ブローチ設計・選定とトラブル対策
ブローチは、荒刃・中仕上刃・仕上刃が寸法順に並んだ多数の切れ刃を持つ工具で、1回引き抜く(押し込む)だけで穴や外面を粗加工から仕上げまで終わらせます。スプライン穴・セレーション・内歯車・キー溝・丸穴などの内面と、タービンディスクの翼溝のような外面(表面ブローチ)を量産で高精度に削れます。1刃の切込み量やピッチは設計・製作時に決まってしまうので、作業者が変えられるのは切削速度だけ。だからこそ設計と注文の段階で諸元をもれなく決めることが大切です。

✎設計・選定のしかた
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設計の基本と全体の流れ
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- ブローチ設計の基本は、できるかぎりコンパクトに、しかも緻密にすること。必要以上に余裕を見込んだ長いブローチは製造が難しく、精度低下とコストアップをまねき、使うときも被加工物の精度低下や取扱いの不都合を生じる。[1]資料1件・参考
- 切削長と下穴径はブローチの全長に大きく影響するため、過大な余裕を見込まない。[1]資料1件・参考
- 内面ブローチの諸元は、使うブローチ盤の仕様(つかみ部形状・寸法、引抜き容量、ストローク長、取付け可能長さ)と被加工物の形状・寸法から設計する。項目どうしの関係が独立していることが多いので、各項目をもれなく把握する。[1]資料1件・参考
- 仕様から諸元を決める流れ(三菱マテリアルの図17の要約):〈被加工物〉切削長→ピッチ・同時切削刃数・切りくず体積/ブローチ種類・材質・硬さ→1刃の切込み・すくい角・工具材質/下穴寸法→案内部寸法・形状/仕上げ寸法→切削寸法(全切削量)→刃数→刃長→全長。〈機械・治具〉プルヘッド型式→前つかみ部、リトリービングヘッド→後つかみ部、引抜き容量→切削荷重の確認、ストローク→刃長の確認、取付け可能な最大・最小長さ→全長の確認。刃溝形状(溝深さ・ランド幅・ピッチ)はチップルーム検討から決める。[1]資料1件・参考
- ブローチは粗加工・中仕上げ・仕上げの全工程要素を1本に盛り込んだ工具なので、製品の良否は工具に大きく依存する。設計の要点は、切込みを大きくできるよう各切れ刃の剛性を高くしつつ、切りくずを工作物と切れ刃の間に噛み込ませないよう切りくずポケットをできるだけ大きくすること。工具は製品ごとの専用設計になる。[2][1]
- 加工中の切込みは、各切れ刃に生じる切削抵抗のバランスで保たれる。1枚の切れ刃でも切りくずの噛み込みなどで早く摩耗すると、バランスが偏って一部の刃に過剰な切込みが生じ、振動や早期摩耗で品質を損なう。[2]資料1件・参考
- あまりに細長いブローチは製作時・使用時に問題が起きることがあるため、2本以上に分割して組ブローチとすることが推奨されている。[1]資料1件・参考
各部の名称と構成
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- 内面ブローチは前から順に、前つかみ部・前部案内・第一刃・荒刃・中仕上刃・仕上刃・後部案内・後つかみ部で構成される。寸法の呼び方は、シャンクの長さ(第1刃まで)・刃長・後部シャンクの長さ・全長。荒刃・中仕上刃にはピッチ・ランド幅・背面・すくい角・逃げ角・刃溝深さ・刃溝底丸み(チップルーム)があり、仕上刃にはストレートランドと逃げ角がある。[1][2]
- 前つかみ部・後つかみ部はブローチ盤で保持する部分(前つかみ部は下チャック、後つかみ部は上チャックで保持する例)。前部案内は第1刃のすぐ前に設け、工作物を正しく第1刃に案内する部分。[3][1]
- 構造は、むく(ソリッド)と組立の2種類。大径ヘリカルブローチでは、荒歯形部(本体)を外周切削刃、仕上げ歯形部(シェル)を歯厚切削刃とした組立形が一般的だったが、本体とシェルを一体にした一体形もある。[1]資料1件・参考
- 不二越社のハードブローチ(熱処理後の仕上げ用)は、超硬替刃と、前部案内・前つかみ部・後つかみ部を持つブローチホルダーで構成される。超硬替刃は直径25〜40mm程度・長さ200mm程度の中空円筒で、外周に寸法順の切れ刃が一体に形成され、1〜2本をホルダーに組み込んで使う。[3]資料1件・参考
- 工具長は800mmから2,400mmと長尺で、ブローチ盤は少なくとも工具長以上の長いストロークで円滑に送れる構造が必要。大径ヘリカルブローチは外径φ100〜φ180×全長1,500〜2,500mm程度。[2][1]資料1件・参考
つかみ部・前部案内・シャンク長
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- 前つかみ部の寸法は使うブローチ盤の型式で決まる。被加工物・プルヘッド・リトリービングヘッドに入りやすい形で、引抜き時の切削抵抗に十分耐え、操作が容易かつ確実であること。[1]資料1件・参考
- 前つかみ部の形状はコッタ形・丸首形・ねじ形の3種類。規格はコッタ形・JIS形丸首・ねじ形が JIS B4237、DIN形丸首が DIN 1415。後つかみ部は丸首形・台形溝形(JIS B4237)と DIN形(DIN 1415)があり、ブローチ盤のリトリービングヘッドに合わせて選ぶ(ユーザの指示に基づく)。後つかみ部は立形ブローチ盤でブローチを吊り上げるために設ける。[1]資料1件・参考
- 前方案内部の長さは被加工物の長さ以上必要。被加工物の中間または加工基準面側にぬすみがあるときは、それを切削長に加える。下穴径の許容差幅は0.05mmを標準とし、案内径には g7 のはめ合い公差を用いる。[1]資料1件・参考
- ブローチ前ガイドとワーク下穴径のクリアランスの目安は0.03mm以内(圧入タイプなどの特殊設定は除く)。クリアランスが大きいと偏心の原因になる。[4][1]
- シャンク長(第1刃までの長さ)は、ブローチ盤に取り付けて切削状態にしたとき第1刃が被加工物に接触しない長さにする。前つかみ部長さが規定されていれば(DIN形・ユーザ標準など)案内長さを加えて算出できるが、各機械のテーブルまでの寸法と治具厚みを考えて設定するのが一般的。[1]資料1件・参考
- 後部案内部は最終刃の後ろに設け、最終の仕上刃が切削を終えるまで被加工物を支える。直径は丸刃の仕上刃径の最小寸法とし、長さはほぼ直径と等しくする。[1]資料1件・参考
