は下位の供給者を含めて要求を流し込み、その順守に責任を負い、生産承認の責任を供給者に委ねることはできません[13]。だから監査が厳しく、購買条件が細かいのです。
- 直送は許可があるときだけ:供給者から顧客へ直接出荷する「直送」は、保持者が認めた場合に限られます。業界の指針は SAE ARP9114 です[13]。
- 記録の保管:保持者は品質記録を少なくとも 5 年、重要部品は 10 年残す義務があります[12]。下請けの検査記録や材料証明もその一部になり、顧客によってはさらに長い保管を求めます。
- 勝手に交換部品として売れない:型式証明のある機体に付く交換部品は、生産承認の下で作るか、規格品(ボルト・ナットなど)、修理事業者が修理で使うために作るもの、などでなければ作れず、それ以外を「取り付けてよい部品」として売ることもできません[11]。
「同じ図面で余分に作って売る」は禁止顧客の図面で作った部品を、顧客の指示なしに余分に作って第三者に売ると、生産承認の下で作った部品になりません。交換部品として自社で売りたいなら、PMA を取るのが正規の道です[11][9]。
初回品検査(AS9102)と、取引先が指定する規格
航空機部品の仕事でいちばん手間がかかるのが初回品検査(FAI:First Article Inspection)です。寸法を測るだけでなく、「決めた工程・材料・治工具で図面どおりの品物が作れる」ことを全特性について確かめ、決まった様式で記録します。規格は 9102 で、米国では 2023 年の改訂版 AS9102C が最新です。様式は 3 つあります[25]。
| 様式 | 書くこと(主なもの) |
|---|---|
| 様式 1:部品番号の証明 | 部品番号・図面の改訂・製造指示書の番号、全数 FAI か部分 FAI か、組立品なら子部品の一覧、検証者と承認者 |
| 様式 2:材料・特殊工程・機能試験 | 材料・工程の規格番号、供給者(承認された業者か)、適合証明書(CoC)の番号、機能試験の結果 |
| 様式 3:特性の検証 | 図面の全特性に番号(バルーン)を振り、要求値と実測値、使った測定具、不適合の記録番号 |
NC プログラムを直したら FAI設計の変更、製造元・工程・検査方法・治工具・材料・製造場所の変更だけでなく、NC プログラムを変えたり別の媒体に変換したりしたときも、影響する特性の FAI をやり直します[26]。2 年以上生産が途切れたときも、休止の影響を受けうる特性の FAI が必要です[27]。「機械を替えたら速く削れるようになった」も、顧客への届け出と FAI が先です。
| 規格 | 中身 | いつ要るか |
|---|---|---|
| AS9145 | 航空宇宙版の APQP(先行製品品質計画)と PPAP(生産部品承認)。顧客の需要レートで要求を満たす品物を作り続けられるかを確かめる[28] | 新規部品の立ち上げで顧客が指定したとき |
| AS9103 | キー特性のばらつき管理[29] | 図面や注文でキー特性が指定されたとき |
| AS13100 | エンジン向けに 9100・9145 などへ上乗せする要求。2025 年 4 月に Rev.A に改訂[30] | エンジン部品で注文書に指定されたとき |
| AS9146 | 異物(FOD)の防止。切りくず・工具・ウエスを製品に残さない仕組み[31] | 契約で流されるとき |
| AS6174 | 資材全般の偽造品対策(材料のトレーサビリティ・試験)。2026 年 2 月に Rev.B[32] | 材料の調達で求められたとき |
Nadcap と特殊工程:切削だけの会社は要るのか
Nadcap は、大手の航空宇宙メーカーが 1990 年に始めた重要工程(特殊工程)の業界認定で、非営利団体 PRI(Performance Review Institute)が運営しています。対象の工程は 24 分野、認定を受けたサプライヤーは 4,500 社以上、参加する OEM は 60 社以上です[33]。それまでは同じ工程について OEM ごとに 3〜4 回の監査を受けることもあり、それを 1 回にまとめるために作られました[33]。
| 分野の例 | 金属加工の会社との関わり |
|---|---|
| 熱処理・化学処理(めっき・陽極酸化)・非破壊検査・溶接・表面強化(ショットピーニング)・コーティング | 自社に工程があれば取得の対象。無ければ、認定を持つ外注先を選ぶ |
| 非在来型加工(放電加工など) | ワイヤ放電・形彫り放電を航空部品に使うなら対象になりうる |
| 特殊工程としての在来型機械加工(監査基準 AC7126) | 穴あけ・ブローチ・旋削・フライス・研削・エッジ処理を、顧客が特殊工程に指定した場合に審査される。普通の切削が一律に対象になるわけではない |
| 測定・検査、材料試験、複合材、積層造形など | 扱う工程・顧客によって |
