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金属加工の会社が米国の防衛産業に参入するには:入口・SAM.gov と JCP・ITAR・CMMC・特別金属・ハードル

まずは SAM.gov と CAGE から!登録は無料、図面の管理は先に固めよう

マスコットのチップス
金属加工の会社が米国の防衛産業に参入するには:入口・SAM.gov と JCP・ITAR・CMMC・特別金属・ハードル

米国の防衛産業では、国防総省と取引する中小企業の数が 2011〜2020 年度に 4 割以上減り、国防総省(戦争省)はいま、中小企業や新しい会社の参入の壁を下げることを調達改革の柱に掲げています。旋盤・マシニング・研削・熱処理・表面処理の会社にとって、防衛は長く同じ部品を作り続けられる仕事ですが、入るには登録・輸出管理・サイバー・材料の産地と、独特の決まりがいくつも重なります。この記事では、入口の選び方、SAM.gov から JCP までの登録、ITAR の登録と外国人への開示、CMMC の最新の状態、特別金属と品質の要求、費用と支払いの現実を、連邦政府の一次資料をもとに順番にまとめました(2026 年 10 月時点)。

国防総省(陸海空軍・DLA など)発注者(契約担当官)。監督は DCMAプライム(元請け)国防総省と直接契約する大手(航空機・艦船・車両など)Tier 1・Tier 2構成品・サブシステムのメーカーTier 3 以下の専門会社機械加工・熱処理・表面処理・非破壊検査・板金・溶接← 金属加工の会社が最初に入りやすいのはここ発注入口 A:下請けプライム・Tier の協力会社に入口 B:DLA に直接補修部品を DIBBS で見積り入口 C:中小企業枠set-aside・SBIRD:無料の支援APEX・メンター制度・MEP契約で下まで降りてくるものサイバーの決まりDFARS 7012・SPRS・CMMC輸出の管理ITAR・EAR(外国人への開示も)材料の産地特別金属は米国か対象国で溶解品質の要求AS9100・初回品検査記録と監督DCMA・元請けの監査国防総省は、武器システムと非戦闘用の物品の生産に 20 万社を超えるサプライヤーが関わると見積もっています。下請けでも、元請けと同じサイバー・輸出管理・材料の決まりが契約の条項で付いてきます(フローダウン)。
米国の防衛サプライチェーンと参入の入口(概念図)。サプライヤー数は GAO-25-107283[3]、条項の下請けへの適用は DFARS の CMMC 規則[36]・252.204-7020[33]・252.225-7009[43] による。

いま米国の防衛産業が新しい会社を求めている理由

米会計検査院(GAO)の分析では、国防総省と契約した中小企業は 2011 年度の 42,723 社から 2020 年度の 24,296 社へ 43% 減りました。一方で中小企業への契約額は増え、2020 年度は 805 億ドル(2020 年度ドル)と 10 年で最も多くなっています。つまり「お金は増えたが、受け取る会社が減った」状態です[2]。GAO は 2025 年の報告でも、国防総省のサプライチェーンの見える化が原材料や部品の層まで届いておらず、外国への依存を把握しきれていないと指摘しました[3]。

2024 年度の連邦政府の契約額約 7,551 億ドルのうち、国防総省は 4,451 億ドルを占めます[4]。補修部品を一手に買う国防兵站局(DLA)だけでも 2025 年度に 518 億ドル超の物品とサービスを提供し[9]、契約の監督をする国防契約管理局(DCMA)は 30 万件を超える契約と 1 万 8,000 を超える契約者の事業所を担当しています[8]。

国防総省の調達費(Procurement、10 億ドル、名目)実績・成立額要求(審議中)$0$100$200$300$400120FY16126FY17148FY18149FY19144FY20143FY21156FY22182FY23205FY24187FY25224FY26413FY27TOA(総債務負担権限)。補正予算と義務的経費を含みます。FY2025・FY2026 には 2025 年の調整法(P.L. 119-21)の配分分が入っています。FY2027 は 2026 年 4 月の大統領の要求で、3,500 億ドルの義務的経費を次の調整法で得る前提を含みます(議会の審議で変わります)。
国防総省の調達費(Procurement)の推移。Green Book FY2027 の Table 6-1[5] の値から描いた。注記は FY2027 Overview Book[6] による。