切削長と全切削量(切削寸法)
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- 切削長は被加工物をブローチで加工する長さで、被加工物の全長からぬすみ長さを除いた長さ(切削長=l1+l2)。被加工物長さ(L)はシャンク長を検討するときに用いる。[1]資料1件・参考
- 切削長が短い場合(目安として8mm以下)は、加工の安定性(寿命・精度など)とブローチの経済性から重ね引きを推奨。切削長が短く同時切削刃数が変化する場合は、ピッチ選定で考慮する。加工部の端面面取りは通常考慮しない。[1]資料1件・参考
- 全切削量=仕上げ寸法−下穴最小径。丸刃付きブローチの丸刃切削量は一般に0.2〜0.35mmとなる下穴径を選び、許容差を+0.05とする。[1]資料1件・参考
- ハードブローチ(熱処理後の仕上げ)の削り代は直径で0.3mm以下。前加工は通常のブローチ加工で行う。[3]資料1件・参考
1刃の切込み量(上がり量)と荒刃・中仕上刃・仕上刃
6
- 荒刃の1刃の切込み量(隣接する刃の直径差)は、被加工物の材質・硬さ、ブローチの種類・大きさ、ブローチ盤の容量などを考えて決める。[1]資料1件・参考
- 鋼加工での1刃の切込み量の標準(三菱マテリアル図14、直径での値):スプラインブローチはブローチ直径5mm付近で約0.033mm、20mmで約0.057mm、40mmで約0.072mm、60〜70mmで約0.08mm。丸ブローチは5mm付近で約0.02mm、20mmで約0.033mm、40mm以上で約0.04mm。(グラフからの読み取り値)[1]資料1件・参考
- 切削する切れ刃長さが大きく変わる場合は、荒刃の1刃の切込み量を切れ刃長さの変化に応じて2〜3段階に変える。[1]資料1件・参考
- 荒刃に続いて中仕上刃を数刃設け、仕上げ面をよくするため1刃の切込み量を漸減させる。仕上刃は切込み量を0とし、数刃(通常4刃)設ける。[1][2]
- ドリルや旋削の送り・切込みは作業者が選べるが、ブローチの1刃の切削量は設計時に決まっていて、作業者が変えられるのは切削速度だけ。[1][2]
- クリスマスブローチ(タービン翼溝)の設計では、ワーク材質・切削長・形状から最適な刃溝ピッチと切込み量を決め、さらにブローチ盤の引抜き荷重・ストローク・ホルダー列数などの設備条件を満たす形状・長さを検討して、最終的な配列を決める。[5]資料1件・参考
ピッチと同時切削刃数
5
- 切れ刃のピッチは通常 P=k・Lw^1/2(P:ピッチ、k:係数、Lw:切削長)で求める。kは1.2〜1.6程度で、1刃の切込み量が多いほど大きくなる。計算で求めたピッチは、①Lw/Pが整数とならないこと、②Lw/Pが2を越えるよう、0.5mmとびに切り上げる。[1][2]
- 同時切削刃数は2以上にする。ブローチ加工では特別な治具を使わず、ブローチが生む切削抵抗で工作物を固定するため、必ず1つ以上の切れ刃が工作物に食い込んでいる状態にしておく必要がある。[2][1]
- 不等ピッチは切削時の共振を防ぐために使う。特に丸ブローチで加工面のびびり・うねり防止や寸法精度の向上に効果がある。不等ピッチは基準ピッチの±0.5mmもしくは±1mmとする。[1]資料1件・参考
- 大径ヘリカルブローチの刃溝には軸直角(リング溝)タイプとオフノルマル(ねじれ溝)タイプがある。軸直角タイプは切削に関与する刃数が変動するため切削荷重の変動が大きく、振動で切れ刃の摩耗・損傷が加速して寿命が短い。オフノルマルタイプは関与する刃数がほぼ一定で荷重変動が小さく、歯形精度・工具寿命が向上するが、専用の再研削設備が必要。[1]資料1件・参考
- 切れ刃を切削方向から少し傾斜させると、切りくずが螺旋状になって排出されやすくなり、切れ刃が一度に切り込まないため切削抵抗の変化が緩やかになり振動も減る。ただし送り方向と直角の分力が生じ、内面ブローチでは工作物が回ろうとするので、治具で受け止める必要がある。[2]資料1件・参考
刃溝形状とチップポケット(切りくずの収容)
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- 刃溝形状はピッチ・ランド幅・溝深さから成り、チップルーム容積・切れ刃強度・再研削回数などに影響する。ピッチを基準に L=0.25〜0.3P(ランド幅)、H=0.3〜0.5P(溝深さ)、R1=0.4〜0.6H(溝底の丸み)で表す。[1]資料1件・参考
- 刃溝容積は切削で出る切りくず体積の少なくとも6倍、通常10倍程度とする。これは切れ刃の摩耗で切りくず形状が変わることへの安全係数。自動機のように作業者が常に監視できない場合は係数を大きくとる。[1][2]
- ブローチ加工では全切削長の切りくずがチップルームに収容されなければならない。チップルームは切削長に合わせて設計されるので、図面指定より長い加工物を削ると切りくずが詰まり、仕上げ面が著しく悪くなり、刃欠けや折損を生じることがある。[1][6]
- ブローチの切りくず長さは切削長より必ず短くなり、切削長の1/2〜1/4程度。そのぶん切りくずの厚みは2〜4倍に増える。切りくずの厚さは、すくい角・材質・刃先の状態・切削速度・切削油などで変わる。[1]資料1件・参考
- 最もよい切りくず形状はよく巻いた渦巻形で、じん性のある被削材ではこの形になる。軟らかい材料ほど巻き径が大きい。鋳鉄のようなもろい材料の切りくずはカールせずかさばらないので、チップルーム容積は小さくてよい。[1]資料1件・参考
- 刃溝底に有害な段差があったり、ランド幅過大・刃溝深さ不足だと切粉づまりを起こし、刃欠け・折損につながる。刃付けで溝底に段がつかないようにする。[6][7]資料1件・参考
- クリスマスブローチでは刃溝頂部に切削負荷による応力集中が起きやすく、強度不足で破損する可能性が高い。刃溝深さと刃溝で作られるエッジの設計を最適化し、応力集中を避ける。[5]資料1件・参考
すくい角・逃げ角・ランド・側面逃げ
6
- すくい角・逃げ角の標準値(三菱マテリアル表4、すくい角/逃げ角 荒刃/仕上刃):高抗張力鋼 10〜15°/2°/1°、中抗張力鋼 13〜18°/2°/1°、鋳鋼 8〜15°/2°/1°、鋳鉄 8〜10°/2°/1°、可鍛鋳鉄 8〜10°/2°/1°、銅合金 5〜8°/1°/30′、アルミ合金 15〜20°/3°/1°30′。[1]資料1件・参考