Nadcap の分野は PRI の一覧による[34][33]。
- 前提:品質システムとして AS9100 を使うか、Nadcap の品質システム監査(AC7004)を受けます[35]。
- 期間:初めての認定はおよそ 6〜12 か月(準備 2〜4 か月、現地監査 2〜5 日、指摘(NCR)の是正 1〜3 か月など)。監査は日程を申し込んでから 3〜6 か月後が多く、その後は通常 12〜24 か月ごとに再認定の監査を受けます[35]。
- 費用:公開の料金表はなく、PRI のシステムで監査範囲ごとに見積もりを取ります[35]。初めての会社向けに、Supplier Support Committee が無料のメンタリングを用意しています[35]。
- 顧客の承認とは別:Nadcap の認定がそのまま顧客の承認になるわけではなく、顧客の承認手続きの一部として使われます。航空の顧客がまだいなくても受けられます[24]。
- 効果:PRI の調査では、認定を受けたサプライヤーは顧客の監査が平均 40% 減り、85% が品質の改善を感じています(運営者自身の調査)[36]。
切削の会社がまずやること熱処理・表面処理・非破壊検査を外に出すなら、顧客が承認した(Nadcap などを持つ)外注先だけを使い、注文書で顧客の要求を流し、外注先の証明書を FAI の様式 2 に書けるようにします。近くに認定を持つ処理会社が少ないと、遠くまで運ぶ分だけ納期と物流費がかさむので、見積りの前に外注先の候補を確かめておきます。
輸出管理と、防衛向けに加わる要求
米国の中だけで売る部品でも、輸出管理は関係します。技術データを社内の外国籍の人に見せることも「輸出」になるからです。
- みなし輸出(EAR):米国内で外国人に規制対象の技術を渡すことは、その人の直近の国籍(または永住権)の国への輸出とみなされます[40]。民間機の部品の多くは規制の弱い ECCN 9A991(反テロ目的の規制だけ)に入りますが、エンジンの高温部(ブレード・ベーン・燃焼器など)の開発・製造の技術は 9E003 で、国家安全保障の理由で規制されます[41]。分類は品目ごとに顧客が決めるので、図面を受け取るときに確かめます。
- みなし輸出(ITAR):軍用の技術データを米国内で外国人に渡すと、その人が国籍・永住権を持つすべての国への輸出とみなされます[39]。
- ITAR の登録:米国で防衛品目を製造する事業者は、輸出をしなくても国務省の国防貿易管理局(DDTC)に登録しなければなりません。1 回の製造でも対象です[37]。登録料は新規で年 3,000 ドルです[38]。
- CMMC(サイバーセキュリティ):国防総省の契約でサイバーセキュリティの認証(CMMC)を条件にする調達規則が、2025 年 11 月 10 日に施行されました[42]。図面などの管理対象の情報を扱う下請けにも要求が流れてきます。
- 特殊金属の調達制限:国防総省向けの品物に使うチタン合金・ニッケル合金・一定以上の合金元素を含む鋼などの特殊金属は、米国または適格国で溶解したものに限られます。棒・板などの素材や鍛造品・鋳造品はこの制限の例外になりません[43]。ミルシートで溶解国を確かめられるようにしておきます。
外国籍の社員がいる会社は先に確認図面がどの規制の対象かを受け取る前に顧客に確かめ、閲覧できる人を決め、図面のデータを置く PC やフォルダを分けておきます。必要なら許可を取ってから見せます。
MEP センターと州の支え
- MEP センター:NIST の製造業拡張パートナーシップ(MEP)は、中小の製造業を支える官民の連携で、州が指定した MEP センターが全米とプエルトリコにあり、1,400 人近い助言者・専門家が 450 以上の拠点にいます[44]。連邦の予算が費用の半分を出し、残りは州・地方や民間、利用する会社の料金でまかなう仕組みです[44]。
- AS9100 の取得を手伝った例:NIST が紹介する事例では、インディアナ州の MEP センターが補助金を使って AS9100D の内部監査員の研修と CNC の技術研修を支え、その会社は 2023 年 8 月に AS9100D を取って顧客の期限に間に合わせました[45]。
- 州の例(カンザス州):航空の税額控除があり、対象の新規採用者に年 5,000 ドルまで、雇用主には新しく雇った対象社員の給与の 10%(1 人年 15,000 ドルまで、最初の 5 年)、社員の学費の払い戻しの最大 50%を控除します[46]。期限を 2036 年末まで延ばす法案が 2026 年の州議会で成立しました[47]。
州の支援は名前も条件も州ごとに違い、募集の期間は年度ごとに変わります。申し込む前に州の経済開発の窓口や地元の MEP センターで確かめてください。
参入までの順番(目安)
- 自社の「航空で効く強み」を書き出す:難削材(チタン・インコネル)、薄肉・大物の一体削り、5 軸、穴の位置精度、多品種少量、記録の管理など。