2026 年度の国防総省の予算(TOA)は約 1 兆 150 億ドル、うち調達費が 2,238 億ドルです。2027 年度の要求は約 1 兆 4,500 億ドル、調達費は 4,131 億ドルと過去にない規模で、弾薬・無人機・造船などの調達と国内の生産能力の拡大を前面に出しています[5][7][6]。要求どおりに成立するとは限りませんが、作る量を増やす方向ははっきりしています。

2026 年 7 月には、国防総省がサイバー認証 CMMC の次の段階を止めました。理由として、認証の費用と手続きが中小企業や新しい会社を防衛産業から遠ざけている、と自ら説明しています[40]。「小さな会社の参入の壁を下げる」は、いまの調達改革の柱の一つです。

「戦争省」という名前について2025 年 9 月の大統領令で、国防総省(Department of Defense)は「戦争省(Department of War)」という名前も使えるようになりました。法律上の名称は国防総省のままで、規則や条項の名前(DoD・DFARS)もそのままです[1]。2026 年の公式サイトや資料は「DoW」の表記が多いので、同じ組織だと思って読んでください。

入口は 4 つ:まずは下請けから

入口どんな形か必要なもの向いている会社
A 下請け
(いちばん多い)
プライムや Tier 1・2 のサプライヤーになり、図面どおりの部品・加工・処理を納める元請けのサプライヤー審査(品質・サイバー・輸出管理・財務)。条項は注文書で付いてくる旋盤・マシニング・研削・熱処理・表面処理など、特定の工程に強い会社
B DLA に直接DLA が出す補修部品・消耗品の見積依頼(RFQ)に DIBBS で答えるSAM.gov・CAGE・DIBBS の登録。図面を見るには JCP。品目によってはソース承認小ロットの補修部品を図面から作れる会社
C 中小企業枠中小企業に限った入札(set-aside)や、研究開発の SBIR に応募するSBA の規模基準を満たすこと(機械加工は従業員 500 人以下)独自の加工技術・材料・検査がある会社
D 無料の支援APEX Accelerators・メンター制度・MEP で準備と取引先探しを手伝ってもらう相談の申し込みどこから始めるか決めかねている会社

入口 B:DLA の DIBBS で直接見積もる

DLA の武器支援部門(陸・海の部品を扱う Columbus、航空の部品を扱う Richmond)は、多くの見積依頼を DLA Internet Bid Board System(DIBBS)でしか受け付けません。始め方として DLA が示している順番は、①地元の APEX Accelerator に相談、②SAM.gov に登録して CAGE コードを得る、③DIBBS に登録、④CMMC と SPRS の準備、⑤必要なら JCP の認証、⑥見積依頼を探して応札、です。2.5 万ドルを超える調達は SAM.gov にも公示されます[10]。

「承認済みの製造元」だけの品目もある安全に関わる部品などは、承認された製造元と部品番号からしか買わない品目があります。新しく作れるようになりたい会社は、DLA にソース承認要求(SAR)を出します。見積依頼がなくても出せますが、図面・製造計画・検査データをそろえる必要があり、審査には通常 90〜120 日かかります。承認されても受注の保証にはなりません[49]。

入口 C:中小企業の枠と SBIR

  • 中小企業に限った入札:1.5 万ドル(マイクロ購入の上限)を超え 35 万ドル(簡易調達の上限)以下の調達は、2 社以上の中小企業から適正な価格・品質・納期の応札が見込めれば、原則として中小企業に限られます。35 万ドルを超えても同じ見込みがあれば限定されます(「ルール・オブ・ツー」)[21][22]。
  • 下請けに出せる上限:中小企業限定の物品の契約(35 万ドル超)を取った会社は、受け取る額の 50% を超えて、同じ立場でない会社に下請けに出せません。材料費は下請けに数えません[23]。
  • SBIR:研究開発の資金で、Phase I は 6〜12 か月・5 万〜27.5 万ドル、Phase II は 24 か月・75 万〜180 万ドルが目安。政府は株式も知的財産も取りません[18]。制度は 2025 年 9 月末に期限が切れましたが、2026 年 4 月 13 日に 2031 年 9 月 30 日までの延長が成立しています[17]。新しい加工法(難削材・積層造形の後加工・検査の自動化など)を事業にしたい会社向けです。

