ピニオンカッタ設計・選定とトラブル対策
ピニオンカッタは歯車の形をした工具で、ギヤシェーパに付けて歯すじ方向に上下に往復させ、歯車材と正しくかみ合う回転を与えて歯形を削り出す(創成する)。内歯車・段付き歯車・接合歯や欠歯のある特殊歯車を削れるのが大きな強み。下りで削り、上りは削らないので、連続で削るホブより能率は劣る。

✎設計・選定のしかた
見出しを開くと中身が出ます。印刷するとすべて開いた状態で出ます。
得意なワークと加工のしくみ
6
- カッタが歯すじ方向に往復して仮想歯車を作り、それと歯車材が正しくかみ合う相対運動を強制的に与えて、仮想歯車の歯の邪魔になる部分を削り取る。この原理から、(1)内歯車、(2)段付き歯車、(3)接合歯・欠歯などの特殊歯車の歯切りができる[1]資料1件・参考
- 上から下へ動いて削り、下から上へ戻る(削らない)往復運動をくり返す。戻り行程では削れないので、連続で削るホブより能率は劣る[2][3]
- 戻り行程で歯面にキズを付けないよう、カッタと歯車素材の中心距離を少し離すテーブル逃げ機構がある(大型機ではカッタを逃がす機構)。カタログの切削条件表ではこの量を「バックオフ」0.2〜0.8mm としている[1]資料1件・参考
- ギヤシェーパの機構:モータでクランクが回り、アームが揺動してカッタスピンドルが上下する。スピンドル上部の親歯車内にガイドがあり、平歯車はねじれのないストレートガイド、はすば歯車はヘリカルガイドでカッタを回しながら上下させる。歯車素材はカッタ伝動系から分岐した割出しで一定速比で回る[1]資料1件・参考
- ヘリカル歯車には通常ヘリカルガイドが要るが、ガイドなしで NC 制御するギヤシェーパもある(ニデックの ST シリーズ)[2]資料1件・参考
- 歯車形状と工具の選び方(カタログ表):外歯車の平歯車・段付き・はすば・段付きはすば、内歯車のいずれにもピニオンカッタ(ギヤシェーパ)が使える。精度・加工能率の評価はおおむね ○。仕上げが要るときはシェービングカッタ等[1]資料1件・参考
工具の形(ディスク形・ベル形・シャンク形)の選び方
5
- ディスク形:段付き歯車、内歯車の歯切り[1]資料1件・参考
- ベル形:段付き歯車の歯切り(段付き部の径が大きいとき)、内歯車の歯切り[1]資料1件・参考
- シャンク形:歯切り時の干渉などの理由でカッタ歯数を多くとれないとき(おもに内歯車用)。小径シャンク形は小径の内歯車用[1]資料1件・参考
- 形の種類はディスク・ハブ(ベル)・シャンク・内歯付きハブ形があり、粉末ハイス(特殊な場合は超硬)で作る(Liebherr)[4][1]
- 各部の名称:すくい面・すくい角(δ)・前逃げ角(θ)・側逃げ角(ε)・外径(φdk)・ピッチ円直径(φdo)・全歯丈(h)・穴径(φd)・取付面・取付面径(φd1)・取付面の厚さ(l)・幅(L)・刃幅(L1)・ハブ径(φd2)、シャンク形は引きねじ・シャンク部・首径・首長・全長[1]資料1件・参考
モジュール・圧力角・ねじれ角(相手と合わせる諸元)
2
歯数・ピッチ円径の選び方
5
- はすば歯車ではカッタ歯数はヘリカルガイドのリードで決まり(式1)、内歯車では干渉により歯数が制限される[1]資料1件・参考
- 標準品はピッチ円直径 Do=m×Z で、呼び径(ディスク形 50〜175形、ベル形 50〜125形、シャンク形 25形・38形)ごとに Do がほぼ一定になるよう歯数を決めている。例:ディスク形100形は m1.00×100枚=Do100、m2.00×50枚=Do100、m5.00×20枚=Do100[1]資料1件・参考
- 標準寸法表の歯数・歯幅・穴径・形状以外でも製作でき、欠歯・結合歯も製作できる[1]資料1件・参考
