幾何公差
14 の幾何特性・公差記入枠・データム・最大実体公差方式・突出公差域・共通公差域・TED。46 語。用語ごとに、意味・図面への書き方・具体例・よくある間違い・JIS と ASME の違いをまとめています。
▦幾何特性の記号の一覧
| 記号 | 名前 | 英語 |
|---|
| ⏤ | 真直度 | straightness |
| ⏥ | 平面度 | flatness |
| ○ | 真円度 | roundness / circularity |
| ⌭ | 円筒度 | cylindricity |
| ⌒ | 線の輪郭度 | profile of a line / line profile |
| ⌓ | 面の輪郭度 | profile of a surface / surface profile |
| ∥ | 平行度 | parallelism |
| ⟂ | 直角度 | perpendicularity / squareness |
| ∠ | 傾斜度 | angularity |
| ⌖ | 位置度 | position / true position |
| ◎ | 同軸度 | coaxiality |
| ◎ | 同心度 | concentricity |
| ⌯ | 対称度 | symmetry |
| ↗ | 円周振れ | circular run-out |
| ⌰ | 全振れ | total run-out |
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幾何公差きかこうさgeometrical tolerance / GD&T
形(真っすぐさ・平らさ・丸さ)、姿勢(平行・直角・傾き)、位置、振れについて、許される狂いの範囲(公差域)を記号と数値で指示する公差。サイズ公差では表せない設計意図を伝えられる。[1][2][3][4]
公差記入枠の例図面への書き方
- 公差記入枠で指示する幾何特性の記号・公差値・データムを公差記入枠に書き、指示線で対象の形体に結ぶ。[5][3]
- データムの要否を確かめる形状公差はデータム不要、姿勢公差と振れ公差はデータムが必要。位置度は JIS B 0021 の表では「要・否」。[6][2][7]
例板の上面に「∥|0.02|A」(A=下面)と平行度を指示すると、厚さが公差内でも斜めに削れた板や反った板を不合格にできる。
(資料の決まりから組み立てた例)[1][4] よくある間違い
- サイズ公差だけで平行や直角を期待するなぜ:厚さの寸法公差だけでは上下面の平行は保証されず、斜めの板が納品されても図面上は合格になる。キーエンスはこの責任は加工側ではなく設計者の指示にあるとしている。対策:機能に必要な形状・姿勢を幾何公差で指示する。[1][4][2]
JIS と ASME記号の大半は ISO・JIS・ASME で共通だが、ASME Y14.5-2018 は同心度と対称度を廃止した。また不均等な輪郭度 Ⓤ や連続形体 CF など ASME だけの記号がある。
[12][3][13][14] 規格:JIS B 0021:1998(形状・姿勢・位置・振れの公差表示方式)、データムは JIS B 0022。国際規格は ISO 1101:2017、米国は ASME Y14.5-2018。[8][9][10][11]
関連:公差記入枠公差域データム独立の原則
公差記入枠こうさきにゅうわくfeature control frame / tolerance frame
幾何公差を書き込む長方形の枠。左から順に、幾何特性の記号、公差値(必要なら前に φ や Sφ)、付加記号、データム文字を区切って書く。[5][2][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 左から順に区切って書く1区画目に幾何特性の記号、2区画目に公差値(mm)と付加記号(Ⓜ・Ⓛ・CZ など)、3区画目以降にデータム文字を書く。[5][3]
- φ が要る特性公差域が円や円筒になるときに φ を付ける。2次元の円:位置度・同心度、3次元の円筒:真直度・平行度・直角度・傾斜度・位置度・同軸度、球:位置度(Sφ)。[5][7]
- データムは優先順に左から複数のデータムは優先順位の高い順に左から並べる。[5][2]
- 指示線で形体に結ぶ枠の端から指示線を引き、矢を対象に当てる。寸法線の延長に当てると中心(軸線・中心面)、ずらして外形線に当てると表面が対象になる。[15][16][7]
例「⌖|φ0.05 Ⓜ|A|B|C」:位置度、直径 0.05 の円筒公差域、最大実体公差方式、データムは A→B→C の順。
(資料の決まりから組み立てた例)[5][2] よくある間違い
- データムの順番を思いつきで並べるなぜ:優先順位が変わると、同じ部品でも測り方と結果が変わる。対策:機能上・組立上の重要度の順に、左から書く。[5][2]
JIS と ASMEASME でも feature control frame の並びは同じ(記号・公差値・修飾記号・データム)。
[3] 規格:JIS B 0021:1998、ISO 1101。[8][9]
関連:幾何公差データム系(三平面データム系)公差域
公差域こうさいきtolerance zone
幾何公差で、形体が入っていなければならない領域。対象と記号によって、平行二直線・平行二平面・円・円筒・同心円・同軸円筒・球などの形になる。[6][7][2]
図面への書き方
- 点の公差域点が対象なら、その点を中心とした円(平面内)または球。[6][7]
- 線の公差域直線が対象なら、公差値の半分ずつ離れた平行二平面、または φ を付けた直径 t の円筒。[6][2]
- 方向の指定平行二平面の公差域は、指示線の矢の方向に幅 t を取る。[17][7]
規格:JIS B 0021:1998 の 18(公差域の定義)。[7][8]
関連:公差記入枠
単独形体・関連形体たんどくけいたい・かんれんけいたいsingle feature / related feature
データムに関係なく形体そのものだけで公差が決まるものを単独形体、データムとの関係で姿勢・位置・振れの公差を決めるものを関連形体という。[6][2]
図面への書き方
- 記入枠の違い単独形体の記入枠にはデータム欄がなく、関連形体の記入枠にはデータム欄がある。[6][2][5]
規格:JIS B 0021:1998。[8]
