シェービングカッタ設計・選定とトラブル対策

シェービングカッタは、歯面に多数のセレーション(溝)を刻んで切れ刃にした、はすば歯車形の仕上げ工具です。ホブやピニオンカッタで歯切りした歯車と交差角をつけてかみ合わせ、歯すじ方向の相対すべりで歯面をごく薄く削り取ります。熱処理前の量産歯車の精度向上・歯面粗さの改善と、クラウニングなどの歯形修整を短い時間で行えます。

シェービングカッタのイメージ図
イメージ図

✎設計・選定のしかた

シェービングの 4 方式(上から見た模式図)コンベンショナル歯車軸の方向に送るダイヤゴナル歯車軸に斜めに送るアンダーパス歯車軸に直角に送るプランジカット送らず半径方向に切り込む歯車(ワーク)。横線が歯車の軸シェービングカッタ(交差角をつけて重ねる)⇔ 送り
コンベンショナルとダイヤゴナルはカッタの歯幅が歯車より狭くてよく、アンダーパスとプランジカットは歯車より広いカッタと、ずらして並べたセレーション(ディファレンシャルセレーション)が要ります。加工時間の比はプランジカットを 1 として、コンベンショナル 3・ダイヤゴナル 2・アンダーパス 2(三菱マテリアル)。交差角・送り角は模式的に描いています。

見出しを開くと中身が出ます。印刷するとすべて開いた状態で出ます。

加工のしくみ(交差角とすべり)

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  • 被削歯車とシェービングカッタを一定の交差角でノーバックラッシの状態にかみ合わせて回転させると、歯すじ方向の相対すべりでセレーションのエッジが歯面を削る。交差角を0にすると切削しない[1][2][3]
  • セレーションの切れ刃は、カッタの歯元(a)→かみ合い円上(b)→歯先(c)の各点がトロコイド曲線を描きながら歯車の歯面を横切る[1]資料1件・参考
  • カッタはモータで駆動し、ワーク(被削歯車)はカッタとのかみ合いで連れ回る。強制的に回転を伝える機構がないので、ワークの歯形はかみ合いの変動の影響を受ける[1][4][2]
  • シェービングで直せるのは割出し(ピッチ)・ねじれ角・歯形・偏心の誤差。ホブ切り・歯車形削りの誤差の65〜80%を取れるが、仕上がりの良否は前加工の歯の良否に大きく左右される(良い歯車をより良くする工程)[2][3]資料1件・参考
  • 特長:加工時間が短く生産性が高い/精度が大きく上がる/歯車1個あたりの工具費が安い/歯形修整ができる/歯すじ方向のクラウニングが簡単/熟練を要さない[1]資料1件・参考
  • シェービングの良い結果を得るには、歯車の硬さは 30-32 Rc を超えないこと(熱処理前の仕上げ)[2]資料1件・参考
  • 各部の名称:外径・ピッチ円直径・逃げ穴中心の直径・ハブ直径・ぬすみ幅・幅・穴径・キー溝。歯面のセレーションについてはセレーション深さ・セレーションピッチ・セレーションのランド幅、歯底にはドリル穴(逃げ穴)がある[1]資料1件・参考
  • セレーションの溝は歯たけ全体に通っていて、歯底の逃げ穴(クリアランス)に抜ける。逃げ穴は切削油を流して切りくずを出す通路になり、セレーションを均一な深さで入れることもできる[2][5][1]

交差角の選び方(カッタのねじれ角)

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  • カッタの歯直角モジュールと歯直角圧力角は、被削歯車と同じにする[1][5]
  • 交差角はおおよそカッタと被削歯車のねじれ角の差。カッタのねじれ角は、交差角が最も適当になるように選ぶ[1][5]
  • 交差角を大きくすると切れ味は上がるが、歯面の接触面積が小さくなって案内性が下がる(歯すじ誤差を生じる恐れ)。小さくすると接触面積が大きく案内性は上がるが、切れ味が下がる(仕上げ面はバニッシュされる)[1][2][3]
  • 適正な交差角の範囲(三菱マテリアル 表2):平歯車・はすば歯車(鋳鉄以外)12°〜15°/平歯車・はすば歯車(鋳鉄)15°〜20°/段付歯車 4°〜(段付き部に干渉しない範囲で最大にとる)/大径歯車(外径500以上)6°〜10°/内歯車 6°〜10°[1]資料1件・参考
  • National Broach の解説では、交差角は通常 10°〜15°(またはねじれ角の差にほぼ等しい)、カッタ設計で望ましい範囲は 5〜15°[2][5]資料1件・参考
  • 軸を交差させると歯先から歯元までほぼ一様な斜めのすべりが生じ、平行軸でかみ合う歯車特有の不均一なすべりを補いつつ、削り取りに必要なせん断作用が得られる[2][3]資料1件・参考

カッタ歯数と呼び寸法の決め方

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  • 使うシェービング盤の仕様と被削歯車の寸法からカッタの呼び寸法を決め、ねじれ角とモジュールを考えながら、ピッチ円径が呼び寸法に近くなるように歯数を決める[1][5]
  • シェービングカッタの歯数は原則として素数を選ぶ(三菱マテリアル)。National Broach も、歯数を決めるときはハンティングトゥースの条件(被削歯車の歯数と公約数を持たない組合せ)と機械の能力が重要な要素だとしている[1][5]
  • よく使われるカッタ歯数:23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97, 101, 103, 113, 127, 131, 137, 149, 151, 157, 173, 179, 197(このうち 71・83・101・131・151・173 は JIS B4357 に含まれていない歯数)[1]資料1件・参考
  • 丸形シェービングカッタの標準寸法(JIS B4357)は呼び寸法 175・200・225・300。モジュールは 175 形で 1.25〜4、200 形で 1.5〜6、225 形で 2〜8、300 形で 4〜12。ピッチ円直径は呼び寸法に近い値で、幅は 19.05・25.4・31.75[1]資料1件・参考
  • 標準寸法表の例:175 形 m2 は z89、200 形 m3 は z67、225 形 m4 は z53、300 形 m6 は z47(同じ呼び寸法ではモジュールが大きいほど歯数が少ない)[1]資料1件・参考