相談は無料の窓口から国防総省の中小企業プログラム室が資金を出す APEX Accelerators は全米に 90 か所を超え、登録の手伝いや入札書類の確認を無料で行います[14]。国防総省の Mentor-Protégé Program では、国防総省と取引のある大手(多くは元請け)がメンターになり、2〜3 年かけて中小企業に品質・調達・サイバーを教えながら仕事を回します(申請はメンター側が出す)[15]。州ごとに置かれた MEP(製造業支援センター、50 州とプエルトリコに 450 か所超)は、サイバーセキュリティを含む改善の相談に乗ります[16]。

登録の順番:SAM.gov・CAGE・NAICS・JCP

  1. SAM.gov に事業者登録:連邦政府と取引するための登録で、ここで固有の事業者番号 UEI が付きます。365 日ごとに更新が要ります[13]。登録は無料で、「登録を代行する」「更新しないと失効する」と料金を求める連絡は政府のものではありません[12]。
  2. CAGE コード:DLA の CAGE Program Office が付ける 5 文字の識別子で、SAM.gov の登録の中で自動的に申請されます。処理に最大 10 営業日ほどかかります[11]。元請けのサプライヤー登録でも、まずこの番号を聞かれます。
  3. NAICS コードと規模を確かめる:機械加工(332710 Machine Shops)の中小企業の基準は従業員 500 人です[19]。従業員は直近 24 か月の平均で、パートや派遣、国内外の関連会社(親会社を含む)も合算します[20]。
  4. JCP の認証(DD Form 2345):輸出管理の対象になっている軍の技術データ(図面など)を DLA から受け取るのに要ります。米国かカナダに所在すること、SAM.gov と CAGE、NIST SP 800-171 の評価を SPRS に登録済みであることが条件です。5 年ごとの更新で、新規も更新も必要な日の 120 日以上前に申し込むよう求められています。社内のデータ管理者(Data Custodian)も決めます[24]。
NAICS業種中小企業の上限(従業員)
332710Machine Shops(機械加工)500 人
332721Precision Turned Product Manufacturing(精密旋削品)500 人
332811Metal Heat Treating(熱処理)750 人
332813Electroplating, Plating, Polishing, Anodizing and Coloring(めっき・陽極酸化)500 人

金属加工に関係する NAICS の規模基準(13 CFR 121.201、2026 年 10 月時点)[19]。案件ごとに契約担当官が NAICS を指定します。

ITAR と EAR:作るだけで登録が要る

防衛品目の図面を扱う会社がつまずきやすいのが輸出管理です。米国軍需品リスト(USML)に載る品目(defense articles)を米国で製造する会社は、輸出しなくても国務省の国防貿易管理局(DDTC)に登録しなければなりません。製造は 1 回だけでも該当します[25]。図面どおりに削るだけの下請けでも、その部品が USML の品目なら同じです。

DDTC 登録料の区分対象年額
Tier 1新規の登録者、前年に許可などを受けていない登録者$3,000
Tier 2許可などを 5 件以下受けた登録者$4,000
Tier 3許可などを 6 件以上受けた登録者$4,000 + 5 件を超えた 1 件ごとに $1,100