関連:形状公差姿勢公差
外殻形体・誘導形体がいかくけいたい・ゆうどうけいたいintegral feature / derived feature
外殻形体は表面や表面上の線のように実体のある形体、誘導形体は外殻形体から導かれる中心線・中心面・中心点。公差記入枠の矢の当て方で、どちらを規制するかが変わる。[18][16][12]
図面への書き方
- 表面を指すとき矢を寸法線からずらして外形線(またはその延長)に当てる。[19][16]
- 中心を指すとき矢をサイズ形体の寸法線の延長に当てる。[19][15]
よくある間違い
- 軸線を規制したいのに表面に矢を当てるなぜ:表面の母線が規制対象になり、軸の曲がりは規制されない。対策:中心を規制するなら寸法線の延長に矢を当てる。[16][19]
規格:形体の用語は JIS B 0672-1(JIS B 0001 の引用規格)。[20]
関連:サイズ形体真直度
形状公差けいじょうこうさform tolerance
データムを使わず、形体そのものの形の狂いを規制する公差。真直度・平面度・真円度・円筒度と、データムを持たない線の輪郭度・面の輪郭度がある。[15][2][7][3]
図面への書き方
- 記入枠はデータム欄なし「記号|公差値」の2区画で書く。[2][5]
規格:JIS B 0021:1998 の 18.1〜18.5、18.7、ISO 1101。[7][8][9]
関連:幾何公差
姿勢公差しせいこうさorientation tolerance
データムに対して、形体があるべき向き(平行・直角・決まった角度)からどれだけ傾いてよいかを規制する公差。平行度・直角度・傾斜度と、データム付きの線・面の輪郭度。[17][2][7][3]
図面への書き方
- 記入枠はデータム欄あり「記号|公差値|データム」で書き、基準の面や軸にデータム記号を付ける。[17][2]
規格:JIS B 0021:1998 の 18.6、18.8〜18.11、ISO 1101。[7][8][9]
関連:幾何公差
位置公差いちこうさlocation tolerance
データムと理論的に正確な寸法で決めた位置(真位置)に対して、形体がどれだけずれてよいかを規制する公差。位置度・同心度・同軸度・対称度と、データム付きの線・面の輪郭度。[21][2][7][3]
図面への書き方
- 位置は TED、記入枠にデータム理論的に正しい位置を TED で示し、記入枠にデータムを書く。[6][2]
規格:JIS B 0021:1998 の 18.12〜18.14、ISO 1101。[7][8][9]
関連:幾何公差
振れ公差ふれこうさrun-out tolerance
データム軸直線の周りに部品を回転させたときの、表面の振れの大きさを規制する公差。円周振れと全振れがある。必ずデータムが必要。[22][2][7][3]
図面への書き方
- 回転の基準をデータムに軸受部など回転の基準になる部分をデータム(両端なら共通データム A-B)にする。[7][22]
規格:JIS B 0021:1998 の 18.15〜18.16、ISO 1101。[7][8][9]
関連:幾何公差
⏤真直度しんちょくどstraightness
直線形体(表面上の線、円筒の母線、軸線)の真っすぐさの狂いを規制する形状公差。データムは使わない。[15][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記入枠「⏤|公差値」。データム欄はない。[5][2]
- 表面の線を規制するとき矢を寸法線からずらして外形線に当てる。公差域は指定した方向の平行二直線(円筒の母線なら平行二平面)。[7][19]
- 軸線を規制するとき直径の寸法線の延長に矢を当て、公差値の前に φ を付ける。公差域は直径 t の円筒。[15][2][7]
例φ20 の軸の直径寸法に「⏤|φ0.1」を結ぶと、軸線が直径 0.1 mm の円筒の中に入っていなければならない。
(資料の決まりから組み立てた例)[15][2] よくある間違い
- 軸線を規制したいのに表面に矢を当てるなぜ:母線の真直度になり、軸線の曲がりは規制されない。対策:軸線なら寸法線の延長に矢を当て、φ を付ける。[16][15][7]
- ハイトゲージの読みをそのまま真直度にするなぜ:品物の傾きや当てる強さで値が変わり、不安定になる。対策:両端の高さをそろえて傾きを除いてから読むか、三次元測定機を使う。[23]
JIS と ASMEASME でも表面の真直度と軸線の真直度を区別する点は同じ。ASME ではサイズ形体の表面の真直度は、Rule #1 によりサイズ公差でも規制される。
[3][13] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.1、ISO 1101。[7][8][9]
関連:形状公差平面度
⏥平面度へいめんどflatness
平面の平らさの狂いを規制する形状公差。表面全体が、距離 t だけ離れた平行二平面の間に入っていなければならない。[15][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記入枠「⏥|公差値」。矢は対象の面の外形線(またはその延長)に当てる。[2][15]
- 離れた複数の面を1つの公差域で同じ平面にそろえたい複数の面には、公差値の後に CZ を付ける。[2]
例「⏥|0.08」:その表面は 0.08 mm 離れた平行二平面の間になければならない。
[7] よくある間違い
- 相手面との平行が必要なのに平面度だけを付けるなぜ:平面度はデータムを持たないので、基準面との平行は規制されない。対策:基準面に対する平行が必要なら平行度を指示する。[17][3]
- ダイヤルゲージを手で動かして測るなぜ:動かし方で測定点が変わり、値が安定しない。対策:定盤上で測定点を決めて測るか、三次元測定機を使う。[24][2]
JIS と ASMEASME では、板厚のようなサイズ形体の表面の平面度は Rule #1 によりサイズ公差の中で自動的に規制される。キーエンスの例では、ISO なら平面度は指示値のまま、ASME では最大実体の境界が優先される。米国の教材も「平面度の値は関係するサイズ公差より小さくする」としている。
[13][3] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.2、ISO 1101。[7][8][9]