- 内歯車用の歯数の目安(図9):ハッチングの範囲内にある Zg(被削歯車歯数)と Zc(カッタ歯数)の組合せなら干渉は起きない。PA20°並歯で Zg=50 のとき、22≦Zc≦32 なら干渉しない。少歯数 Zg の選定領域も図に併記[1]資料1件・参考
- 小径の内歯車用には小径シャンク形を使う(標準寸法:25形 m0.75〜2.50 は Z34〜10、38形 m0.75〜4.00 は Z51〜13)[1]資料1件・参考
ヘリカルガイドの決め方と共用
4
- はすば歯車を削るときはヘリカルガイドのリードを計算する。リードはカッタのピッチ円径(=歯数)とねじれ角で決まる(式は formulas を参照)[1][5]
- 同じはすば歯車を削る場合でも、カッタ歯数を変えればヘリカルガイドのリードを変えなければならない(例:mn2.5・PA20°・β20°RH・40T を削るとき、30T カッタならリード 688.905、50T カッタならリード 1148.175)[1]資料1件・参考
- ヘリカルガイドを共用すると、削れた歯車のねじれ角 βo' と基準のねじれ角 βo の間に誤差が生じるので注意する[1]資料1件・参考
- 共用できる条件:(1)求めたリードがほぼ同値(歯すじ誤差の許容範囲内)、(2)カッタ刃数 Z が整数、(3)ねじれ方向が同じ。歯すじ誤差は歯車公差の許容値内であること[5]資料1件・参考
内歯車での干渉(インボリュート・トリミング・トロコイド)
5
- 内歯車の創成ができるのがピニオンカッタの大きな特長だが、外歯車より干渉が起こりやすく、加工できる内歯車の範囲や内歯車用カッタの設計が制約を受ける[1][6]
- インボリュート干渉:内歯車とカッタの歯数差が大きいときに生じ、内歯車の歯先が削り取られる[1]資料1件・参考
- トリミング干渉:歯数差が小さいときに多く発生。削り始めにカッタを切り込んでいく際や、歯切り中のカッタ戻りストロークの際に、カッタの歯先が内歯車の歯先を削り取る[1]資料1件・参考
- トロコイド干渉:トリミング発生限界よりさらに歯数差を小さくすると生じる。インボリュート曲線の創成が終わった後、カッタの歯先が内歯車の歯面を削り取る。トリミング干渉が生じなければトロコイド干渉も生じない[1]資料1件・参考
- 転位内歯車はインボリュート干渉・トロコイド干渉・トリミング・隅肉干渉など多くの干渉を生じやすく、設計と歯切りの際に十分な検討が要る(ピニオンカッタ・内歯車・ピニオンの歯数と転位係数の組合せで決まる)[6]資料1件・参考
段付き歯車の逃げとストロークの決め方
5
切削速度・ストローク数・円周送り・半径送りの決め方
7
- 被削材ごとの目安(表1):浸炭材 切削速度40〜80m/min、S45C以上 30〜50m/min、FCD70 20〜40m/min。円周送り 0.2〜3.0mm/str、半径送り 0.002〜0.01mm/str、バックオフ 0.2〜0.8mm(3材とも同じ)[1]資料1件・参考
- 切削速度は切削長とストローク数で決まる。切削幅が25mmを超える場合は切削速度を10%程度下げる[1]資料1件・参考
- 円周高送り:従来条件(円周送り0.5/0.3mm/str)より高送り(4.0/2.0mm/str)にすると、切粉が厚く分断され、切れ刃の負荷が分散して逃げ面摩耗・クレータ摩耗ともに少なくなった(m2.25・27T・ねじれ角31.5°・歯幅15・SCM415、カッタ57T MACB コーティング付、800/1200str/min、Rd送り0.02/0.01mm/str、切削時間90s→35s)[9]資料1件・参考
- 従来加工法では角部に負荷が集中し、逆サイドは薄くて長い切粉で摩耗しやすい[9]資料1件・参考
- 後加工がなく送り目が問題になるときは、仕上げ送りを落とす。シェービングで仕上げる場合は送り目は問題にならない(判断は使う側)[9]資料1件・参考