- ブローチに使うすくい角の範囲は5°〜25°で、条件によって異なる。[1]資料1件・参考
- 逃げ角は、再研削による直径の減少と、再研削量のばらつきによる各刃の切込み量のばらつきを小さく抑えるため、ほかの工具より小さくしている。そのため切削中に刃先へ切削油が浸透しにくい。[1]資料1件・参考
- せん断角が小さいとせん断面が長くなり、切りくずが厚く、切削抵抗が大きくなる。せん断角が大きいと切りくずが薄く切削抵抗が小さい。すくい角を大きく、切削速度を速くすると、せん断変形の少ない薄い切りくずになる。ただしすくい角を大きくすると刃先が薄くなり早く摩耗し、長くカールの少ない切りくずはポケットに収まりにくい。[1][2]
- 側面逃げ:被加工物と歯面の接触面積が広いと歯面に溶着が生じ、仕上げ面にむしれが出やすい。歯面の摩擦を減らすため側面に逃げを設ける。方式はランド残し方式とバックテーパ方式があり、歯形・歯丈・被加工物材質(調質・非調質)などで選ぶ。[1][8]
- ハードブローチ(超硬)は、通常のブローチと異なり、すくい角を鈍角にして刃先強度と耐チッピング性を上げている。[3]資料1件・参考
ニック(切りくずの分割)とジグザグ切削
2
刃長・全長・ブローチ強度の確認
3
切削方式と丸刃の配置の選び方
6
- 切削方式は大きく通常(外径上り)と輪郭(フォーム・歯厚上り)に分かれる。外径(上方)上がり方式は再刃付による歯厚変化が少なく、被削物とのガイド性が高いため歯形崩れが少ない。ただし一定のフォームランドを残すため溶着しやすい。一般のブローチに使う。[1][8]
- 外径(上方)上がりサイジング方式(2回通し)は歯形仕上げ時の切削力が小さく加工歪が小さい。薄肉ワークで特に効果がある(クリスマスブローチ・高精度用)。[8]資料1件・参考
- バックテーパー方式は後方刃の歯厚を若干小さくし、歯形側面にわずかに二番をつけて切れ味を上げ溶着を防ぐ。切削長が長いもの・溶着しやすいものに向く。[8][1]
- 歯厚(フォーム)上がり方式はブローチ歯形がそのまま被削物に写りやすく、歯形精度と仕上げ面粗さに優れる。ギヤ用・高精度用ブローチに使う。[8]資料1件・参考
- 丸刃付スプラインブローチは、丸刃をスプライン刃の前・後・交互に配置し、1本で内径とスプラインを同時に加工する。前丸刃:下穴精度が悪いとき(歯溝加工前に下穴精度を上げる)。後丸刃:ブローチ仕上げで小径を加工するときの標準的なもの。交互丸刃:スプライン歯溝と小径の同芯度が必要なとき。前丸刃+交互丸刃:下穴精度が悪く、同芯度も必要なとき。[8][1]
- 大径ヘリカルブローチ(自動変速機リングギヤの内歯車用)は、荒歯形部を外周切削刃で、仕上げ歯形部を歯厚切削刃で削り、間に交互丸刃部を置く切削方式の例がある。一体形にすると歯厚仕上げ代を減らせて歯車精度が上がり、各刃の負荷が軽くなって摩耗が減り、再研削当たりの加工数が増える。シェルの分解・組立・位相の微調整も不要になる。[1]資料1件・参考
工具材料と表面処理の選び方
8
- 刃部材料は高速度工具鋼(SKH51=AISI M2、SKH55、粉末ハイス)。三菱マテリアルの選定表では、浸炭鋼・強じん鋼・炭素鋼(引張強さ600N/mm2以上)とステンレス鋼は KMC3(SKH55)が最適で粉末ハイスが良好、快削鋼・鋳鋼・鋳鉄・アルミ合金・銅合金は SKH51 が良好、チタン合金・ニッケル合金は粉末ハイス(KHA)が最適。[1]資料1件・参考
- ニデックマシンツール社の選定基準では、SKH51・SKH55 は一般鋼・非鉄、同社の GRANMET BR(ブローチ専用溶解ハイス、角摩耗対策)は一般鋼・非鉄、MAC-B(粉末ハイス)は一般鋼・硬鋼・非鉄、MAC-D(高合金粉末ハイス)は難削材・超耐熱鋼などに使う。[8][10]資料1件・参考
- 粉末ハイスは炭化物が微細で組織が均一なため、溶解ハイスよりじん性・耐摩耗性にすぐれ、シャープエッジが長く保たれる。断続切削のブローチでは仕上げ面精度の向上と寸法変化のばらつき抑制に効く。特に高硬度難削材では溶解ハイス比2倍以上の寿命が得られるとされる(加工例:丸 S48C 250HB で1,500個対800個、スプライン SCr420 200HB で7,200個対3,600個)。[1]資料1件・参考
- 表面処理は、窒化(窒化酸化)系とPVDコーティング系がある。窒化は高温雰囲気でハイス表面に窒素を拡散させて高硬度層を作り、耐溶着性にすぐれる。PVDコーティング(TiN、Al系・AlCrN系など)は高硬度で耐摩耗性にすぐれ、角摩耗対策や水溶性クーラントでの加工に効果がある。[8][1][11][12]
- ニデックマシンツール社のナノダイナミック(PVD、Al系セラミック層)は、ブローチ刃面粗さ Ra 0.03μm で加工歯面のむしれ低減効果があり、寿命は同社比で TiN の2倍、全長2,000mm(有効範囲1,400)まで処理できるとされる。同社のナノダイナミックⅡ は AlCrN系・Hv3,000 で、切れ刃コーナー部の角摩耗対策や水溶性クーラントでの加工に有効とされる。[13][11]資料1件・参考
- 三菱マテリアル社の STH(窒化酸化を改良した処理)と GV21(TiN系PVD):TiN・GV21 は丸ブローチには推奨されない。同社の推奨範囲図では、ワークの大径・小径公差とBPD公差が小さい領域は STH、公差がおおむね大径・小径0.02mm以上かつBPD 0.03mm以上の領域は GV21 とされる(図からの読み取り)。[1]資料1件・参考
- 高速度工具鋼のブローチで加工できる硬さは35HRC程度までとされる。熱処理後(50〜62HRC)の仕上げには、超微粒子超硬合金の替刃とコーティングを使うハードブローチがある(不二越社)。[3]資料1件・参考
- 航空機・原動機タービン用(Ni基耐熱合金など)には高合金粉末ハイスを使う。Inconel718 などは再研削当たりのディスク加工数が数枚程度と、鉄系材料に比べて切削性が非常に悪い。[5][14]
÷計算式
引抜力の計算機
ワークと刃の条件から、ブローチ盤に要る引抜力を 2 社の式で出します。
切込み量は半径方向(直径差の半分)で入れてください。