関連:形状公差平行度共通公差域
○真円度しんえんどroundness / circularity
軸・穴・円すいなどの任意の横断面で、輪郭が同心の二つの円(半径差 t)の間に入るように丸さを規制する形状公差。[15][2][7][3]
図面への書き方
- 記入枠「○|公差値」。矢は円筒・円すいの表面に当てる。[2][15]
- 公差域は横断面ごと軸に直角な任意の断面で、半径差 t の同心円の間に入るかを見る。[7][2]
例φ55±0.2 の円筒に真円度 0.02:直径は 54.8〜55.2 の範囲で、各断面の丸さは 0.02 以内。円筒が円すい状や太鼓状になっていても、真円度の規制の対象外。
[2] よくある間違い
- マイクロメータの2点測定で真円度を出すなぜ:2点間の測定では丸さを正しく捉えきれず、精度に限界がある。対策:真円度測定機や三次元測定機で評価する。[25][2]
- 真円度で軸方向の形も保証されると思うなぜ:真円度は断面ごとの丸さだけで、テーパや太鼓形は規制しない。対策:軸方向も含めるなら円筒度を使う。[2]
JIS と ASMEASME では circularity(roundness とも)と呼び、考え方は同じ。
[3] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.3、ISO 1101。[7][8][9]
関連:円筒度形状公差
⌭円筒度えんとうどcylindricity
円筒面の丸さと真っすぐさを合わせて規制する形状公差。表面全体が、半径差 t の同軸の二つの円筒の間に入っていなければならない。[15][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記入枠「⌭|公差値」。矢は円筒面の外形線に当てる。データムは使わない。[2][15]
例「⌭|0.1」:対象の円筒面は、半径で 0.1 mm 離れた同軸の二つの円筒の間に入る。
[7][15] よくある間違い
- 厳しい円筒度を一般の三次元測定機で保証しようとするなぜ:ミツトヨの資料は、一般的な三次元測定機で公差 0.01 mm 以下の製品を評価するのは難しいとしている。対策:厳しい公差は真円度・円筒形状測定機での検査を前提に決める。[2][26]
規格:JIS B 0021:1998 の 18.4、ISO 1101。[7][8][9]
関連:真円度形状公差
⌒線の輪郭度せんのりんかくどprofile of a line / line profile
曲線の輪郭が、理論的に正確な寸法(TED)で決めた形にどれだけ沿っているかを、断面ごとの線として規制する公差。データムなしなら形状公差、データム付きなら姿勢・位置公差として働く。[27][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 形は TED で定義する輪郭の R や位置を枠で囲んだ TED で示す。[2][7]
- 公差域理論輪郭線の上に中心を置いた直径 t の円が作る、2本の包絡線の間(両側に t/2 ずつ)。[27][2][7]
- 一周に適用するとき指示線の折れ目に小さな丸(全周記号)を付ける。[2][14]
例外形の一周に「⌒|0.05」と全周記号:理論形状の両側 ±0.025 の帯の中に、各断面の輪郭が入る。
[2] よくある間違い
- 輪郭を普通の公差付き寸法で決めたうえで輪郭度を付けるなぜ:輪郭度の基準になる理論形状が決まらない。対策:輪郭を定める寸法は TED(枠付き)で書く。[2][7]
JIS と ASME公差域を理論輪郭の片側に寄せるとき、ISO・JIS は UZ、ASME は Ⓤ を使う。
[13][14] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.5・18.6、輪郭の寸法と公差は JIS B 0027。[7][8][28]
関連:面の輪郭度理論的に正確な寸法(TED)全周記号(輪郭度)不均等配分の輪郭度
⌓面の輪郭度めんのりんかくどprofile of a surface / surface profile
曲面などの面全体が、TED で決めた理論的な面にどれだけ沿っているかを規制する公差。データムなしなら形状公差、データム付きなら姿勢・位置公差として働く。[27][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 形は TED で定義する理論的な面の形と位置を TED で示す。[2][7]
- 公差域理論的な面の上に中心を置いた直径 t の球が作る、2つの包絡面の間。[27][7][2]
例「⌓|0.1|A」:面は、データム A に対して理論的に正確な位置にある理論面の上に中心を置いた直径 0.1 の球が作る2つの包絡面の間に入る。
[7] よくある間違い
- 線の輪郭度で面全体を管理したつもりになるなぜ:線の輪郭度は投影面に平行な各断面の線だけを見る。対策:面全体なら面の輪郭度を使う。[27][7]
JIS と ASMEASME Y14.5-2018 は輪郭度を位置の規制にも使う考え方を強め、輪郭度・姿勢・形状を別々の節に整理し直した。
[11] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.7・18.8、JIS B 0027。[7][8][28]
関連:線の輪郭度理論的に正確な寸法(TED)
∥平行度へいこうどparallelism
データムに対して、平面や直線(軸線)が平行であるべき狂いを規制する姿勢公差。[17][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記入枠「∥|公差値|A」。基準にする面や軸にデータム記号を付ける。[17][2]
- 軸線の平行度公差値に φ を付けると、データムに平行な直径 t の円筒が公差域になる。[2][7]
例「∥|0.05|A」:矢の面は、データム平面 A に平行で、矢の方向に 0.05 mm 離れた平行二平面の間に入る。
[17] よくある間違い
- データムを指示しないなぜ:何に対して平行かが決まらず、意味をなさない。対策:必ずデータムを指示し、データム面にも基準にふさわしい精度を持たせる。[17][2]