- 加工事例の条件は荒/仕上げ(3段のものもある)で書かれている。例1(MMC、KHAZ):m2.5・PA20°・40T スパー SCr420H、ストローク数700/1,100str/min、円周送り0.50/0.31mm/str、半径送り0.02/0.014mm/str。例2(MMC、KHAZ+バイオレット):m2・PA15°・80T・20°RH S45C インターナル、500str/min、円周送り1.70mm/str、半径送り0.01mm/str。例3(ニデック、スーパードライ):m2・PA20°・38T スパー SCr420H、カッタ66T、700/1200/1200str/min、円周送り2.51/1.26/1.26mm/str、ラジアル送り0.01/0.015/0.015mm/str[1][2]資料1件・参考
- 高速ギヤシェーパでは 1000str/min 以上の高速切削域が使われ、粉末ハイスやコーティングのカッタがこの領域と高硬度難削材で寿命向上に寄与している[1]資料1件・参考
カッタ材質とコーティングの選び方
5
- 材質選定表:KMC3(溶解ハイスの第一推奨材質)は標準切削○・高速切削●、KHA(粉末ハイスの第一推奨材質)は重切削○・高速切削●・高硬度難削材○、KHAZ(高合金粉末ハイス)は重切削◎・高速切削●・高硬度難削材◎。高速切削はコーティング層を設けることで可能(記号の凡例はカタログに記載なし)[1]資料1件・参考
- 三菱マテリアルの KHAZ は高送り(円周方向)切削ができるギヤシェーパ向け。耐摩耗性・耐チッピング性を高めた高合金粉末ハイス[1]資料1件・参考
- コーティング:TiN は皮膜硬度 HV1,800〜2,000・酸化開始温度600〜700℃、バイオレットは HV2,700〜2,900・800〜900℃。TiN は無処理品より寿命が大きく伸び、特に高速重切削で効果が大きい。バイオレットは TiN の約1.5倍の皮膜硬度(工具寿命比2倍以上)[1]資料1件・参考
- ニデックの MX-1 は粉末ハイスの靭性と溶解ハイスの耐摩耗性を併せ持つ材料。適用例:外径φ30・20T のカッタ(MX-1+スーパードライ)で m1.3・PA30°・30T 浸炭鋼スパーを加工し、摩耗0.06mm までの加工数が1000個(850/920str/min、円周送り1.5/0.50mm/str、Ra送り0.020/0.012mm/str)[10]資料1件・参考
- 切刃面にドライ用コーティング(ニデックのスーパードライ)を施すと切削油なしで加工でき、従来の2倍以上の高速・高能率加工ができる(工具寿命は従来 TiN のウェット比 2〜5倍)[2]資料1件・参考
÷計算式
ヘリカルガイドのリードの計算機
リードはカッタのピッチ円直径 Do(= mnZ / cos βo)から L = πDo / tan βo = πmnZ / sin βo。リードの違うガイドで加工すると、ねじれ角が βo' にずれ、歯幅 B の間で B ×(tan βo' − tan βo)の歯すじ誤差が出ます。共用してよいかは、この誤差を歯車の歯すじの許容値と比べて決めます。
切削速度(ギヤシェーパ)
切削速度(m/min)=(ストローク長(mm)×ストローク数(str/min)×π)÷1000[1]資料1件・参考
- ストローク長
- 歯幅+上下のオーバストローク長(mm)
- ストローク数
- 1分あたりの往復回数(str/min)
ヘリカルガイドのリード
- L
- ヘリカルガイドのリード(mm)
- Do
- カッタのピッチ円直径(mm)
- βo
- ピッチ円上ねじれ角(°)
- mn
- 歯直角モジュール
- Z
- カッタ歯数
計算例 mn2.5・PA20°・βo20°RH・40T のはすば歯車:30T カッタでリード688.905、50T カッタでリード1148.175(MMC)。m2.0・30°・71T(PCD163.967)でリード892.2123、m2.5・25°・48T(PCD132.405)でリード892.0370(ニデック)
