ケズリバ(kezuriba.net)/maintenance/drill-press/parts/ より印刷
ボール盤の主軸・チャック・テーブルの手入れ
ドリルチャックの取付け・外し方・締め方、テーパ、ベルトの張りと回転数、テーブルとワークの固定。給油の箇所・油種・周期、ベルトの張り、回転数は機種ごとに違う。ここにある値は公開されている取扱説明書の例で、手元の機械の取扱説明書が最優先。運転中は手袋を着けない(安衛則 第111条)
⚙手入れと点検
- ドリルチャックを主軸のテーパに取り付けるドリルチャック(テーパ式)
主軸の先端のテーパ部とドリルチャックのテーパ部の油・ごみを、きれいな布で完全に拭き取る。チャックの 3 本のツメを本体の中に引っ込めてから差し込み、チャックの端面を木ハンマー(またはプラスチックハンマー)で打ち込む。鉄のハンマーでは叩かない(ユキワ精工)
テーパ部に油が付いていたり打ち込みが足りなかったりすると、チャックが抜け落ちて危ない。抜け落ちてテーパ部に傷が付くと、主軸が使えなくなる(キラ)。ツメが出たまま叩くと、ドリルの締付け不良の原因になる(マキタ) 出荷時の防錆油は、組み立ての前に拭き取る(キラ・マキタ)[1][2][3][4]
- ドリルチャックを主軸から外すドリルチャック(テーパ式)
チャックとテーパの境目のすき間に、くさび形の治具(幅の広いテーパ状のもの)を打ち込み、少しずつ密着を外す(ユキワ精工)。モールステーパの主軸の機種では、メーカーが付属品としてセンタードリフトを付けているものがある(キラ KID-420)
チャックはテーパどうしの面圧で密着しているので、くい付いて外れなくなることがよくある(ユキワ精工) 危ない作業なので、けがと機械の損傷に十分注意する。自分で外せないときは、チャックをアーバごとメーカーに送れば工場で外すとユキワ精工は案内している[4][2]
- ドリルをチャックで締めるドリルチャック
チャックハンドル(チャックキー)を 1 か所の穴だけで締めず、3 か所の穴を均等に少しずつ締める(ユキワ精工・マキタ)。小径のドリルは、できるだけつかみ径の小さいチャックでつかむ(ユキワ精工)。締めたらチャックハンドルを必ず抜く
均等に締めると工具の径方向のずれが少なくなり、精度よくつかめる(ユキワ精工)。キラもドリルを振れがないように確実に取り付けるよう求めている ユキワ精工は、例として直径 5 mm のドリルなら 5MG-JT1 のチャックを挙げている[5][3][1]
- チャックの掃除とツメの開閉不良ドリルチャック
チャックをツメ側から内部に向けてエアブローしない。ツメが動かなくなったら、綿棒などで内部を掃除するか、本体を木ハンマー・プラスチックハンマーで軽く叩いて中の切りくずを出す。チャックは自分で分解しない
エアブローで切りくずが中に入り込み、ツメが開閉できなくなる例が最も多い。チャックは部品を圧入して組んでいるので、分解は危ない(ユキワ精工) キーレスチャックでツメが工具にくい付いたときは、部品交換で直せるとユキワ精工は案内している[4][5](資料1件・参考)
- チャックの精度を長く保つドリルチャック
必要以上の力で締めない。チャックで工具がすべるほどの大きな負荷を掛けない
締めすぎるとツメが工具を傷める。負荷が大きすぎて工具がすべると 3 本のツメが摩耗し、精度よくつかめなくなる(ユキワ精工)[5](資料1件・参考)
- 主軸のテーパの種類を確かめて工具を合わせる主軸のテーパ
主軸端がジャコブステーパ(JT)かモールステーパ(MT)かを機種ごとに確かめ、合った工具(チャック・アーバ・テーパシャンクドリル)を使う。キラの現行機種では、卓上ボール盤 NSD-340 が JT6、KID-420 が MT2(MT3 はオプション)
ジャコブステーパは日本・米国で主流で、ヨーロッパではモールステーパが主流(ユキワ精工)。テーパが合わない工具は付かない ドリルチャックは JIS B 4634、モールステーパのシャンクとソケットは JIS B 4003 に形状・寸法がある(規格の書誌)[6][7][8][9]
- ベルトの掛け替えと張りの合わせ方Vベルト・プーリー
