要素の図示

ねじ・穴・ざぐり・歯車・溶接など、部品の要素の描き方。11 語。用語ごとに、意味・図面への書き方・具体例・よくある間違い・JIS と ASME の違いをまとめています。

ねじの図示ねじの表し方不完全ねじ部歯車の図示歯車の要目表ばねの図示と要目表溶接記号すみ肉溶接の記号開先溶接と開先寸法全周溶接・現場溶接の記号キー溝の表し方

ねじの図示ねじのずしrepresentation of screw threads

ねじはらせんの形を描かず、略図で表す。おねじの外径とめねじの内径(山の頂)は太い実線、谷の径は細い実線で描く。[1][2]

図面への書き方

  1. 外観図おねじは外径を太い実線・谷の径を細い実線、めねじは内径を太い実線・谷の径を細い実線で描く。[1][2]
  2. 端から見た図谷の径は細い実線で円周の約3/4の円弧として描き、ふつうは右上の4分の1を開ける。[1]
  3. ねじ部の長さ完全ねじ部の終わりを太い実線で示す。[2]
  4. 断面図ハッチングは山の頂を表す太い実線まで延ばす。[1]
  5. かくれたねじ山の頂も谷も細い破線で描く。[1]
例M8 のおねじ:外径 8 を太い実線、谷の径を細い実線で描き、端から見た図では谷の円を3/4だけ細い実線で描く。(資料の決まりから組み立てた例)[1][2]

よくある間違い

規格:JIS B 0002-1(通則)、JIS B 0002-3(簡略図示方法)。[3][1]

関連:ねじの表し方不完全ねじ部ハッチング

ねじの表し方ねじのあらわしかたdesignation of screw threads

ねじの呼び(種類と径、必要ならピッチ)、等級、巻き方向を組み合わせて表す。メートル並目ねじのようにピッチが1つしかないものはピッチを省略し、左ねじには LH を付ける。[1][4]

図面への書き方

  1. 引出線で指示するねじ部を指した引出線にねじの呼びを書く。[4]
  2. 等級は必要なときだけ等級は必要がなければ省略できる。[1]
  3. 右ねじは通常何も付けない右ねじは一般に表示しないが、必要なら RH を付ける。[1]
例M10(並目のためピッチを省略)、M10×1.25(細目のためピッチを明示)。左ねじなら LH を付ける。(資料の決まりから組み立てた例)[1][4]

よくある間違い

JIS と ASMEユニファイ(インチ)ねじは、外径・1インチあたりの山数・シリーズ(UNC・UNF)・等級で表す。[4]

規格:JIS B 0123:1999(ねじの表し方)。[5][1]

関連:ねじの図示

不完全ねじ部ふかんぜんねじぶincomplete thread / thread runout

ねじ部の終わりで山が完全にできていない部分。機能上必要なときや加工寸法を示すときは傾斜した細い実線で描くが、省略してもよい。[1][2]

図面への書き方

  1. 傾斜した細い実線ねじ部の終わりから斜めの細い実線で描く。機能上必要がなければ省略できる。[1][2]

規格:JIS B 0002-1。[3][1]

関連:ねじの図示逃げ・逃げ溝

歯車の図示はぐるまのずしgear drawing

歯車は歯の形を1枚ずつ描かず、歯先円や基準円(ピッチ円)を線で示した図と、モジュール・圧力角・歯数などを書いた要目表を併用して表す。[6][7]

図面への書き方

  1. 歯先円は太い実線歯車の外形として太い実線で描く。[7]
  2. 基準円は細い一点鎖線端面から見た図でも軸を含む断面図でも、基準円(ピッチ円)の位置を細い一点鎖線で示す。[7]
  3. 要目表を添える図の横に要目表を置き、歯の仕様をまとめる。[6][7]
  4. 歯の繰返しは描かない歯の形は描かずに済ませる(米国の教材は想像線で歯の繰返しを代用する例も示す)。[8]

よくある間違い

規格:JIS B 0003:2012(平歯車・はすば・やまば・ねじ歯車・すぐばかさ・まがりばかさ・ハイポイド・ウォームの8種類。対応する国際規格はない)。用語は JIS B 0102。[6][9]

