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金属加工の会社が医療機器の部品加工に参入するには:多い部品と材料・市場の推移・主なメーカー・薬機法・ISO 13485・ハードル

部品の会社に許可は要らない。でも「勝手に変えない・きれいに渡す・追える」が条件

マスコットのチップス
金属加工の会社が医療機器の部品加工に参入するには:多い部品と材料・市場の推移・主なメーカー・薬機法・ISO 13485・ハードル

日本の医療機器の市場は 2024 年に約 5 兆円まで大きくなりましたが、国内で作る量より輸入のほうが多く、とくに人工関節や骨を留めるねじ・プレートは輸入が国内生産の約 4 倍です。手術器具・インプラント・内視鏡の部品は、旋盤やマシニングで削るチタン・コバルトクロム・ステンレスの精密部品のかたまりでもあります。一方で CT や MRI のような画像診断装置には、直径 1 m 級の回転体や何トンもある磁石の容器といった大物の部品もあります。この記事では、どんな部品が多いか、市場の推移と主な医療機器メーカー、CT・MRI の大物部品とメーカー、部品の会社に法律の何がかかるか(じつは許可は要らない)、ISO 13485、入口と支援、現実のハードルを、厚生労働省・PMDA・経済産業省・規格団体・論文などの公開資料をもとにまとめました(2026 年 10 月時点)。

病院・診療所・患者販売業者・貸与業者を通じて届く製造販売業者(医療機器メーカー)第一種〜第三種の許可。市場に出す責任・品質の一義的な責任QMS 省令(ISO 13485 相当)に適合製造業(登録した製造所)設計/主たる組立て/滅菌/国内での最終製品の保管メーカー自身の工場や受託製造会社(CMO)部品の加工・材料の供給(部材供給)切削・研削・放電・表面処理・洗浄など原則として薬機法の業許可・登録は要らない ← 入りやすいのはここ納入入口 A:部品の受託加工メーカーの購買・開発へ入口 B:受託製造の協力会社CMO・OEM の外注先に入口 C:医工連携医師のニーズから共同開発入口 D:自社製品業許可を取って器具を出す購買管理で部品の会社に来るもの仕様・承認仕様書図面・材料・検査の取り決め変更の事前通知材料・工程・外注先(書面で合意)受入検査・工場の監査立会い・二者監査ロットの追跡ミルシート・製造記録清浄度・バリ・異物洗浄・包装の決まり法律の義務を負うのは製造販売業者と登録した製造所。部品の会社には、その「購買管理」を通じて要求が届きます。入口 D(自社製品)だけは、製造販売業の許可と製造業の登録が要ります。
医療機器のサプライチェーンと参入の入口(概念図)。業態は薬機法と施行規則[58][59]、部品の会社の位置づけは部材供給ガイドブックと厚生労働省の Q&A[64][60]、購買管理の中身は QMS 省令 第 37〜39 条[61] による。

市場の推移:大きくなったが、伸びた分は輸入へ

厚生労働省の「薬事工業生産動態統計」によると、2024 年(令和 6 年)の医療機器は国内生産 2 兆 6,642 億円、輸入 3 兆 4,542 億円、輸出 1 兆 1,445 億円、国内出荷 4 兆 7,083 億円でした[1]。生産から輸出を引いて輸入を足した国内市場の規模は約 4 兆 9,738 億円で、2015 年の約 2 兆 7,479 億円から 10 年で 8 割ほど大きくなっています(途中で調査方法が変わっているので目安)[4]。

医療機器の生産・輸入・輸出(億円、暦年)国内生産輸入輸出010,00020,00030,00040,0002019 年から調査方法が変わった(前後は単純に比べられない)20102012201420162018202020222024輸入 34,542生産 26,642輸出 11,445白抜きの点(2015〜2018 年の輸入)は「国内市場規模−生産+輸出」で出した計算値。2024 年は 2026 年に修正された値。統計の「輸入」は輸入品を国内に出荷したときの値段で、貿易統計の輸入額とは別もの。
医療機器の生産・輸入・輸出の推移。2010〜2013 年は医機連の年次推移表[5]、2014 年は医機連の資料[6]、2015 年以降は令和 6 年年報の推移表[1] と高齢社会白書[4] による。

ただ、伸びの多くは輸入です。国内生産は 2019 年から 2024 年まで 2.4〜2.7 兆円の横ばいなのに、輸入は 2.6 兆円から 3.5 兆円へ増えました[1]。厚生労働省の調査資料でも、日本は米国・フランスと並ぶ輸入超過の国で、中国・ドイツは輸出超過とされています[7]。

数字を読むときの注意① 2019 年から調査のしかたが変わり、生産額が前の年より 28% 多く出ているので、2018 年以前とは単純に比べられません[1]。② 統計の「輸入」は輸入品を国内で出荷したときの値段で、貿易統計の輸入額とは別ものです[1]。③ 2024 年の値は 2026 年に修正され、当初の公表(輸入 3 兆 6,056 億円・国内出荷 4 兆 7,195 億円)から変わっています[1][2]。

どの分野が輸入に頼っているか

2024 年の類別の国内生産と輸入(億円)国内生産輸入整形用品(人工関節・骨接合材など)1,3545,237医療用嘴管・体液誘導管(カテーテル類)2,1835,116内臓機能代用器(人工腎臓など)2,6183,617整形用機械器具269831医療用鏡(内視鏡など)2,650784整形用品は輸入が生産の約 3.9 倍。内視鏡は逆に生産 2,650 億円のうち 2,593 億円を輸出している。
2024 年の類別の国内生産と輸入。令和 6 年年報の類別の表[1] による。