電源を切り、ベルトカバーを開ける。モーターの固定ねじ(モータークランプボルト)をゆるめ、モーターを前に寄せてベルトをゆるめ、回転数に合った溝に掛け替える。ベルトはプーリーに平行に掛け、斜め掛けはしない。モーターを後ろへ引いて張り、固定ねじを締めてカバーを閉める
張りが強すぎると回転が落ち、ベルトとモーターの寿命を縮め、故障の原因になる。弱すぎると作業中にベルトがすべる(ホーザン)。キラもベルトは強く張らないよう求めている 掛け替えのときはプーリーとベルトの間に手を挟まない(キラ)[3][10][1][2]
資料 張りの目安 マキタ TB131 ベルトを指で約 5 kg の力で押して 10〜15 mm たわむ ホーザン K-21 スリップしない程度。強すぎない キラ NSD-340・KID-420 強く張らない(KID-420 は中間プーリーのばねで 2 本を同時に張る) - ドリル径に合わせて回転数(ベルトの段)を選ぶVベルト・プーリー
太いドリルほど低い回転数(低速段)、細いドリルほど高い回転数にする。機械の銘板や取扱説明書の表で、ドリル径に合った段を選ぶ
キラ・ホーザンは使うドリルや加工に合った回転数を選ぶよう求めている。マキタは表でドリル径ごとの段を示している 回転数の求め方は「回転数と加工時間の計算」。機種ごとの段と適用ドリル径の例は「回転数の段とドリル径の例」の表[3][10][1]
- テーブルの高さ・角度を合わせて固定するテーブル・コラム
テーブルのクランプボルトをゆるめ、ハンドルで作業しやすい高さに動かしたら、クランプボルトをしっかり締める(キラ)。キラの 340・420 系の角テーブルは最大 45° まで傾けられる(丸テーブルは傾けられない)
クランプボルトをゆるめたまま作業すると、テーブルが前下がりになったり動いたりして、傾いた穴があく(キラ) コラム外径には 1 日 1 回給油する(キラ。給油の項目)。ホーザン K-21 は本体の高さを T 形ねじで固定し、上限を超えて引き上げないよう求めている[1][2][10][11]
- ワークをバイス・クランプで固定するワークの固定(バイス・クランプ)
加工する品物は必ずバイスなどで固定し、さらにバイスをテーブルに固定する(キラ)。クランプや万力を使う(マキタ)。平行ガイドのある機種はワークの回りを防ぐのにも使える(ホーザン)。作業の前にテーブルの上の不要な物を片付ける(厚生労働省のヒヤリ・ハット事例)
固定しないで加工すると、ワークがドリルに振り回されたり持ち上げられたりして危ない(キラ)。手で押さえるより安全で、両手で機械を扱える(マキタ)[1][3][10][12]
- 穴の位置にくぼみを付けてから穴をあける穴あけの位置決め
金属に穴をあけるときは、センタポンチで穴の位置にくぼみを作り、そこにドリルの先を当てる(マキタ)。センタ穴(センタリング)は、本加工のドリルと同じかそれより大きい先端角のドリルであける。面取りを兼ねて大きくセンタリングしない(オーエスジー)
ドリルの先がすべらず、正確な位置に穴があく(マキタ)。センタリングの先端角が本加工のドリルより小さいと、ドリルが肩(外周)から当たって振れ、穴位置が不安定になる(オーエスジー)[3][13][14]
- 送りハンドルを無理に押し付けない送り(ハンドル)
ハンドルはゆっくり下ろし、下ろす力を加減しながら穴をあける。急に下ろしたり必要以上に押さえつけたりしない。穴があいたらハンドルに手を添えてゆっくり戻す(ホーザン)
押さえつけすぎると負荷が掛かって回転が止まり、ドリルの変形・破損や故障の原因になる(ホーザン)。無理に押し付けても能率は上がらず、機械の寿命が縮む(マキタ) ハンドルから手を離すと、ばねの力で主軸が急に戻る(ホーザン)[10][3][1]
- ドリルの再研削の出来を確かめるドリル
再研削したら、左右の切れ刃の高さの差(リップハイト)を 0.03 mm 以下に抑え、先端角が左右対称か、チゼルの頂点が偏っていないかを確かめる(オーエスジー)
リップハイトのばらつきや先端の偏りがあると切削のつり合いが崩れて先端が振れ、穴が大きくなったり、おにぎり状(多角形)になったり、曲がったりする(オーエスジー)[15][16][14](資料1件・参考)
▦回転数の段とドリル径の例(卓上ボール盤、鉄工ドリル)
| 機種 | ベルトの段 | 回転数(min⁻¹) | ドリル径の目安 |