ヘリカルガイド共用時のねじれ角と誤差
βo'=tan⁻¹(πDo/L')=sin⁻¹(πmnZ/L')、誤差 ⊿δ=βo'−βo(MMC)。歯すじ誤差 Δ=B×(tanβ'−tanβ)(ニデック)[1][5]
- βo'
- 切削された歯車のピッチ円筒上ねじれ角
- L'
- 共用したヘリカルガイドのリード
- βo
- 基準のピッチ円筒上ねじれ角
- B
- 精度管理歯幅(mm)
計算例 リード892.0370 のカッタ(m2.5・25°・48T)を、リード892.2123 のガイドで加工 → ねじれ角24.99475°、歯幅24mm で歯すじ誤差3µm → 共用可能と評価
すくい角誤差が歯形の圧力角に与える影響(ヘリカルピニオンカッタ)
⊿α≒sin-1[tanδ{tanγ-tan(γ+⊿γ)} cos 2 α][11]資料1件・参考
- ⊿α
- 歯形の圧力角誤差
- δ
- ピッチ円上側逃げ角(通常2°)
- γ
- すくい角(通常5°)
- ⊿γ
- すくい角誤差
- α
- カッタ圧力角
計算例 図2:すくい角誤差 −2〜+2° で圧力角誤差はおよそ +4〜−4 分(α=14.5° と 20° の2本の線)
⚠トラブルと対策
症状を開くと、考えられる原因と対策が出ます。原因は上から順に疑うとは限りません。ワーク・機械・工具の組み合わせで変わります。
切上り段差(ワーク1回転の切り終わりに段ができる)[1][2][8]p.36
主な原因
- カッタの取付け不良(取付け時のフレが大きい)
- カッタスピンドルの回転精度とテーブル回転精度の不良
- 被削歯車の取付け不良
- カッタの精度不良(歯溝の振れ、累積ピッチ精度不良)
対策
- カッタおよびアーバの振れを確認する(取付け振れは5µm以内を推奨)
- 機械の調査をおこなう
- 被削歯車の振れを確認する
- カッタの歯溝の振れ・ピッチ誤差を確認する
歯形誤差不良(圧力角のずれ、歯形の乱れ)[1][8][2][11]p.36
主な原因
- カッタのすくい面研削不良(すくい角誤差は圧力角誤差になる)
- カッタ歯形不良
- 刃付角の不良・左右の切れ刃のアンバランス(刃付角度の設定、偏摩耗)
- ガイドの精度不良
- カッタスピンドルとテーブルの回転精度不良(マスタウォームの取付け誤差・偏摩耗など)
- カッタの取付け不良
- 被削歯車の前加工不良
対策
- カッタのすくい面の振れ、面粗さ、すくい角を確認する
- ガイドの摩耗を調査する
- マスタウォームとホイールのバックラッシおよび精度調査、チェンジギヤの精度調査をおこなう
- カッタおよびアーバの振れを確認する
- 被削歯車内径と端面振れを調査する
ピッチ誤差不良・歯溝の振れ不良[1][8]p.36
主な原因
- カッタのピッチ精度・歯溝振れ精度の不良
- カッタおよびワークの取付け精度不良
- ギヤシェーパの精度不良(スピンドル・テーブルの回転精度)
- カッタのすくい面研削不良
- 被削歯車の前加工不良
対策
- カッタのすくい面の振れ、面粗さ、すくい角を確認する
- カッタおよびアーバの振れを確認する
- マスタウォームとホイールのバックラッシおよび精度、チェンジギヤの精度を調査する
- 被削歯車内径と端面振れを調査する
かみ合い長さ不足(歯形の有効範囲が足りない)[8]
主な原因
- カッタの歯丈不足
- カッタ刃先 R の過大
- カッタ刃先コブ形状の不良
対策
- 資料は原因のみ記載(対策の記載なし)
リード(歯すじ)不良[8]
主な原因
- ギヤシェーパの精度不良
- ワークの剛性不足
- ワーク取付け治具の精度不良・剛性不足
対策
- 資料は原因のみ記載(対策の記載なし)
