研削盤の給油・潤滑

給油する場所・油の種類と粘度(ISO VG)・交換の目安。周期・油種・数値は研削盤メーカー・といしメーカーの指定と、手元の機械・といしの表示が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例で、取扱説明書を必ず確かめること。研削といしの取替えと取替え時の試運転は、特別教育を受けた人が行う

⛽給油する場所と油

場所機械油(例)間隔の目安
内研用の高周波スピンドル内面スピンドルの仕様表に書かれた潤滑方式・潤滑油・油の供給量・エアの圧力と流量セイコーインスツルの内研スピンドルにはオイルとエアで潤滑する型と、エアの消費とミストをなくしたグリース潤滑の型がある仕様どおりの条件で常に使う[12][13](資料1件・参考)
といし軸(砥石軸)の軸受共通機械メーカーの指定油。高速の主軸軸受には ISO VG2〜22 のスピンドル油(軸受油)が使われる(モービルは研削盤を用途に挙げ、出光は JIS K 2239 軸受油の VG2・5・10・22 をそろえている)ジェイテクト(Koyo)の軸受の技術解説は、研削盤のといし軸を強制循環給油の例に挙げている。油は軸受を潤滑・冷却したあとタンクに戻り、ろ過・冷却されて再び送られる。排油管は給油管の2倍程度の太さにする。ジェイテクトの円筒研削盤には、といし軸受の油を冷却して暖機時間を短くした機種がある給油方式と機種による(循環給油・オイルエア・グリース封入・静圧軸受など)[1][2][3][4]
テーブル・サドル・砥石台のしゅう動面(すべり案内)共通機械メーカーの指定のしゅう動面油(または多目的油)岡本工作機械製作所(欧州法人)の立軸平面研削盤は、コラム上部の油溜めから重力でしゅう動面へ自動給油する方式を採っている。しゅう動面油は低速の送りでくっつく・すべるを繰り返すスティックスリップを防ぐ(ENEOS)自動給油の機種が多い。給油の量と周期は機種の取扱説明書による[5][6][3]
静圧案内・静圧軸受共通機械メーカーの指定の作動油(静圧用)静圧案内は油圧で可動部を浮かせるため摩擦がごく小さく、テーブルの浮き上がりやスティックスリップが起きない。そのぶん剛性・減衰はすべり案内・ころがり案内に劣る(ENEOS)作動油・フィルタの交換に合わせて静圧ブロックの整備も考える(セイコーインスツル)[7][5][8]
油圧ユニット(テーブルの往復駆動など)共通油研の一般油圧ユニットの例:石油系の耐摩耗性作動油か一般作動油、ISO VG32 か 46 相当。タンク油温 5〜60℃、汚染度 NAS 10 級以内岡本工作機械製作所は、熱膨張と振動の影響を避けるため油圧ユニットを本体から離して置いた機種や、作動油温度調整器を標準付属にした機種を紹介している。クーラのない装置は夏に油温が上がるので、必要なら粘度の高い作動油に替える(油研)油面・油温は毎日。水抜きは月1回程度。性状の検査は、はじめの半年は3か月ごと、その後は6か月ごと(油研)[9][6][10]
送り軸のボールねじ・サポート軸受(NC 研削盤)共通機械メーカーの指定油(強制潤滑の機種はボールねじ潤滑タンクから)ジェイテクトは、超硬やセラミックの微細な切りくずが入ったときのボールねじ・軸受の破損を減らすため、強制潤滑を採った機種を紹介している(ボールねじ潤滑タンク・スライド潤滑タンク・廃油缶の構成)。長く止めた機械ではボールねじに錆が出ることがある(セイコーインスツル、水溶性研削液の機械はとくに)潤滑タンクの油量を見る(周期は機種による)[4][11]

