面取り工具(フレージングカッタ)設計・選定とトラブル対策

フレージングカッタは、歯切りした歯車の端面のカドを、かみ合わせながらインボリュートに沿って押しつぶし、短時間で面取りする歯車形の工具。押しつぶしで端面側に盛り上がったバリは、一緒に付けたバリ取りカッタで同時に除去する。ホブやピニオンカッタで歯切りしたあとの減速機歯車などに使われる。

✎設計・選定のしかた

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加工のしくみと構造

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  • 歯切りされた歯車の端面を、インボリュート方向に沿って押しつぶすことにより、短時間で面取り加工する歯車型工具[1][2]
  • 2つの歯車を組み付けた構造で、それぞれの工具の歯面が歯形部端面を押しつぶす。押しつぶされて端面側に出た盛り上がりは、違う位置にセットした両端面のバリ取りカッタで同時に除去する[3]資料1件・参考
  • ホブやピニオンカッタで加工した後、ギヤ両端のカド部を転造(塑性加工)して面取りし、前加工で出たバリの除去と面取りを同時に行う[2][4]
  • 成形(押し付け)による面取りは、ワークとかみ合う歯車形の工具で歯すじのカドに面取りを作る。材料は主に歯車端面側に流れ、単刃・バリ取りディスク・ファイルディスクで削り取る[4][5]資料1件・参考
  • 面取り加工機能付きのホブ盤にも組み込まれる。シェービング盤・スカイビング盤・ホブ盤に組み込み、主加工と並行または順番に行える[3][5]

面取りする部位(片側・両側)

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  • 面取りする部位は2タイプ:歯面の片側のみ面取りするタイプと、左右歯面の端面を面取りするタイプ。平歯車は両側、はすば歯車は片側(鋭角側)または両側[1]資料1件・参考
  • 左右の歯面を個別に調整できる。ねじれ角を修整した歯車に合わせて面取り寸法を調整できる(Gleason)[6]資料1件・参考

面取り形状の選び方

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  • 面取り形状は3タイプ:歯先と歯元の面取り量が異なるテーパ形、歯先と歯元の面取り量が同じ平行形(歯面のみ)、歯底も同時に面取りする平行形(歯面+歯底)[1]資料1件・参考
  • 他社資料でも、平行形・コンマ形(comma-shaped)・歯底まで面取りする平行形の3種が挙げられている(Liebherr)。Gleason はコンマ形・平行形・歯底面取り・鋭角/鈍角の面取りを挙げる[7][4]
  • 押し付け面取りの面取り角はおおむね 20〜30°(用途によってはこの範囲外も)[4]資料1件・参考

端面が傾いた歯車・面取り量の調整

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  • 歯車端面は通常軸直角だが、傾斜している端面も面取りできる。15°を超える場合は計算による確認が必要[1][7]
  • 面取り量の調整は2枚のブレードの位相を変えて行う。偏心ピンを組み込むとボルトで位相調整できる[1]資料1件・参考
  • 工具はプリセット済みで納入され、歯車諸元と歯幅が同じで、ワーク形状との衝突のおそれがなければ別のワークにも使える。歯幅が違うワークには、歯幅ごとのセットまたはホルダ付きのフレキシブルな面取りディスクを使う(Liebherr)[7]資料1件・参考

向くワークと適用範囲

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  • 主にモジュール5mm までの小さめの円筒歯車に使う。非常に速く、サイクルタイム10秒以下の遊星ピニオンにも使える。ウェット加工では1個あたりの工具費が最も低い[5][4]資料1件・参考
  • 歯底径の下に逃げがほとんどない軸付き歯車にも向く[5]資料1件・参考
  • モジュール5mm を超える歯車は、切削で面取りする方法(面取りホブ・フライカッタ・エンドミル)が使われる[4]資料1件・参考
  • 自動車や二輪車用の減速機歯車の端面面取りに使用[2]資料1件・参考

二次バリ(歯面側のふくらみ)への対処

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  • 押し付けた材料の一部は歯面側にも流れ、二次バリ(ふくらみ)になる。シェービングやねじ状砥石研削なら問題にならないが、後工程がホーニングだと工具寿命を守るためにより良い状態が要る[4][5]資料1件・参考
  • 対策は2通り:(1)180°が面取り部、残り180°がバニシング(押しならし)部になった面取り工具で、二次バリを歯面に押し込む。(2)ホブ切りを2回に分け、間に面取りを入れて2回目のホブで二次バリを取る(追加は通常4〜5秒)[4]資料1件・参考
  • 端面側の二次バリはバリ取りディスクやファイルディスクで取る[6][7]資料1件・参考

ほかの面取り工具

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  • 切削面取専用工具:シミュレーションでワークごとに専用設計し、ワーク端面でホブと同様の創成運動をして面取りする。通常のギヤカッタと同様に刃付・リコートできる(ニデック)[2]資料1件・参考
  • 面取りホブ(歯面ごとに1本、ワーク専用の歯形)、フライカッタによる輪郭面取り(標準インサートで m2.5〜8 をカバー、歯底下に逃げが要る)、エンドミルによる面取りがある(Gleason)[5][4]資料1件・参考
  • バニシングギヤ:熱処理された歯車に、圧力角修正・ねじれ角修正をした工具を押しつけながら回転させ、バリ・打こんを取る工具。通常3組で加工する[1]資料1件・参考