|---|---|---|---|
| マキタ TB131 | 1 速 | 50 Hz:570/60 Hz:690 | 10〜13 mm |
| マキタ TB131 | 2 速 | 50 Hz:890/60 Hz:1,070 | 6〜9 mm |
| マキタ TB131 | 3 速 | 50 Hz:1,300/60 Hz:1,560 | 4〜5 mm |
| マキタ TB131 | 4 速 | 50 Hz:1,900/60 Hz:2,280 | 3 mm 以下 |
| マキタ TB131 | 5 速 | 50 Hz:2,670/60 Hz:3,200 | 3 mm 以下 |
| ホーザン K-21 | 上段(低速) | 2,100 | 3.0〜6.0 mm |
| ホーザン K-21 | 中段(中速) | 4,500 | 1.5〜3.0 mm |
| ホーザン K-21 | 下段(高速) | 6,200 | 0.5〜1.5 mm |
電源の周波数で回転数が変わる(マキタの表は 50 Hz と 60 Hz で別の値)。キラ NSD-340 は 4 段(50 Hz:415・750・1,330・2,300、60 Hz:500・900・1,600・2,800)[3][10]
÷回転数と加工時間の計算
- 材料からドリルの切削速度 V(m/min)を選ぶ(切削速度の表)
- 回転数 n = 1000 × V ÷(3.14 × D)を計算する(D はドリル径 mm)
- 機械のベルトの段のうち、計算値に近い段を選び、取扱説明書のドリル径の目安とも照らす
- 送り f(mm/rev)を決め(送りの表)、加工時間 t = 60 × 穴の深さ L ÷(n × f)秒を出す
- 回転数 n(min⁻¹)
- 1000 × V ÷(3.14 × D)
- 切削速度 V(m/min)
- 3.14 × D × n ÷ 1000(mm を m にするため 1000 で割る)
- 加工時間 t(秒)
- 60 × L ÷(n × f)
- 送り速度 vf(mm/min)
- f × n
- 計算例:条件
- 炭素鋼(炭素 0.4〜0.7%)に直径 10 mm、深さ 20 mm の穴。V = 20 m/min、f = 0.2 mm/rev
- 計算例:回転数
- 1000 × 20 ÷(3.14 × 10)≒ 637 min⁻¹ → マキタ TB131 なら 1 速(50 Hz:570、60 Hz:690)。同機の表でも 10 mm は 1 速
- 計算例:加工時間
- 60 × 20 ÷(570 × 0.2)≒ 10.5 秒(50 Hz の 1 速)
- 計算例:キラの早見表の例
- 送り 0.18 mm/rev・回転数 450 min⁻¹・深さ 40 mm → 60 × 40 ÷(450 × 0.18)≒ 29.6 秒
回転数と加工時間の式はキラの早見表と三菱マテリアルの技術情報に同じ形で載っている(三菱マテリアルは加工時間を分で出し、60 を掛けて秒にしている)[17][18][19][3]
▦ドリルの切削速度と切削油剤の標準(ハイスドリル、キラ)
| 被削材 | 切削速度(m/min) | 切削油剤 |
|---|---|---|
| 炭素鋼(炭素 0.4% 以下) | 24〜33 | 水溶性切削油か硫黄添加油 |
| 炭素鋼(炭素 0.4〜0.7%) | 18〜24 | 水溶性切削油か硫黄添加油 |
| 炭素鋼(炭素 0.7% 以上) | 12〜18 | 水溶性切削油か硫黄添加油 |
| 合金鋼(引張強さ 60〜80 kgf/mm²) | 9〜15 | 水溶性切削油 |
| 合金鋼(引張強さ 80 kgf/mm² 以上) | 5〜9 | 水溶性切削油 |
| ステンレス鋼(マルテンサイト系) | 10〜20 | 不水溶性切削油(鉱油・植物油) |
| ステンレス鋼(フェライト系) | 15〜18 | 不水溶性切削油(鉱油・植物油) |
| ステンレス鋼(オーステナイト系) | 5〜15 | 不水溶性切削油(鉱油・植物油) |
| 鋳鉄(HB150) | 25〜45 | 乾式 |
| 鋳鉄(HB170) | 20〜25 | 乾式 |
| 鋳鉄(HB250) | 15〜20 | 乾式 |
| アルミニウム・アルミニウム合金 | 60〜90 | 軽油 |