- 柔らかい部品を測定子で押して測るなぜ:樹脂やゴムは測定子の力で変形し、正しく測れない。対策:測定力の小さい方法で測るか、自由状態の指示を検討する。[29]
規格:JIS B 0021:1998 の 18.9、ISO 1101。[7][8][9]
関連:姿勢公差平面度データム
⟂直角度ちょっかくどperpendicularity / squareness
データムに対して、平面や直線(軸線)が直角であるべき狂いを規制する姿勢公差。公差値は角度ではなく長さ(mm)で表す。[17][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記入枠「⟂|公差値|A」。[17][2]
- 穴や軸の軸線公差値に φ を付けると、データムに直角な直径 t の円筒が公差域になる。[2][7]
例穴の軸線に「⟂|φ0.1|A」:穴の軸線は、データム平面 A に直角な直径 0.1 mm の円筒の中に入る。
[7][2] よくある間違い
- 直角度を角度(°)で書くなぜ:直角度の公差は長さで表すもので、角度で書くと意味が通らない。対策:公差値は mm で書く。[17]
規格:JIS B 0021:1998 の 18.10、ISO 1101。[7][8][9]
関連:姿勢公差
∠傾斜度けいしゃどangularity
データムに対して 90°以外の決められた角度で傾いているべき面や軸線の狂いを規制する姿勢公差。角度は TED で示し、公差値は mm で表す。[17][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 角度を TED(枠付き)で書く傾きの角度は枠で囲んだ理論的に正確な角度にする。[2][7]
- 記入枠「∠|公差値|A」。[2]
例面に「∠|0.08|A」と TED の 40°:その面は、A に対して理論的に正確に 40°傾き、0.08 mm 離れた平行二平面の間に入る。
[7][2] よくある間違い
- 角度に±の公差を付けたうえで傾斜度も付けるなぜ:角度の公差と傾斜度が二重になり、基準の角度が決まらない。対策:角度は TED にし、許容は傾斜度で与える。[2][7]
規格:JIS B 0021:1998 の 18.11、ISO 1101。[7][8][9]
関連:姿勢公差理論的に正確な寸法(TED)
⌖位置度いちどposition / true position
点・直線(軸線)・面が、データムと TED で決めた理論的に正確な位置(真位置)からどれだけずれてよいかを規制する位置公差。[21][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 位置は TED で決める穴の位置などは枠付きの TED で示し、±は付けない。[6][2]
- 記入枠「⌖|φt(必要なら Ⓜ)|A|B|C」。穴・軸の軸線なら φ を付けて円筒の公差域、球の中心なら Sφ。[5][2][7]
- 複数の穴穴の個数と寸法(例:6×)を書いた指示に記入枠を結ぶ。[2]
例φ20H7 の穴に「⌖|φ0.05 Ⓜ|A|B|C」:穴の軸線は、データム A・B・C と TED で決まる真位置を中心とした直径 0.05 mm の円筒の中に入る。穴が最大実体サイズ φ20.000 より大きく仕上がった分だけ、位置度を広げてよい。
(資料の決まりから組み立てた例)[2][30][5] よくある間違い
- 穴の位置を公差付きの寸法でつなぐなぜ:公差が累積して、穴どうしの位置がばらつく。対策:位置は TED、ばらつきは位置度で与える。[6]
- φ を付け忘れるなぜ:φ がないと公差域は一方向の平行二平面になり、円筒にならない。対策:穴や軸の軸線の位置度には φ を付ける。[7][5][2]
JIS と ASMEASME では position(true position とも)と呼ぶ。2018年版で同心度・対称度が廃止されたため、同軸や対称の形体の位置も位置度や振れ・輪郭度で規制する。
[3][12] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.12、位置度公差方式は JIS B 0025。[7][8][31]
関連:位置公差理論的に正確な寸法(TED)最大実体公差方式データム系(三平面データム系)
◎同軸度どうじくどcoaxiality
データム軸直線と同じ直線上にあるべき軸線の狂いを規制する位置公差。公差値に φ を付け、データム軸と同軸の直径 t の円筒が公差域になる。[21][2][7]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記入枠「◎|φt|A」。両端の軸受部などを共通データム A-B にすることも多い。[2][7]
例「◎|φ0.03|A」:矢の円筒の軸線は、データム軸直線 A を軸とする直径 0.03 mm の円筒の中に入る。
[21] よくある間違い
- ダイヤルゲージの振れの読みをそのまま同軸度とするなぜ:当てる角度や強さで値が変わり、作業者によってばらつく。対策:真円度測定機や三次元測定機で軸線を求めて評価する。[32][2]
JIS と ASMEミツトヨ米国は、ISO の同軸度は軸線(中心線)を規制するのに対し、ASME 2009 の同心度は向かい合う点の中点を規制するので、同じ記号でも意味が違うと指摘している。ASME 2018 では同軸の位置を位置度・振れ・輪郭度で規制する。
[12] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.13.2、ISO 1101。[7][8][9]
関連:同心度位置公差共通データム
◎同心度どうしんどconcentricity
平面図形(横断面)で、データム円の中心に対する円の中心の位置の狂いを規制する位置公差。同軸度と同じ記号を使い、対象が軸線ではなく中心点になる。[21][2][7]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記号は同軸度と同じ ◎公差値に φ を付け、データム点を中心とする直径 t の円が公差域になる。[7][2]
例薄い円板の外周の中心に「◎|φ0.1|A」(A=内径の円):外側の円の中心は、データム円 A と同心の直径 0.1 mm の円の中に入る。
(資料の決まりから組み立てた例)[7] よくある間違い
