スカイビングカッタ設計・選定とトラブル対策

スカイビングカッタは、ピニオンカッタに似た歯車形の回転工具を工作物に対して傾け(軸交差角)、歯数比どおりに同期回転させながら歯幅方向に送って歯を削る工具。交差角によって生じる「すべり」が切削速度になる。往復運動がないのでギヤシェーパより速く、内歯車・外歯車・段付きワークを複合加工機でも削れる。

スカイビングカッタのイメージ図
イメージ図

✎設計・選定のしかた

軸交差角 Σ(上から見た模式図)工作物(歯車)と軸Σ工具(カッタ)と軸目安(不二越)内歯:約 20°外歯:30° 以上工具にねじれ角があるとき同じ向き:Σ = 工具 − 工作物逆の向き:Σ = 工具 + 工作物(例 15° と 20° → 5° / 35°)
工具と工作物を軸が交差するように取り付けて同期回転させると、交差角の分だけ切れ刃が歯すじ方向にすべり、そのすべりが切削速度になります。交差角が大きいほどすべりは大きくなりますが、内歯車では干渉しやすくなります。ねじれ角と交差角の関係は Gleason の解説記事の数値例から書き起こしたもので、模式図です。

見出しを開くと中身が出ます。印刷するとすべて開いた状態で出ます。

加工のしくみ(交差角とすべり)

4
  • 工具軸と工作物軸を交差させて(軸交差角)取り付け、両者を同期回転させる。交差角により工具切刃と工作物の移動方向に差が生じ、すべり(相対速度)が発生して歯溝が削られる。工作物の回転に応じて工具を歯幅方向に送って歯切りする[1][2][3][4]
  • ギヤシェーパは工具を軸方向に往復させるが、スカイビングは回転運動で削るため空切削がなく、加工時間を大幅に短縮できる[3][2]
  • 工作物とかみ合いながら連続で加工し、工具歯形が工作物に転写されるため高精度(ピニオンスカイビングで ISO4〜5級)。クラウニング・テーパなど歯すじの調整もできる[2][1]
  • 原理は古くからあったが、機械剛性や工具寿命の問題で実用化されなかった。近年、材料・コーティング、工具製造技術、ダイレクトドライブモータによる剛性、高精度な同期 NC、シミュレーションの進歩で再評価されている[1][3][4]

向くワークと工程

5
  • 内歯車・外歯車・内スプライン・外スプラインに使える。複合加工機(旋盤・マシニングセンタ)でもスカイビング専用機でも加工できる[5][6][7]
  • 複合加工機ならワンチャックで旋削から歯切りまで行え、シャフト部品の外歯車と外スプラインの連続加工、外歯車と内歯車のある部品の加工、2つの歯車の位相合わせができる[5][3]
  • 適用工程は生の歯切り工程と、熱処理後の歯面仕上げ工程(熱処理後の内歯を超硬カッタで仕上げ、新JIS5級以上の事例)[1][8]
  • 能率の目安:ギヤシェーパの2倍以上(NACHI)、2〜5倍で品質は1〜2等級良い・工具寿命はシェーパ並み(Liebherr)。内歯車用は少量多品種・小規模ライン向き(NACHI)[6][9]
  • デメリット:ブローチよりランニング工具費が高い。外歯を生加工する場合はホブ・シェーパより工具寿命が短い(内歯はシェーパと同等)[1]資料1件・参考