比切削抵抗 C は三菱マテリアルのカタログの表5(切込み 0.02〜0.15 mm)の値で、表の間は直線でつないでいます。表に値の無い切込みでは C を出しません。ニデックの f(kgf/mm²)は資料の 5 区分から選びます(被削材を変えると近い区分に合わせますが、鋼の硬さに合わせて選び直してください)。2 つの式は考え方が少し違う(C は切込みが薄いほど大きい)ので、結果は一致しません。機械選びは大きいほうに余裕を見てください。
引抜力(切削予想荷重)と安全荷重 — 三菱マテリアルの式
F = L × ΔR × C / L = N × π × D(丸ブローチ)、L = N × Z × W(スプライン・セレーションブローチ)/ FS = 1.8F < 引抜容量[1]資料1件・参考
- F
- 切削予想荷重(kN)
- L
- 最大同時切削切れ刃長さ(mm)
- ΔR
- 半径方向切込み量(mm)
- C
- 比切削抵抗(kN/mm2、表5)
- N
- 同時切削刃数(Lw/P を整数に切り上げる)
- D
- 最大径(mm)
- Z
- 歯数
- W
- スプライン幅(最大歯幅)(mm)
- FS
- 安全荷重(kN)。安全率1.8
計算例 資料に計算例なし。比切削抵抗C(kN/mm2)の表5(一刃の切込量 0.02/0.04/0.06/0.08/0.10/0.15):高抗張力鋼 4.5/3.6/3.2/2.9/2.7/—、中抗張力鋼 3.6/2.7/2.5/2.3/2.2/2.0、鋳鋼 —/2.4/2.1/1.9/1.8/1.6、鋳鉄 —/1.9/1.7/1.6/1.5/1.4、可鍛鋳鉄 —/2.2/1.9/1.7/1.6/1.6、銅合金 —/—/1.5/1.3/1.2/1.1、アルミニウム合金 —/—/1.3/1.1/1.0/0.9
所要引抜力 — ニデックマシンツールの式
F = f × n × Q(kgf)/ n = ℓ / P(切り上げて整数)/ 丸穴:Q = π × d × a、スプライン穴:Q = a × t × m[9]資料1件・参考
- F
- 所要引抜力(kgf)
- f
- 被切削抵抗(kgf/mm2)。鋼 HRC30まで 300、HRC30〜35 350、HRC35〜40 400/可鍛鋳鉄 200/鋳鉄・青銅・アルミニウム 100
- n
- 同時切削刃数(枚)
- Q
- 切刃一枚の切削総面積(mm2)
- ℓ
- ワークの厚み(mm)
- P
- ブローチ刃のピッチ(mm)
- d
- ブローチの外径(mm)
- t
- 切刃一枚の切削幅(mm)
- m
- スプラインの条数(条)
- a
- ブローチ一刃当たりの取り代(mm)
計算例 丸穴 φ50(d)、ワーク厚み40mm(ℓ)、材質 SCM415・HRC25。f=300kgf/mm2、p=9.5mm → n=40/9.5=4.2 → 5枚。a=0.02mm → Q=3.14×50×0.02=3.142mm2。F=300×5×3.142=4712kgf ≒ 46.2kN。50kN以上の引抜能力が必要で、余裕を見て75kN以上のブローチ盤を選ぶことを勧める。
ピッチ
P = k・Lw^1/2(三菱マテリアル)/ P = 1.2〜2 √L(不二越 Vol.9)[1][2]
- P
- 切れ刃ピッチ(mm)
- k
- 係数。1.2〜1.6程度で、1刃の切込み量が多いほど大きい(三菱マテリアル)
- Lw
- 切削長(mm)
- L
- 不二越 Vol.9 の表記では「工具長」
計算例 資料に数値例なし。求めたピッチは、Lw/P が整数にならず、かつ2を越えるよう、0.5mmとびに切り上げる(三菱マテリアル)。
同時切削刃数
- n
- 同時切削刃数
- L
- 切削長(ワークの厚み)(mm)
- P
- ピッチ(mm)
計算例 引抜力の計算では整数に切り上げる(例:40/9.5=4.2 → 5枚)。
刃溝形状(ランド幅・溝深さ・溝底R)
L = 0.25〜0.3P、H = 0.3〜0.5P、R1 = 0.4〜0.6H[1]資料1件・参考
- P
- ピッチ(mm)
- L
- ランド幅(mm)
- H
- 刃溝深さ(mm)
- R1
- 刃溝底の丸み(mm)
計算例 資料に数値例なし。
チップポケット容積の条件
ポケット容積 ≧ 切りくず容積(L×t)× 6(三菱マテリアルは「少なくとも6倍、通常10倍程度」)[2][1]
- L
- 切りくずのもとになる長さ(不二越 Vol.9 図4。切削長に相当)(mm)
- t
- 切込み(切りくず厚さのもとになる1刃の切込み)(mm)
計算例 資料に数値例なし。自動機など監視できない場合は係数を大きくとる。
全切削量・切削長・刃長・全長
全切削量 = 仕上げ寸法 − 下穴最小径/切削長 = l1 + l2/刃長 = 刃数 × ピッチ/全長 = シャンク長 + 刃長 + 後部案内長 + 後つかみ部長[1]資料1件・参考
- l1, l2
- ぬすみを除いた加工部分の長さ(mm)
計算例 資料に数値例なし。刃長+切削長(+必要に応じ後部シャンク長)はストローク以内、全長はブローチ盤の取付け可能長さ以内。
ブローチ強度(許容荷重)
FP = σB × A / S > FS(S=3)/ 簡易式:刃部 Ft = 0.6 × At、つかみ部 Fc = 0.4 × Ac[1]資料1件・参考
- FP
- 許容荷重(Ft と Fc の小さいほう)
- σB
- 抗張力(kN/mm2)
- A
- 最小断面積
- S
- 安全率=3
- At
- 刃部の最小断面積
- Ac
- つかみ部の最小断面積
- FS
- 安全荷重(=1.8F)
計算例 資料に数値例なし。σB はつかみ部と刃部で異なるので簡易式で計算する。単位は資料に明記なし(σB が kN/mm2 なので A は mm2、F は kN と読める)。
再研削時の砥石直径
D = 0.85・d・sin(β−γ)/ sin γ[1]資料1件・参考
- D
- 砥石直径(mm)
- d
- ブローチの直径(mm)
- β
- 砥石傾斜角(°)
- γ
- すくい角(°)
計算例 表6より:d=30、β=40°、γ=12° → D=57(式で計算すると 0.85×30×sin28°/sin12° ≒ 57.6)。d=20、β=50°、γ=14° → D=41。
BPD(ビットウィンピンダイヤメータ)の算出(パラレルブロック法)