- MEP センター・州の窓口で情報を集める:地元の MEP センターに相談し、州の支援や、どの Tier が何を探しているかを聞きます[44]。
- ISO 9001 → AS9100D:認証機関に見積りを取り、6 か月ほど運用してから審査へ[24]。
- 試作と初回品検査:取引先の監査を受け、試作品と AS9102 の記録を出します。特殊工程の外注先と、輸出管理の扱いはここで決めます。
- 量産と広げる:納期と品質の実績を積み、特殊工程を自社で持つなら Nadcap、交換部品なら PMA 保持者の供給者、防衛なら ITAR の登録へ。
現実のハードルと対策
| ハードル | 中身 | 対策の例 |
|---|---|---|
| 需要の波 | 航空宇宙製品・部品製造の産出額は 2018〜2021 年に約 27%減り、雇用は 2019〜2021 年に約 10%減った[2][3] | 航空機は売上の一部に。ほかの業界と共用できる設備で受ける |
| 生産レートの揺れ | 機体の納入はサプライチェーンの制約に左右され[5]、上流の生産計画が変わると下請けの注文も急に増減する | 顧客の生産計画(レート)と、増減のときの取り決めを契約前に聞く |
| 入るまでが長い | AS9100D は運用 6 か月のあと審査[24]、Nadcap は 6〜12 か月[35]。部品ごとに監査と FAI が要る | 最初の数年の資金繰りを計画に入れる。入れば同じ部品を長く作れる |
| 認証の費用と人 | 審査料は見積り制。OASIS は証明書ごとに 700 ドル、審査ごとに 250 ドル[22][23]。Nadcap も見積り制で 12〜24 か月ごとに再認定[35] | MEP センターの研修や州の補助を使う。内部監査員を社内で育てる[45] |
| 多品種少量と変更の重さ | NC プログラム・治具・機械を変えるたびに FAI をやり直す[26] | 段取りの標準化。改善は計画して、まとめて届け出る |
| 支払い条件・価格 | 支払いまでの期間や価格の改定の決まりは取引先の購買条件しだい(業界の平均を示す公的な統計は見当たらない) | 見積りの段階で支払いサイト・材料費の転嫁・数量の約束を確かめる |
| 通商の先行き | 航空機と部品の 232 条の措置は交渉中で、関税などの追加措置もありうる[7] | 輸入素材・部品に頼る工程は代わりの調達先を考えておく |
| 輸出管理と防衛の追加要求 | 外国籍の社員へのみなし輸出、ITAR の登録(年 3,000 ドル〜)、CMMC、特殊金属[40][38][42][43] | 民間機から始め、防衛は体制ができてから |
向いている会社・向いていない会社
- 難削材や薄肉・大物の削り出しで、他社に断られる仕事を受けてきた
- 検査成績書・ミルシート・図面の版の管理がすでにできている
- NC プログラムや治具を勝手に変えない文化がある
- 数年かけて入り、同じ部品を長く作る覚悟がある
- 近くに Nadcap を持つ熱処理・表面処理の会社がある
- すぐに売上がほしい、設備をすぐ回収したい
- 現場の判断で工程や条件をどんどん変えて改善してきた
- 売上の大半を航空機にしようとしている(波を受けやすい)
- 外国籍の社員が多く、図面の閲覧を分けられない
よくある質問
- AS9100 が無いと航空機の仕事はできませんか?
- 法律で決まっているわけではありませんが、生産承認の保持者は供給者を管理する責任を負うので[12]、多くの取引先が AS9100D を条件にします。どの段階で求めるかは取引先しだいなので、営業の前に確かめます。Nadcap を受けるにも AS9100 か AC7004 の監査が要ります[35]。
- FAA の承認を取る必要はありますか?
- 下請けとして加工するなら不要です。FAA は供給者を承認せず、責任は生産承認の保持者にあります。ただし FAA が供給者の工場を監視に来ることはあります[13]。自社の名前で交換部品を売りたいなら、PMA が必要です[10][9]。
- 切削しかしていない会社でも Nadcap は要りますか?
- 普通の切削が一律に対象になるわけではありません。顧客が特殊工程に指定した穴あけ・旋削・フライス・研削などは「特殊工程としての在来型機械加工」(AC7126)で審査されます[34]。多くの場合は、熱処理や表面処理を認定を持つ外注先に出すことのほうが先に問われます。
- 認証を取るのにいくらかかりますか?
- 認証機関の審査料は審査の日数で決まり、公的な目安はありません。公開されている固定の費用は、OASIS の証明書の料金(初回・再認証ごとに 700 ドル)と、審査ごとのデジタル関連の料金 250 ドルです[22][23]。研修は地元の MEP センターに相談できます[44]。
- 軍用機の部品も同時に狙えますか?