金属加工の会社にとっていちばん目を引くのは整形用品(人工関節・骨接合材など)です。2024 年は国内生産 1,354 億円に対して輸入 5,237 億円で、輸入の中でも首位でした。輸入元は米国が 2,467 億円で半分近く、スイス 516 億円、アイルランド 479 億円、中国 327 億円、ドイツ 279 億円と続きます。手術で骨を削る道具などの整形用機械器具も、生産 269 億円に対して輸入 831 億円です[1]。人工股関節の部品では、国内で使うセラミック製の骨頭の約 8 割が海外からの供給だという医療機器メーカーの説明もあります[8]。

反対に内視鏡は日本の強い分野で、生産 2,650 億円のうち 2,593 億円を輸出しています[1]。国内で医療機器を作る会社は 1,725 社あり、月に 1 億円未満しか作らない会社が 86% を占めますが、その生産額は全体の 8% ほどです[1]。大手が生産の大半を担い、その下に多くの小さな作り手と部品の会社が広がっている形です。都道府県別の生産額は栃木・静岡・茨城・福島・埼玉・愛知・千葉の順で[3]、売り込み先の地域を考えるときの目安になります。

世界の医療機器市場は 2023 年に約 5,170 億ドルで、日本は米国・ドイツ・中国に次ぐ 4 位(シェア約 5%)とされます。年に 6% 前後の成長が見込まれています(民間調査会社のデータを厚生労働省の資料が引用)[7]。

主な医療機器メーカー

部品の売り込み先になる主な医療機器メーカーと、最新の決算期の売上です。全社の売上と医療の部門だけの売上が混ざるので、「範囲」の欄を見てください。金属の機械加工部品が多い製品も並べました。

国内の会社売上(決算期)範囲金属の加工部品が多い製品(例)
テルモ1 兆 1,319 億円(2026 年 3 月期)[9]全社カテーテル・ステント・ガイドワイヤ・注射針
オリンパス1 兆 107 億円(2026 年 3 月期)[10]全社(消化器内視鏡 6,974 億円)内視鏡の先端部・湾曲部の部品、生検鉗子などの処置具
富士フイルム1 兆 989 億円(2026 年 3 月期)[11]ヘルスケア部門(医薬品の受託製造などを含む)内視鏡・X 線・超音波の装置
キヤノン5,806 億円(2025 年 12 月期)[12]メディカル部門CT・MRI・超音波の装置
ニプロ5,236 億円(2026 年 3 月期)[13]医療関連事業(医薬品の販売を含む)人工腎臓・注射針・カテーテル
シスメックス5,001 億円(2026 年 3 月期)[14]全社(試薬を含む)血液などの検査装置
日本光電2,351 億円(2026 年 3 月期)[15]全社生体情報モニタ・心電計・AED
朝日インテック1,454 億円(2026 年 6 月期)[17]全社ガイドワイヤ(極細のステンレス線・タングステン線の伸線・撚り線)
フクダ電子1,397 億円(2026 年 3 月期)[16]全社心電計・在宅酸素などの装置
マニー約 300 億円(2025 年 8 月期)[18]全社手術用縫合針・眼科ナイフ・歯科用リーマとファイル(極小の切削・研削品)
日本エム・ディ・エム239 億円(2026 年 3 月期)[19]全社人工関節・骨接合材・脊椎固定器具(米国子会社が開発・製造)
海外の会社売上(決算期)範囲金属の加工部品が多い製品(例)
Medtronic(アイルランド・米国)364 億ドル(2026 年 4 月期)[20]全社脊椎インプラント・手術器具・心臓のデバイス
Johnson & Johnson MedTech(米国)338 億ドル(2025 年)[21]医療機器部門(整形外科 93 億ドル)人工関節・骨接合材・脊椎(DePuy Synthes)
Stryker(米国)251 億ドル(2025 年)[22]全社(整形外科 95 億ドル)人工股関節・膝関節、外傷用のプレート・髄内釘、手術用の電動工具
Siemens Healthineers(ドイツ)約 234 億ユーロ(2025 年 9 月期)[23]全社CT・MRI・放射線治療の装置
BD(米国)約 218 億ドル(2025 年 9 月期)[26]全社注射器・注射針・カテーテル・手術器具
Abbott(米国)約 214 億ドル(2025 年)[24]医療機器部門ステント・心臓のデバイス・血糖測定器
GE HealthCare(米国)約 206 億ドル(2025 年)[27]全社CT・MRI・超音波の装置
Boston Scientific(米国)約 201 億ドル(2025 年)[25]全社カテーテル・ステント・内視鏡の処置具
Philips(オランダ)約 178 億ユーロ(2025 年)[28]全社(家庭向け製品を含む)画像診断装置・患者モニタ
Zimmer Biomet(米国)約 82 億ドル(2025 年)[29]全社人工膝関節・股関節・骨接合材

決算期と会計基準は会社ごとに違うので、順位の比較には向きません。海外の大手の多くは日本に法人を持ち、日本で売る製品は輸入して出荷しています。整形外科の大手(J&J・Stryker・Zimmer Biomet)は米国が中心で、日本の整形用品の輸入の半分近くが米国からなのと重なります[1]。人工関節では、京セラのグループ会社やナカシマヘルスフォース(旧ナカシマメディカル)など国内の作り手もあります[8][90]。

どんな金属部品が多いか

体に埋め込む医療機器(インプラント)は 8 割近くが金属製で、整形外科のインプラントに限ると約 95% が金属製です。ステントやガイドワイヤが金属なのも、血管に沿ってしなやかに曲がる弾性と、血管を押し広げ続ける強さの両方が要るからです[30]。