交差角の決め方

10
  • 切削速度を生む主なパラメータは工具と工作物の交差角 Σ。ねじれ角 β も関わるが、十分な切削速度を得る主役は Σ[4]資料1件・参考
  • 交差角を大きくすると相対速度(すべり)が大きくなる[1][10]
  • 内歯の推奨加工条件:交差角 約20°(NACHI)。内歯の加工事例も交差角20°[1][6]資料1件・参考
  • 外歯車は内歯車より理論上切削性が悪いので、交差角を大きく(30°以上)して切削性能と加工精度を上げる(事例:外歯 m2.7・20°RH・27T を、交差角30°・10°LH・34T のカッタで加工)[6][1]資料1件・参考
  • ねじれ歯のないストレート歯の工具をはすば歯車に使うときは、交差角を工作物のねじれ角に合わせる。この場合、十分な切削速度を得るには工作物のねじれ角が10°を超えていること[4]資料1件・参考
  • 工具にもねじれ角がある場合:同じねじれ方向なら差、逆方向なら和が交差角になる(工作物15°・工具20°で同方向なら5°、逆方向なら35°)。工作物と工具のねじれ角・方向が同じだと交差角は0になり、スカイビングの運動は生まれない[4]資料1件・参考
  • はすば歯車でも工具の傾きはねじれ角と別に選べる。ねじれ角20°以上ならスパー形の工具を交差角に合わせて使える。交差角をねじれ角と違う値にするときは、工具すくい面の向きと側逃げ角をねじれ角と交差角の差から計算する[4]資料1件・参考
  • 交差角を大きくすると内歯車と干渉しやすくなるため、三菱重工(現ニデック)のスーパースカイビングカッタは工具を樽形にして干渉を避け、大きな交差角をとれるようにした[2][11]資料1件・参考
  • 交差角が小さいと、大きい歯車と並んだ小さい歯車(クラスタギヤ)を衝突なしで削れる[8]資料1件・参考
  • 工具の歯形は、工作物の基準ラック(台形の溝)を交差角 Σ の平面で切った断面から求める。工具の歯形計算では交差角とすくい面のオフセットを考慮する[4][9]

工具歯数とワーク歯数

6
  • 工作物の振れを小さくし、ピッチ精度を高くするには、工具の(理論)歯数と工作物歯数に公約数を持たせない。むく(一体)のスカイビングカッタも同じ[4]資料1件・参考
  • 工具と工作物は歯数比に対応した速度で同期回転する(ω工作物=Z工具/Z工作物×ω工具)。はすば歯車では送りに応じた追加回転が加わる[5][4]
  • 工具歯数の事例(NACHI):内歯 70T に 30T、内歯 78T に 50T、内歯 75T に 58T、内歯 96T(熱処理後)に 71T、外歯 90T に 56T、外歯 27T に 34T[1][6]資料1件・参考
  • 外歯加工は内歯より工具の作用刃数が少なくなるため、切りくず厚みが内歯の2倍程度になる[1]資料1件・参考
  • 刃先交換式のカッタヘッドでは刃が基準歯形の2・3・4溝おきの位置に並び、理論歯数のうち一部だけを実刃とする(仮想歯数)。仮想歯数と工作物歯数がハンチングの関係なら不利はない[4]資料1件・参考
  • 欠歯形状の加工で工具を1刃にし、同期比を1:3にした事例がある。同期比を変える工法はかみ合いが不均一で負荷変動が大きく、チッピングが想定されるため高剛性の工具形状にした[3]資料1件・参考

すくい角・逃げ角(切削中に変わる有効すくい角)

7
  • スカイビングでは切削始めから終わりにかけて切削方向が変わる。切削始めは正(ポジ)のすくい角で、切削中に有効すくい角が負(ネガ)に変わる。負になると削りにくく切削温度が上がり(すくい角5°で580℃、−30°で710℃の比較)、切削終わりで切削負荷が大きくなる[5]資料1件・参考
  • 従来のピニオン型カッタのスカイビングは、加工中の工具すくい面と加工面のなす角が大きな負になり(すくい角が鈍角)、切削抵抗が大きく工具寿命が短い[2][11][5]
  • 有効すくい角の最小値の計算例(m1.5、工具56T、交差角20°、すくい角10°、送り0.200mm/rev、切込3.075):外歯90T で −36.8°、内歯80T で −17.0°。切りくず厚み最大は外歯0.281mm、内歯0.137mm[1]資料1件・参考
  • スカイビングの刃はすくい面が両側の切れ刃をつなぐ平面なので、側すくい角を両側とも正にはできない。妥協として側すくい角0°が受け入れられる。刃先の切れ味を上げるため上すくい角をつけることはできるが、超硬刃で上すくい角4°を超えると刃先付近でチッピングしやすい[4]資料1件・参考
  • 円錐形(コニカル)の工具は構造上の逃げ角を持ち通常は中心に置く。円筒形の工具は傾け(チルト)または中心からずらした配置が要る[9]資料1件・参考
  • 工具のチルト角は、刃と溝の間の有効逃げ角を増やすのに使え、逃げ角の小さい長いスパー形工具の背面と溝の干渉をなくすのにも使える。範囲内で圧力角の補正にも使える[4]資料1件・参考
  • スーパースカイビングカッタは、樽形砥石に切れ刃溝と逃げ角を加え、荒加工領域の外周にテーパを付けてすべての刃が切削に関与するようにした。ピニオン型が3パスで削るところを1パスで3刃が削り、1刃あたりの切削回数は1/3になる[2]資料1件・参考