- 品質の仕組みは同じですが、防衛品目を製造するなら輸出をしなくても ITAR の登録(新規は年 3,000 ドル)が要り[37][38]、国防総省の契約では CMMC[42] や特殊金属の制限[43]も加わります。民間機で実績を作ってからのほうが無理がありません。
難削材の切削条件は 材料データベース、工具の減り方は 工具寿命の読みもの、5 軸は 5 軸加工のページ、穴とはめあいは はめあい公差、表面処理の寸法は 黒染め・めっきの見分け方と寸法変化にまとめています。
出典・参考資料
- 米国航空宇宙工業会(AIA)「2026 AIA Facts & Figures」発表(2026 年 6 月 25 日)
- 米国労働統計局(BLS)「Sectoral Output for Manufacturing: Aerospace Product and Parts Manufacturing (NAICS 3364)」(産業別生産性統計、FRED 収録)
- BLS「Employment for Manufacturing: Aerospace Product and Parts Manufacturing (NAICS 3364)」(FRED 収録)
- 米国商務省 国際貿易局「SelectUSA: Aerospace Industry」
- FAA「Forecast Overview (2026–2046)」FAA Aerospace Forecast(PDF)
- 官報(Federal Register)「民間航空機・ジェットエンジンと部品の輸入に関する 232 条調査の意見募集」(2025 年 5 月 13 日)
- 大統領布告 11040「Adjusting Imports of Commercial Aircraft, Jet Engines, and Aircraft and Engine Parts Into the United States」(2026 年 7 月 9 日)
- FAA「Production Approvals」
- FAA「Parts Manufacturer Approval (PMA)」
- eCFR 14 CFR Part 21 Subpart K(§21.303・§21.307 部品製造者承認)
- eCFR 14 CFR §21.9 Replacement and modification articles
- eCFR 14 CFR §21.137 Quality system
- FAA Advisory Circular AC 21-43A「Production Under 14 CFR Part 21, Subparts F, G, K, and O」(PDF)
- SAE「AS9100D Quality Management Systems - Requirements for Aviation, Space, and Defense Organizations」
- 国際航空宇宙品質グループ(IAQG)「9100 Quality Management Systems」
- IAQG「2025 Annual Report」(2026 年 4 月、PDF)
- IAQG「News」
- NASA 安全・ミッション保証局「Status of the Development of IA9100」(2024 年 4 月)
- ISO「ISO 9001:2026 Quality management systems — Requirements」
- IAQG「Certification」(IAQG の認証制度と認証の受け方)
- ANSI National Accreditation Board(ANAB)「International Recognition」
- IAQG「OASIS Fee Schedule - Details & Clarification」(2024 年 11 月 25 日更新、PDF)
- IAQG「IAQG Digital Innovations」(デジタル関連の料金)
- Performance Review Institute(PRI)「Frequently Asked Questions」
- IAQG「9102 Key Changes from Rev B to Rev C」(PDF)
- 日本航空宇宙工業会「SJAC 9102C 航空宇宙 初回製品検査要求事項」(AS9102C と同じ内容の日本語版、PDF)
- IAQG「First Article Inspection 9102 FAQs」(PDF)
- IAQG「9145 Advanced Product Quality Planning and Production Part Approval Process」
- IAQG「9103 Variation Management of Key Characteristics」
- SAE「AS13100A AESQ Quality Management System Requirements for Aero Engine Design and Production Organizations」
- IAQG「9146 Foreign Object Damage (FOD) Prevention Program」
- SAE「AS6174B Counterfeit Materiel; Assuring Acquisition of Authentic and Conforming Materiel」
- PRI「The Nadcap Program」
- PRI「Nadcap Accreditation」
- PRI「Getting Started with a Nadcap Accreditation」
- PRI「Nadcap Program Suppliers」
- eCFR 22 CFR §122.1 Registration(ITAR の登録)
- eCFR 22 CFR §122.3 Registration fees(ITAR の登録料)
- eCFR 22 CFR §120.50 Export(ITAR のみなし輸出)
- eCFR 15 CFR §734.13 Export(EAR のみなし輸出)
- eCFR 15 CFR Part 774 Supplement No. 1 商務省規制品目リスト(ECCN 9A991・9E003)
- 官報「DFARS: Assessing Contractor Implementation of Cybersecurity Requirements(CMMC)」(2025 年 9 月 10 日)
- eCFR 48 CFR 252.225-7009 Restriction on Acquisition of Certain Articles Containing Specialty Metals
- 米国国立標準技術研究所(NIST)「About NIST MEP」
- NIST MEP 成功事例「AS9100 Certification Assistance by Purdue MEP Leads to Acquisition of New Client」
- カンザス州商務省「Kansas Aviation Tax Credits」
- カンザス州議会「HB 2464」(航空・航空宇宙の税額控除の延長)


