機械設計
はめあいの選び方、面取り・逃げ、加工しやすい形など設計の決まりごと。12 語。用語ごとに、意味・図面への書き方・具体例・よくある間違い・JIS と ASME の違いをまとめています。
ケズリバ(kezuriba.net)/drafting/design/ より印刷
はめあいの選び方はめあいのえらびかたselection of fits
部品どうしを動かすのか、固定するのか、分解するのかという機能から、穴と軸の公差クラスの組合せを選ぶこと。まず H7 などの穴基準で、推奨表の組合せから選ぶ。[1][2][3][4]
図面への書き方
- 機能で分類する相対的に動かす部分はすきまばめ、手で動かせる程度の位置決めや分解する部分は h・js 付近、ハンマや圧入で組む固定部分は k から p 以降と、機能から当たりを付ける。[1]
- 推奨表から選ぶJIS B 0401-1 の推奨する穴基準の組合せから選ぶ。[2]
例ミスミの解説:精密な位置決めピンを H7 の穴に使う場合、ベース板に固定する側に g6、位置決めする側に h6 の例を挙げ、がたを許せる場合はすきまの大きい組合せを選ぶとしている。
[3] よくある間違い
- 必要以上に精密なはめあいにするなぜ:加工・検査の手間が増え、製作費が上がる。対策:機能に必要な最低限の精度にする。[5][1]
- 分解する箇所にしまりばめを使うなぜ:部品を傷めずに分解するのが難しい。対策:分解・交換する箇所は部品を傷めずに組み外しできる組合せにする。[1]
規格:JIS B 0401-1:2016(推奨するはめあい)。[2][6]
関連:はめあい方式(穴基準・軸基準)すきまばめ・中間ばめ・しまりばめ位置決めピン(丸ピン)
ばか穴(ボルト通し穴)ばかあなclearance hole / bolt hole
ボルトを通すために、ねじの外径より1〜2割ほど大きくあけた穴。はめあいと違い、穴とボルトで図面に書く径の数値そのものが異なる。[4]資料1件・参考
図面への書き方
- 径は規格の表から決めるボルト穴径とざぐり径は JIS B 1001 に定めがある。[7]
よくある間違い
- 締結する2部品の穴を両方ねじ穴にするなぜ:ボルトが両方にかみ合い、組み立てられない。対策:片方をばか穴、もう片方をねじ穴にする。[8]
規格:JIS B 1001「ボルト穴径及びざぐり径」。[7]
関連:ざぐり・深ざぐり穴の寸法の表し方
C(45°面取り)面取り(C面取り・角の丸み)めんとりchamfer / edge break
部品の角を斜めに削る(C面取り)か丸める(R)こと。C は45°の面取りを表す寸法補助記号で「C2」のように書く。図面全体の角は注記でまとめて指示することが多い。[9][10][11]
図面への書き方
- 45°の面取りは C と寸法「C1」「C0.5」のように書く。[9][10]
- 角はまとめて注記「特記なき角部は C0.3 MAX とし、バリ・カエリのないこと」のように注記でまとめる。[10]
- はめ込み・位置決めの入口は大きく部品を挿入する穴の入口は大きく面取りして入りやすくする。[12][13]
よくある間違い
- 角の処理を指示しないなぜ:バリが残り、位置決め面にかみ込んだり組立で手を切る原因になる。対策:角の面取り・バリなしを注記で一括指示する。[14][15][10]
JIS と ASMEC 記号による45°面取りは、JIS Z 8317-1 が対応国際規格(ISO 129-1)に追加した規定。海外の図面で同じ書き方が通じるとは限らない。
[11] 規格:JIS Z 8317-1:2008(ISO 129-1 を基に、JIS として45°面取りの規定などを追加)、JIS B 0001:2019 の 11.6。寸法で形を定めない角(エッジ)は JIS B 0051。[11][16][17]
関連:寸法補助記号エッジの状態(バリ・カエリの指示)内角R(隅の丸み)