- 同心度と同軸度を混同するなぜ:同心度は断面の中心点、同軸度は軸線全体を規制する。対策:軸全体のずれなら同軸度、薄い円板や1断面なら同心度と使い分ける。[21][2][12]
JIS と ASMEASME Y14.5-2018 で同心度は用語・記号・概念ごと廃止された。米国の教材は、古い図面には残っていることがあるとしている。
[12][3] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.13.1、ISO 1101。[7][8][9]
関連:同軸度
⌯対称度たいしょうどsymmetry
データム中心平面(または軸直線)に対して対称であるべき形体の中心面の狂いを規制する位置公差。公差域は、データムに対称で距離 t の平行二平面。[21][2][7]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記入枠「⌯|公差値|A」。データムは幅の中心面などにする。[21][2]
例キー溝の幅に「⌯|0.05|A」(A=軸の中心平面):溝の中心面は、A に対称に 0.05 mm 離れた平行二平面の間に入る。
(資料の決まりから組み立てた例)[21][7] よくある間違い
- ノギスで左右の肉厚差だけを見るなぜ:2点間の長さは測れても、形状としての対称は評価しにくい。対策:三次元測定機などで中心面を求めて評価する。[33]
JIS と ASMEASME Y14.5-2018 で対称度は廃止され、位置度などで規制する。
[12][3] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.14、ISO 1101。[7][8][9]
関連:位置公差
↗円周振れえんしゅうふれcircular run-out
データム軸直線の周りに部品を1回転させたとき、任意の測定位置での表面の振れ(読みの最大と最小の差)を規制する振れ公差。半径方向・軸方向・斜め方向がある。[22][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記入枠「↗|公差値|A」(共通データムなら A-B)。[7][22]
- 矢の向きで方向を示す円筒面に直角に当てれば半径方向、端面に当てれば軸方向の振れになる。[7][2]
例両端の軸受部を共通データム A-B とし、中央の外周に「↗|0.1|A-B」:1回転させる間、どの横断面でも振れが 0.1 mm 以下。
[7] よくある間違い
- 図面のデータム以外の面で支えて回すなぜ:データムと違う軸で回すと、その誤差が振れに混ざる。対策:図面のデータム(軸受部など)で支えて回して測る。[22][7]
JIS と ASMEASME でも circular runout として同じ考え方。
[3] 規格:JIS B 0021:1998 の 18.15、ISO 1101。振れの読みの最大と最小の差を T.I.R. と呼ぶ。[7][8][18]
関連:全振れ振れ公差共通データム
⌰全振れぜんぶれtotal run-out
データム軸直線の周りに回転させながら測定器を表面に沿って動かし、表面全体での振れを規制する振れ公差。[22][2][7][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 記入枠「⌰|公差値|A-B」。矢は円筒面(半径方向の全振れ)または端面(軸方向の全振れ)に当てる。[7]
例「⌰|0.1|A-B」:円筒面は、共通データム軸直線 A-B と同軸で半径差 0.1 mm の二つの円筒の間に入る。
[7] よくある間違い
- 円周振れで表面全体を管理したつもりになるなぜ:円周振れは断面ごとの振れで、全体のテーパや曲がりは規制しきれない。対策:表面全体の振れを抑えたいときは全振れを使う。[22][3]
規格:JIS B 0021:1998 の 18.16、ISO 1101。[7][8][9]
関連:円周振れ
データムでーたむdatum
姿勢・位置・振れの公差域を決めるために設定する、理論的に正確な基準(平面・直線・点)。部品上の実際の面や穴(データム形体)から設定する。[19][2]
図面への書き方
- データム記号で指示する基準にする面や軸にデータム記号を付ける。[19][2]
- 精密な面に当てて実現する実際の面は凹凸があるので、定盤やマンドレルなど精密な面(実用データム形体)に当てて基準を作る。[19][2]
例穴の中心をデータムにする場合:穴に最大内接する精密な軸を差し込み、その軸線をデータム軸直線とする。
[34] よくある間違い
- うねった面をそのまま全面データムにするなぜ:当たる位置が毎回変わり、加工や検査で大きな誤差が出る。対策:基準にふさわしい精度を指示するか、データムターゲットで当たり点を限定する。[35][2]
JIS と ASMEASME は、データム形体からデータムを実際に作る道具や面を datum feature simulator と呼ぶ(JIS の実用データム形体に当たる)。
[34] 規格:JIS B 0022:1984(幾何公差のためのデータム)、ISO 5459:2024。用語の定義は JIS Z 8114。[10][36][19]
関連:データム記号データム系(三平面データム系)実用データム形体データムターゲット
データム記号でーたむきごうdatum feature symbol
どの面や軸をデータムにするかを図に示す記号。データムを表す英大文字を四角の枠に入れ、白抜きまたは塗りつぶしの三角形とつないで、データム形体に当てる。[19][2][3]
図面への書き方
- 三角形は白抜きでも塗りつぶしでもよい三角形を外形線や寸法線に当てる。[19]
- 文字は図面を見る向きに枠の中の文字は回転させず、図面を見る向きで書く。[19]
- 面をデータムにするとき外形線またはその延長線上に、寸法線からずらして三角形を当てる。[19][2]
- 軸線・中心平面をデータムにするときサイズ形体の寸法線の延長上(寸法線と一直線)に三角形を当てる。[19][2]
例φ30 の軸の中心をデータム A にする:φ30 の寸法線の延長上にデータム三角記号を置き、枠に A と書く。
(資料の決まりから組み立てた例)[19][2] よくある間違い