ITAR の登録料(22 CFR 122.3、2025 年 1 月から)[26]。件数は更新の期限の 90 日前までの 12 か月で数えます。

  • 外国人に図面を見せるのも「輸出」:米国内でも、外国人(米国の市民・永住権者などでない人)に技術データを見せたり渡したりすると輸出とみなされ、許可が要ります。部品を見せて技術データが分かる場合も同じです[28]。EAR にも同じ「みなし輸出」の考え方があります[29]。社員・派遣・来客・外部の CAD 担当者まで、誰が図面に触れるかを決めておきます。
  • 変更はすぐ届け出る:社名・住所・所有や支配の変更は 5 日以内に、外国人への所有・支配の譲渡は 60 日前までに DDTC へ通知します[27]。外国資本からの出資や売却を考えている会社は、早めに確かめます。
  • EAR の「600 番台」:以前 USML にあった軍用品目の多くは、商務省の規制品目リスト(CCL)の「600 番台」の番号で管理されています[30]。USML から外れても規制がなくなったわけではありません。どちらに当たるかは元請けの指定を確認し、迷うときは管轄の判定を求めます。

サイバーの決まり:DFARS 7012・SPRS・CMMC

防衛の図面・仕様書・工程表は、多くが管理された非機密情報(CUI)に当たります。これを扱う会社のシステムには、契約条項 DFARS 252.204-7012 によって NIST SP 800-171 の管理策がかかり、サイバー事案は発見から 72 時間以内に報告します。条項の「技術情報」には、図面・仕様書・工程表(process sheets)がはっきり含まれています[31]。

  • SPRS のスコア:NIST SP 800-171 を実装すべき会社は、3 年以内の評価の要約スコアを国防総省の Supplier Performance Risk System(SPRS)に登録していないと受注の対象になりません。元請けも、評価のない下請けには仕事を出せません。最初は自社で行う Basic Assessment で構いません[32][33]。
  • 基準は Rev.2:NIST SP 800-171 は 2024 年 5 月に Rev.3 が出ましたが[34]、国防総省の CMMC は引き続き Rev.2 の 110 項目を基準にしています[38][41]。
CMMC のレベル守る情報と要求評価のしかた2026 年 10 月の扱い
Level 1連邦契約情報(FCI)。FAR 52.204-21 の 15 項目毎年の自己評価と確認(SPRS に登録)。未達の項目を後で直す計画(POA&M)は不可求められる
Level 2CUI。NIST SP 800-171 Rev.2 の 110 項目3 年ごとの評価と毎年の確認。自己評価か、第三者の審査機関(C3PAO)による審査自己評価だけ求められる(C3PAO は停止中)
Level 3重要な CUI。NIST SP 800-172 から選んだ 24 項目国防総省の DIBCAC が審査停止中

CMMC のレベル(32 CFR 170.14・170.21)[38][39] と、2026 年 10 月時点の扱い[41]。Level 2 は得点が満点の 8 割以上などの条件で「条件付き」の状態が認められ、180 日以内に残りを直します。

2024 年 12 月 16 日32 CFR Part 170 が発効CMMC の仕組みが決まる2025 年 11 月 10 日Phase 1 開始(DFARS 規則が発効)L1・L2 の自己評価を受注条件に2026 年 7 月 13 日Phase II を停止、60 日の見直しPhase 1 のまま一時停止2026 年 11 月 10 日(予定だった)Phase 2:L2 の第三者審査(C3PAO)を受注条件に2027〜2028 年(予定だった)Phase 3・4:L3(DIBCAC)と全面適用2026 年 10 月時点:Phase 1 のまま一時停止中。求められるのは Level 1・Level 2 の自己評価だけ。DFARS 252.204-7012 の義務、SPRS への登録、毎年の確認は続いています。見直しの結論はまだ公表されていません。
CMMC の導入の経緯。日付は Federal Register の 2 つの規則[35][36]、段階の決まり(32 CFR 170.3)[37]、国防総省の発表[40] と CIO のページ[41] による。Phase 2 以降の日付は、停止前の規則から計算した予定日。

CMMC は 2025 年 11 月 10 日に Phase 1 が始まり、1 年後の 2026 年 11 月 10 日から第三者審査(C3PAO)を受注条件にする予定でした。ところが国防総省は 2026 年 7 月 13 日に Phase II の導入を即時停止し、以後の段階もいったん止めて、60 日で制度全体を見直す作業班を作りました。その間は、自己評価と一部の政府による評価で NIST SP 800-171 Rev.2 の順守を確かめるとしています[40][41]。2026 年 9 月には、FAR の全面改定(Revolutionary FAR Overhaul)の一環で DFARS Part 240 の暫定規定(class deviation)も改訂されており、条項の置き場所や番号は今後移る可能性があります[42]。