面取り不良(面取量の過大・過小、左右の面取量が違う、面取部に段ができる)[8][11]
主な原因
- カッタの面取高さ不良
- ワークの外径寸法不良
- 歯切り追い込み寸法の不良
- カッタ刃付角の不良
- 面取り付カッタの刃付け研削位置のずれ
- ヘリカルカッタで面取側面を追い込みすぎて刃丈が不足(面取部の段)
対策
- 資料は原因のみ記載。面取り付カッタの刃付けでは研削位置がずれると面取り形状が狂うので注意する(ニデック)
歯面粗さ不良・むしれ[1][8][2]p.36
主な原因
- カッタのすくい面研削不良(刃付け面粗さが粗い)
- 加工条件の不良・切込み量の不適
- 構成刃先の付着
- 切削油の不適切・劣化
- 工作物の形状と取付け剛性の不足
- 駆動系のガタ
- ヘリカルピニオンの歯底残り・歯付段差の追い込み過ぎ
- 被削材がねばい
- リリービング干渉
対策
- カッタのすくい面の振れ、面粗さ、すくい角を確認する(刃付け面粗さをよくするとむしれが少なくなる)
- 加工条件を見直す
- 切削油剤の選定、かけ方を確認する
- 取付け治具を見直す(被削歯車レストの設定)
- 機械の調査をおこなう
- 刃面粗さを小さくする処理(ニデックの SS 処理)でむしれを減らした事例がある
カッタ寿命が短い・異常摩耗[1][8][11][9]p.36
主な原因
- ストローク数が多い(高切削速度・高送りなど切削条件の不適切)
- 機械の剛性不足および振動
- カッタの設計の不適
- カッタ母材の硬度が軟らかい
- PVD 処理の不良
- 刃先 R 部の角ばり
- カッタおよびワークのクランプ力不足
- ワーク硬度が高い
- リリービング干渉
- ショルダにカッタが当たる、または間に切粉が詰まる
- 切削油切れ
- 刃付け時期を逃す(逃げ面摩耗が大きくなり溶着を助長)
対策
- 加工条件を見直す
- 機械の調査をおこなう
- メーカに検討を依頼する
- トレーリング側の摩耗幅が 0.2〜0.3mm になったら刃付けする
- 円周高送りにすると逃げ面摩耗・クレータ摩耗が減った事例がある
カッタの欠損(一気に欠ける)[8][2][1]p.35
主な原因
- カッタ母材の不良(硬度が高い・もろい)
- 切削条件の不適切(高切削速度・高送り)
- 早送り時の突っ込み
- カッタおよびワークのクランプ力不足
- ワーク硬度が高い
- リリービング干渉
- ショルダにカッタが当たる、または間に切粉が詰まる
- 再刃付け時の切り込み過大
- 刃付け研削の研削焼けやクラック(切刃欠損の引き金になる)
対策
- 資料は原因のみ記載。刃付け研削で研削焼け・クラックを出さない(ニデック)
- 1歯が1溝を削るので歯欠けには特に注意する(MMC)
小歯数ギヤの歯形のうねり[2]
主な原因
- 小歯数のギヤはかみ合い率が低く、負荷変動が大きいためカッタ・ワークが揺すられる
対策
- 切削負荷を小さくして歯形のうねりを抑える
歯面への溶着[11]
主な原因
- ピニオンカッタの歯面側面逃げ角は通常2°程度と小さく、逃げ面摩耗と同時に歯面に溶着が生じやすい
- 刃付け時期を失して逃げ面摩耗が大きくなる
対策
- トレーリング側の摩耗幅が 0.2〜0.3mm になった時に刃付けを行う
送り目が残る[9]
主な原因
- 円周送りを高くした
対策
- 後加工がなく送り目が問題になる時は、仕上げ送りを落とす(シェービングで仕上げる場合は問題にならない)
↻再研削・寿命の管理
- 刃付けはすくい面のみを研削する。すくい角は通常5°[11][1]
- 刃付け時期:切れ刃の摩耗は一般にトレーリング側の歯面が多く、この部分の摩耗幅が 0.2〜0.3mm になった時に刃付けを行うのが経済的[11]資料1件・参考