歯科インプラント純チタン・Ti-6Al-4V/ねじ・アバットメントステント・ガイドワイヤ316L・Co-Cr・ニチノール/細管・細線脊椎のスクリュー・ロッドチタン合金・Co-Cr/ねじ・曲げ人工股関節ステム・カップ・骨頭(チタン・Co-Cr)骨プレート・髄内釘・スクリューSUS316L・チタン合金人工膝関節大腿骨・脛骨のコンポーネント(Co-Cr・チタン)体の外で使う器具・装置鉗子・剪刀・持針器など(主にステンレス)内視鏡の節輪・手術ロボットの精密部品装置の部品画像診断装置・検査装置などの機械部品求められる清浄度などは部品の役割で変わるイメージ図。部品の大きさ・形は実物と違う。
医療機器の金属部品が使われる所(略図)。部品と材料は国の審査ガイドライン・承認基準[31][32][33][34][36]、ステント・ガイドワイヤは塙[30] と ASTM F2063[45]、内視鏡の節輪は特許[37]、器具の材料は ASTM F899[38] による。
分野代表的な部品主な材料加工のポイント
骨接合材ボーンスクリュー・プレート・髄内釘[34][35]純チタン、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-7Nb、SUS316L 相当[34]細長いねじは主軸移動形の自動旋盤とスレッドワーリングで削るのが基本とされる[57]
人工膝関節大腿骨コンポーネント・脛骨トレイ・固定スクリュー・ステム[31]Co-Cr-Mo(鋳造・鍛造)、チタン合金[31]大腿骨コンポーネントの摺動面は Ra 0.1 µm 以下が審査の目安[31]
人工股関節ステム・骨頭・カップ[32]チタン合金、Co-Cr-Mo、ステンレス樹脂と擦れる金属の骨頭は表面粗さ 0.05 µm 以下が目安[32]。超精密旋削のあと仕上げ[52]
脊椎スクリュー(固定型・可動型)・ロッド・フック・コネクター[33]純チタン、チタン合金、ステンレス、Co-Ni-Cr-Mo[33]ねじ・球面・ロッドの曲げ。ケージは樹脂(PEEK)も
歯科インプラントのフィクスチャー・アバットメント・スクリュー[36]純チタン(JIS H 4650・ASTM F67)、Ti-6Al-4V ELI[36]サンドブラスト・酸処理・陽極酸化(色分け)・ワイヤ放電が承認基準に並ぶ[36]
手術器具鉗子・剪刀・持針器、整形外科の器械主にステンレス(オーステナイト系・マルテンサイト系・析出硬化系)[38]刃の噛み合わせ・ばね性・焼入れ。米国では繰り返し使う器具に UDI の直接刻印[48]
内視鏡・手術ロボット湾曲部の節輪、処置具、ロボットの鉗子ステンレスの筒状部品をつなぐのが一般的[37]微細・薄肉・長尺。自動車部品の旋盤加工から手術ロボットの部品に広げた中小企業がある[87]
ステント・ガイドワイヤステント・ガイドワイヤ・カテーテルの金属部品316L・Co-Cr・ニチノール(ASTM F2063)[30][45]細管・細線。切削より伸線・レーザー・研磨の世界

旋盤・マシニングの会社の腕が生きやすいのは、骨接合材・脊椎のねじと棒、人工関節の削り仕上げ、手術器具、内視鏡やロボットの精密部品です。ステントやガイドワイヤは伸線・レーザー加工の専門の世界なので、切削の会社には遠めです。

材料と規格の対応

材料JISISOASTM
インプラント用ステンレス(316L 相当)T 7403-15832-1F138
純チタンT 7401-15832-2F67(Grade 1〜4)
Ti-6Al-4VT 7401-25832-3F136(ELI)、F1472(ELI でないもの)
Ti-6Al-7Nb(バナジウムを含まない)T 7401-55832-11F1295
日本で開発されたチタン合金T 7401-3(Ti-6Al-2Nb-1Ta)・T 7401-4(Ti-15Zr-4Nb)・T 7401-6(Ti-15Mo-5Zr-3Al)5832-14(Ti-15Mo-5Zr-3Al)―
Co-Cr-MoT 7402-1(鋳造)・T 7402-2(展伸)5832-4(鋳造)・5832-12(展伸)F75(鋳造)・F1537(展伸)・F799(鍛造)
ニチノール(形状記憶合金)――F2063(細管は F2633)
手術器具用ステンレス―7153-1F899

題名は日本規格協会・ISO・ASTM の各ページで確認[39][40][41][42][43][44][45][38]。図面に ASTM 番号で材料が書かれることが多いので、ASTM の早見表と 材料データベース(Ti-6Al-4V・17-4PH など)もあわせて見てください。

大物の部品:CT・MRI など画像診断装置

体に入れる小さな部品とは逆に、直径 1 m 級の回転体や、何トンもある磁石の容器を作るのが画像診断装置です。2024 年に国内で作られた医療機器を一般的名称ごとに見ると、全身用 X 線 CT 診断装置が 881 億円で 1 位でした。超電導磁石式の全身用 MR 装置(MRI)は 314 億円です。CT が入る類別「医療用エックス線装置」は生産 2,260 億円のうち 1,267 億円を輸出していて(輸出先の 1 位は米国)、輸入は 804 億円と、日本が作って売る側の分野です[1]。使う側でも、日本は人口 100 万人あたりの CT・MRI・PET の台数が 184 台で、OECD 平均の 51 台を大きく上回ります[91]。

CT と MRI は管理医療機器(クラス II)で、据え付けと保守に専門の管理が要る「特定保守管理医療機器」です[92][93]。それでも、部品を図面どおりに作って納める会社に薬機法の許可が要らないのは、ほかの医療機器と同じです(法律の節)。体に触れない構造部品が多いので、求められるのは清浄度よりも寸法・振れ・バランス・溶接・非磁性です。