BPD = パラレルブロックのみの幅の測定値 + ブロックゲージ寸法/ブロックゲージ寸法 = 図示BPD − パラレルブロック基準寸法 + 1〜2mm[15]資料1件・参考
- BPD
- ピン間の寸法(mm)
- パラレルブロック
- 基準寸法25mmの例
計算例 図示BPD 35mm(ピン φ1.5mm)、パラレルブロック25mm → ブロックゲージ 35−25+2=10mm。パラレルブロックのみの幅が 24.955mm なら BPD=24.955+10.0=34.955mm。
⚠トラブルと対策
症状を開くと、考えられる原因と対策が出ます。原因は上から順に疑うとは限りません。ワーク・機械・工具の組み合わせで変わります。
切削中にブローチが止まる/引抜力が急に増える[1][2]p.116
主な原因
- ブローチ盤のパワー不足
- 溶着・刃欠け・異常摩耗による切削抵抗の増大(切れ刃が0.1mm程度摩耗しただけで数トンの抵抗増になる)
- 被削物の材質変化による被削性の悪化
- 切りくず詰まり
対策
- 十分にパワーのあるブローチ盤を使う(予想荷重×1.8<引抜容量で確認)
- 再研削で溶着・刃欠け・異常摩耗を除く。切削油を変える
- 被削物の組成・組織・硬さを確認する
- 指定の切削長以上の被削物を加工していないか確認し、切りくずを完全に除去する
- 切削抵抗の増加をインプロセスで監視する
びびり振動[1][6]p.116
主な原因
- 同時切削刃数が少なすぎる
- 被削物のスプリングバック現象
- ピッチと切削長による共振
- 機械および治具の剛性不足
- 切削条件・切削油が不適切、難削材ワーク
対策
- 指定の切削長以下の被削物を加工していないか確認する。切削長が短い場合は重ね引きする
- 被削物の肉厚を厚くする
- 後端を支える。不等ピッチ(基準ピッチの±0.5mmまたは±1mm)にする
- 機械・治具の修理保全を行い剛性を増す
側面のむしれ(歯面・溝側面)[1][8]p.116
主な原因
- 切れ刃側面に溶着がある
- 歯面と被加工物の接触面積が広い(側面逃げ不足)
- 被削材が軟らかすぎてランド部に溶着しやすい
対策
- 再研削で溶着部を除く
- 切削油を変える
- 側面逃げ(ランド残し方式・バックテーパ方式)を設ける
- 被削材の硬さを見直す(鋼は200〜240HB程度が適するといわれる)
外周(被削面)のむしれ・かじり[1][6]p.116
主な原因
- 刃先の摩耗で仕上げ面が擦過される
- 切れ刃に溶着
- 切れ刃にチッピング
- 切れ刃に当て傷
- 切りくずと加工面が擦過する
- 切刃以外の箇所の干渉
- 過大な切削代
- すくい角が不適切
- 刃先ダレ
- 切削条件・切削油の不適切・劣化
- ブローチ盤の剛性不足
- 難削材ワーク
対策
- 再研削で切れ味をよくする(溶着・チッピング・傷を除く)
- 切りくずを完全に除去する
- 切削油を変える
条痕(すじ状の傷)[1]p.117
主な原因
- 切れ刃にチッピング発生
- 切れ刃に当て傷
- 切れ刃に溶着
対策
- 再研削でチッピング部・傷・溶着部を除く
- 切削油を変える
大きなかえり(バリ)[1]p.116
主な原因
- 被削物の材質変化による被削性の悪化
- 切れ味の悪化
対策
- 被削物の組成・組織・硬さを確認する。切削油を変える
- 再研削で切れ味をよくする
刃欠け・折損[1][6]p.117
主な原因
- ブローチの取付不良
- 切りくず詰まり(刃溝形状不良:ランド幅過大・刃溝深さ不足・刃溝に段、切れ味不良)
- 一刃の切削代過大(設計寸法の誤り、隣接ピッチの加工不良)
- 設計基準の切削長より長いものを加工
- ワークのこじれ、加工中のワークずれ
対策
- 取付方法を改善する
- 指定の切削長以上の被削物を加工していないか確認する
- 切りくずを完全に除去する。切削油を変える
- 刃付けで刃溝底に段をつけない
通りゲージが入らない/寸法が小さい(大径・小径・インナーピン径の(−)公差外)[1][6]p.117
主な原因
- 加工穴の偏心
- 切れ刃のコーナー部が異常摩耗
- 仕上げ寸法が許容差下限より小さい(ブローチ寸法・オーバピン径の(−)公差外)
- 切れ味不良による収縮
- スプリングバックによる収縮(肉厚が薄いほど穴径は小さくなる)
- 切削熱による収縮
- ブローチ歯形不良
対策
- 切れ刃のチッピング・当て傷を調べ、あれば再研削で除く
- 基準面と下穴を正しく加工する
- 再研削で摩耗部を除き切れ味をよくする
- 被削物の肉厚を厚くする/ワーク図面を出してスプリングバックを検討してもらう
止まりゲージが通る/寸法が大きい(大径・小径・インナーピン径の(+)公差外)[1][6]p.117
主な原因
- すくい面研削時のかえりが大きい(カエリの影響)
- ブローチ寸法・オーバピン径の(+)公差外
- ムシレ
- ブローチ歯形不良
- 偏心
対策
- かえりを除去する
- 注文時に「かえりによるオーバサイズ」の可否を決めておく
下穴(外周)に対する加工穴の偏心[4][1][2]p.107
主な原因
- 機械:ブローチ盤の精度不良(面盤の水平、プラーと進行方向の直角、摺動面の傷み、ガタ)、切削油塗布の不均一
- 工具:刃先の不同・切刃摩耗の円周上不均一、刃付け面の振れ、刃溝形状の不良(有害な段差)、ブローチの曲がり(切削長が短い場合は影響が少ない)
- ワーク:下穴精度(前ガイドと下穴のクリアランス過大、真円度・円筒度、加工基準に対する下穴の倒れ)、下穴が大きすぎて片寄る、取付け基準面と下穴が直角でない、金属組織の不均一
- 切削抵抗の不均衡でブローチが抵抗の少ない方向へ横ずれする(ブローチはプラーで支えているだけ)
対策
- 簡易調査:ワークに印をつけ、ブローチの位相基準を決め、90°ずつ回して数個加工し振れ最大位置を調べる。偏心がワークの印に対し常に一定方向なら機械、ブローチ位相と連動すれば工具、ばらつけばワークの問題
- 機械:テストバーで直角を確認、摺動面・ガタを点検、切削油を刃の全周・全長に一様にかける
- 工具:拡大鏡で刃先を確認、刃付け面の振れを測る、センター台とダイヤルゲージで曲がりを測る
- ワーク:前ガイドと下穴のクリアランスを0.03mm以内に、座面と下穴の直角度を良くする、硬度分布を調べる