かみ合い圧力角とかみ合い率

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  • かみ合い率の低い被削歯車では、かみ合いの変動が大きくなって歯形が不安定になる。三菱マテリアルは、左右切削のバランス・被削歯車のフィレット干渉・接触線長さによる歯幅方向の切削バランスから予想歯形を計算し、最適なかみ合い圧力角を選んでいる[1]資料1件・参考
  • かみ合い率が 1 より大きく 2 より小さいと、回転につれてかみ合い点が 2 点→1 点→2 点と変わり、加工条件で歯形が変わりやすい。左右歯面のかみ合い点の位相ずれがない状態だと接触圧が一定になり、理論上うねりのない歯形になる(最適かみ合い状態)[6][1]
  • 最適かみ合い状態は再研削の進み具合のある 1 点でしか得られないので、各社とも新品に近い点に最適かみ合いを設定する。ヤマハ発動機の事例では、かみ合い率を歯形変化の少ない 2 以上にし、かみ合い圧力角の変化度合いを 0.3 未満(経験的)として、新品のかみ合い圧力角を寿命を考慮して境界値+1.5°に設定した[6]資料1件・参考
  • モジュールが大きいほど切削長が長く切削負荷が大きい。歯数が少ないほどかみ合い長さが短くかみ合い変動が大きい。どちらも振動につながり、歯車精度不良はモジュール大・歯数少の領域で起きていた[4]資料1件・参考

カッタ歯幅

3
  • コンベンショナルシェービングのカッタ歯幅(三菱マテリアル 表3):m≦1.75 は 19.05、1.75<m≦6 は 25.4、6<m は 31.75[1]資料1件・参考
  • ダイヤゴナルはダイヤゴナルアングルから個々に設計(式(1))、アンダーパスとプランジカットは被削歯車の歯幅と交差角を考えて設計(式(2))。一般的なカッタ幅は 19.05、22.225、25.4、31.75、38.1、44.45、50.8[1]資料1件・参考
  • アンダーパスとプランジカットでは、カッタの歯幅を被削歯車の歯幅より広くする[1][5]

シェービング方式の選び方

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  • 方式は、カッタと被削歯車の相対的な送り方向で決まり、コンベンショナル・ダイヤゴナル・アンダーパス・プランジカットの 4 つ。被削歯車の形状・寸法・生産量で選ぶ[1][5]
  • コンベンショナル(アキシャル):歯車軸方向に送り、送り長さは歯幅とほぼ同じ。最も一般的で、歯幅の広い歯車や大型歯車向き。加工圧力が小さく、たわみやすい軸物歯車にも向く。欠点は加工時間が長いこと[1][5][6]
  • コンベンショナルの送り長さは、ワーク歯幅より約 1/16" 長くとり、両端の行き過ぎを最小にする(National Broach)[5]資料1件・参考
  • ダイヤゴナル:歯車軸に対して斜めに送り、送り長さは歯幅より短い。カッタ幅より少し広い歯車の量産向き。交差点がカッタ歯幅の上を移動するので摩耗が分散して寿命が延び、加工時間はコンベンショナルより最大 50% 短くなる[1][5][2]
  • ダイヤゴナルの送り角(トラバース角)は多くの場合 30°〜60°。送り角と交差角の和は、ディファレンシャルセレーションを使わない限り約 55° までにする(超えるとセレーションがトラッキングする)。歯幅の広いワークと幅の狭いカッタの組合せでは送り角を小さくせざるをえない[5]資料1件・参考
  • アンダーパス(タンジェンシャル):歯車軸に対して垂直方向に送り、送り長さは上の 2 方式より短い。段付歯車(肩のある歯車)向き。ディファレンシャルセレーションと、ワークより広いカッタ歯幅が必要[1][5]
  • プランジカット:横送りなしで、カッタを被削歯車の半径方向に切り込むだけ。量産歯車の高能率加工向き。ディファレンシャルセレーションと、ワークより広いカッタ歯幅が必要。加工圧力が高いので、剛性の低いワークでは歯形精度が出にくい[1][5][6]
  • 加工時間の比(プランジカットを 1 とした場合):コンベンショナル 3、ダイヤゴナル 2、アンダーパス 2、プランジカット 1[1]資料1件・参考
  • セレーション配列:コンベンショナル・ダイヤゴナルはノーマルセレーション、アンダーパス・プランジカットはディファレンシャルセレーション(被削歯車の 1 つの歯にかみ合う歯の順番にセレーションの切れ刃をずらす)。ダイヤゴナルでも送り角が 55° を超えるとディファレンシャルが要る[1][5][4]
  • プランジカットの特長(三菱マテリアル):横送りがないので加工時間が約 1/2、特殊なセレーション配列で歯面粗さが従来の 1/2 に改善、各セレーション切れ刃の切削量が均一になり寿命が向上。送りマークが前の送りマークの中間に来るため歯面粗さが改善される(コンベンショナル・ダイヤゴナルは仕上げ回数を増やしても粗さは変わらない)[1]資料1件・参考
  • プランジカットのサイクル:早送りでスイッチングポイントまで→正転でアプローチ→プランジ送り→切込み完了→T1 の間ドウェル(仕上げ面の凹凸を除去)→逆転して T2 の間ドウェル→カッタ後退(バックムーブメント、後退量 0〜0.05mm)→T3 の間ドウェル(弾性変形によるひずみを除去)→早送りで戻る[1]資料1件・参考