国内で画像診断装置を作っているメーカー

会社国内の主な拠点作っているもの部門の売上(決算期)
キヤノン(旧キヤノンメディカルシステムズ)那須事業所(栃木県大田原市)CT・MRI・X 線・超音波など。キヤノンメディカルシステムズの国内の販売・保守以外の事業は、2026 年 4 月 1 日付でキヤノン本体が引き継ぐ予定と発表された[95]。同社の本社は川崎市へ移っている[96]メディカル 5,806 億円(2025 年 12 月期、超音波・検体検査などを含む)[94]
キヤノン電子管デバイス栃木県大田原市X 線管などの電子管[94]―
富士フイルム(旧日立の画像診断事業)富士フイルムヘルスケアマニュファクチャリング(本店は千葉県柏市。国内に 11 の事業所)[97]CT・MRI・X 線など。日立から 2021 年 3 月に事業を引き継いだ[98]。0.4 T・0.3 T の永久磁石のオープン MRI も出している[134]ヘルスケア部門 1 兆 989 億円(2026 年 3 月期、医薬品の受託製造などを含む)[11]
GE ヘルスケア・ジャパン日野本社の工場(東京都日野市)CT・MRI・超音波プローブ(2013 年の発表)[99]。2026 年 1 月に核医学・CT 用のコリメータを 3D プリンターで作る拠点を開いた[100]GE HealthCare の Imaging 92.45 億ドル(2025 年)[105]
島津製作所島根島津(島根県出雲市)など血管撮影・X 線 TV・一般撮影・回診用 X 線など。CT・MRI は手がけていない[101]医用機器 738 億円(2026 年 3 月期)[102]

海外勢では、Siemens Healthineers の Imaging 部門が 131.82 億ユーロ(2025 年 9 月期)[104]、Philips の Diagnosis & Treatment が 85.31 億ユーロ(2025 年)[107]。Siemens の日本法人は輸入販売・修理・保守が事業で、国内では作っていません[103]。GE HealthCare は世界の主な競合に Siemens Healthineers・Philips・United Imaging(中国)・Mindray(中国)・Canon を挙げています[106]。

CT:直径 1 m 級の回転体

X 線管(回転陽極)Mo の円板+W-Re の焦点面。陽極の直径 166〜200 mmスリップリング内径〜1,270 mm。電力は接触、データは非接触主軸受(直径 1 m 級の薄肉玉軸受)ピッチ円径 1,041 mm などの例回転部(回転フレーム・円板)アルミ合金の鋳物、鉄板の打ち抜きなど。2 面でバランス取り寝台の天板発泡体の芯を CFRP で挟む検出器とコリメータコリメータはタングステンの薄板回転部にかかる力48.5 G0.275 秒で 1 回転するときのガントリ(メーカーの説明)イメージ図。部品の形・材料は特許や製品資料の例で、機種によって違う。
CT の架台(ガントリ)の中身(略図)。48.5 G はキヤノンの説明[114]、部品の大きさ・材料は特許と部品メーカーの資料[115][116][118][122][123][125][126] による。
部品大きさ・数値の例材料・作り方の例加工で効くこと
回転部(回転フレーム・円板)開口 78 cm 前後。0.275 秒で 1 回転し、ガントリには 48.5 G がかかる[114]アルミ合金の鋳物で肉厚 15〜20 mm[115]、鉄板を打ち抜いた円板[116] など部品の位置が 0.15 mm を超えてずれると画質が大きく落ちる[115]。2 面で不釣り合いを測り、ウェイトで調整する[117]
主軸受ピッチ円径 1,041.4 mm・玉径 12.7 mm の超薄肉軸受[118]。直径 1,050 mm・最高 300 rpm・1,000 kg 超を載せる例[120]薄肉の玉軸受。振動を抑える減衰機構を中に入れた軸受もある(振幅が従来の約半分)[119]軸受を受けるハウジングは直径 300〜2,000 mm を旋削とフライスの 1 段取りで仕上げる例[121]
スリップリング内径は最大 1,270 mm。数 kW の電力と、20 Gbps を超えるデータを回転側とやり取りする[122]電力は接触、データは非接触で送る大径のリングの振れと平面度
X 線管陽極の直径 166 mm など[123]モリブデンの円板にタングステン・レニウムの焦点面、液体金属の軸受[123]回転部への取り付けは 40 G 以上に耐える必要がある[124]
コリメータ16 スライスの例で板 913 枚[125]タングステンの薄板をスロットに差して組む[125]スロットの溝加工、薄板の精度
寝台の天板―発泡体の芯を CFRP で挟む。X 線の通りやすさはアルミ合金の約 5 倍[126]成形品。金具の取り付け

MRI:何トンもある磁石と「非磁性」

真空容器(外側)全溶接で高真空を保つ。磁気シールドを兼ねる例も熱シールドアルミなど。材質と板厚は渦電流の解析で決める傾斜磁場コイル・RF コイル銅などの導体を樹脂で固めたもの超電導コイルとヘリウム槽NbTi 線を巻いたコイルを約 4 K に冷やすボア(内筒)磁石のそば。非磁性のステンレスなど大きさの例(0.5 T の磁石)高さ 1.79 m・長さ 1.85 m7.9 t冷媒を含む(1992 年の技報)イメージ図。外から真空容器・熱シールド・ヘリウム槽とコイル、内側の穴に傾斜磁場コイルと RF コイルが入る。最近はヘリウムを数リットル以下に減らした密閉型や、液体ヘリウムを使わない方式も出ている。
超電導 MRI の磁石の断面(略図)。構造と大きさは三菱電機技報[127]、材料の例は特許[128][129] による。
部品中身
超電導磁石NbTi の超電導線を巻いたコイル。0.5 T の例で高さ 1.79 m・幅 1.8 m・長さ 1.85 m、冷媒を含めて 7,900 kg。磁場のむらは薄い鉄板や細い鉄棒(シム)で補正する[127]。超電導線は MRI 用の NbTi 線を専門に作る会社がある[137]
クライオスタット(低温の容器)ヘリウム槽を熱シールドで囲み、外側を真空容器で包む。主要部は全溶接構造で長期の高真空を保ち、熱シールドの材質と板厚は渦電流の解析で決める。中の重さは熱を伝えにくい FRP で支える[127]。真空容器を軟鋼板にして磁気シールドを兼ね、ボアを非磁性ステンレス、ヘリウム槽と熱シールドをアルミにした例[128]
傾斜磁場コイル銅などの導体を樹脂で固めたもの。導体をアルミにする特許もある[129]
シールドルーム部屋の 6 面を金属で囲む電波シールドと、電磁鋼板(0.35〜0.5 mm)を何層も重ねる磁気シールド[136]。板金・建築の仕事に近い
ヘリウムを減らす流れ液体ヘリウムを使わない 1.5 T の超電導 MRI(排気管も不要)[130]、ヘリウムを 7 L[131] や 0.7 L[132] に減らした密閉型が出ている。冷凍機だけで冷やし約 8 分で磁場を立ち上げる MgB2 磁石の研究もある[133]。容器の構造が変わり、伝熱・溶接の部品の作り方も変わる
永久磁石のオープン MRI0.4 T・0.3 T の永久磁石で液体ヘリウムを使わない[134]。磁石を 1 本の柱で支える構造の機種もある[135]