段付き・止まり形状の逃げ

6
  • 止まり形状(段付き・フランジ付き部品)を加工できる[6][7][2]
  • ギヤシェーパでは段の手前に 3〜5mm の逃がし部が必要だが、スカイビングでは逃がし部が要らず、製品をコンパクトにでき強度も上げられる[3]資料1件・参考
  • ホブでは削れない根元近くまで加工でき、底突き干渉を避けられる(OSG)[7]資料1件・参考
  • 内歯車では特に工具と工作物の衝突回避を設計で確認する。工具経路と削った溝面を比べる干渉チェックをソフトで行う[9][4]
  • ストレート歯のシャンク形工具では、径が小さく歯幅の広いワークで、溝と刃の奥側が干渉することがある。ウェーハカッタは逃げの付いたごく短い歯なので、小径ワークに巻き付くはすば溝でも干渉を防げる[4]資料1件・参考
  • ワークと使用設備に合わせてベル形(深い座ぐり)・シャンク形の工具がある[6]資料1件・参考

切削条件(すべり速度・送り・切込み)の決め方

11
  • 主な加工条件は (1)すべり速度(工作物/工具のピッチ円上、切削温度に影響)、(2)送り量(工作物1回転あたり、切りくず厚みに影響)、(3)切込み量(歯丈方向、有効すくい角・切りくず厚みに影響)。いずれも工具寿命とサイクルタイムに密接に関係する[5]資料1件・参考
  • まず目標の工具寿命とサイクルタイムを決め、何を優先するかを検討して条件を選ぶ。生産量から目標を決める[5]資料1件・参考
  • すべり速度は低すぎると切削抵抗が大きく、高すぎると切削温度が上がって工具寿命が短くなる。適切な値は被削材で異なる[5]資料1件・参考
  • 速度を 300m/min から 150〜200m/min(UCS)に下げ、切込みと送りを上げて生産性を保つと工具寿命が大きく改善した(Gleason、超硬刃)[4]資料1件・参考
  • 送り・切込みとも小さくすると工具寿命は改善するが、サイクルタイムが大幅に増える(外歯 m2.0・75T・SCM420H、150m/min:送り0.3→1.5mm/rev で切りくず厚み0.22→0.80mm、CT 56→23s。切込み0.6→1.2mm/パスで有効すくい角 −26°→−36°、切りくず厚み0.22→0.50mm、CT 56→36s)[5]資料1件・参考
  • 内歯の推奨加工条件(NACHI):交差角 約20°、切削速度100〜120m/min、送り量0.1〜0.3mm/w rev、パス回数2パス以上[1]資料1件・参考
  • 外歯を加工する場合は、交差角を大きくしたりパス回数を増やしたりして、有効すくい角の負の絶対値と切りくず厚みを小さくする。交差角を大きくすると相対速度が上がり、パスを増やすと切刃の接触回数が増えるので、工具寿命低下や加工時間増は避けられない[1]資料1件・参考
  • 切込みごとに工作物の角度を少しずらす(セットオーバ)と、U字の切りくずを L字にでき刃の摩耗が減る。セットオーバの向きを1個ごとに交互にすると摩耗が均一になる(Gleason の切込み戦略)[4]資料1件・参考
  • 条件の目安(湿式):G50 ハイス+AlCroNite のむく工具で 100m/min、超硬刃(H10F+ALCRONA-Pro)で約300m/min(Gleason)。超硬刃ではドライの方が仕上げ面がよく、工具摩耗は同等以下、主軸動力は約15%低かった[4]資料1件・参考
  • 加工事例:ニデックの GRANMET SK(スカイビング用粉末ハイス)+MightyShield Σ、35T スパー工具で m1.5・70T・20° の SCM440(HB270-300)を切削速度70m/min、アキシャル送り0.4-0.1mm/rev、5パスで加工し、従来品(MX-1)の1.6倍の寿命[12]資料1件・参考
  • 加工事例:スーパースカイビング 切削速度130m/min・サイクルタイム90s(ギヤシェーパは50〜90m/min・180s)、内歯 m2・57T・20°・18°RH・SCM415。摩耗限界0.3mm で約250個[2]資料1件・参考