- 刃付けの方法:スパーは電磁チャック上でカッタをすくい角だけ傾けて回し、砥石ですくい面(円錐面)を研削する。ヘリカルは1刃ずつ研削する(MMC 図11)。Liebherr もスパーは円錐状すくい面、ヘリカルは段状すくい面をカップ砥石で研削するとしている[1][4]
- 刃付けの誤差は刃付け法が簡単なので一般にあまり大きくないが、刃付け円錐面の偏心はカッタの振れの原因、すくい角誤差は圧力角誤差の原因になる[1][11]
- ヘリカルピニオンカッタは各刃ごとの研削なのでスパーより精度が安定しにくく、歯形に影響することが多い。刃付け角は必ずしもカッタのねじれ角に直角とは限らない[11]資料1件・参考
- 面取り付カッタは研削位置がずれると面取り形状が狂う[11]資料1件・参考
- 刃付けの面粗さは JIS では 3.2µmRy 以内だが、できるだけよくすると寿命が延び、切削面もむしれが少なく仕上がる。刃付面が粗いと工具寿命が短くなり、研削焼けやクラックは切刃欠損の引き金になる[1][2]
- 工具寿命の評価例:カッタ1枚換算で二番摩耗 0.3mm までの切削長(m)を工具寿命評価係数 Lp としている[1]資料1件・参考
- 注文時に「すくい面コーティングの有無」を選べる[1]資料1件・参考
◎工具の検査
☑注文時に決めること
工具メーカーに見積・製作を頼むときに伝える項目です。歯車の要目表(図面の表)から決まるものが大半です。
| 項目 | なぜ要るか・決め方 |
|---|---|
| モジュール(または DP)・圧力角 | 必ず記入する項目。カッタの歯直角モジュール・歯直角圧力角は被削歯車と同一でなければならない[1] |
| 歯数(外歯・内歯の別)とねじれ角(RH/LH) | 内歯車は干渉で使えるカッタ歯数が限られる。はすば歯車はねじれ角と方向がカッタとガイドの設計に要る[1] |
| 歯先円径・歯底円径(歯底径/歯丈/工具アデンダム)・歯厚(円弧歯厚/またぎ歯厚 ZM/オーバピン寸法) | 発注仕様書の被削ワーク諸元の項目。歯厚は円弧歯厚・またぎ歯厚・オーバピン(ビトウィン)ピン寸法のいずれかで指示し、SV(GR)後の値か歯切後の値かと、SV代(GR代:円弧/またぎ/OBD・BBD)も書く[1] |
| 歯形管理長さ(かみ合い長さ・TIF径・回転角)と相手歯車諸元(歯数・外径・軸間距離)、歯底 R | カッタの歯丈不足・刃先 R 過大・刃先コブ形状不良はかみ合い長さ不足の原因になる[1][8] |
| 面取り量(半径方向・円周方向・斜辺方向・面取り径) | 面取り付カッタは面取高さ・刃付角・追い込み寸法で面取量が変わる[1][8] |
| 歯幅と歯車形状(オープンギヤ/ショルダギヤ(ショルダ外径・隙間)/テーパギヤ) | 段付き部の径で工具の形(ディスク形・ベル形)を選び、ストロークとオーバストロークを決める。ショルダへの当たりや切粉詰まりは欠損の原因[1][8] |
| 被削材料と硬さ | 材質・切削条件の選定に要る(浸炭材・S45C以上・FCD70 で切削速度が違う、高硬度難削材は材質を選ぶ)[1] |
| カッタ形状(ディスク/ベル/シャンク) | ワークの段付き・内歯の大きさで決まる。シャンク形は全長・歯幅・首径・テーパ形状(MT2/MT3/MT4/F形)・テーパ部長さ・引きねじ(ねじ径・有効長)も指定する[1] |
| カッタ歯数(指定、または呼び寸法 50/75/100/125/150/175形で一任) | ヘリカルガイドのリードと内歯車の干渉に関わる[1] |
| ヘリカルガイド(一任または指定) | 手持ちのガイドを使うなら、そのリードからカッタ歯数が決まる。共用するとねじれ角に誤差が出る[1][5] |
| 精度(AA級・A級・B級)・クーラント(ドライ/ウェット油性・水溶性)・材質・表面処理・すくい面コーティング | 加工形態(標準・重切削・高速・高硬度難削材)で材質とコーティングを選ぶ(MMC 材質選定表)。ドライ加工はドライ用コーティング(ニデックのスーパードライ)を切刃面に施して切削油なしで加工している[1][2] |