シェービング取り代と前加工(シェービング用ホブ・プロチュバランス)

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  • 前加工(歯切り)の精度は、シェービング後の希望精度に対して JIS 歯車精度規格で 2〜3 級以内に抑える[1]資料1件・参考
  • シェービング代の推奨値(歯厚における代、三菱マテリアル 表5):mn≦2.25 は 0.05〜0.08、2.25<mn≦3.5 は 0.06〜0.10、3.5<mn≦5 は 0.08〜0.12、5<mn≦12 は 0.10〜0.15[1]資料1件・参考
  • 前切りホブの送り(ワーク 1 回転あたり)が大きいほど送りマークが深くなるので、最適シェービング代も大きくなる(図15:モジュール 1〜8、送り 2 以下〜8 mm/work rev で 0.01〜0.10 mm)[1]資料1件・参考
  • 取り代は前加工の誤差を取り切れるだけ必要だが、多すぎるとカッタ寿命と仕上がり精度が落ちる。代の過大は歯面傷・歯面粗さ・カッタ欠損の原因になる[3][1]
  • National Broach の推奨シェービング代(歯の片側、インチ):歯直角 DP 2-4 は 0.0015-0.0020、5-6 は 0.0012-0.0018、7-10 は 0.0010-0.0015、11-14 は 0.0008-0.0013、16-18 は 0.0005-0.0010、20-48 は 0.0003-0.0008、52-72 は 0.0001-0.0003[3]資料1件・参考
  • 前加工用工具(プリシェービング工具)は、アデンダム 1.35 モジュール以上のハイアデンダムにする。シェービングカッタの歯先と被削歯車の歯底の間に 0.15 モジュール以上のクリアランスを確保し、被削歯車の歯底すみ肉にカッタ歯先が干渉しないように選ぶ[1]資料1件・参考
  • カッタの歯先が前加工でできた歯元のフィレットに当たると、カッタが異常に摩耗し、インボリュート歯形の精度も悪くなる。フィレットの高さは、カッタとワークの最も低い接触点を超えないようにする[3][1]
  • シェービング前には、プロチュバランス(こぶ)付きのホブやピニオンカッタで歯元にわずかなアンダカット(逃げ)を付けることが多い。シェービングした歯形とシェービングしない歯元のつながりが滑らかになり、カッタ歯先の摩耗も減る。アンダカット量は歯の薄い側に合わせ、アンダカット上端が接触直径より下でインボリュートとつながるようにする[3]資料1件・参考
  • National Broach の推奨アンダカット量(歯の片側の合計、インチ):DP 2-4 は 0.0025-0.0030、5-6 は 0.0023-0.0028、7-10 は 0.0015-0.0020、11-14 は 0.0012-0.0017[3]資料1件・参考
  • 前切り時に被削歯車の端面に付いたバリは完全に取る。バリがセレーション溝に詰まるとカッタ破損の原因になる[1][6]

シェービング径(カッタ外径)とトロコイド図

3
  • シェービング径の設定基準:①相手歯車とのかみ合い最小円径(またはインボリュート開始径:TIF 径)より小さく、②前切り歯形の歯底のすみ肉と干渉しないようにフィレット発生径より大きく。①を優先するため②を満たせない場合もある[1][5]
  • ①②の余裕量は、シェービングカッタと相手歯車の歯先のトロコイド(軌跡)を描いたトロコイド図で判断する。描くには前加工工具の形状、シェービング代、相手歯車の歯数・外径・被削歯車との軸間距離が必要[1]資料1件・参考
  • カッタを再研削するとマイナス転位になり、同じシェービング径ではカッタのトロコイドが相手歯車より被削歯車から遠ざかって、寿命時に相手歯車と干渉することがある。干渉する場合は、マイナス転位に合わせて順次シェービング径を深く(カッタ外径を大きく設定)する[1]資料1件・参考

歯形修整(クラウニング・歯形修整)

5
  • シェービングでは歯形修整と歯すじ方向のクラウニングができる。歯端の片当たりを防ぎ、騒音を下げ、負荷容量や寿命を上げるための修整に使われる[1][2][3]
  • クラウニングの付け方は方式で違う。コンベンショナルは機械の内蔵クラウニング機構でテーブルを揺動させる。ダイヤゴナルは送り角と交差角の和が 55° 以下ならテーブル揺動でよいが、送り角が大きいときはカッタの歯すじに逆クラウン(ホロー)を研削するほうがよい。プランジカットはカッタの歯すじに逆クラウン(ホロー)を研削しておく[5][2][1]
  • カッタの歯形は真のインボリュートとは限らない。ワークに欲しい歯形や修整に合わせて、カッタの歯形を修整して研削することが多い(発注時に「ツルー」か「ワーク対応歯形」かを指定する)[5][1]
  • 熱処理による変形を見込んで、カッタの歯形とクラウンを研削し直して補正できる。熱処理によるリードの変化はシェービング盤の設定で補正する[2][3]資料1件・参考
  • 内歯車のシェービングでは、交差軸の関係からカッタの歯にわずかなクラウンを付けてワークの歯との干渉を避ける。歯幅 3/4" を超える内歯車のクラウニングはワークヘッドの揺動で付け、3/4" 以下や干渉で送り・交差角が制限されるときは、ディファレンシャルセレーションのカッタでプランジシェービングする[5]資料1件・参考