穴径のばらつき・真円度の悪化(薄肉ワーク・肉厚が不均一なワーク)[1]p.108
主な原因
- 加工中に背分力でワークが弾性・塑性変形して膨らみ、加工後にスプリングバックで戻る
- 円周方向・切削方向に肉厚が変化している
対策
- 基準の当たり面が大きく肉厚が厚い形状にする(例:丸ブローチ32.025mm・切削長50mm・235〜250HB・すくい角15°で、肉厚が薄いほど穴径が小さく真円度が悪化。グラフの読み取りでは肉厚7mm付近より厚いと真円度が安定)
- 工具側では防げないので、加工精度と被削物形状を十分に検討する
↻再研削・寿命の管理
- 再研削時期を適切に選ぶことが、ワーク精度とブローチ寿命の管理で最も重要。切れなくなってから使い続けると摩耗が急速に進んで再研削量も増え、トラブルの原因になる。こまめに再研削して1回の再研削量を最小にすると、1本の総切削個数(寿命)に格段の差が出る。[7]資料1件・参考
- 刃付け時期の目安(ブローチ側):刃先に摩耗によるランドが白く見え始めたとき(摩耗幅0.05〜0.1mm未満)、異常摩耗・チッピング・刃欠けを生じたとき、切粉が刃溝に圧着し始めたとき、切れ刃側面・二番面に切粉の溶着を生じたとき。[7][2]
- 刃付け時期の目安(ワーク・機械側):加工寸法が規格外、通りゲージが入らない、被削面の面粗さが悪い、切削終了時に過大に発熱したとき。ブローチ盤では引き抜き力が不当に増大したとき(初期の引き抜き荷重より30%増えたとき)。[7]資料1件・参考
- 工具寿命の考え方:摩耗は初期摩耗→定常摩耗→急激摩耗と進み、急激摩耗に入るまでを寿命とする。ブローチはおおむね逃げ面摩耗幅0.1mmで寿命と判断し再研削する。[2][7]
- 刃付け要領:ブローチはセンタに取り付け振れ止めを使う。砥石径はブローチ径の2〜3倍、砥石周速は1,300m/min以上が目安。ブローチと砥石の中心を若干ずらす。砥石のセット角を求める(刃付け盤付属の早見表、または三菱マテリアルの砥石直径の式・表6)。[7][1]
- 正しいすくい角に再研削するには、砥石径と取付け角(砥石傾斜角)を正しく設定する(式 D=0.85・d・sin(β−γ)/sinγ)。[1][7]
- すくい角と刃底のRは専用ゲージでチェックする。切粉がスムーズに流れるよう、すくい面と刃底部に段をつけない。すくい面の面粗さは3.2S以下(目標1.6S)。[7]資料1件・参考
- 荒刃では1刃の取り代を一定に保つため、荒刃全体の刃付け量を均一にする。切れ刃に溶着があれば、刃付け前に油砥石などで除去しておく。[7]資料1件・参考
- すくい面研削時のかえりが大きいと止まりゲージが通る(寸法が大きくなる)。かえりを除去する。[1]資料1件・参考
- 再研削不良は切りくずのカール変形として現れる。[1]資料1件・参考
- 再研削の実例(一体形大径ヘリカルブローチ、三菱マテリアル表3):再研磨代0.06〜0.11mm、再研磨回数22〜30回、再研削当たり加工数1,300〜6,000個。[1]資料1件・参考
- ハードブローチ(超硬替刃)は切れ刃すくい面の再研削で繰り返し使える。インボリュート歯面加工で1回の再研削当たり総切削長90m以上(切削長30mmなら3000個以上)、再研削回数は製品公差幅にもよるが6〜15回程度。[3]資料1件・参考
- オフノルマル(ねじれ溝)タイプの大径ヘリカルブローチは専用の再研削設備が必要。[1]資料1件・参考
◎工具の検査
- ブローチの曲がり:センター台に取り付け、ダイヤルゲージで各部の曲がりを確認する。刃付け面の振れも測る。[4]資料1件・参考
- 刃先の状態・摩耗:拡大鏡などで確認する(簡易的には切粉の円周付着状況を見る)。摩耗によるランドが白く見え始めたら刃付け時期。[4][7]資料1件・参考
- すくい角・刃底R:専用ゲージでチェックする。刃溝に有害な段差がないかも確認する。[7][4]資料1件・参考
- 加工されたスプライン穴の歯厚は、BBD(ボール)ではなくピンを使ったBPD(ビットウィンピンダイヤメータ)で評価するのが望ましい。ピンがリード方向の歯厚最小位置に接地するため、はめ合いの確認に合う。[15]資料1件・参考
- BPDのパラレルブロック法:どこへスライドさせても平行に狂いのないパラレルブロックを使う。ブロックゲージは図面指示より1〜2mm大きいサイズ。配置して持ち上げてもピンが落ちない程度に指で押さえ、ワークごと持ち上げてパラレルブロックを手で挟み込む(叩かない。強めに押すほうが再現性がある)。パラレルブロックのみの幅を測り、ブロックゲージ寸法を足す。安価な道具で様々なサイズに対応できるが、技量が要り、時間がかかり、BPDが小さいとブロックが入らない。複数人で測り合わせてばらつきを確認する。[15]資料1件・参考
- スプライン歯面の寸法管理には、対向位置にはめ込んだ計測用ピンのピン間寸法を使う。[3][15]
- 大径ヘリカルブローチ(JIS4級以上)は、歯形研削盤に歯車測定装置を付けてインラインで歯形を測定しながら製作する例がある。従来は高精度が要るシェル部を分割し、別途、歯形検査装置で測定しながら作っていた。[1]資料1件・参考
- クリスマスブローチは、ディスクと同材料のテストピースを専用ブローチ盤で試加工し、加工形状と工具精度を保証する。圧力面の製品公差レンジは通常十数μmで、ブローチ加工時には5μm程度のレンジしか許されず、ブローチどうしのつなぎ部に段差(ミスマッチ)があってはならない。[5]資料1件・参考
- ブローチ加工は工程中に工具の不具合が起きやすいので、切削抵抗値の増加や工具の破損をインプロセスで監視できるとよい(引抜力の記録が判断材料になる)。[2][7]資料1件・参考
☑注文時に決めること
工具メーカーに見積・製作を頼むときに伝える項目です。歯車の要目表(図面の表)から決まるものが大半です。
| 項目 | なぜ要るか・決め方 |
|---|---|
| ブローチの種類(インボリュート・セレーション・角形スプライン・梯形/丸・半丸・二面取り) | 仕様書の書式が形状ごとに分かれていて、仕上がり寸法の記入項目が変わる。[1] |
| ワーク図面の有無 | 図面があればスプリングバックを検討できる。図面なしではスプリングバックは保証されない。[1] |