| 全幅・歯幅・穴径(31.742/44.45/31.75 ほか)・キー形状 | 取付け部の寸法。穴径は 31.742・44.45・31.75 から選ぶか、その他(穴径・公差)を指定。キーはなし/JIS 穴キー/特殊穴キー/端面キー(幅・深さ・R)[1] |
| すくい角(5° またはその他)・刃付け角 | すくい角誤差は圧力角誤差になる。ヘリカルの刃付け角はねじれ角に直角とは限らない[1][11] |
| 歯形(標準仕上げ・P・PG・S-TOP・PS・PGS・PP・PGP・PSP・PGSP、停止研削/通し研削)とトッピングの有無 | 歯形修整(圧力角修正・クラウニング・歯先/歯元修整・トッピング・プロチュバランスなど)をカッタに入れられる[1][4] |
| 特記事項(特殊分割・不等歯厚) | 欠歯・結合歯・不等歯厚なども製作できるため、標準と違う点を明記する[1] |
ケズリバ(kezuriba.net)/gears/tools/pinion-cutter/ より印刷
+あわせて知りたいこと
特殊歯形・非インボリュートのピニオンカッタ
3
ウェーハカッタ
1
- 薄い被覆ディスクを専用ホルダに挟んで使う使い捨てのカッタ。摩耗で歯形が変わらず、交換後の機械調整が要らない。量産向き[4]資料1件・参考
切削能率と寿命の見方
1
- 切削能率評価係数 CFp=1秒当りの平均切りくず排出量(mm³/sec)、工具寿命評価係数 Lp=カッタ1枚換算の二番摩耗0.3mm までの切削長(m)。材質を変えると Lp が上がり、条件を上げると CFp が上がる(SCr420H の場合の図12)[1]資料1件・参考
⚙ほかの歯切り工具
📚出典
印のない値は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。材種名・コーティング名はメーカーの商品名で、メーカーどうしの比較はしていません。「p.」は三菱マテリアルのカタログ(C004J-H)の本文ページです。
- 三菱マテリアル「歯切工具/ブローチ 総合カタログ C004J-H(2015)」
- ニデックマシンツール「精密切削工具|ピニオンカッタ(製品ページ)」
- 三菱重工業「三菱重工技報 Vol.52 No.1(2015)内歯車加工の工具長寿命化・高能率化の実現 “三菱重工スーパースカイビングシステム”」
- Liebherr-Verzahntechnik「Precise and productive. Gear tools (brochure PDF)」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス:ピニオンカッタ加工時のヘリカルガイドの共用検討」
- 信州大学工学部紀要(信州大学学術リポジトリ)「両角宗晴・八重島公郎「転位インボリュート内歯車の隅肉干渉限界線図」(1971)」
- ジェイテクト「JTEKT ENGINEERING JOURNAL No.1016(2018)ギヤスカイビングセンタを用いた複合加工技術の開発―シンクロスリーブ工程集約への取り組み―」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス:シェーパ加工に関する不具合と要因」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス:ギヤシェ-パ加工の高速加工・円周高送りの効果」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス:MX-1材のピニオンカッタ適用事例」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス:ピニオンカッタの刃付け研削について」