工具材料とコーティングの選び方

6
  • 粉末ハイス(PM-HSS)の工具は投資が小さいが摩耗が大きい。超硬は材料費・製造費が高いが、生産量が多いときや高強度材で使う価値がある[9]資料1件・参考
  • スカイビングには耐摩耗性の高い粉末ハイスが適する。被削材や機械で摩耗形態が違うので、それに応じて選ぶ。NACHI は耐摩耗性重視で FAXG1、耐チッピング性重視で FAP2 を推奨(FAP は安価、FAP2 は難削材向き、FAXG1 は一般材向き)[5][6]資料1件・参考
  • ニデックの GRANMET SK は高合金化で硬さと耐摩耗性を高めた、難削材の高硬度ワーク向けのスカイビング用粉末ハイス[12]資料1件・参考
  • すくい面コーティングなしでは早期に摩耗が進む(20個で外周刃先エッジが約0.5mm 後退、コーティング有りではほとんど進まない)。スカイビングはすくい面コーティング有りが前提の加工法といえ、すくい面コートなしの工具は再研削ごとに再コーティングが必要[1][6]資料1件・参考
  • 熱処理後の仕上げ(ハード加工)では超硬スカイビングカッタを使う。超硬材の選定により、すくい面コーティングなしでも安定加工できた事例がある(NACHI の NF20S+DuAl Hard、m1.05・96T 内歯、110m/min、送り0.10mm/rev、取代 En0.12mm、100個で摩耗0.07〜0.09mm)[1]資料1件・参考
  • OSG のスカイビングカッタは m0.55〜m6.0、粉末ハイス XPM・超硬合金、一般鋼用・アルミ合金用(DLC)・高硬度鋼用(超硬)などがある[7]資料1件・参考

歯形・歯すじの修正

3
  • 交差角やオフセット角を変えると工作物の歯形が変わり、歯形修正ができる(シミュレーションで交差角を ±2° 変えると左右の歯形が変化。実加工でも倒れの傾向が一致)[1]資料1件・参考
  • 両歯面に同じ符号の小さな圧力角誤差があれば工具チルト角で補正できる。大きな誤差や符号が逆の誤差は刃を修正研削する[4]資料1件・参考
  • 歯すじにクラウニングを付けられる(ギヤシェーパやブローチの内歯では付けられない)。圧力角とリードの修整ができる[1][9][7]

工具の形の種類

3
  • シャンク形(わずかにテーパ、ねじれのない歯)、ウェーハカッタ(再研削回数が少ない)、ねじれ歯でセレーション状のすくい面を持つ工具などがある(Gleason)。ベル形・シャンク形(NACHI)。超硬ヘッド交換式・センタースルーのシャンク形(OSG)。超硬スティックブレードを並べた刃先交換式カッタヘッド(Gleason)[4][6][7]
  • 従来、スカイビングは普通のシェーパカッタ(ピニオンカッタ)で行われていた[4]資料1件・参考
  • 工具仕様と条件はシミュレーション(切削反力推定・工具寿命予測)で最適化する例が多い[2][6][4]

÷計算式

工作物の基本角速度(歯数比の同期)

ω1=(Z_Tool/Z_work)・ω_Tool[4]資料1件・参考

ω1
工作物の基本角速度
Z_Tool
工具の(仮想)歯数
Z_work
工作物の歯数
ω_Tool
工具の角速度

はすば歯車の追加角速度(送りによる)