MRI のそばの部品は「非磁性」が条件SUS304 は焼きなましの状態では磁石に付きませんが、冷間加工でマルテンサイトに変わり磁性を帯びます。SUS316L は変わりにくいものの、加工率が高いと弱い磁性が出ます[138]。大阪産業技術研究所の測定では、SUS304 の比透磁率は板の平らな所で 1.024、曲げた所で 1.051、ボルトのねじ部で 1.225、頭で 1.624 でした[139]。曲げ・圧造・強い切削で磁性が出るので、図面に透磁率の指定があれば加工後に低透磁率計で測る工程を入れます。MRI の検査室では、持ち込まれた酸素ボンベや点滴台が磁石に吸い寄せられる事故が起きています[140]。

大物の部品を売り込む先

  • キヤノン:「資材調達情報」のページに、資材の売り込みを受け付けるフォームと、取引開始までの手順が載っています[108]。
  • 島津製作所:調達方針と問い合わせ先(調達部)が公開されていて、取引の前に品質管理と CSR の確認があります[109]。
  • 富士フイルム:グループの調達方針が公開されています[110]。
  • GE ヘルスケア・ジャパン:サプライヤー向けの要件と取引先ポータルの案内があります[111]。
  • 地域の窓口:栃木県は医療福祉機器の分野を含む産業振興協議会の会員を募っていて、これから参入する会社も入れます[112]。千葉県の「ちばメディカルネットワーク」は、メーカーや医療現場とのマッチングを支援しています[113]。
  • 部品メーカーの下:CT 用の軸受は国内の軸受メーカーも国内外に量産で納めていて(2008 年の発表)[119]、海外の軸受・スリップリング・X 線管の専門メーカーもあります[120][122][123]。装置メーカーに直接ではなく、こうした部品メーカーのハウジングや構造部品を受ける道もあります。

大物の装置部品が向いている会社大型の旋盤・立旋盤・横中ぐり・門形 5 軸、大物の溶接と焼鈍、三次元測定機をすでに持ち、半導体装置や工作機械の大物部品を作ってきた会社です。インプラントのような洗浄・滅菌の世界より、寸法・振れ・バランス・溶接・非磁性の記録で勝負できます。医療の決まりのうち、変更の事前通知と追跡(法律の節)はここでも同じように求められます。

加工の中身:難削材と「削ったあと」

テーマ分かっていること
チタン合金の熱Ti-6Al-4V は熱伝導率が小さく、高速で削ると切削温度が上がり続けて融点近くまで達する[50]。エンドミル加工の工具寿命は炭素鋼より短く、摩耗が進むと寸法と面粗さが外れる[49]
チタンの切りくずの燃焼小さな切込みで高速に削ると切りくずが燃えることがあり、効くのは切込みや送りより切削速度[51]。油性の切削油と合わせて火の管理を
コバルトクロム高硬度・低熱伝導・加工硬化で削りにくい[56]。微細フライスでは加工面が 597〜710 HV まで硬くなった例[54]。人工膝関節用の高炭素 Co-Cr を cBN 工具で削ると 0.6 µmRz、切削速度は 10 m/s が最適だった[53]
骨頭の仕上げCo-Cr-Mo の骨頭を超精密旋盤で削り、電子ビームで仕上げて形状精度を 2〜3 µm から 0.7 µm にした報告[52]
不動態化と刻印金属インプラントの表面処理と刻印は ASTM F86、ステンレス部品の化学的な不動態化は ASTM A967 が代表的。削り・研削・ブラストで表面に食い込んだ鉄粉などを取り除くのも目的の一つ[46]
洗浄整形外科インプラントの洗浄は ISO 19227 で、洗浄工程の設計・バリデーション・日常管理と、残留物・粒子・細胞毒性などの評価を扱う[47]
新しい加工液体窒素で冷やしながら削り、Ti-6Al-4V の表面の結晶粒を 100 nm 未満にして摺動や生体適合性を良くする研究もある[55]

現場で変わるのは「削ったあと」寸法が合っていても、バリ・切削油・鉄粉が残った部品は医療では不良です。製造販売業者は、加工油などを取り除く工程がある製品について、清浄と汚染管理の要求を文書にすることになっています(QMS 省令 第 41 条)[61]。切削油の銘柄、洗浄機の条件、バリ取りの方法、刻印の方法が、そのまま取引の条件になると考えてください。切削条件は 切削条件の計算機、工具の減り方は 工具寿命の読みものにまとめています。