止まったのは「審査」で、「守る義務」ではない国防総省は、停止は CUI を守る義務をなくすものではなく、DFARS 252.204-7012 の契約上の義務はそのまま続くと明言しています[40]。自己評価は、会社の責任者が毎年 SPRS で「守り続けている」と表明するものなので[36]、実態と違えば責任を問われるおそれがあります。見直しの結果、第三者審査が形を変えて戻る可能性もあるので、「止まったから何もしない」は危険です。

費用の目安として、国防総省は CMMC の規則の中で、中小企業 1 社あたりの評価の費用を、Level 1 の自己評価が年 5,977 ドル、Level 2 の自己評価が 3 年で 37,196 ドル、Level 2 の C3PAO の審査が 3 年で 104,670 ドルと見積もっていました。いずれも NIST SP 800-171 をすでに実装している前提の評価の費用で、機器の入れ替えや社内の仕組みづくりの費用は含みません[35]。

小さな会社の現実的な一歩CUI を扱う場所をできるだけ狭くするのが近道です。防衛の図面を扱う PC・CAM 端末・ファイル置き場を社内の他のネットワークから分け(エンクレーブ)、USB と私用のメールを使わない、扱う人を決めてアカウントを分ける、入退室を記録する――ここから始めると、評価の範囲も費用も小さくできます。MEP や APEX でも相談できます[16][14]。

品質と材料:AS9100・初回品検査・特別金属

FAR は、複雑または重要な品目の契約に「上位の品質要求」を入れるよう定めていて、その例として ISO 9001、SAE AS9100、AS9003 などを挙げています[47]。航空機・ミサイル向けの部品では、元請けが AS9100 の認証をサプライヤーの条件にすることが多く、部品ごとに初回品検査(FAI)の記録を AS9102 の様式で求められます。AS9102 は 2023 年 6 月に C 版に改訂されています[48]。図面が引用する MIL 規格や仕様書は、DLA の ASSIST で番号から検索できます[50]。国防総省の契約は DCMA が監督し、約 9,200 人の職員が各地の事務所や契約者の工場で、品質・納期・費用を確かめています[8]。熱処理・めっき・溶接のように、あとから製品を見ても良し悪しが分からない工程は、温度や液の管理、作業者の資格まで記録で示せるようにしておきます。

特別金属(DFARS 252.225-7009)

金属加工の会社に直接響くのが、特別金属(specialty metals)の産地の決まりです。国防総省に納める品物に含まれる特別金属は、米国・その準州・対象国(qualifying country)で溶解または製造されたものでなければなりません[43]。

特別金属に当たるもの条件金属加工でよく出る例(目安)
鋼Mn 1.65%・Si 0.60%・Cu 0.60% のいずれかを超える、または Al・Cr・Co・Mo・Ni・Nb・Ti・W・V のいずれかを 0.25% を超えて含むステンレス鋼、クロムモリブデン鋼などの合金鋼、工具鋼
ニッケル合金・鉄ニッケル合金ニッケルと鉄以外の合金元素の合計が 10% を超えるNi 基耐熱合金(718・625 など)
コバルト合金コバルトと鉄以外の合金元素の合計が 10% を超える耐摩耗・耐熱のコバルト基合金
チタン・ジルコニウム純金属と合金のすべてTi-6Al-4V など

特別金属の定義(DFARS 252.225-7009(a))[43]。普通の炭素鋼やアルミ合金は、上の条件に当たらなければ対象外。例の列は編集部の目安で、成分はミルシートで確かめます。