ω2=V_ax・tanβ/(D02/2)[4]資料1件・参考

ω2
ねじれ角による工作物の追加角速度
V_ax
送り速度(軸方向)
β
工作物のねじれ角
D02
工作物のピッチ円直径

工具と工作物の周速の関係(切削速度は両者の差ベクトル)

V_tool=V_gear・cosβ/cos(Σ−β)。β=0°(平歯車)なら V_tool=V_gear・1/cosΣ、β=Σ なら V_tool=V_gear・cosβ[4]資料1件・参考

V_tool
工具のピッチ円上の周速ベクトル
V_gear
工作物のピッチ円上の周速ベクトル
β
工作物のねじれ角
Σ
交差角(工具と工作物の軸角)

計算例 切削速度 V_cut は切削部での工作物と工具の周速ベクトルの差。この式を使うと切削速度ベクトルは歯すじ方向を向く

工具ねじれ角と交差角

同じねじれ方向:Σ=工具ねじれ角−工作物ねじれ角、逆方向:Σ=工具ねじれ角+工作物ねじれ角(文中の例から)[4]資料1件・参考

Σ
交差角

計算例 工作物15°・工具20°:同方向なら5°、逆方向なら35°

⚠トラブルと対策

症状を開くと、考えられる原因と対策が出ます。原因は上から順に疑うとは限りません。ワーク・機械・工具の組み合わせで変わります。

工具の外周刃先の損傷・摩耗が早い[5][1][4]

主な原因

  • 工具の外周(刃先)が一番仕事をするため、切れ刃の先端が損傷する(主な摩耗形態は外周刃先エッジの後退)
  • 刃先がシャープエッジのままで、1点に応力が集中する
  • 刃先は切りくずを出す行程が最も長く、歯形方向のすべりも刃先で最大になる

対策

  • 切れ刃に微小なホーニングを付ける(寿命2倍・安定の事例)。ただしホーニングを大きくしすぎると背分力が主分力より大きくなり、削るより押す力が強くなるので適正量にする
  • 最適な工具形状・材料・コーティングと、適正な加工条件を選ぶ
すくい面の摩耗が早い(数十個で刃先が大きく後退)[1][6]

主な原因

  • すくい面コーティングがない(再研削でコーティングがなくなった)

対策

  • すくい面コーティング有りの工具を使い、再研削ごとに再コーティングする
切れ刃の欠け(チッピング)・振動[5][4][3][10]

主な原因

  • 被削材が比較的高硬度、または剛性のない機械で振動が出やすい
  • 超硬刃で上すくい角が4°を超える
  • 同期比を変える工法などでかみ合いが不均一になり負荷変動が大きい
  • 機械の歯車列の動剛性が低い(従来の機械式の機械)

対策

  • 耐チッピング性の高い工具材料(NACHI の FAP2 など)に変えると、損傷がチッピングから摩耗形態に変わり寿命2倍の事例
  • 工具形状を高剛性にする(FEM・動剛性解析で変位を抑えた事例)
  • ダイレクトドライブで同期精度・剛性の高い機械を使う
外歯の加工で工具がすぐ異常摩耗する[1][6]

主な原因

  • 外歯は内歯より有効すくい角の負の絶対値が大きい(例 −36.8° 対 −17.0°)
  • 作用刃数が少なく切りくず厚みが内歯の2倍程度になる
  • 内歯と同程度の条件で設定した(3個で異常摩耗した事例)

対策

  • 交差角を大きくする(30°以上)
  • パス回数を増やす
  • 有効すくい角の負の絶対値と切りくず厚みを小さくする条件にする(工具寿命低下・加工時間増は避けられない)
送りを上げたら工具が傷む・切りくずが干渉する[5]

主な原因

  • 送りが大きく切削負荷・温度が上がる
  • 切りくずが厚くなり、工具の左右歯面から出た切りくずが干渉する

対策

  • 送りを下げる(サイクルタイムとのかね合いで決める)
切込みを増やしたら刃先の摩耗が大きい[5]

主な原因

  • 切込みが大きいと切りくずが厚くなり、切削終わりの有効すくい角が大きく負になって切削負荷が増す(0.6→1.2mm/パスで −26°→−36°)

対策

  • 切込みを小さくしてパスを分ける(サイクルタイムは増える)
U字形の切りくずが出て刃の摩耗が多い[4]