法律:部品の会社に許可は要るか

医療機器の世界の許可・登録は、市場に出す責任を持つ製造販売業(扱う機器のリスクで第一種〜第三種の許可)と、作る場所ごとの製造業の登録に分かれます[58]。製造業の登録が要るのは、設計・主たる組立てその他の主たる製造工程・滅菌・国内での最終製品の保管をする製造所です(一般医療機器は設計を除く 3 つ)[59]。

立場要るもの根拠
図面どおりに部品を削って納める会社原則として許可も登録も要らない。製品に実質的な責任を持つ発注元が「主たる組立て」として登録する厚生労働省の Q&A は、整形インプラントの切削を金属加工業者に委託する例をそのまま挙げている[60]。部材供給ガイドブックも、部品の供給者は医療機器メーカーに当たらず薬機法の適用範囲外としている[64]
滅菌を保証する部品を自社で滅菌する会社「滅菌」の製造所として登録が要る同 Q&A[60]
工程を丸ごと受けて製品の出来に責任を持つ受託製造会社「主たる組立て」として登録が要る同 Q&A[60]
自社の器具を医療機器として売る会社(入口 D)製造販売業の許可と製造業の登録。一般医療機器(クラス I)は品目ごとに PMDA へ届け出る(審査なし)薬機法 第 23 条の 2 の 12[58]

ただし、法律がかからないことと、何も求められないことは違います。製造販売業者には QMS 省令(2021 年の改正で ISO 13485:2016 に合わせた内容。2024 年 3 月 26 日から調査の基準)がかかり[62]、その購買管理を通じて部品の会社に要求が届きます[61]。

  • 選ばれ、見られ続ける(第 37 条):供給する能力・実績・品質への影響・用途のリスクで評価され、実績を監視して再評価されます[61]。
  • 注文に工程・設備・人の要求が付く(第 38 条):仕様だけでなく、工場での手順・工程・設備、作業者の適格性、品質の仕組みへの要求が購買情報に入ります。さらに「適合に影響する変更は事前に知らせる」ことを書面で取り決めるのが義務です[61]。
  • 受入検査と工場での監査(第 39 条):検証の範囲はリスクで決まり、立会いや監査を受けることがあります[61]。
  • 追跡できること(第 48・49 条):構成部品まで追跡できるようにし、植込み機器は品質に効く構成部品や作業環境の条件まで記録します[61]。材料のミルシートとロットの記録が要ります。
  • あとで検査できない工程はバリデーション(第 45 条):洗浄・不動態化・溶接のように結果をあとで確かめられない工程は、工程そのものの妥当性を確かめ、設備・作業者・判定基準・工程変更の承認まで手順にします[61]。業界では設備の据付・運転・性能の確認を IQ・OQ・PQ と呼びます。

製造物責任と契約

「医療事故の責任を負わされるのでは」という不安から、部品メーカーが医療機器向けの供給を断ったり渋ったりする例は国の調査でも課題に挙がっています[68]。製造物責任法には部品製造業者の抗弁があり、欠陥がもっぱら完成品メーカーの設計の指示に従ったことで生じ、かつ過失がなければ責任を負いません(第 4 条第 2 号。証明するのは部品の会社)[67]。経済産業省のパンフレットでは、国内で 2012〜2021 年に医療機器が関わる製造物責任の訴訟は 4 件で、部品のサプライヤーの責任が認められた例はなかったとしています[65]。

契約で決めておくことなぜ
承認仕様書図面・材料・検査を「購入者の仕様」として残す。部品製造業者の抗弁の土台になる[64]
変更・製造中止の通知材料や工程を変えるとき、メーカー側は一部変更の承認申請や軽微変更の届出が要るかを判断する。その期間を見込んで早めに知らせ、供給を続ける[64][63]
責任の分け方選定の責任、用途に合うことを保証しないこと、賠償の上限など。国が条項例を出している[66]
保険PL 保険は人や物の損害が対象で、自主回収の費用などは別。製造業向けの E&O 保険との組み合わせが勧められている[65]
共同開発かどうか用途・目的を一緒に決めて開発した部品は、部品製造業者の抗弁の対象にならない。責任の範囲を先に決める[64]

ISO 13485:要るのか、いつ取るのか

ISO 13485(日本では JIS Q 13485:2018)は、ISO 9001 をもとに医療機器に固有の要求を足した品質マネジメントの規格です[69]。ISO 9001 との最大の違いは「法令を守ることが最優先」という点で、製品の実現全体でのリスクマネジメント、汚染管理、バリデーション、追跡可能性などが加わります[70]。

  • 部品の会社に義務はない:規格の序文に、部品などを提供する供給者は「自主的に選択できるし、契約で求められることもある」と書かれています[69]。取ると、取引先によっては二者監査が免除されることがあります[70]。
  • 期間と順番:認証機関の説明では、取り組み始めてから登録までおおむね 1〜1.5 年で、対象製品の出荷実績が要ります。部品・材料のメーカーの取得も増えています[71]。つまり「取ってから営業」ではなく、最初の取引先と並行して取るのが現実的です。
  • 費用:審査料は人数と事業所の数からの個別見積りで、公表された目安はありません[71]。複数の認証機関に見積りを取ります。
  • 改訂:ISO 13485:2016 は改訂なしで「確認」され、2030 年まで今の版のままとする認証機関の説明があります[72]。

海外の決まり米国 FDA の品質の規則は ISO 13485 を引用する形(QMSR)に改められ、2026 年 2 月 2 日に施行されました[73]。この規則は完成品の部品・構成部品のメーカーには適用されませんが、メーカーの購買管理を通じて同じ考え方が届きます[74]。EU の MDR も、製造業者の品質の仕組みに供給者・下請けの選定と管理を含めるよう求め、認証機関は必要なら供給者の現場にも抜き打ちで監査に入れます[75]。海外のメーカーと取引すると、英語の監査が来ることがあります。