面取りが要る理由

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  • 鋭いカドや残ったバリは浸炭焼入れでもろくなり、負荷で欠けて変速機を傷める。硬くなったバリはホーニングなど後工程の工具寿命を縮める。端面を基準や把握に使う場合もバリは許されない。手で扱うときのけが防止にもなる[4][5]資料1件・参考

⚠トラブルと対策

症状を開くと、考えられる原因と対策が出ます。原因は上から順に疑うとは限りません。ワーク・機械・工具の組み合わせで変わります。

面取り形状が変形する・歯先側の面取り量が小さい・外周部などにバリが大きく出る[3]

主な原因

  • 工具のワークと接する箇所の損傷が大きい(使い過ぎ)
  • 形状の小径化やドライ加工などで、工具寿命にかかわる使用環境が厳しくなった

対策

  • 工具の素材を強化する(現行材 SUJ2(軸受け鋼)→ SKH51(ハイス鋼、高硬度化))
  • SKH51+加工表面の高硬度化
歯面に二次バリ(ふくらみ)が残り、ホーニング工具の寿命が落ちる[4][5]

主な原因

  • 押し付け面取りで材料が歯面側に流れる

対策

  • バニシング部付きの面取り工具で二次バリを歯面に押し込む
  • ホブ切りを2回に分け、間で面取りして2回目で二次バリを取る

↻再研削・寿命の管理

◎工具の検査

☑注文時に決めること

工具メーカーに見積・製作を頼むときに伝える項目です。歯車の要目表(図面の表)から決まるものが大半です。

項目なぜ要るか・決め方
モジュール(または DP)・圧力角(必ず記入)、歯数、ねじれ角(RH/LH)ワークとかみ合わせて押しつぶす歯車型工具なので、ワークの歯車諸元が要る[1]
歯先円径・歯底円径(歯底径/歯丈/工具アデンダム)・歯厚(歯切後:円弧歯厚/またぎ歯厚 ZM/オーバピン寸法。両面取の場合は面取時の歯厚)・転位係数量・歯幅・歯形管理長さ(かみ合い長さ/TIF径/回転角)発注仕様書の被削ワーク諸元の項目[1]
被削材料と硬さ発注仕様書の項目。ドライ加工や小径化で工具の損傷が大きくなる例がある[1][3]
面取り形状(平行型/テーパ型/平行型(歯底面取り))と面取り部位(はすば歯車片側(鋭角面)/はすば歯車両面/平歯車両面/ワーク図通り)発注仕様書で図を選んで指示する項目(MMC の面取り形状3タイプ・面取り部位2タイプに対応)[1]
歯車形状(オープンギヤ/ショルダギヤ(ショルダ外径・隙間)、端面平行/端面テーパ付き)傾斜端面は15°を超えると計算で確認が要る。ワーク形状と衝突しないことが工具流用の条件[1][7]
相手歯車諸元(歯数・外径・軸間距離)発注仕様書の項目[1]
カッタ歯数(指定、または呼び寸法 175/200/225/250/300形で一任、軸間距離・外径の上限下限で指定)発注仕様書の項目。歯数を指定するか、呼び寸法・軸間距離・外径(以下/以上)を示して一任する[1]
カッタ材質(SKH51 ほか)・精度(歯車旧JIS4級ほか)材質で寿命が変わる(SUJ2 から SKH51・表面高硬度化で寿命改善を図る例)[1][3]
かみ合せギヤ(要/不要)・軽量化(一任/指定)発注仕様書の項目[1]
穴・キー形状(穴径φ、キー幅、R、C)と取付け形式(TYPE-1〜3、それ以外)発注仕様書の項目(取付け形式は図の TYPE-1〜3 から選ぶか、それ以外を指示)[1]

⚙ほかの歯切り工具

📚出典

印のない値は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。材種名・コーティング名はメーカーの商品名で、メーカーどうしの比較はしていません。「p.」は三菱マテリアルのカタログ(C004J-H)の本文ページです。

  1. 三菱マテリアル「歯切工具/ブローチ 総合カタログ C004J-H(2015)」
  2. ニデックマシンツール「精密切削工具 面取工具(製品ページ)」
  3. ニデックマシンツール「切削工具トピックス:フレ-ジングカッタの寿命」
  4. Gear Technology (AGMA Media) / Gleason「G. Klein「Chamfering and Deburring – the Underrated Process」(2016年8月号)」
  5. Gear Technology (AGMA Media) / Gleason「G. Klein「The Evolution of Gear Chamfering」(2018年9/10月号)」
  6. グリーソン(Gleason)「Chamfer Rolling and Deburring(製品ページ)」
  7. Liebherr-Verzahntechnik「Precise and productive. Gear tools (brochure PDF)」