セレーション配列の工夫(歯形のうねり・ばらつき対策)

4
  • マルチパターンセレーション(三菱マテリアル):ワーク歯すじ方向の切込み量をわざと不均一にして加工時の振動を抑え、歯形の周期的なうねりと、同じワーク内の歯形・歯すじのばらつきを抑える[1]資料1件・参考
  • ファインピッチセレーション:セレーションを細かいピッチにして、歯面に作用する切れ刃エッジを増やし、歯面粗さを良くする[1][7]
  • 不等ランドセレーション(三菱マテリアル):創成母線が短くかみ合いが不安定な歯形の上下(歯先側・歯元側)のセレーションランドを狭くして切れ味を上げ、歯形の上中下のばらつきを抑える[1]資料1件・参考
  • 非対称セレーション(三菱マテリアル):面圧の高い駆動側は過切削で精度が落ちるので、駆動側と従動側でランド幅を変えて取代の偏りをなくし、歯形の左右のばらつきを抑える[1]資料1件・参考

切削条件・段取り

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  • カッタの周速度 Vc は、被削材の引張強さ(被削率)とモジュールから図で読む(三菱マテリアル 図8、縦軸 60〜120 m/min)。モジュールが大きく材料が強いほど低くする[1]資料1件・参考
  • プランジカットは逆転が 1 回だけなので、周速度を 20% 高くできる。カッタと被削歯車のギヤ比が大きいと被削歯車の回転速度が過大になるので、回転速度を少し下げる[1]資料1件・参考
  • National Broach の目安はピッチ円上の周速で約 400 ft/min(例:7 インチカッタで 10 ピッチ・ピッチ円径 3 インチの歯車なら約 200 rpm)。航空・船舶用など面粗さ重視の歯車は送りを下げる[5]資料1件・参考
  • 横送り速度:コンベンショナルは被削歯車 1 回転につき 0.15〜0.3mm、ダイヤゴナルはその約 70%、アンダーパスは約 50%[1]資料1件・参考
  • 切込みはコンベンショナル・ダイヤゴナル・アンダーパスでは段階的に行い、1 回の切込み量は 0.02〜0.06mm の範囲でシェービング代を考えて決める。プランジカットは連続切込みで、セレーションの作用が 1 ピッチ進む間に歯厚方向へ 0.007mm 程度切り込む[1]資料1件・参考
  • バックムーブメント(プランジカット):被削歯車やアーバの弾性変形を直すため、切込みを後退させて弾性変形の少ない状態で仕上げる。量は一般に 0〜0.05mm で、少なすぎても多すぎても歯すじ方向に段が残るので、歯面を見ながら調整する[1]資料1件・参考
  • カッタの回転方向と被削歯車の送り方向は、セレーション切れ刃がアップカットに作用するようにセットする。同じ力で押し付けたときの押込み深さはアップカットのほうがはるかに大きく、被削性が良い[1]資料1件・参考
  • アーバは加工点に近い被削歯車の歯底付近を保持する形にする。切削抵抗によるびびりを防ぎ、歯車精度とカッタ寿命の低下を防ぐ[1]資料1件・参考
  • アーバの精度:アーバ径を基準に穴の許容差は H6〜H7 程度、アーバの振れは 5μm 以下(三菱マテリアル)。National Broach もアーバ・治具の位置決め部は 0.0002" 以内、主軸センタの振れ 0.0002" 以内を求めている[1][5]
  • 被削歯車は、前加工(ホブ切りなど)で使ったのと同じ位置決め面で保持し、同じ面から測定する。位置決め面はきれいで、穴に対して平行・直角であること[5][3]資料1件・参考
  • 切削油の種類と汚れは、カッタ寿命とシェービング歯面の仕上がりに直接効く。National Broach は鋼には硫黄分 3〜3.5% の硫黄系油、粘度は 100°F で約 135 S.S.U. を推奨し、薄すぎる油は切りくずによる歯面のひっかき傷の原因になるとしている。マグネットセパレータで汚れを減らす[2][6][1]

÷計算式

カッタ回転速度

Nc = 1000 × Vc /(π × dc)[1][5]

Nc
カッタ回転速度(min⁻¹)
Vc
カッタ周速度(m/min)。三菱マテリアル図8・9から求める
dc
カッタ歯先円直径(mm)

被削歯車の回転数

Gear rpm = Cutter rpm × No. of Teeth in Cutter / No. of Teeth in Gear[5][2]資料1件・参考

Gear rpm
被削歯車の回転数
Cutter rpm
カッタの回転数
No. of Teeth in Cutter
カッタ歯数
No. of Teeth in Gear
被削歯車の歯数

1 回の切込み量(コンベンショナル・ダイヤゴナル・アンダーパス)

H ≒ ts / 2sin αbn[1]資料1件・参考

H
1 回の切込み量(被削歯車中心方向)
ts
1 回のシェービング除去量(歯直角またぎ歯厚)
αbn
かみ合い圧力角(歯直角)

ダイヤゴナル法のカッタ歯幅 式(1)

bc ≧ bce + 5、bce = bg・sinθd / sin(θd+ψ)[1]資料1件・参考

bc
カッタ歯幅
bce
有効歯幅
bg
被削歯車歯幅
ψ
交差角
θd
ダイヤゴナルアングル(一般に 30°)

プランジカット・アンダーパス法のカッタ歯幅 式(2)

bc ≧(bg + 3・tg・tanψ)cosψ + α[1]資料1件・参考

bc
カッタ歯幅
bg
被削歯車歯幅
tg
被削歯車の軸直角法線ピッチ
ψ
交差角
α
セレーション配列および被削歯車隣接部の有無を考慮して決める(目安 4〜5)