- 寸法線からずらした三角形で軸の中心を指したつもりになるなぜ:ずらすと表面(母線)がデータムになり、軸線にならない。対策:中心をデータムにするなら寸法線と一直線に置く。[19]
JIS と ASMEASME も四角の枠に文字を入れ、三角形で形体に当てる形は同様。
[3] 規格:JIS B 0022、JIS B 0021 の付加記号(データム指示)。[7][10]
関連:データム
データム系(三平面データム系)でーたむけいdatum system / datum reference frame
2つ以上のデータムを優先順位をつけて組み合わせたもの。互いに直交する3つのデータム平面で部品の姿勢を完全に拘束するものを三平面データム系という。[37][2]
公差記入枠の例図面への書き方
- 優先順位は記入枠の左からデータム欄に第1次・第2次・第3次の順に左から書く。設計者はふつう優先度の高い順にアルファベットを振る。[5][2]
- 当てる順番第1次・第2次・第3次の順に押し当てて部品を完全に拘束する(治具の3-2-1の考え方と対応する)。[37][38]
例「⌖|φ0.1|A|B|C」:A(底面)→B(長い側面)→C(短い側面)の順に当てて基準を作る。
(資料の決まりから組み立てた例)[37][5][2] よくある間違い
- データムの順番を加工・組立の当て方と関係なく決めるなぜ:優先順位が変わると、同じ部品でも測定結果が変わる。対策:機能上・組立上最も重要な面を第1次データムにする。[5][2]
JIS と ASMEASME は datum reference frame と呼び、自由度の拘束として説明する(2018年版でデータムと自由度の記述を拡充)。
[11] 規格:JIS B 0022、ISO 5459:2024。[10][36]
関連:データム3-2-1の原則公差記入枠
共通データムきょうつうでーたむcommon datum
2つのデータム形体から1つのデータムを作るもの。たとえば軸の両端の軸受部を合わせて1本の共通の軸直線とする。記入枠には「A-B」のようにハイフンでつないで1つの欄に書く。[37][7]
公差記入枠の例図面への書き方
- データム欄にハイフンで2つのデータム形体にそれぞれデータム記号(A・B)を付け、記入枠のデータム欄には「A-B」と1つにまとめて書く。[37][7]
例両端の軸受部をデータム A・B とし、中央部の振れを「↗|0.1|A-B」で指示する。
[7][37] よくある間違い
- 「A-B」と「A|B」を混同するなぜ:「A-B」は1つの共通データム、「A|B」は優先順位のある2つのデータム(データム系)。対策:2か所を同等の基準にしたいときはハイフンで1欄に書く。[37][5]
規格:JIS B 0022、JIS B 0021:1998。[10][7]
関連:データム系(三平面データム系)円周振れ
データムターゲットでーたむたーげっとdatum target
面全体ではなく、加工・測定の装置を当てる点・線・限られた領域を指定してデータムを設定する方法。鋳物・鍛造・板金のように面がうねっている部品で使う。[35][2]
図面への書き方
- データムターゲット記入枠横線で上下に分けた円を描き、下段にデータム文字と番号(A1 など)、上段に領域の大きさ(φ2 など)を書く。[35][2][14]
- 点・線・領域の示し方点・線・円形の領域・長方形の領域を、それぞれ決められた図示記号で示す。[35][2]
よくある間違い
- うねった鋳肌の面全体をデータムにするなぜ:当たる位置が毎回変わり、繰返し性・再現性が悪くなる。対策:データムターゲットで当たり点を限定する。[35][2]
JIS と ASMEASME には可動データムターゲットの記号がある(ISO・JIS は提案中とキーエンスは説明)。
[13][14] 規格:JIS B 0022、JIS B 0021:1998 の付加記号(データムターゲット)。[10][7]
関連:データム図面のデータムと治具の基準を合わせる
実用データム形体じつようでーたむけいたいsimulated datum feature / datum feature simulator
データム形体に接触させてデータムを実際に作る、十分に精密な面や軸(定盤・軸受・マンドレルなど)。[19][34][2]
図面への書き方
- 平面は定盤でデータム平面は定盤の面で作る。[34][2]
- 穴は最大内接円筒、軸は最小外接円筒穴には密着する精密な軸、軸には密着する精密な穴を当て、その軸線をデータムにする。[34]
- 三次元測定機で求めたもの測定点から計算で求めたデータムは、代用データムと呼ぶことがある。[2]
JIS と ASMEASME Y14.5 では datum feature simulator と呼ぶ。
[34] 関連:データム
□理論的に正確な寸法(TED)りろんてきにせいかくなすんぽうtheoretically exact dimension / TED / basic dimension
位置度・輪郭度・傾斜度などの公差域の位置や形を決めるための、公差を持たない理論上の寸法。数値を長方形の枠で囲んで示し、ばらつきは公差記入枠の幾何公差で与える。[6][2][3]
図面への書き方
- 数値を枠で囲む例:[50]。角度も同じ。[2][14]
- ばらつきは記入枠でTED には±を付けず、位置度などの公差で許容を与える。[6][3]
例キーエンスの例:穴の間をサイズ公差でつなぐと最大 45.3、TED と位置度で決めると最大 45.1 となり、公差が累積しない。
[6] よくある間違い
- TED にも普通公差がかかると考えるなぜ:TED は公差を持たない値で、表題欄の普通公差は適用されない。対策:位置や形のばらつきは幾何公差で指示する。[3][6]
JIS と ASMEASME では basic dimension と呼び、枠で囲む表し方は同じ。
[3] 規格:JIS B 0021:1998 の付加記号(理論的に正確な寸法)。[7][8]
関連:位置度公差の累積線の輪郭度
Ⓜ最大実体公差方式さいだいじったいこうさほうしきmaximum material requirement / MMR / MMC modifier
形体が最大実体状態(穴なら最小径、軸なら最大径)から離れて仕上がった分だけ、姿勢公差や位置公差を広げてよいとする方式。はめあう部品が確実に組めることを保ちつつ、公差を有効に使える。[30][39][2][3]