  • 対象国:日本・カナダ・英国・ドイツ・フランス・イスラエル・トルコなど 27 か国です(オーストリアは個別に判断)。中国・台湾・韓国・インドは入っていません[44]。材料を買うときは、ミルシートで溶解した国を確かめ、記録を残します。
  • 2% の例外:最終品に含まれる特別金属の総重量の 2% 以下なら、産地が合わない特別金属が混ざっていても構いません(高性能磁石は除く)。電子部品なども例外です[43]。ただし、これは「最終品の重量で 2%」なので、主要な部品の材料には使えないと考えます。
  • Berry Amendment:食品・衣料・繊維などのほか、手工具と測定工具を納める場合も米国製に限られます[45]。工具や治具そのものを納品物として作るときに注意します。
  • 偽造部品の対策:電子部品は、すべての階層で原製造元か正規の代理店などから買うことが求められます[46]。金属部品の会社でも、センサーや配線を組み込んだユニットを納めるときは関係します。

参入までの順番(目安)

0〜3 か月棚卸しと登録・SAM.gov・CAGE(無料)・APEX に相談・図面が ITAR か確かめる3〜12 か月仕組みを作る・NIST SP 800-171・SPRS・ISO 9001 → AS9100・材料の溶解国の記録1〜2 年下請けで実績・元請けのサプライヤー審査・初回品検査(AS9102)・DDTC 登録・JCP2 年〜広げる・DIBBS で直接応札・中小企業枠・SBIR・ソース承認(SAR)
参入までの順番の目安(会社の規模や狙う品目で大きく変わります)。
  1. 強みを書き出す:難削材(チタン・耐熱合金・高強度鋼)、深穴・薄肉・大物、厳しい公差、熱処理や表面処理までの一貫、少量多品種、何十年も同じ部品を作り続けられる体制など。
  2. SAM.gov と CAGE を取り、APEX に相談:どれも無料です[12][14]。元請けのサプライヤーポータルへの登録にも CAGE が要ります。
  3. サイバーと品質の土台を先に:CUI を扱う範囲を決めて NIST SP 800-171 の自己評価を行い、SPRS に登録します[32]。品質は ISO 9001 から AS9100 へ。
  4. 材料と記録の管理:ミルシートで溶解国を確かめ、ロットと結びつけて保管します[43]。初回品検査の記録を出せるようにします。
  5. 実績ができたら広げる:USML の部品を作るなら DDTC 登録、DLA の図面を見るなら JCP、補修部品の承認された製造元になりたいなら SAR へ[25][24][49]。

現実のハードルと対策

ハードル中身対策の例
サイバーの費用と先行き評価だけで数千〜十万ドル規模の見積り。CMMC は見直し中で、第三者審査がどう戻るか未定[35][41]CUI を扱う範囲を狭くする。自己評価を正直に登録し、計画的に直す
支払いと資金繰り通常の支払期日は請求書の受領か検収の遅いほうから 30 日目[52]。国防総省は中小企業への支払いを 15 日目標で早める方針[51]。下請けの条件は元請けとの交渉しだい請求の様式・受入れの手順を最初に確認。運転資金に余裕を持つ
輸出管理の負担DDTC の登録料は年 3,000 ドルから。外国人の社員や来客への図面の開示も輸出になる[26][28]図面に触れる人と場所を決める。採用・来客・外注の手順に入れる
材料の調達特別金属は米国か対象国で溶解したものに限られ、安い輸入材が使えないことがある[43][44]防衛用の材料は仕入れ先を分け、溶解国を記録する
承認と実績の壁承認済みの製造元からしか買わない品目がある。SAR の審査は 90〜120 日[49]同じ部品を元請け向けに作った実績を先に積む
機密と外国資本機密を扱う施設クリアランスは自分で申請できず、政府か元請けのスポンサーが要る。外国の資本が経営を左右できる会社は FOCI の緩和策が求められる[53][54]部品加工の下請けで機密を扱うことは多くない。まず非機密の仕事から

向いている会社・慎重に考えたい会社

向いている
  • 難削材や厳しい公差の仕事を、すでに航空・医療などで受けている
  • ミルシート・検査成績書・トレーサビリティの管理ができている
  • 図面データを扱う人と端末を絞り込める規模と体制がある
  • 少量多品種と、長く同じ部品を作り続けることに慣れている
慎重に考えたい
  • 材料をほぼ対象国以外からの輸入材に頼っている
  • CAD/CAM のデータを社外の外国人の担当者と自由にやり取りしている
  • 売上の大半を防衛に頼る計画になっている(予算と方針の変化を受けやすい)
  • 外国資本の売却・出資の話が進んでいる(ITAR の届け出や FOCI に関わる)