コンベンショナルのテーブル送り

Table Feed (ipm) = 0.010 × Gear Rpm[2][5]資料1件・参考

Table Feed
テーブル送り(in/min)
0.010
被削歯車 1 回転あたりの送り(in)の出発点
Gear Rpm
被削歯車の回転数

ダイヤゴナルのテーブル送り(有効送り 0.040 in/rev)

Rf = Sine Traverse Angle / Tangent Crossed Axes Angle + Cosine Traverse Angle、Table Traverse Rate (ipm) = 0.040 × Gear Rpm / Rf[2][5]資料1件・参考

Rf
送り係数
Traverse Angle
ダイヤゴナルの送り角
Crossed Axes Angle
交差角
0.040
有効送り(交差点がワークとカッタの歯幅上を移動する速さ)の出発点、in/rev
Gear Rpm
被削歯車の回転数

ダイヤゴナルの理論最大送り角

Tangent Max. Traverse Angle = Cutter Face Width × Sine Crossed Axes Angle /(Gear Face −(Cutter Face × Cosine Crossed Axes Angle))[2]資料1件・参考

Cutter Face Width
カッタ歯幅
Gear Face
被削歯車の歯幅
Crossed Axes Angle
交差角

かみ合い周波数(振動の確認用)

かみ合い周波数(Hz)= カッタ歯数 × カッタ回転数(rpm)÷ 60[4]資料1件・参考

カッタ歯数
シェービングカッタの歯数
カッタ回転数
rpm

計算例 カッタ 97 歯 × 165rpm ÷ 60sec = 266Hz。その 3 次(800Hz)が機械の共振周波数と一致し、歯溝の振れが周期的に変化した

⚠トラブルと対策

症状を開くと、考えられる原因と対策が出ます。原因は上から順に疑うとは限りません。ワーク・機械・工具の組み合わせで変わります。

ワーク歯面の傷(加工目に沿った斜め傷など)[1][6]p.61

主な原因

  • 切削油の劣化・汚れ(異物の混入)
  • カッタのインボリュート歯面の粗さ不良
  • シェービング代の過大
  • ワークの打こん
  • カッタの磁気帯び
  • カッタの設計不適
  • 加工点に入り込む異物(前加工の 2 次バリ、ワークに付いた鉄粉・洗浄残り)が切れ刃に圧着・溶着する
  • 再研削でかみ合い圧力角が小さくなり、境界値を下回って切削能力が落ちている

対策

  • 切削油を確認・交換し、ろ過・浄化を強化する
  • カッタを再研削する(スパークアウトに注意)
  • 前歯切り歯厚を確認・見直す(シェービング代を適正に)
  • ワークの取扱いに注意する
  • カッタを脱磁する
  • 前加工のバリ取りを確実にし(ヤマハ発動機の例ではバリ残り 0.02mm 以下)、洗浄でワークの付着物を除く
  • かみ合い圧力角が境界値を下回る前にカッタを更新する/かみ合い圧力角の変化が小さいカッタに設計し直す
  • 設計はメーカーに検討を依頼する
ワーク歯面粗さが悪い[1][2][7]p.61

主な原因

  • 切削油の劣化・不適
  • シェービング代の過大
  • カッタの共用(プランジカット・アンダーパス)
  • カッタ研削時の歯溝の振れ
  • カッタ歯先のフィレット干渉
  • カッタの設計不適
  • コンベンショナル・ダイヤゴナルでは送りマークが一定で、仕上げ回数を増やしても粗さは変わらない

対策

  • 切削油を確認・交換する(薄すぎる油は避ける)
  • 前歯切り歯厚を確認・見直す
  • カッタを専用設計にする
  • カッタの歯溝の振れを確認する(研削し直す)
  • カッタの外径-歯厚の対応を確認し、前歯切り工具を選び直す
  • セレーションを細かいピッチ(ファインピッチ)にする/プランジカットにする
  • 設計はメーカーに検討を依頼する
ワーク歯形不良(前加工の圧力角誤差・うねりが残る)[1][3]p.60

主な原因

  • 前歯切り歯形の不良。前加工の歯形に大きな特徴(圧力角誤差、歯面のうねり)があると、シェービング後もその特徴が残る
  • カッタ歯先のフィレット干渉
  • カッタの設計不適

対策

  • 前加工(ホブ・ピニオンカッタ)の歯形をそろえる。前加工の歯形がそろっていると安定したシェービング歯形が得られる
  • カッタの外径-歯厚の対応を確認し、前歯切り工具を選び直す(ハイアデンダム・クリアランス 0.15m 以上)
  • 設計はメーカーに検討を依頼する
歯形が不安定・歯形の上中下でばらつく[1][6]p.54

主な原因

  • かみ合い率が低く(2 未満)、かみ合い点数が 1 点と 2 点で入れ替わってかみ合いが変動する
  • かみ合い圧力角が最適からずれている(再研削でかみ合い圧力角は小さくなる)
  • 創成母線が短い歯先側・歯元側でかみ合いが不安定

対策

  • 歯形シミュレーション等で最適なかみ合い圧力角を選んでカッタを設計する
  • かみ合い率を 2 以上にとる、新品のかみ合い圧力角を寿命分見込んで設定する
  • 歯形の上下のセレーションランドを狭くする(不等ランドセレーション)
  • カッタ歯形を修整する(ワーク対応歯形)
歯形の左右(駆動側・従動側)のばらつき[1]p.65

主な原因

  • 駆動側の面圧が高く過切削になる(取代のアンバランス)