| 適用規格・部品名称・部品番号(図面への記入要否) | 設計の基準になる規格(例:JIS B1601 角形スプライン、JIS B1603 インボリュートスプライン、JIS B4239 インボリュートスプラインブローチ)を決める。[1] |
| 被削材・硬さ・切削長 | 1刃の切込み量・すくい角・工具材質・ピッチ・チップルームが決まる。切削長は全長に大きく効くので過大な余裕を見込まない。図面指定より長いワークを削ると切りくずが詰まる。[1] |
| 仕上がり寸法(インボリュートスプライン:m または DP・PA・NT/角形スプライン:NT/セレーション・梯形:NT、欠歯・接合歯は別途指示/丸:径、半丸・二面取り:径と幅) | ブローチ形状・寸法と寸法許容差、切削方式(丸刃の配置)を決める元になる。[1] |
| 下穴寸法 | 全切削量(=仕上げ寸法−下穴最小径)と前部案内の寸法を決める。下穴径の許容差幅は0.05mmが標準、丸刃付きは丸刃切削量0.2〜0.35mmとなる下穴を選ぶ。[1] |
| ブローチ盤(形式・容量 kN・ストローク mm) | つかみ部の形状、引抜容量(安全荷重 FS=1.8F < 容量)、刃長+切削長がストローク以内かを確認するのに必要。取付け可能な最大・最小長さも全長に効く。[1][9] |
| ブローチ図面の有無と扱い(支給図通りに設計/メーカー規格で変更可) | 支給図がある場合に、メーカーの標準に合わせて変えてよいかを決めておく。問題点があれば備考欄に書く。[1] |
| 工具番号・刻印事項 | 管理番号やブローチに刻む内容を指定する。[1] |
| ブローチ材質・表面処理(無処理・窒化酸化・STH・TiN・GV21・その他) | 被削材と寸法公差に合わせて選ぶ(丸ブローチに TiN・GV21 は推奨されない)。[1] |
| ブローチ加工後の熱処理の有無と熱処理歪み補正(ワーク補正量:大径・小径・BPD、丸系は大径・幅/補正なし) | ワークを加工後に熱処理する場合、熱処理での寸法変化をブローチ寸法で見込むため。[1] |
| かえりによるオーバサイズ(不可:初品時のみ/初品・再研削時とも、可) | すくい面研削のかえりで寸法が大きくなる問題を、どこまで許すかを決める。[1] |
| 前つかみ部(JIS規格・メーカー規格・その他/四爪式・コッタ式・ピン式/平取りの有無と位置決め/No.1刃までまたは案内部までの寸法 φ×長さ/参考図番) | ブローチ盤のプルヘッドに合わせる。シャンク長(第1刃までの長さ)を決める。[1] |
| 後つかみ部(要・不要、図面あり/なしなら寸法を記入) | リトリービングヘッドで吊り上げる立形ブローチ盤で必要。機械に合わせユーザの指示で決まる。[1] |
| 丸刃(なし・前丸刃・後丸刃・交互丸刃) | 下穴精度や小径との同芯度の要求で選ぶ。丸系ブローチでは「平刃付は製作不可」の記載がある。[1][8] |
| 全長指定(なし=見積もり全長/あり=指定全長) | ブローチ盤の取付け可能長さやストロークに制約がある場合に指定する。[1] |
| 特記事項(英文図面の要否)・数量・納期区分 | 図面の言語、数量、納期の区分を伝える。[1] |
ケズリバ(kezuriba.net)/gears/tools/broach/ より印刷
+あわせて知りたいこと
ブローチ加工の特長と向き不向き
3
- 特長:きわめて短時間で高精度。軸方向に同一な複雑形状も簡単。1刃の切込みや全切削量が設計・製作時に決まるので熟練が要らない。仕上げ面が良く寸法精度が安定。切削時の圧力で被削物が保持される。多品種少量生産にも使われている。[1][2]
- ブローチ盤は直線軸(または回転軸)の1軸で構成でき、工具経路のプログラミングやNC制御は基本的に不要。ただし数トン〜数十トンの切削抵抗が断続的に出るので、十分な動力と剛性の高い機械構造が必要。工具は製品ごとの専用品で、1本数十万〜数百万円と高価。[2]資料1件・参考
- 内歯の加工法の比較(不二越カタログの表):ブローチ加工は生産性・加工精度が◎だが、段取り性△・設備初期投資△・イニシャル工具費×、止まり穴形状×、歯形・歯筋修正×、熱処理後加工×。シェーパ加工・スカイビング加工は止まり穴が加工でき、スカイビングは歯形・歯筋修正や熱処理後加工も○。[12]資料1件・参考
ブローチの種類と用途
7
- 丸ブローチ(丸形・二面取り・D形):リーマ加工のような精密な前加工なしで高精度な丸穴を仕上げる。仕上げ面をよくするためバニシング刃付きや二段仕上げのタイプがある。[1]資料1件・参考
- スプラインブローチ:互いに平行な角形断面を持つ角形スプライン(JIS B1601)と、動力伝達の軸と穴の結合用インボリュートスプライン(JIS B1603、ブローチは JIS B4239)。[1]資料1件・参考
- セレーションブローチ:軸と穴を半永久的に結合するためのもの。山形セレーションとインボリュートセレーションが一般的。[1]資料1件・参考
- 特殊(穴)ブローチ:他の加工法ではできなかった複雑形状も、熟練なしに高精度・高能率に加工する(分類表では山形・インボリュート・ボール溝。図には丸穴に溝を組み合わせた形の例が並ぶ)。[1]資料1件・参考
- ヘリカルブローチ:ねじれ溝穴(自動車・電気部品)用と、はすば内歯車用(シェル組立形・一体形)がある。大径ヘリカルブローチは自動変速機のリングギヤ内歯車に使われる。[1]資料1件・参考
- 操作方法は引抜きと押し。工具には内径加工用のインターナルブローチと、外形加工用のサーフェスブローチがある。[1][2]
- 機能による分類:荒・仕上げ用、面取り刃付き、バニシング刃付き、丸刃付き(前丸刃・後ろ丸刃・交互丸刃)。[1]資料1件・参考
外面ブローチ:タービンディスクの翼溝(クリスマス・ダブテール)
5
- ジェットエンジンのディスクとブレードをはめ合わせる取付け溝は、コンプレッサーディスクがダブテール(鳩の尾)形、タービンディスクが高温高圧下での応力分散にすぐれたクリスマスツリー形。ディスク全周に数十か所をブローチで成形する。[5]資料1件・参考
- クリスマス溝は、加工部位ごとに形の違う十数本のブローチを1セットとして加工する。例:①〜②番で溝入れ、⑩⑪番でフォームの粗取り、⑫番でハカマ部仕上げ、⑬番でフォーム部仕上げ、⑭番で溝底仕上げ。発電用ガスタービンは加工部位が大きく、1セット50本程度になる。[5]資料1件・参考