日本の防衛参入との違い

項目米国日本
直接取引の登録SAM.gov(無料、365 日ごとに更新)と CAGE[13][11]全省庁統一資格(3 年ごとに更新審査)[55]
サイバーの基準DFARS 252.204-7012・NIST SP 800-171・SPRS・CMMC[31][41]防衛産業サイバーセキュリティ基準(防衛装備庁は NIST SP 800-171 と同等と説明)[56]
無料の相談窓口APEX Accelerators(全米に 90 か所超)[14]防衛装備庁の新規参入相談窓口[57]

よくある質問

従業員 20 人の町工場でも参入できますか?
できます。国防総省は中小企業の減少を問題にしていて、APEX Accelerators やメンター制度などの無料の支援を用意しています[2][14][15]。まず元請けの下請けか、DLA の小口の補修部品から入るのが一般的です。
CMMC が止まったなら、サイバー対策は後回しでいいですか?
よくありません。止まったのは第三者審査の導入で、DFARS 252.204-7012 の義務、SPRS へのスコアの登録、Level 1・Level 2 の自己評価と毎年の確認は続いています[40][41]。元請けは、評価のスコアがない下請けに対象の仕事を出せません[33]。
SAM.gov の登録に費用はかかりますか?
かかりません。登録も更新も無料です。料金を求める業者の連絡は政府のものではありません[12]。登録は 365 日ごとに更新します[13]。
輸出しないのに ITAR の登録が要るのはなぜですか?
ITAR は、USML の品目を米国で製造する会社に、輸出の有無にかかわらず DDTC への登録を求めているからです。製造が 1 回だけでも当てはまります[25]。部品が USML に当たるかは、元請けの指定と図面の注記を確かめます。
日本製の材料は使えますか?
日本は特別金属の対象国に入っているので、日本で溶解された特別金属は使えます[43][44]。中国・台湾・韓国・インドで溶解されたものは対象国に当たらないので、2% の例外などに当たらない限り使えません。