関連:歯車の要目表

歯車の要目表はぐるまのようもくひょうgear data table

図では表しにくい歯車の仕様を項目ごとにまとめた表。歯車歯形、基準ラックの歯形・モジュール・圧力角、歯数、転位係数、基準ピッチ円直径、仕上げ方法、歯厚(またぎ歯厚とまたぎ歯数)、精度、相手歯車の図番などを書く。[7][6]

図面への書き方

  1. 図の横に表を置く部品図の右などに表を置き、項目と値を書く。[7][6]
例島根大学の平歯車の図例:モジュール 4、圧力角 20°、歯数 20、転位係数 0、基準ピッチ円直径 80、基礎円直径 75.18、仕上げ方法 ホブ切り、またぎ歯厚 30.6418(またぎ歯数 3)、精度 JIS N8 級、相手歯車の図番。[7]

規格:JIS B 0003:2012 の 4.1「部品図の要目表及び図の記入事項」。[6]

関連:歯車の図示

ばねの図示と要目表ばねのずしとようもくひょうspring drawing / spring specification table

ばねは、決まった力をかけたときの寸法、または決まった寸法にしたときの力で設計・製作することが多いので、形と寸法だけでなく、図に表しにくい設計・製作の仕様を要目表にまとめて併記する。[10]資料1件・参考

図面への書き方

  1. 図と要目表を併用するばねの形を JIS B 0001 に従って描き、要目表を添える。[10]
  2. 簡略図簡略図は ISO 2162-1 による(JIS B 0004 の付図)。[10]

規格:JIS B 0004:2007(圧縮・引張・ねじりコイルばね、重ね板ばね、トーションバー、竹の子ばね、渦巻きばね、皿ばねなど)。用語は JIS B 0103。[10][11]

関連:歯車の要目表

溶接記号ようせつきごうwelding symbol

溶接の位置・種類・寸法・方法を図に示す記号の体系。継手を指す矢、水平な基線、補足を書く尾で構成し、基線に置く基本記号で溶接の種類を表す。[12][13][14]

図面への書き方

  1. 矢で継手を指す矢の先を溶接する継手に当てる。[13][14]
  2. 基線は水平に基線は常に水平に引き、左から右へ読む。[13]
  3. 矢の側と反対側基本記号を基線のどちら側に置くかで、矢の指す側の溶接か反対側の溶接かを区別する。米国の教材では、基線の下が矢の側、上が反対側。[13][14]
  4. 尾に補足を書く溶接方法や仕様など、記号で表せない情報は尾に書く。[13][14]

よくある間違い

JIS と ASMEISO 2553:2013 は、旧 ISO の方式を基にした System A と、環太平洋地域の規格を基にした System B を併記している。JIS Z 3021 は System B を基にしており、System A が必要な場合は ISO 2553 による。米国の教材(AWS 系)も矢・基線・尾の構成。[12][14][13]

規格:JIS Z 3021:2016(ISO 2553:2013 の System B を基に作成)。[12][15]

関連:すみ肉溶接の記号開先溶接と開先寸法全周溶接・現場溶接の記号

すみ肉溶接の記号すみにくようせつのきごうfillet weld symbol

直角に交わる2部材の隅を三角形の断面に盛って溶接する、すみ肉溶接を表す基本記号。直角三角形の形をしている。[14]資料1件・参考

図面への書き方

  1. 直角三角形を基線に置く米国の教材では、垂直な辺を左、斜辺を右に向けた直角三角形を基線の上または下に置く。[14]
  2. 寸法すみ肉溶接の寸法の書き方は JIS Z 3021 の 5.5 による。[12]

規格:JIS Z 3021:2016 の 4.4(基本記号)・5.5(すみ肉溶接)。[12]

関連:溶接記号

開先溶接と開先寸法かいさきようせつとかいさきすんぽうgroove weld / groove dimensions

部材の端に開先(溝)を加工して溶かし込む溶接。開先の形を基本記号で表し、ルート間隔・開先角度・ルート半径・ルート面・開先深さを寸法で指示する。[12][14]