| 青銅(一般) | 45〜75 | 水溶性切削油 |
| 銅・黄銅(中軟) | 45〜90 | 乾式か鉱油 |
| プラスチック | 30〜90 | せっけん水か乾式 |
キラの技術参考資料から抜き出した。合金鋼のいちばん弱い区分の行は、表記が読み取りにくいので載せていない。ドリルの種類(超硬など)・メーカーで値は変わる[17](資料1件・参考)
▦ドリルの送りの標準(mm/rev、キラ)
| ドリル径(mm) | 一般鋼材 | ステンレス鋼(オーステナイト系)・ニモニック合金 |
|---|---|---|
| 1.6〜3 | 0.05〜0.06 | 0.05〜0.08 |
| 3〜4 | 0.05〜0.1 | 0.06〜0.15 |
| 4〜5.5 | 0.08〜0.15 | 0.1〜0.23 |
| 5.5〜8 | 0.1〜0.2 | 0.13〜0.3 |
| 8〜11 | 0.15〜0.25 | 0.19〜0.35 |
| 11〜14.5 | 0.2〜0.3 | 0.25〜0.45 |
| 14.5〜17.5 | 0.23〜0.33 | 0.28〜0.5 |
| 17.5〜20.5 | 0.25〜0.36 | 0.31〜0.53 |
| 20.5〜24 | 0.28〜0.38 | 0.34〜0.56 |
| 24〜28.5 | 0.3〜0.4 | 0.38〜0.6 |
| 28.5〜38 | 0.35〜0.45 | 0.44〜0.68 |
| 38 以上 | 0.4〜0.5 | 0.5〜0.7 |
自動送りの機種で使う値。手送りの卓上ボール盤では、送りの手ごたえの目安になる。オーエスジーは穴の拡大を抑える送りの目安を「ドリル外径 × 0.02」としている(直径 10 mm で 0.2 mm/rev。キラの表の 8〜11 mm の範囲に入る)[17][15]
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- キラ・コーポレーション「卓上ボール盤 NSD-340 取扱説明書(DOC1-NSD340-JOM-01-02、第2版 2024-07-29)」
- キラ・コーポレーション「卓上ボール盤 KID-420 取扱説明書(DOC1-KID420-JOM-01-02)」
- マキタ「卓上ボール盤 TB131 取扱説明書」
- ユキワ精工「ドリルチャック Q&A「トラブル対処について」」
- ユキワ精工「ドリルチャック Q&A「使用方法について」」
- キラ・コーポレーション「ボール盤 カタログ・各種ダウンロード「テーパ一覧」」
- ユキワ精工「ドリルチャック Q&A「ドリルチャック、キーレスドリルチャックの仕様について」」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 4003:1999 工具用テーパシャンク部及びソケット―形状・寸法(書誌)」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 4634:1998 ドリルチャック(書誌)」
- ホーザン「取扱説明書 デスクドリル K-21」
- キラ・コーポレーション「ボール盤 カタログ・各種ダウンロード「テーブルの角度が振れる機種」」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト ヒヤリ・ハット事例「ボール盤での穴あけ作業中、手袋が巻き込まれそうになった」」
- オーエスジー「加工相談Navi FAQ No.718「センタリングをしているのに穴位置が不安定になる」」
- オーエスジー「ドリルテクニカルデータ「9. トラブルシューティング」(FAQ No.721 の参考資料)」
- オーエスジー「加工相談Navi FAQ No.705「ドリル加工における穴拡大の原因と対策は?」」
- オーエスジー「加工相談Navi FAQ No.721「ドリル穴がおにぎり状になる。なぜ?」」
- キラ・コーポレーション「技術参考資料「ドリル・リーマの切削条件」」
- キラ・コーポレーション「技術参考資料「ドリル切削時間早見表」」
- 三菱マテリアル「技術情報「Formula for Drilling」(切削速度・送り・加工時間の式)」