主な原因

  • 側面と底の切りくずが分離せずにつながる(U字)

対策

  • 切込みごとに工作物角度をずらす(セットオーバ)切込み戦略で L字の切りくずにする
  • 刃の左側に正の側すくい角(例 2°)を付けて L字にする
すべり速度が合わず工具寿命が短い[5][4]

主な原因

  • すべり速度が低すぎて切削抵抗が大きい
  • すべり速度が高すぎて切削温度が上がる

対策

  • 被削材に合ったすべり速度にする
  • 速度を下げ(例 300→150〜200m/min)、送り・切込みを上げて生産性を保つ
歯形誤差(左右の歯形の倒れ・圧力角のずれ)[1][4]

主な原因

  • 交差角の設定誤差(±2° で左右歯形が変化するシミュレーション例)
  • オフセット角の誤差
  • 工具の刃形誤差

対策

  • 交差角・オフセット角を補正して歯形を修正する(片フランクだけ補正した例もある)
  • 両歯面が同じ符号の小さな圧力角誤差ならチルト角で補正、大きい・逆符号なら刃を修正研削する
歯厚(溝幅)が合わない[4]

主な原因

  • 機械設定(歯厚・深さ)または刃形が合っていない

対策

  • 歯厚を深さより優先し、許される範囲で溝を深く削って歯厚を合わせる(浅くするのは推奨しない)
  • 範囲内で合わなければ刃を修正する。溝幅が小さい場合は2パス目で側面を削る(時間は増える)
ピッチ誤差・工作物の振れ[4][13]

主な原因

  • 工具歯数と工作物歯数に公約数がある
  • 工具の振れ(20µm の振れによるピッチ誤差の予測例)

対策

  • 工具歯数と工作物歯数に公約数を持たせない
左右の歯面で仕上がりが違う[4][3]

主な原因

  • スカイビングの運動学上、左右の歯面で切削条件が少し異なる(右側の切りくずが薄く割れが入る)
  • 回転方向や工具ねじれの影響で工具軌跡と切削領域が変わり、左右の歯当たりに差が出る

対策

  • 送り方向を右歯面より約3°急にすると右歯面がきれいに仕上がる
  • 左右の歯面を別々に加工する方法・回転方向を制御する工法を使う(特殊工具の事例)
工具と工作物(段・溝)の干渉・衝突[2][4][9]

主な原因

  • 交差角を大きくとると内歯車と干渉しやすい
  • 径が小さく歯幅の広いワークで、ストレート歯工具の刃の奥側が溝と干渉する
  • 逃げ角の小さい長いスパー形工具の背面が溝と干渉する

対策

  • 工具を樽形にする(スーパースカイビング)
  • 逃げの付いた短い歯のウェーハカッタを使う
  • 工具チルト角で背面の干渉をなくす
  • 設計段階で干渉チェック(衝突回避)を行う

↻再研削・寿命の管理

◎工具の検査

☑注文時に決めること

工具メーカーに見積・製作を頼むときに伝える項目です。歯車の要目表(図面の表)から決まるものが大半です。

項目なぜ要るか・決め方
ワーク諸元(m・圧力角・歯数・ねじれ角と方向・内歯/外歯・歯幅・材質と硬さ)工具歯形は工作物の基準ラックと交差角から計算する。外歯か内歯かで条件と交差角が大きく変わる。高硬度・難削材は工具材料を選ぶ[4][1][5]
ワーク形状(段付き・止まり形状・周りの形状)工具と工作物の衝突回避を確認するため(内歯車は特に)。工具の形(ベル形・シャンク形・ウェーハ)も変わる[9][6][4]
使用設備(複合加工機か専用機か、機種)工具ラインナップの対象が「複合加工機(旋盤・MC)」と「スカイビング専用機」に分かれる。機械剛性が低いとチッピングしやすい[6][5]
交差角(機械で取れる範囲)交差角で切削速度・切削性・工具歯形が決まる(内歯 約20°、外歯 30°以上の例)[1][6][4]
工具の歯数・ねじれ角工作物歯数と公約数を持たせない。工具ねじれ角と工作物ねじれ角で交差角が決まる[4]
工具の形式(円錐形/円筒形、ディスク・ベル・シャンク、刃先交換式)円錐形は構造上の逃げ角を持ち中心配置、円筒形はチルトかオフセット配置が要る[9]
工具材料(粉末ハイス/超硬)とコーティング、すくい面コーティングの有無摩耗形態(摩耗かチッピングか)・被削材・生産量で選ぶ。すくい面コーティングなしは早期摩耗し、再研削ごとに再コーティングが要る[5][9][6]
生加工か熱処理後の仕上げか、ウェットかドライか熱処理後の仕上げは超硬カッタを使う。ドライ加工にも対応できる工具がある[1][9]
目標のサイクルタイムと工具寿命(生産量)条件(すべり速度・送り・切込み)はこの2つのどちらを優先するかで決める[5]
歯形・歯すじの修整(クラウニングなど)工具歯形と交差角・オフセット角の設定で入れられる[1][9]