公差記入枠の例図面への書き方
- 公差値の後に Ⓜ記入枠の幾何公差の数値の後に Ⓜ を付ける。データムにも適用するときはデータム文字の後に Ⓜ を付ける。[39][30][2]
- 動的公差線図で確かめる横軸にサイズ公差、縦軸に幾何公差をとると、仕上がりサイズに応じた幾何公差の増え方(ボーナス公差)が分かる。[30]
例穴 φ10 +0.1/0 に「⌖|φ0.1 Ⓜ|A|B|C」:穴が φ10.00(最大実体)なら位置度は φ0.1、φ10.06 に仕上がれば φ0.16 まで許される(最大で φ0.2)。
(資料の決まりから組み立てた例)[2][30] よくある間違い
- サイズ公差まで緩むと考えるなぜ:Ⓜ で緩むのは幾何公差の側で、サイズ公差は必ず守る。対策:サイズは公差内か、幾何公差は仕上がりサイズに応じた値かを別々に判定する。[30]
- はまり合いと関係のない形体にも Ⓜ を付けるなぜ:Ⓜ は組付けのすきまを生かす考え方で、位置そのものが機能に効く形体では緩めすぎになりうる。対策:主に、はめ合わせて組む部品の形体に使う。[39][30]
JIS と ASMEISO・JIS は「最大実体公差方式(MMR:requirement)」という方式の名前で呼び、ASME は記号を「最大実体状態(MMC:condition)」の修飾記号として扱う。ASME では記号を付けなければ実体状態に関係しない(RFS)扱いで、旧 ANSI の Ⓢ 記号は 2009 年版で削除されている。
[39][3][14] 規格:JIS B 0023(最大実体公差方式及び最小実体公差方式)、JIS B 0021:1998 の付加記号。[40][7]
関連:最大実体状態・最大実体サイズボーナス公差実効状態・実効寸法最小実体公差方式
最大実体状態・最大実体サイズさいだいじったいじょうたい・さいだいじったいさいずmaximum material condition / MMC / maximum material size / MMS
最大実体状態は、形体の実体(材料の体積)が最大になる許容限界の状態で、穴なら最小の穴径、軸なら最大の軸径。そのときのサイズが最大実体サイズ。[16][2][41]
例キーエンスの図例では、φ20 の軸(凸)の最大実体サイズを φ20.1、穴(凹)の最大実体サイズを φ19.9 として示している(軸は大きい側、穴は小さい側)。
[16] よくある間違い
- 穴の最大実体を最大径と取り違えるなぜ:穴は径が小さいほど材料が多く残る。対策:穴は最小径、軸は最大径が最大実体と覚える。[2][41]
JIS と ASMEASME も MMC・LMC の定義は同じ。米国の教材は、MMC 側から削り始めれば材料を残して加工できると説明している。
[41] 規格:JIS B 0023。[40]
関連:最大実体公差方式包絡の条件
Ⓛ最小実体公差方式さいしょうじったいこうさほうしきleast material requirement / LMR / LMC modifier
形体が最小実体状態(穴なら最大径、軸なら最小径)から離れた分だけ幾何公差を広げてよいとする方式。端に近い穴の残り肉厚やパイプの肉厚など、強度の確保に使う。[42][39][2]
図面への書き方
- 公差値の後に Ⓛ記入枠の幾何公差の数値の後に Ⓛ を付ける。場合によりデータム文字の後にも付ける。[42][39]
例キーエンスの例:穴 φ24(最小実体は φ24.1)の位置度 φ0.5 に Ⓛ を付けると、φ0.5 は穴が φ24.1 のときの値になり、穴が小さく仕上がるほど位置度が緩和される。
[42] よくある間違い
- 残り肉厚を確保したい穴に Ⓜ を付けるなぜ:Ⓜ は穴が大きいほど位置ずれを許すので、端との肉厚が足りなくなる方向に働く。対策:残り肉厚が問題になる形体には Ⓛ を検討する。[42]
JIS と ASMEASME では LMC(最小実体状態)の修飾記号として扱う。
[3] 規格:JIS B 0023。[40][7]
関連:最大実体公差方式
実効状態・実効寸法じっこうじょうたい・じっこうすんぽうvirtual condition / virtual size
最大実体サイズと Ⓜ 付きの幾何公差の総合効果で決まる、完全形状の限界。外側形体(軸)は最大実体サイズ+幾何公差、内側形体(穴)は最大実体サイズ−幾何公差で、機能ゲージの設計寸法になる。[2][18][30]
公差記入枠の例図面への書き方
- ゲージ寸法に使う機能ゲージの穴(または軸)の寸法を実効寸法にする。[2]
例ミツトヨの例:軸 φ150 0/−0.04 に「⟂|φ0.05 Ⓜ|A」→ 実効寸法は φ150.05。
[2] よくある間違い
- 機能ゲージを最大実体サイズで作るなぜ:Ⓜ 付きの幾何公差の分が入らず、良品を不合格にする。対策:機能ゲージは実効寸法で作る。[2]
規格:JIS B 0023。[40]
関連:最大実体公差方式ボーナス公差
ボーナス公差ぼーなすこうさbonus tolerance
最大(最小)実体公差方式によって、仕上がりサイズに応じて幾何公差に上乗せされる分。[18][2][30]
図面への書き方
- 判定のしかた測ったサイズと最大実体サイズの差を、記入枠の公差値に足して判定する。[2][18]
例ミツトヨの例:穴の下限 φ59.9、位置度 φ0.02 Ⓜ、測った穴径 φ60.000 → 上乗せ 0.1、判定に使う位置度は φ0.12。
[2] よくある間違い
- 仕上がり径を見ずに位置度だけで判定するなぜ:Ⓜ 付きの図面で上乗せを考えないと、良品を捨てることになる。対策:測った径から上乗せ分を計算して判定する。[2][18]
関連:最大実体公差方式実効状態・実効寸法
ゼロ幾何公差方式ぜろきかこうさほうしきzero geometric tolerancing at MMC
最大実体状態では幾何公差をゼロとし、最小実体状態に近づくほど、その差を幾何公差として与える指示。[18]資料1件・参考
公差記入枠の例例穴 φ10 +0.1/0 に「⌖|φ0 Ⓜ」:穴が φ10.00 なら位置ずれは許されず、φ10.1 に仕上がれば φ0.1 まで許される。
(資料の決まりから組み立てた例)[18] 規格:JIS B 0023。[40]
関連:最大実体公差方式
データムへの最大実体公差方式(データムの浮動)でーたむのふどうdatum feature at MMB / datum shift