図面への書き方

  1. 寸法を基本記号に添えるルート間隔・開先角度などの寸法を基本記号に添えて書く(細目は JIS Z 3021 の 6)。[12][14]

規格:JIS Z 3021:2016 の 6「開先寸法」(6.2 ルート間隔、6.3 開先角度、6.4 ルート半径及びルート面、6.5 開先深さ)。[12]

関連:溶接記号

全周溶接・現場溶接の記号ぜんしゅうようせつ・げんばようせつのきごうweld all around / field weld

矢と基線の交わる所に付ける補助記号。丸は継手の全周を溶接すること、旗は工場ではなく現場で溶接することを表す。[14]資料1件・参考

図面への書き方

  1. 矢と基線の交わる所に全周の丸は交わる所を中心に描き、現場溶接の旗はそこから立てて描く。[14]

よくある間違い

規格:JIS Z 3021:2016 の 4.5「補助記号」。[12]

関連:溶接記号全周記号(輪郭度)

キー溝の表し方きーみぞのあらわしかたkeyway / keyseat

軸や穴に設けるキー溝は、溝の幅と、溝の深さを決める寸法で表す。島根大学の歯車部品図では、穴側のキー溝を「幅 10 JS9」と「穴の反対側の内面から溝底まで 38.3 +0.2/0」で指示している。[7][4]

図面への書き方

  1. 幅は公差クラスでキーとのはめあいに合わせて溝幅に公差クラスを付ける(図例では JS9)。[7]
  2. 深さは測れる寸法で穴側は反対側の内面から溝底まで、軸側は軸径を基準にした深さなど、測定できる寸法で指示する。[7][4]

規格:JIS B 0001:2019 の 11.8「キー溝の表し方」。[17]

関連:対称度

📚出典

印のない説明は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。規格の本文は有料のため、測定機・部品メーカーの技術資料、大学・公設試の教材、規格の公開ページで確かめ、説明はケズリバの言葉で書いています。記入枠の図はケズリバが描いたものです。

  1. ミスミ「ミスミ技術情報:ねじの製図の基本(ねじ-3)」
  2. 東京工業大学 工学部(現・東京科学大学)「M3 機械製図 ~機械製図の「これだけは」~(SS2 授業資料)」
  3. 日本産業標準調査会(JISC)JIS 検索「JIS B 0002-1/-2/-3 製図-ねじ及びねじ部品」
  4. WisTech Open(米ウィスコンシン州テクニカルカレッジ・システム)「Blueprint Reading Ch.10 Machining Details」
  5. 日本産業標準調査会(JISC)JIS 検索「JIS B 0123 ねじの表し方」
  6. 日本規格協会(JSA)「JIS B 0003:2012 歯車製図(プレビュー:目次・適用範囲)」
  7. 島根大学(総合理工学部 機械設計研究室)「平歯車の部品図例(要目表つき、MDHW4 参考図)」
  8. WisTech Open(米ウィスコンシン州テクニカルカレッジ・システム)「Blueprint Reading Ch.3 Types of Lines Found on Prints」
  9. 日本産業標準調査会(JISC)JIS 検索「JIS B 0003 歯車製図」
  10. 日本規格協会(JSA)「JIS B 0004:2007 ばね製図(プレビュー:目次・適用範囲・定義)」
  11. 日本産業標準調査会(JISC)JIS 検索「JIS B 0004 ばね製図」
  12. 日本規格協会(JSA)「JIS Z 3021:2016 溶接記号(プレビュー:目次・序文)」
  13. Open Oregon Educational Resources「Interpretation of Metal Fab Drawings, Ch.4 Basics of Welding Symbols」
  14. Washington State Board for Community and Technical Colleges(WA Open ProfTech)「Welding 1, §16.6 Basic Elements of Welding Symbols」
  15. 日本産業標準調査会(JISC)JIS 検索「JIS Z 3021 溶接記号」
  16. ミツトヨ(栃木県産業技術センター掲載)「幾何公差の基本(Document No. BSE-M3UGD26185、2026年、71枚)」
  17. 日本規格協会(JSA)「JIS B 0001:2019 機械製図(プレビュー:目次・適用範囲・引用規格)」