+あわせて知りたいこと

内歯車の加工法との比べ方(工程の選び方)

3
  • 内歯車の歯切りはギヤシェーパとブローチが主流。シェーパはワーク形状の制約を受けにくいが加工時間が長い。ブローチは生産性はよいが設備費が高く、精度調整が難しく、段付き内歯車や大型内歯車は加工できない。ピニオンスカイビングは生産性・精度がよいが工具寿命が短い(三菱重工の比較)[2]資料1件・参考
  • 精度の目安(新JIS):シェーパ・ブローチ N7〜N12、ホブ・スカイビング N6〜N12 等級(ジェイテクトの比較表)[3]資料1件・参考
  • 加工精度の事例:内歯 m1.5・70T・20°RH を 30T 工具で加工し、加工時間90s・歯形誤差7µm(新JIS6級)[6][1]資料1件・参考

非インボリュート形状への応用

1
  • シンクロスリーブのテーパ形状・欠歯形状をスカイビングで加工し、設備4台を1台に、工具コストを1/2にした事例。工作物の形状から工具刃形を逆算するシミュレーションで、プーリ・テーパ・チャンファなど非インボリュート形状にも対応[3]資料1件・参考

⚙ほかの歯切り工具

📚出典

印のない値は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。材種名・コーティング名はメーカーの商品名で、メーカーどうしの比較はしていません。「p.」は三菱マテリアルのカタログ(C004J-H)の本文ページです。

  1. 不二越「NACHI TECHNICAL REPORT Vol.31A1(2016)「ギヤスカイビング加工の特徴」」
  2. 三菱重工業「三菱重工技報 Vol.52 No.1(2015)内歯車加工の工具長寿命化・高能率化の実現 “三菱重工スーパースカイビングシステム”」
  3. ジェイテクト「JTEKT ENGINEERING JOURNAL No.1016(2018)ギヤスカイビングセンタを用いた複合加工技術の開発―シンクロスリーブ工程集約への取り組み―」
  4. Gear Technology (AGMA Media) / Gleason「H.J. Stadtfeld「Power Skiving of Cylindrical Gears on Different Machine Platforms」(2014年1/2月号)」
  5. 不二越「NACHI TECHNICAL REPORT Vol.38B2「長寿命化を実現するスカイビングカッタと加工技術」」
  6. 不二越「スカイビングカッタ カタログ No.2306-2(2019)」
  7. オーエスジー「スカイビングカッタ チラシ F-534(2024)」
  8. Gear Technology (AGMA Media) / Gleason-Pfauter「E. Weppelmann「Hard Finishing of Cylindrical Gears: Power Skiving with Integrated Cutter Resharpening」(2021年8月号)」
  9. Liebherr-Verzahntechnik「Precise and productive. Gear tools (brochure PDF)」
  10. 三菱重工業「プレスリリース(2016-10-27)スーパースカイビング盤「MSS300」を開発」
  11. 三菱重工業「プレスリリース 内歯車を樽形の多刃工具で加工「三菱スーパースカイビングシステム」を開発 (2014)」
  12. ニデックマシンツール「切削工具トピックス:スカイビング工具用新材料 GRANMET SK」
  13. フラウンホーファー IWU「SkiveAll – Process Design Software for Power Skiving(紹介資料)」