対策

  • 駆動側と従動側でセレーションランド幅を変える(非対称セレーション)
ワーク歯形のばらつき(ワークごと・歯ごとに違う)[1][5]p.61

主な原因

  • 前歯切り歯形の不良
  • 旋削精度の不良(ワーク穴径、穴と端面の直角度)
  • ワークの振れ(アーバの振れ、ワーク穴とのはめ合い)
  • カッタの切れ味低下
  • 加工中の振動(シェービング盤)
  • カッタの設計不適

対策

  • 前加工の歯形を見直す
  • ワーク穴径、穴と端面の直角度の精度を上げる
  • アーバの振れ(5μm 以下)とワーク穴とのはめ合い(H6〜H7 程度)を確認する
  • カッタを再研削する
  • シェービング盤の振動を確認する
  • マルチパターンセレーションで同じワーク内のばらつきを抑える
  • 設計はメーカーに検討を依頼する
歯形の周期的なうねり・歯溝の振れが周期的に変わる(例:全周で 4 周期)[1][4]p.60

主な原因

  • シェービングカッタ歯面研削時の歯溝の振れ(例:振れ 75μm でうねりが出て、9μm では出ない)
  • かみ合い周波数の高次成分が機械構造の共振周波数と一致し、カッタ軸とワーク軸の軸間距離が周期的に変動する
  • セレーションの欠損(ワーク歯幅以上)が 1 回転に 1 回の衝撃を与えて共振を助長する

対策

  • カッタの歯溝の振れを確認し、研削し直す
  • 共振しないカッタ回転数を加工条件表で決め、共振する回転数は使わない(ヤマハ発動機の例では 165rpm を設定不可にした)
  • 加工前後にセレーションの欠損を点検し、ワーク歯幅以上の欠損があるカッタは使わない
  • マルチパターンセレーションで振動を抑える
歯すじ誤差[1][2]p.52

主な原因

  • 交差角が大きすぎて歯面の接触面積が小さく、案内性が落ちている
  • アーバの振れ・ワーク穴とのはめ合い不良
  • 熱処理によるリードの変化

対策

  • 交差角を被削歯車の種類に合った範囲で小さめにする
  • アーバの振れとはめ合いを確認する
  • 熱処理後のリード変化はシェービング盤の設定で見込む
びびり・振動が出る[1][4]p.58

主な原因

  • アーバが加工点から遠い位置で歯車を保持している
  • シェービング盤の振動、共振
  • モジュールが大きく切削負荷が大きい/歯数が少なくかみ合い長さが短い

対策

  • アーバを被削歯車の歯底付近まで保持する形にする
  • シェービング盤の振動を確認し、共振を避けた回転数にする
  • マルチパターンセレーションで歯すじ方向の切込み量を不均一にする
歯元側の歯形がくずれる・カッタ歯先が早く摩耗する[1][3]p.55

主な原因

  • カッタ歯先が前加工の歯元フィレット(すみ肉)に干渉している
  • 再研削でカッタがマイナス転位し、寿命時に相手歯車のかみ合い範囲と干渉する

対策

  • カッタの外径-歯厚の対応を確認する
  • 前加工工具をハイアデンダム(1.35m 以上)・プロチュバランス付きにし、クリアランス 0.15m 以上を確保する
  • トロコイド図で確認し、再研削に合わせてシェービング径を深く(カッタ外径を大きく)設定する
カッタの寿命が短い(刃付け回数が少ない・ワーク歯形が早くくずれる)[1][8]p.61

主な原因

  • ワーク歯形ばらつきと同じ要因
  • 加工条件の不適
  • カッタの設計不適
  • セレーションが浅い(左右の差、歯先・歯元の差、円周上のばらつき、全体に浅い)
  • カッタ硬度が低い
  • カッタ歯形が複雑
  • シェービング代の過大
  • ワーク硬度が高い

対策

  • 加工条件を見直す(周速度・送り・切込み)
  • シェービング代を見直す
  • セレーション深さを点検する
  • 設計・材質・表面処理をメーカーに検討を依頼する
カッタの欠損[1][8][5]p.61

主な原因

  • 前加工時のバリ(セレーション溝に詰まる)
  • シェービング代の過大
  • カッタ歯先のフィレット干渉
  • 加工条件の不適
  • カッタの設計不適(歯元強度不足、セレーション配列が不適切)
  • ショルダギヤ(段付歯車)の段に干渉している
  • 仕様が異なるワークを加工した
  • ワーク加工数が多い(摩耗)
  • 使用前から欠損:歯研時の研削割れ、熱処理時の割れ、運搬・取扱い時の欠損

対策

  • 端面のバリを完全に除去する
  • 前歯切り歯厚を確認・見直す
  • カッタの外径-歯厚の対応を確認し、前歯切り工具を選び直す
  • 加工条件を見直す
  • ショルダ外径・隙間を発注時に伝える
  • カッタは平らに置き、ほかの物から離して扱う
  • 設計はメーカーに検討を依頼する
トライアルでは合格だったのに、量産側(客先)のトライアルで歯形が不合格になる/同じトライアルワークで歯形誤差が大きく違う[8]

主な原因

  • 測定機の差、測定した歯の違い、歯形管理点の違い
  • トライアル機の差、トライアル条件の差、下切り(前加工)精度の差
  • トライアルワークの測定間違い、トライアル歯形の合否判定があまい

対策

  • 測定機・測定歯・歯形管理点(TIF 径・かみ合い長さなど)をそろえて比べる
  • トライアル条件と前加工精度を量産と同じにする
カッタ歯形が要求と違う[8]