防衛向けで多い難削材の加工条件は 材料データベース、穴とはめあいは はめあい公差、表面処理の寸法は 黒染め・めっきの見分け方と寸法変化にまとめています。

出典・参考資料

  1. Federal Register「Restoring the United States Department of War」(大統領令、90 FR 43893、2025 年 9 月 10 日)
  2. GAO-22-104621「Small Business Contracting: Actions Needed to Implement and Monitor DOD's Small Business Strategy」(2021 年 10 月)
  3. GAO-25-107283「Defense Industrial Base: Actions Needed to Address Risks Posed by Dependence on Foreign Suppliers」(2025 年 7 月)
  4. GAO「A Snapshot of Government-Wide Contracting for FY 2024」(2025 年 6 月)
  5. Office of the Under Secretary of War (Comptroller)「National Defense Budget Estimates for FY 2027」(Green Book、Table 6-1、PDF)
  6. Office of the Under Secretary of War (Comptroller)「FY 2027 Budget Request Overview Book」(2026 年 4 月、PDF)
  7. Congressional Research Service R49023「FY2027 Defense Budget: Funding for Selected Weapon Systems」(2026 年 9 月更新)
  8. Defense Contract Management Agency「About DCMA」
  9. Defense Logistics Agency「About the Defense Logistics Agency」
  10. DLA Office of Small Business Programs「Getting Started: Doing Business With DLA」
  11. DLA「Registration, Renewal, and CAGE Creation in System for Award Management (SAM)」
  12. GSA「Don't Take the Bait: Beware of Misleading Marketing, Imposters, and Phishing」(2023 年 5 月)
  13. SAM.gov「Entity Registration」
  14. DoD Office of Small Business Programs「APEX Accelerators」(2025 年 5 月、PDF)
  15. DLA「Mentoring Small Business Programs」(Mentor-Protégé Program)
  16. NIST「Manufacturing Extension Partnership (MEP)」
  17. SBA News release 26-43「Administrator Loeffler Applauds SBIR-STTR Reauthorization」(2026 年 4 月 13 日)
  18. SBIR.gov「America's Seed Fund」
  19. eCFR 13 CFR 121.201「What size standards has SBA identified by NAICS codes?」
  20. eCFR 13 CFR 121.106「How does SBA calculate number of employees?」
  21. eCFR 48 CFR 2.101(FAR)Definitions
  22. eCFR 48 CFR 19.502-2(FAR)Total small business set-asides
  23. eCFR 13 CFR 125.6「What are the prime contractor's limitations on subcontracting?」
  24. DLA「Joint Certification Program (JCP)」
  25. eCFR 22 CFR 122.1(ITAR)Registration: requirements, exemptions, and purpose
  26. eCFR 22 CFR 122.3(ITAR)Registration fees
  27. eCFR 22 CFR 122.4(ITAR)Notification of changes in information furnished by registrants
  28. eCFR 22 CFR 120.50(ITAR)Export
  29. eCFR 15 CFR 734.13(EAR)Export
  30. eCFR 15 CFR 772.1(EAR)Definitions("600 series")
  31. eCFR 48 CFR 252.204-7012(DFARS)Safeguarding Covered Defense Information and Cyber Incident Reporting
  32. eCFR 48 CFR 252.204-7019(DFARS)Notice of NIST SP 800-171 DoD Assessment Requirements
  33. eCFR 48 CFR 252.204-7020(DFARS)NIST SP 800-171 DoD Assessment Requirements
  34. NIST「SP 800-171 Rev. 3 Protecting Controlled Unclassified Information in Nonfederal Systems and Organizations」
  35. Federal Register「Cybersecurity Maturity Model Certification (CMMC) Program」(32 CFR Part 170、89 FR 83092、2024 年 10 月 15 日)
  36. Federal Register「DFARS: Assessing Contractor Implementation of Cybersecurity Requirements」(48 CFR、90 FR 43560、2025 年 9 月 10 日)
  37. eCFR 32 CFR 170.3 Applicability(段階導入)
  38. eCFR 32 CFR 170.14 CMMC Model
  39. eCFR 32 CFR 170.21 Plan of Action and Milestones requirements
  40. U.S. Department of War「Forging the Arsenal of Freedom: Department of War Suspends CMMC Phase II Requirements」(2026 年 7 月 13 日)
  41. DoW Chief Information Officer「About CMMC」(2026 年 10 月 14 日閲覧)
  42. Defense Pricing, Contracting, and Acquisition Policy「DFARS Revolutionary FAR Overhaul Class Deviations」
  43. eCFR 48 CFR 252.225-7009(DFARS)Restriction on Acquisition of Certain Articles Containing Specialty Metals
  44. eCFR 48 CFR 225.872-1(DFARS)General(qualifying countries)
  45. eCFR 48 CFR 225.7002-1(DFARS)Restrictions(Berry Amendment)
  46. eCFR 48 CFR 246.870-2(DFARS)Contractors' counterfeit electronic part detection and avoidance: Policy
  47. eCFR 48 CFR 46.202-4(FAR)Higher-level contract quality requirements
  48. SAE International「AS9102C Aerospace Series - First Article Inspection Requirements」(2023 年 6 月)
  49. DLA「The Source Approval Request (SAR) Process」(2023 年 5 月、PDF)
  50. DLA「ASSIST QuickSearch」(防衛規格・仕様書の検索)
  51. eCFR 48 CFR 232.009-1(DFARS)General(中小企業への早期支払い)
  52. eCFR 48 CFR 32.904(FAR)Determining payment due dates
  53. eCFR 32 CFR 117.9(NISPOM)Entity eligibility determination for access to classified information
  54. eCFR 32 CFR 117.11(NISPOM)Foreign Ownership, Control, or Influence (FOCI)
  55. 防衛省「入札参加資格」
  56. 防衛装備庁「情報セキュリティ基準に関するよくあるご質問」(2024 年 10 月、PDF)
  57. 防衛装備庁「防衛産業への参入促進について」

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