内角R(隅の丸み)うちかくあーるinside corner radius / fillet / internal radius
ポケットや段の内側の角に付ける丸み。エンドミルなどの回転工具で削ると、内角は工具の半径で必ず丸くなる。[18][19]
図面への書き方
- 隅 R を明示するか一括注記「特記なき隅部は R1 MAX」のように注記する例がある。[10]
- 呼び分け米国の教材では内側の丸みを fillet、外側の丸みを round と呼ぶ。[19]
よくある間違い
- ポケットの内角を直角(ピン角)で描くなぜ:回転工具では内角が工具の半径で丸くなり、図面どおりに作れない。対策:工具の半径以上の R を付けるか、逃げ形状にする。[18]
規格:内角の丸みそのものを定めた規格は本調査では確認できず。
関連:面取り(C面取り・角の丸み)逃げ・逃げ溝
逃げ・逃げ溝にげ・にげみぞrelief / undercut / neck
工具の先の丸み、バリ、ねじの不完全部などが相手部品と干渉しないように、段の付け根や当たり面の一部をあらかじめ削り込んでおく形。[20][14][15][21]
図面への書き方
- 段付き軸の付け根に溝径の変わる段に溝(ネック)を設け、工具の丸みで角が残っても相手部品の角が当たらないようにする。[20]
- ねじの終わりに溝おねじの終わりに谷の径より小さい溝を設けると、相手のねじが最後までかみ込み、ねじ切り工具の逃げにもなる。[20]
- 寸法の入れ方溝の幅と深さを、引出線の注記または寸法で示す。[20]
- 当たり面の角やバリの出る所治具の当たり面の角や、バリが出る所に逃げを設ける。[14][15]
よくある間違い
- 段の付け根に逃げを設けないなぜ:工具の丸みが残り、相手部品の角が当たって密着しない。対策:逃げ溝を設けるか、相手側に面取りを付ける。[20]
規格:逃げ溝の形状・寸法を定めた規格は本調査では確認できず。
関連:不完全ねじ部内角R(隅の丸み)バリ・切りくず対策
抜け勾配(抜き勾配)ぬけこうばいdraft angle / draft
射出成形品などを型から抜きやすくするため、型の開く方向に平行な面に付ける傾き。[22][23]資料1件・参考
図面への書き方
- 型開き方向に平行な面すべてにスライドで抜く部分も、その抜く方向に平行な面に付ける。[22]
- 角度の目安プロトラブズの指針では、垂直面に 0.5°、多くの場合 2°、軽いシボ面で 3°以上、中程度のシボで 5°以上。[23]
よくある間違い
- 切削部品と同じ感覚で勾配なしに設計するなぜ:型から抜くときにこすれて傷や変形が出る。対策:型開き方向に平行な面に勾配を付ける。[22]
規格:抜け勾配を定めた JIS は本調査では確認できず。
関連:肉厚(均一肉厚)
肉厚(均一肉厚)にくあつwall thickness / uniform wall
成形品の壁の厚さ。厚さが不均一だと、充填不足(ショートショット)、収縮差による反り、厚い部分のヒケや気泡が起きやすいので、できるだけ均一にする。[22][23]資料1件・参考
図面への書き方
- 厚くなる部分は肉抜き凹凸を付ける部分を中実にせず、肉抜きした形にする。[22]
- 材料ごとの推奨範囲樹脂ごとに推奨肉厚の範囲がある(プロトラブズの指針では ABS で 0.045〜0.140 in)。[23]
よくある間違い
- 切削部品で極端に薄い壁にするなぜ:加工できる限界を下回る。対策:プロトラブズの切削の指針は、形体の厚さ 0.51 mm 以上、部品全体の厚さ 1.02 mm 以上を勧めている。[18]
規格:肉厚を定めた JIS は本調査では確認できず。
関連:抜け勾配(抜き勾配)
基準面(加工・組立・機能の基準)きじゅんめんreference surface / datum surface
寸法や加工・組立・測定の起点にする面。組立で当てる面、けがきや測定の起点、工作機械のテーブルに当てる面を意識して選び、寸法はそこから記入する。[4][8][24][25]