主な原因

  • カッタ歯形の測定間違い
  • 指示歯形(前回歯形等)の出し間違い・写し間違い
  • 設計指示間違い
  • オーダ指示間違い

対策

  • 発注時の歯形指示(ツルー/ワーク対応歯形/別紙)と前回歯形の図番を確認する

↻再研削・寿命の管理

◎工具の検査

☑注文時に決めること

工具メーカーに見積・製作を頼むときに伝える項目です。歯車の要目表(図面の表)から決まるものが大半です。

項目なぜ要るか・決め方
支給図・部品名称・部品番号被削ワーク図面・前回のカッタ図面・ユーザ仕様書のどれを基に設計するかを決める。図面記入の要否も伝える[1]
被削材料・硬さカッタの周速度は被削材の引張強さ(被削率)で変わる。ワーク硬度が高いと歯形が早くくずれる[1][8]
モジュール(または DP)・圧力角(必ず記入)・歯数・ねじれ角(RH/LH)カッタの歯直角モジュール・圧力角はワークと同じにする。ねじれ角と向きから交差角とカッタのねじれ角を決める[1][5]
歯先円径・歯底円径(歯底径/歯丈/工具アデンダム)・転位係数・歯幅シェービング径(カッタ外径)とクリアランス、カッタ歯幅の計算に使う[1]
歯厚(円弧歯厚/またぎ歯厚 ZM/オーバピン寸法)をシェービング後と歯切後の両方差がシェービング代になる。代が過大だと歯面傷・粗さ・欠損の原因になる[1]
歯形管理長さ(かみ合い長さ/TIF 径/回転角)と相手歯車諸元(歯数・外径・軸間距離)シェービング径は相手歯車とのかみ合い最小円径(TIF 径)より小さくする必要があり、トロコイド図を描くのに相手歯車の諸元が要る[1][5]
歯車形状(オープンギヤ/ショルダギヤ:ショルダ外径と隙間)段付き部に干渉しない交差角・方式(アンダーパス等)を選ぶため。ショルダへの干渉はカッタ欠損の原因になる[1][8]
歯すじ(クラウニング量、ねじれのツルー/強く/弱く)と歯形(ツルー/ユーザ規格/別紙/修整図)プランジカットではクラウニングをカッタの歯すじホローで付けるため、カッタ設計に必要[1][5]
シェービング方法(コンベンショナル/ダイヤゴナル/アンダーパス/プランジカット)セレーション配列(ノーマル/ディファレンシャル)とカッタ歯幅の決め方が方式で変わる[1][5]
シェービング盤(機種名・最小軸間距離)カッタの呼び寸法・歯数は使う機械の仕様で決まる[1][5]
カッタ歯数(指定、または一任:呼び寸法 175・200・225・250・300 形)・カッタ幅・取付け幅・穴径とキー・ねじれ角・軽量化(溝タイプ/穴タイプ)機械への取付けと交差角の設定に関わる。歯数は原則素数[1]
カッタ材質・表面処理・精度寿命と被研削性が材質・表面処理で変わる(三菱マテリアルの仕様書の選択肢:SKH51・KHV1・KHVX・HSS-2・HSP、無処理・窒化酸化・STH 処理)[1]
シェービング代(またぎ歯厚/OBD)と前切り工具(ホブ/ピニオンカッタ、図番、こぶの有無)前加工工具の歯形でフィレット干渉やクリアランスが決まる。同時受注・指定・標準(2.35m)から選ぶ[1][3]
トライヤル条件(回転数 min⁻¹・送り速度 mm/min・送り長さ mm、プランジの T1・T2・T3・BM、ダイヤゴナルアングル)トライアルの条件が量産と違うと歯形の合否が食い違う[1][8]
カッタホロー量・カッタ歯形(ツルー/ワーク対応歯形/別紙/図示)ワークのクラウニング・歯形修整をカッタ側で作り込むため[1]
共用したい歯車の一覧1 本のカッタで複数の歯車を削るかどうかは、歯数差・転位係数差・ねじれ角差などで判断する(共用範囲表とフローチャート)[1]

+あわせて知りたいこと

1 本のカッタを複数の歯車で共用する

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  • モジュール・圧力角が同じで歯数の違う歯車を 1 本のカッタで削ると、歯数差・転位係数の違いでかみ合い率と作用力のバランスが変わり、歯形誤差が出る。共用できるかは厳密にはトライアル加工しないと決められない[1]資料1件・参考
  • 共用範囲の目安(被削歯車歯数のグループ):m1.25 は Ⅰ13〜22・Ⅱ20 以上/m1.5〜2 は Ⅰ13〜18・Ⅱ17〜34・Ⅲ25 以上/m2.25〜3 は Ⅰ14〜18・Ⅱ17〜29・Ⅲ27 以上/m3.25〜5 は Ⅰ14〜17・Ⅱ17〜26・Ⅲ23〜40・Ⅳ35 以上/m5.25〜8 は Ⅰ15〜17・Ⅱ17〜25・Ⅲ24〜37・Ⅳ35 以上[1]資料1件・参考
  • 共用検討の手順:歯直角モジュール同一→歯直角圧力角同一→ねじれ方向同一→ねじれ角の差 5 度以内→歯幅(ダイヤゴナル・プランジ・アンダーパスは歯幅の式で確認)→歯数(共用範囲表)→転位係数の差 0.2 以下→シェービング径>フィレット発生径→シェービング径<TIF 径→クリアランス 0.15 モジュール以上→かみ合い率の差 0.1 以内→かみ合い圧力角の確認→セレーションの作用状態チェック(プランジ・アンダーパス)。オープンギヤかショルダギヤかで区分する[1]資料1件・参考
  • プランジカット・アンダーパス用カッタを共用すると歯面粗さが悪くなることがあり、その場合は専用設計にする[1]資料1件・参考