データムがサイズ形体のとき、データム文字の後に Ⓜ を付けてデータムにも最大実体公差方式を適用し、データムを固定しない(浮動させる)指示。[18][39]資料1件・参考
図面への書き方
- データム文字の後に Ⓜ記入枠のデータム欄で、文字の後に Ⓜ を付ける。[39][30]
JIS と ASMEキーエンスは、ASME には最大実体境界(MMB)・最小実体境界(LMB)の記号があり、ISO・JIS には対応する記号がないと説明している。
[13] 規格:JIS B 0023。[40]
関連:最大実体公差方式データム
Ⓢ(旧RFS(実体状態に無関係)あーるえふえすregardless of feature size / RFS
サイズの仕上がりに関係なく、指示した幾何公差の値をそのまま適用すること。旧 ANSI 規格では記号 Ⓢ で示したが、ASME Y14.5-2009 で削除された。[14]資料1件・参考
JIS と ASMEISO・JIS ではもともと、Ⓜ・Ⓛ を付けなければ実体状態に関係なく公差を適用する。
[39][2] 関連:最大実体公差方式
Ⓟ突出公差域とっしゅつこうさいきprojected tolerance zone
公差域を、形体そのものではなく、組み合わせる相手部品の側へ突き出した仮想の範囲に適用する指示。ねじ穴に立てたボルトやピンが、相手部品の穴に確実に入るようにする。[43][3][2]
図面への書き方
- 記入枠に Ⓟ と突出長さ記入枠の公差値に Ⓟ を付け、突出させる長さを指示する。[43][3]
- 突出部は細い二点鎖線突出させた仮想の部分は細い二点鎖線で描く(キーエンスの解説)。[43]
例キーエンスの例:仮想空間にある φ28 の軸心は、データム A に直角でデータム B から 40 の位置にあり、突出長さ 30 mm の全長で φ0.5 の円筒に入っていなければならない。
[43] よくある間違い
- ねじ穴の位置度を穴の中だけで規制するなぜ:穴がわずかに傾いていると、突き出たボルトの先で位置ずれが大きくなり、相手部品と干渉する。対策:相手部品の厚さの分を突出公差域で規制する。[43][3]
JIS と ASME米国の教材では、突出範囲を太い一点鎖線(chain line)で示す。JIS 系の解説(キーエンス)は細い二点鎖線。
[45][43] 規格:JIS B 0029(突出公差域)。JIS B 0021 の付加記号表の参照先は ISO 10578。[44][7]
関連:位置度特殊指定線
CZ共通公差域きょうつうこうさいきcommon zone / CZ
離れた位置にある複数の形体を、1つの公差域でまとめて規制する指示。公差値の後に CZ を書く。[2][14][5]
公差記入枠の例図面への書き方
- 公差値の後に CZ「⏥|0.1 CZ」のように書き、1つの記入枠から対象の各面へ指示線を引く。[2]
例離れた2つの面に「⏥|0.1 CZ」:2面とも同じ一組の平行二平面(間隔 0.1)の中に入る。CZ がなければ、各面が別々に 0.1 以内であればよい。
[2] よくある間違い
- CZ を付けずに複数の面を1つの記入枠で指示するなぜ:各面が別々の公差域で判定され、面どうしの段差は規制されない。対策:同一平面にそろえたいときは CZ を付ける。[2]
規格:JIS B 0021:1998 の付加記号(共通公差域)。[7][8]
関連:平面度
Ⓕ自由状態(非剛性部品)じゆうじょうたいfree state / non-rigid part
ゴム・樹脂・薄肉品のように、自由状態で公差を超えて変形しうる部品(非剛性部品)について、重力だけを受けた自由状態で適用する公差を示す記号。[46][7][2]
図面への書き方
- 公差値の後に Ⓕ自由状態で適用する幾何公差に Ⓕ を付ける。[46]
- 拘束条件を注記する非剛性部品であることと、拘束状態で適用する公差の条件(重力の方向など)を注記で明記する。[46]
例キーエンスの例:データム B に真円度 5.0 Ⓕ(どの姿勢でも自由状態で 5.0 以内)、左側の円周振れは注記した拘束状態で適用。
[46] 規格:JIS B 0026(非剛性部品)、JIS B 0420-1 の 7.8。[47][7][48]
関連:平行度
全周記号(輪郭度)ぜんしゅうきごうall around symbol
輪郭度などを、図に表れた輪郭の一周全体に適用するとき、公差記入枠の指示線の折れ目に小さな丸を付ける記号。[2][14][7]
公差記入枠の例図面への書き方
- 指示線の折れ目に丸公差記入枠から出た指示線の折れ目に小さな丸を描く。[2][14]
例外形の一周に「⌒|0.05」と全周記号:理論形状の両側 ±0.025 の帯に外周全体が入る。
[2] よくある間違い
- 溶接記号の全周と混同するなぜ:見た目は似ているが、溶接記号の丸は全周を溶接する意味。対策:どちらの記号体系で使われているかで読み分ける。[49][2]
規格:JIS B 0021:1998 の付加記号(全周(輪郭度))。[7][8]
関連:線の輪郭度全周溶接・現場溶接の記号
UZ(ISO・JIS)/Ⓤ(ASME)不均等配分の輪郭度ふきんとうはいぶんのりんかくどunequally disposed profile
輪郭度の公差域を理論輪郭の両側に均等ではなく、片側に寄せて配置する指示。ISO・JIS は UZ、ASME は Ⓤ で表す。[13][14]資料1件・参考
関連:線の輪郭度
複合位置度公差方式ふくごういちどこうさほうしきcomposite positional tolerancing
記入枠を上下2段にし、位置度の記号は1つにまとめて、上段でデータム系に対する位置、下段で形体どうしの相互位置に、それぞれ異なる公差値を与える方法。[18]資料1件・参考
図面への書き方
- 2段の記入枠位置度の記号は1つにまとめ、上段にデータム系に対する公差、下段に形体どうしの相互位置の公差を書く。[18]
関連:位置度
動的公差線図どうてきこうさせんずdynamic tolerance diagram
横軸にサイズ公差、縦軸に幾何公差をとり、両者のばらつきと、最大実体公差方式で得られるボーナス公差を同時に表す図。[30]資料1件・参考
図面への書き方
- 軸の取り方横軸にサイズ、縦軸に許される幾何公差をとり、最大実体から最小実体までの変化を線で示す。[30]
関連:最大実体公差方式ボーナス公差