入口と支援の窓口

入口どんな形か向いている会社
A 部品の受託加工医療機器メーカーの購買・開発に、図面どおりの部品を納める難削材・微細・長尺など、得意な加工がはっきりしている会社
B 受託製造会社の協力会社メーカーから組立てまで受ける受託製造会社(CMO・OEM)の外注先になるまず医療の決まりに慣れたい会社
C 医工連携医師や大学のニーズから、メーカーと組んで新しい器具や部品を作る試作や提案が得意な会社。共同開発は責任の分け方を先に決める[64]
D 自社製品業許可を取り、自社の器具を医療機器として出す器具を一から作れる会社。歯科器具で売上の 6 割を超えた例がある[88]
  • 展示会:部品加工の売り込みに近いのは「医療機器 開発・製造展(MEDIX)」(東京 2027 年 6 月 16〜18 日、大阪 2027 年 10 月 6〜8 日)[78]。「Medtec Japan 2027」は 2027 年 4 月 21〜23 日、東京ビッグサイト[77]。「メディカル ジャパン」は病院・介護向けが中心です[79]。
  • 医療機器開発支援ネットワーク(MEDIC):AMED の事業として東京大学病院が事務局を運営し、開発・事業化の相談に乗ります[80]。部材供給ガイドブックもここに載っています[64]。
  • AMED の医工連携グローバル展開事業:医療機関・製造販売業者と組む開発への補助(補助率 3 分の 2、非臨床は年 7,000 万円まで)。2026 年度の募集は 2 月で締め切られました[81]。
  • PMDA の RS 総合相談:無料、1 回 20 分ほど。業許可そのものの質問は都道府県の薬務課へ[82]。
  • 地域の窓口:東京都医工連携 HUB 機構[83]、大阪商工会議所の次世代医療システム産業化フォーラム(マッチング例会・売込商談会)[84]、ふくしま医療機器開発支援センター[85]、静岡県のファルマバレーセンター[86] など。

実際に入った会社の例

会社(所在地)もとの仕事入り方
エムテック(茨城県ひたちなか市)自動車部品の旋盤加工国の補助事業で体内に入る微細・長尺部品の技術を開発し、ISO 13485 を取ってドイツに拠点を作り、手術ロボットの精密部品や鉗子を輸出[87]
サンテクノ(茨城県行方市)小径シャフト・ピンの細物加工1996 年に製造業の許可を取り、歯科用器具へ。医療機器が売上の 6 割超[88]
佐渡精密(新潟県佐渡市)多品種の精密部品加工マシニングセンタ・NC 旋盤など 150 台超で、チタン合金のインプラントや内視鏡の部品を、航空機・半導体装置の部品と並べて作る[89]
ナカシマプロペラ(岡山県)船舶用プロペラプロペラの曲面加工の技術で人工関節に入り、2008 年に医療部門を分社化[90]

参入までの順番(目安)

0〜6 か月狙いを決める・装置・器具・インプラント・展示会・医工連携の窓口・材料の入手先を当たる6〜12 か月仕組みを足す・ロット追跡・変更管理・洗浄・バリ・異物の手順・契約の型(仕様・変更通知)1〜2 年試作と監査・メーカーの工場監査・試作・検査成績書・工程のバリデーション2 年〜量産と ISO 13485・出荷実績を積む・ISO 13485 の認証(1〜1.5 年)・海外メーカー・CMO へ
参入までの順番の目安。ISO 13485 の期間と出荷実績の条件は JQA[71] による。採用までの期間を示す公的な統計は見当たらず、部品と取引先で大きく変わります。
  1. 狙う分野を決める:装置の部品・手術器具・インプラントでは求められるものが大きく違います。自社の得意(難削材・微細・長尺・鏡面)に近い所から。近畿経済産業局の調査は、人とのつながり、最終製品の需要を客観的に見ること、仕様変更に歯止めがあり長く安定して作れる案件を選ぶこと、弱い所は外の知識を使うことを、成功のポイントに挙げています[76]。
  2. 仕組みを足す:ロットの追跡、変更の管理、洗浄・バリ・異物の手順、契約の型(承認仕様書・変更の通知)を、ISO 9001 の上に積みます。
  3. 試作と監査:メーカーの工場監査を受け、試作品と検査成績書を出します。洗浄や不動態化はバリデーションの記録まで求められます。
  4. 量産と ISO 13485:出荷実績ができたら認証へ[71]。認証は海外のメーカーや受託製造会社への営業にも効きます。

現実のハードルと対策

ハードル中身対策の例
勝手に変えられない適合に影響する変更は事前に知らせるのが書面の約束[61]。発注元の承認申請書に委託先の製造条件が書かれることもある[60]機械の入れ替え・工具や切削油の変更・外注先の変更を「変更」として扱う社内ルールを作る
長い立ち上がりISO 13485 だけで 1〜1.5 年、しかも出荷実績が要る[71]装置の部品など要求の軽い所から実績を作る
多品種少量・長期の供給医療機器は多品種少量の市場で、長く安定して作れるかが問われる[76]段取りの短縮、材料の確保、製造中止の通知の決まりを契約に
清浄度とバリデーション汚染管理・清浄管理・工程のバリデーションが求められる[61]洗浄・不動態化は専門の会社と組む。自社でやるなら記録まで
責任の不安部品メーカーが供給をためらう例がある[68]承認仕様書・条項例・保険で、責任の範囲を先に決める[64][66]
海外勢が強い整形用品は輸入が国内生産の約 3.9 倍[1]裏返せば国内の作り手が少ない。海外メーカーの日本法人や、国内で人工関節を作る会社に当たる