カッタの材料と表面処理(メーカーの例)

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  • 三菱マテリアルの HSP シェービングカッタ:高 Co のコバルトハイスで耐熱性・硬度を上げ、V の含有量を抑えて歯形を研削しやすくし、熱処理条件の最適化で靭性(耐チッピング性)を上げた。摩耗領域より深い硬化層をもつ。リングギヤのプランジカット例で従来品(SKH51+窒化酸化)の平均加工数 3000 に対し 9000[1]資料1件・参考
  • 三菱マテリアルの高性能鋼種 KHVX:Co とともに V を添加した溶解材で、高硬度の VC 炭化物を微細・均一にして耐チッピング性を保ちつつ耐摩耗性を上げた。SCr420 の歯車(m2.5、プランジカット)で平均加工数/REG が SKH51 の 1,900 に対し 4,032[1]資料1件・参考
  • ニデックマシンツールの MACH3:V と Co を増やし、炭化物粒径を 7μm まで微細化・分散させた高硬度材。耐チッピング性を上げつつ従来並みの研削性を保つ。スーパーコートで表面硬度を上げ(寸法変化が少なく、セレーション溝深さのばらつきを抑える)、ファインピッチセレーションと組み合わせて 6000 個以上加工しても歯面粗さを維持した例がある[7]資料1件・参考
  • ニデックマシンツールの MightyShield ε(旧称 MH02 コート):スーパーコート処理品より表面硬度が 70% 高く、密着力と付き回りを改善してセレーション溝にも均一に成膜する。セミグランドで納入し、コーティングは同社の歯研工程で除去済み。炭素鋼(m1.5・48 歯)の例で寿命が 1,595 個から 5,832 個。カッタ形状によっては処理できないので事前相談が必要[9]資料1件・参考

シェービングの関連工具(その他の製品)

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  • ダイヤモンドドレッシングギヤ:歯車を研削するギヤホーニング砥石を成形・ドレスするための、歯面にダイヤモンド砥粒を電着した歯車状の工具。研削される歯車と同じ形をしている。詳しくは dressing-gear.json[1]資料1件・参考
  • バニシングギヤ:熱処理した歯車に、圧力角修正・ねじれ角修正をした工具を押しつけながら回転させ、バリや打こんを取る工具。通常 3 個 1 組(圧力角違い・強ねじれ・弱ねじれ)で加工する[1]資料1件・参考
  • フレージングカッタ:歯切りした歯車の端面をインボリュート方向に沿って押しつぶし、短時間で面取りする歯車形の工具。歯面の片側だけ面取りするタイプと左右歯面の端面を面取りするタイプがあり、面取り形状はテーパ形(歯先と歯元の面取り量が違う)・平行形(同じ)・歯底も同時に面取りする平行形の 3 つ。傾斜した端面も面取りでき、15° を超える場合は計算で確認する。面取り量は 2 枚のブレードの位相で調整し、偏心ピンを組み込めばボルトで位相を調整できる[1]資料1件・参考
  • マスタギヤ:測定する歯車と回転させ、そのかみ合い状態で歯車の精度を判定する。2 歯面かみ合い自動選別機で偏心・歯厚・打こんなどを検出するギヤとしても使う。三菱マテリアルは TiN・バイオレットコーティングのマスタギヤを作っている。発注時は精度等級、工具材質(DC53・SKH51 など)、呼び寸法、軸間距離、クラウニング量・ホロー量、検査成績書の要否を決める[1]資料1件・参考
  • TRG-Tool(三菱マテリアル):創成歯車研削用のねじ状 CBN 電着工具。ピッチ誤差の矯正能力が高く、ギヤホーニングの前加工に向く(ホーニング砥石の寿命とドレスサイクルが延びる)。ウォーム形状で連続創成研削ができ、歯形を作り込んであるので機上ドレスが要らない。m2.3・43 歯の例で累積ピッチ誤差 48μm(JIS8)を 11μm(JIS4)にした[1]資料1件・参考

⚙ほかの歯切り工具

📚出典

印のない値は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。材種名・コーティング名はメーカーの商品名で、メーカーどうしの比較はしていません。「p.」は三菱マテリアルのカタログ(C004J-H)の本文ページです。

  1. 三菱マテリアル「歯切工具/ブローチ 総合カタログ C004J-H(4. シェービングカッタ p44〜66、5. ダイヤモンドドレッシングギヤ p67〜71、6. その他の製品 p72〜75、7-1 発注仕様書 p76〜86)」
  2. Gear Technology (AGMA Media) / National Broach & Machine「The Process of Gear Shaving(John P. Dugas、Back to Basics、1986年1/2月号)」
  3. Gear Technology (AGMA Media) / National Broach & Machine「Gear Shaving Basics - Part I(John P. Dugas、1997年11/12月号)」
  4. ヤマハ発動機「トランスミッション歯車シェービング加工工程の振動解析を用いた歯車精度対策(牧瀬芳輝、YAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEW)」
  5. Gear Technology (AGMA Media) / National Broach & Machine「Gear Shaving Basics - Part II(Don Kasai、1998年1/2月号)」
  6. ヤマハ発動機「シェービング歯面傷ゼロへの取り組み(森一明、YAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEW)」
  7. ニデックマシンツール「シェービングの切れ味向上 ー切削工具トピックスー」
  8. ニデックマシンツール「シェービング加工に関する不具合と要因 ー切削工具トピックスー」
  9. ニデックマシンツール「シェービングカッタ用表面処理 MightyShield ε ー切削工具トピックスー」