🛢油の種類と選び方

スピンドル油(軸受油)ISO VG2〜22(出光は JIS K 2239 軸受油の VG2・5・10・22。モービルの Velocite は VG2〜22 を高速主軸軸受・研削盤用に挙げている)
高速で回るといし軸・内研軸の軸受の潤滑。低粘度の油 機械メーカーが指定した粘度・銘柄を使う[3][2]
しゅう動面油機械メーカーの指定による
すべり案内の潤滑。スティックスリップを防ぎ、送りの精度を保つ 静圧案内を持つ研削盤には、静圧用の油(作動油)を使う機種がある[5][3]
作動油(油圧作動油)一般の油圧ユニットでは ISO VG32 か 46 が多い(油研の例)
テーブルの油圧駆動・静圧部への給油 違う銘柄に替えるときは、新しい油のフラッシング油で十分に流してから替える。作動油の種類によっては使えないシール部品がある(油研)[9][3]
水溶性研削液—(原液を水で薄める。倍率は製品の推奨による)
冷却が強く、扱いやすい。平面・成形研削の多くで使われる(UNITED GRINDING) 希釈は水に原液を入れる(逆にするとゲル化して溶けにくいことがある、ノリタケ)。細菌・カビが増えやすいので管理が要る。マグネットチャックのセパレータの黄銅・樹脂を腐食させにくい液を選ぶ(カネテック)[14][15][16][17]
不水溶性研削油(油性)—
潤滑がよく、超硬・ハイス、ダイヤモンド・CBN ホイールの研削に向く。機械がきれいに保てる 引火点の高い油を選ぶ。油性の研削液を使う機械には消火設備と油の冷却装置が要る(UNITED GRINDING)。SME の記事(Norton の技術者)はセンタレス研削にエステル系の高性能研削油をすすめている[15][16][18]

📚出典

印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。

  1. ジェイテクト「ボール&ローラーベアリング 技術解説 CAT.NO.B2001-8(Koyo)12. 軸受の潤滑」
  2. ExxonMobil(モービル)「Mobil Velocite Oil Numbered Series」
  3. 出光興産「潤滑油製品資料 ダフニー スーパーマルチオイル(2024-01-25)」
  4. ジェイテクト「JTEKT ENGINEERING JOURNAL No.1015(2017)製品紹介 GE3Pi-HYPER CNC 円筒研削盤」
  5. ENEOS「ENEOS Technical Review 第53巻第3号(2011年10月)高性能摺動面油ユニウェイXSについて」
  6. 岡本工作機械製作所「Okamoto Machine Tools Europe GmbH 製品紹介 ACC-450AV(油圧ユニットの分離・しゅう動面の自動潤滑)」
  7. セイコーインスツル「精機事業部 保全ニュース 第37号(静圧ブロックの整備)」
  8. ジェイテクト「技術・情報コラム「円筒研削盤の基礎と精度不良の見極めガイド|診断チェックリスト付」(2026-04-10 更新)」
  9. 油研工業「YA パック(低騒音標準小形油圧ユニット)取扱説明書 JM-1028」
  10. 岡本工作機械製作所「Okamoto Corporation(米国)製品紹介 ACC DX Series Column Grinders(付属品に作動油温度調整器・クーラント温度調整器)」
  11. セイコーインスツル「精機事業部 保全ニュース 第4号(長期停止とボールねじの錆)」
  12. セイコーインスツル「精機事業部 保全ニュース 第12号(高周波スピンドルを仕様どおりに使う注意)」
  13. セイコーインスツル「精機事業部 保全ニュース 第3号(グリース潤滑の高速スピンドルの紹介)」
  14. ノリタケ「汎用品 総合カタログ vol.3(研削砥石を正しく使うための重要事項・技術資料・ドレッサ・研削油・ポータブルバランサー)」
  15. UNITED GRINDING(STUDER・BLOHM などの親会社)「Motion blog: Choosing the right cooling lubricant」
  16. UNITED GRINDING(STUDER・BLOHM などの親会社)「Motion blog: The use of cooling lubricant for grinding」
  17. カネテック「総合カタログ p.43(マグネットチャックの吸着力・電磁チャックの品質基準・研削油剤の選定)」
  18. SME(米国製造技術者協会)「Tips for Trouble-Free Centerless Grinding(2017年5月。筆者は Norton|Saint-Gobain Abrasives の応用技術者)」