航空機・防衛と比べると

医療機器航空機防衛
品質の規格ISO 13485(部品の会社は任意)JIS Q 9100(取引先が求めることが多い)JIS Q 9100 など(品物による)
部品の会社にかかる法律原則なし(購買管理で要求が来る)原則なし(責任は発注側)契約の条項(監督・秘密の保全)
いちばん重いこと清浄度・変更の管理・追跡初回品検査・特殊工程(Nadcap)入札の資格・秘密の保全
主な材料チタン合金・Co-Cr・ステンレスアルミ合金・チタン合金・ニッケル合金品物による
需要の波比較的小さい(国内市場は伸び続けている)大きい(コロナで急減)予算しだい

チタン合金の加工や記録の管理は、航空機と医療の両方に効きます。実際、チタン合金のインプラントや内視鏡の部品を、航空機・半導体装置の部品と並べて作っている会社もあります[89]。

よくある質問

部品を削るだけでも、医療機器の製造業の登録は要りますか?
原則として要りません。製品の出来に実質的な責任を持つ発注元が登録します。ただし、滅菌を保証する部品を自社で滅菌する場合や、工程を丸ごと受けて製品に責任を持つ受託製造の場合は登録が要ります[60]。迷ったら発注元か都道府県の薬務課に確かめてください。
ISO 13485 が無いと取引できませんか?
法律上の義務はなく、取引先しだいです[69]。ただ、認証には出荷実績が要るので[71]、ISO 9001 と医療向けの手順(追跡・変更管理・洗浄)で最初の取引を始め、並行して取るのが現実的です。
事故が起きたら部品の会社も訴えられますか?
発注元の設計の指示どおりに作り、過失がなければ、製造物責任法の部品製造業者の抗弁で責任を負いません[67]。そのためにも承認仕様書を交わし、検査の記録を残します[64]。
どの分野がいちばん入りやすいですか?
体に触れない装置の部品は、インプラントに比べると清浄度などの要求が軽いことが多く、実績づくりに向いています(部品の役割しだいなので発注元に確かめてください)。手術器具・インプラントは要求が重い分、国内の作り手が少なく、とくに整形用品は輸入が国内生産の約 4 倍あります[1]。
材料はどこで買えますか?
図面に ISO 5832 や ASTM F136 などの規格で指定されるので、その規格のミルシートが付く材料を、発注元が認めた流通から買います。支給材になることもあるので、見積りの前に確かめます。

穴とはめあいは はめあい公差、表面処理の寸法は 黒染め・めっきの見分け方と寸法変化、工具の値上がりは タングステン高騰と超硬工具にまとめています。

出典・参考資料

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  2. 厚生労働省「令和 6 年 薬事工業生産動態統計年報の概要」(当初の公表)
  3. 薬事日報「【薬事工業生産動態統計令和 6 年年報修正版】医療機器生産 2 兆 6600 億円、輸入 3 兆 4500 億円」(2026 年 4 月)
  4. 内閣府『令和 8 年版 高齢社会白書』図 1-2-5(医療機器の国内市場規模の推移、PDF)
  5. 日本医療機器産業連合会「医療機器 年次推移」(PDF)
  6. 日本医療機器産業連合会 MDPRO ミニコラム第 226 号「2014 年の医療機器市場規模は約 2.8 兆円」(PDF)
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  10. オリンパス「2026 年 3 月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
  11. 富士フイルムホールディングス「2026 年 3 月期 決算短信〔米国基準〕(連結)」(PDF)
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  15. 薬事日報「日本光電 2026 年 3 月期決算」
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  21. Johnson & Johnson「Form 10-K(FY2025)」
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  117. 特許 US6412345B1「Balancing of rotational components of CT imaging equipment」
  118. 特許 US6367980B1「Ultra thin type rolling bearing and cage therefor」
  119. NTN「『CT スキャナ・ガントリ用低振動軸受』を開発」(2008 年)
  120. Franke「Application example Computer tomograph」
  121. Franke「Customer story: mill-turn technology for CT scanners」
  122. Moog「Key Slip Ring Technology Behind Medical CT Systems」
  123. Varex Imaging「GS-54715-L 製品データシート」(PDF)
  124. 特許 US8971480B2「System and method for mounting x-ray tube on a CT gantry」
  125. 特許 JP4301609B2「コンピュータ断層撮影システム用のコリメータ」
  126. 天板メーカーの製品ページ「X 線透過医用 天板」
  127. 渡邊次男ほか「MRI 用超電導マグネット」三菱電機技報 Vol.66 No.5(1992、PDF)
  128. 特許 US4771256A「Integral shield for MR magnet」
  129. 特許 JP6366948B2「磁気共鳴イメージング装置及び傾斜磁場コイル」
  130. 映像情報 Medical「富士フイルムヘルスケア、完全ゼロヘリウムの 1.5 テスラ超電導 MRI『ECHELON Smart ZeroHelium』」(2024 年)
  131. Philips プレスリリース(ECR2024、ヘリウムを減らした MR)
  132. Siemens Healthineers「MAGNETOM Flow」
  133. 日立製作所 研究開発「MRI に必要な磁場空間を急速に生成可能な二ホウ化マグネシウム超電導磁石を開発」(2021 年)
  134. 富士フイルム「永久磁石オープン MRI システムの新モデル新発売」(2026 年 7 月)
  135. インナービジョン「APERTO Lucent Plus(MRI 0.4T 永久磁石型)」
  136. シールドルーム施工会社のカタログ「MRI 装置用 電波・磁気シールドルーム」(PDF)
  137. ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー(JASTEC)「NbTi 超電導線」
  138. 特殊金属エクセル「非磁性ステンレス鋼」
  139. 大阪産業技術研究所 テクニカルシート No.18-10「低透磁率計による非磁性ステンレス鋼の品質管理」(2018、PDF)
  140. PMDA 医療安全情報 臨時号 No.3「MRI 検査時の注意について」(PDF)

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