- 航空機エンジン用ワークでは形状精度に加え、表面状態(面粗さ・ムシレなどのサーフェステクスチャ、表層の変質層・塑性変形などのサーフェスインテグリティ)が工具寿命判定のポイント。Inconel706 を切削速度7m/min・切込み60μmで削った例では、表面から0.1mmまで硬さ上昇が見られ、切削長35m後はさらに上昇した。[5]資料1件・参考
- タービン用ブローチの材料は、難削材用の高合金粉末ハイスなどで長寿命化を図る。カエリを抑えた研削で鋭い切れ味を出す。[14][5]
- クリスマスブローチ盤には縦型と横型がある。横型は引抜きストロークが長く大型ディスクに対応できる。縦型は1台で左右のねじれに対応でき、複数列にブローチを取り付けて機械をコンパクトにできる(不二越社の例)。[5]資料1件・参考
加工条件と下準備(切削速度・被削材硬さ・下穴・切削油)
6
- 推奨切削速度(三菱マテリアル表1、m/min、被削材硬さ〜150HB/150〜250/250〜350/350〜450):浸炭鋼・強じん鋼・炭素鋼(600N/mm2以上) —/8−5/5/3、ステンレス鋼 9/8−6/5−3/3−2、快削鋼 12−9/10−8/—/—、鋳鋼 8/6−4/4−3/—、鋳鉄 9−6/5−3/3/—、アルミ合金 15−10/—/—/—、銅合金 12−8/9−6/—/—、チタン合金・ニッケル合金 8(〜250)/6−4/3−2。[1]資料1件・参考
- ブローチの切削速度は普通2〜8m/min程度だが、15〜40m/min以上の高速ブローチ加工も行われている。従来機の5〜15m/min程度に対し、サーボモーター+ボールねじ駆動で60m/minまで高速化したブローチ盤もある(不二越社のハードブローチ盤 HW-5008、ハードブローチは50〜60m/minが適切)。[1][2][3]
- 鋼をブローチ加工するときに適した硬さは200〜240HB程度といわれる。極端に軟らかい鋼はランド部に溶着しやすく、かじりやむしれで仕上げ面が悪くなる。硬すぎると摩耗が早く寿命が短い。[1]資料1件・参考
- 下穴は正確に:①取付け基準面に直角であること(でないとブローチが曲がり、寸法精度・仕上げ面が悪くなる)、②小さかったり曲がっていたりすると前方案内が入らず、大きすぎるとブローチが片寄って偏心が大きくなる、③構成刃先の脱落片や硬い異物があると寿命が極端に短くなる。ブローチは下穴を基準軌道として送られるので、工作物座面と軸穴の直角度が重要。治具との接触面は平坦かつ清浄に保つ。[1][2]
- 切削油の目的:仕上げ面を良好にする、寸法精度をよくする、切れ刃の摩耗を抑える、切りくずの排除を容易にする。ブローチは逃げ角が小さく刃先へ油が浸透しにくいので、最適な切削油の選定が重要。市販のブローチ用切削油にも適さないものがある。水・潤滑油・軽油などが混入すると仕上げ面が極端に悪くなり、異常摩耗を生じることがある。[1]資料1件・参考
- 水溶性切削油での加工は工具寿命に不利な条件とされ、耐熱性・耐摩耗性の高いコーティング(AlCrN系など)で対応する例がある。MQL(1時間あたり10cc程度の霧状オイルミスト)で加工するハードブローチシステムもある。[11][12][3]
ハードブローチ(熱処理後の仕上げ)
2
前つかみ部・後つかみ部の規格寸法表(カタログ所在)
1
- 三菱マテリアルのカタログに寸法表あり:表7 コッタ形シャンク部(JIS B4237、呼び10〜100、p110)、表8 JIS形丸首シャンク部(JIS B4237、呼び8〜100、p111)、表9・10 DIN形シャンク部(DIN 1415、呼び4〜18/20〜100、p112〜113)、表11 ねじ形シャンク部(JIS B4237、M6〜M20、p113)、表12 丸首・台形溝形後つかみ部(JIS B4237、呼び12〜100、p114)、表13 DIN形後つかみ部(DIN 1415、呼び12〜100、p115)。( )付きの呼び寸法はなるべく使わない。シャンク径 d の許容差は JIS B0401 の f8。[1]資料1件・参考
⚙ほかの歯切り工具
📚出典
印のない値は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。材種名・コーティング名はメーカーの商品名で、メーカーどうしの比較はしていません。「p.」は三菱マテリアルのカタログ(C004J-H)の本文ページです。
- 三菱マテリアル「歯切工具/ブローチ 総合カタログ C004J-H(ブローチの章 p87〜119)」
- 不二越「NACHI-BUSINESS news Vol.9A1 近未来技術展望「ブローチ加工の特長と未来」(2005、東京大学生産技術研究所 柳原聖・谷泰弘)」
- 不二越「NACHI-BUSINESS news Vol.5B1「高硬度部品のブローチ仕上加工システム ハードブローチ&ブローチ盤」(2004)」
- ニデックマシンツール「インターナルブローチのトラブルについて ~ワーク下穴に対するブローチ加工穴の偏心~ ー切削工具トピックスー」
- 不二越「NACHI TECHNICAL REPORT Vol.15B4「航空機用エンジンのブローチ加工 クリスマスブローチ加工」(2008)」
- ニデックマシンツール「ブロ-チ加工に関する不具合と要因 ー切削工具トピックスー」
- ニデックマシンツール「インターナルブローチの刃付け研削について ー切削工具トピックスー」
- ニデックマシンツール「ブローチカッタの選定基準 ー切削工具トピックスー」
- ニデックマシンツール「ブロ-チカッタ引抜力の計算方法 ー切削工具トピックスー」
- ニデックマシンツール「ブロ-チ工具用新材料 GRANMET BR ー切削工具トピックスー」
- ニデックマシンツール「ナノダイナミックⅡ コーティングブローチのご紹介 ー切削工具トピックスー」
- 不二越(NACHI)「精密工具 歯切工具・ブローチ カタログ No.2305 (2016)」
- ニデックマシンツール「ナノダイナミックコーティングブローチ ー切削工具トピックスー」
- ニデックマシンツール「原動機・航空機タ-ビン用ブロ-チ ー切削工具トピックスー」
- ニデックマシンツール「ブローチで加工されたワークの歯厚BPD(ビットウィンピンダイヤメータ)の測定 ー切削工具トピックスー」