図面への書き方
- 基準の種類加工基準・取付基準・機能基準がある。[8]
- 基準から寸法を入れる並列寸法記入法で、基準面から各位置を指示する。[4][26]
- 端面基準と中心基準高精度な組立には端面基準が多く使われるが、一般の自動機部品は中心線基準(振り分け)にすると部品図への展開ミスや組立ミスが減る。[24]
よくある間違い
- 加工の手順を想定せずに寸法を入れるなぜ:加工者が計算して位置を出すことになり、ミスと手間が増える。対策:材料の状態から、どの面を基準に何 mm の所を加工するかを頭の中でたどり、寸法を確かめる。[4]
関連:並列寸法記入法データム図面のデータムと治具の基準を合わせる
中心振り分けの寸法ちゅうしんふりわけのすんぽうdimensioning from center line
左右対称な穴や形を、部品の中心線を基準に両側へ振り分けて寸法を入れる方法。不要な寸法を省けて図が読みやすくなり、組立の取り違えも減る。[24][8]
図面への書き方
- 中心線を基準に対称な穴の間隔や外形は中心線を挟んだ寸法で入れ、端面からの位置寸法は入れない。[24][8]
例中心から左右に 30 ずつ離れた2つの穴:中心線を基準に「60」と穴間だけを入れ、端面からの位置は入れない。
(資料の決まりから組み立てた例)[24][8] 関連:基準面(加工・組立・機能の基準)対称度
公差とコストのつり合いこうさとこすとtolerance and cost
公差を厳しくするほど加工・検査の手間が増えて製作費が上がるので、機能に必要な箇所だけに公差を付け、ほかは普通公差に任せるという考え方。[5][8][27]
図面への書き方
- 公差を付ける寸法を選ぶ機能・組立に効く寸法だけに公差を付け、ほかは普通公差に任せる。仕上げも必要な面だけ良くする。[5]
例ミスミの事例:チャックの爪の部品図で、位置合わせに効く溝幅とセンサ用穴だけに寸法公差を付け、仕上げも3か所だけを良くし、ほかは粗い仕上げにしている。
[5] よくある間違い
- 不安だからとすべての寸法に厳しい公差を付けるなぜ:公差を守るための加工費がすべての寸法に上乗せされる。対策:機能に効く寸法を見極めて、そこだけに公差を付ける。[5]
関連:普通公差はめあいの選び方
ボルト穴・ねじ穴の配置ぼるとあなのはいちhole pattern layout
ベース板やカバーに並べるねじ穴・ボルト穴の配置と寸法の入れ方。位置出しをまとめてできる配置にすると、加工時間とミスが減る。[28][29]
図面への書き方
- 位置出しをそろえる穴を同じ X・Y の線上にそろえ、位置出しをまとめてできるようにする。[28]
例長方形のカバーの四隅の穴を、外形の角の円弧に沿わせず、辺に平行な2本の線の交点に置くと、すべての穴の位置出しを一度にできて安くなる。
[28] よくある間違い
- 穴を外形の円弧に沿って配置するなぜ:穴ごとに位置出しが必要になり、加工費が上がる。対策:位置出しをまとめてできる配置にする。[28]
関連:繰返し図形の省略
エッジの状態(バリ・カエリの指示)えっじのじょうたいundefined edge / burr-free edge
寸法で形を決めない角(エッジ)について、バリやカエリを残さないことなどを注記で指示すること。JIS B 0051 が、形状を定義しないエッジの寸法の指示方法を定めている。[10][17][15]
図面への書き方
- 注記で一括指示「特記なき角部は C0.3 MAX とし、バリ・カエリのないこと」のように注記する。[10]
例島根大学の図例の注記:「特記なき角部は C0.3 MAX とし、バリ・カエリのないこと」。
[10] 規格:JIS B 0051「製品技術文書情報-形状を定義しないエッジ-寸法の指示方法」(内容の細目は本調査では確認できず)。[17]
関連:面取り(C面取り・角の丸み)バリ・切りくず対策