ケズリバ(kezuriba.net)/maintenance/grinder/safety/ より印刷
研削盤の保全作業の安全
止めて・錠を掛けて・札を付ける。法令と規格が求めること。周期・油種・数値は研削盤メーカー・といしメーカーの指定と、手元の機械・といしの表示が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例で、取扱説明書を必ず確かめること。研削といしの取替えと取替え時の試運転は、特別教育を受けた人が行う
⚠法令・規格が求めること
- 労働安全衛生規則 第117条(研削といしの覆い)
回転中の研削といしが危険を及ぼすおそれがあるときは覆いを設ける。直径 50 mm 未満のといしは除く
研削盤等構造規格も、研削盤(内面研削盤を除く)は規格に合った覆いを備えるよう定めている。OSHA も、工作物の中で使う内面研削のといしなどを除き、覆いのある機械でしか使ってはならないとしている[1][2][3]
- 労働安全衛生規則 第118条(研削といしの試運転)
その日の作業を始める前に1分以上、といしを取り替えたときは3分以上、試運転をする
試運転を行っていなかった職場で、直径 65 cm の古いといしが破裂した死亡災害がある(厚労省)。ノリタケは試運転のとき回転方向の正面に立たないよう注意している[1][4][5]
- 労働安全衛生規則 第119条(研削といしの最高使用周速度をこえる使用の禁止)
研削といしは、その最高使用周速度を超えて使ってはならない
といしを付ける前に、といし軸の回転数がといしに表示された最高使用周速度を超えないことを確かめる(OSHA も同じ)。外径 405 mm・最高使用周速度 1800 m/min のといしを 1450 min⁻¹ で回していた平面研削盤の破裂事例がある(厚労省)[1][4][3][6]
- 労働安全衛生規則 第120条(研削といしの側面使用の禁止)
側面を使う目的のといし以外は、側面を使ってはならない
平型といしの側面を使ったことがきっかけで破裂した事例がある(厚労省。ほかに周速度の超過、機械に合わないといし・覆い、特別教育の未実施も重なっていた)[1][4][7]
- 労働安全衛生規則 第36条第1号・安全衛生特別教育規程 第1条(研削といしの取替え等の業務)
研削といしの取替え、取替え時の試運転の業務に就かせるときは特別教育を行う。機械研削用といしは、学科(研削盤・といし・取付け具等の知識 4時間、取付け方法・試運転の方法 2時間、関係法令 1時間)と実技(取付け方法・試運転の方法 3時間以上)
学科の科目に、といしの外観検査・打音検査、取付け具の締付け方法と締付け力、バランスの取り方、試運転の方法が入っている。特別教育の記録は3年保存(安衛則 第38条)。自由研削用といし(グラインダなど)は第2条で別の教育[1][8][4]
- 労働安全衛生法 第42条・施行令 第13条第3項第2号・安衛則 第27条(規格を具備すべき機械等)
施行令 第13条第3項第2号で、研削盤・研削といし・研削といしの覆いは労働安全衛生法 第42条の対象とされている。安衛則 第27条により、厚生労働大臣が定める規格(研削盤等構造規格)を備えたものでなければ使ってはならない
JIS B 6033(研削盤の安全)は ISO 16089 を基にしているが、国内では法令である構造規格を優先して適用する必要があるとしている[9][1][2][10]
- 研削盤等構造規格(昭和46年労働省告示第8号)の主な要件
フランジ(材料・左右同径・ストレートフランジはといし直径の 1/3 以上)、覆い(材料・厚さ・といしを覆う範囲・強度を下げる穴の禁止)、動力しゃ断装置(作業位置から操作できる)、表示(研削盤・といし・覆い)、卓上・床上用研削盤のワークレスト(といしとのすきま 3 mm 以下)と調整片(覆いとのすきま 10 mm 以下)、固定側フランジの固定と、といし軸の締付けねじが締まり勝手であること
OSHA 1910.215 にも、フランジ(といし直径の 1/3 以上)、ラベル、取付け前の打音検査、ワークレスト(1/8 インチ以内)、調整片(1/4 インチ以内)などの同じ趣旨の規定がある[2][3][4]
- 労働安全衛生規則 第28条・第29条(安全装置等の有効保持)
事業者は覆い・安全装置を点検・整備して有効に保つ。労働者は覆いや安全装置を外したり効かなくしたりしない。臨時に外すときは許可を受け、終わったらすぐ元に戻す
ドレッシングの当たりを見るため覆いを開けたまま作業して、破裂したといしの破片が当たった事例がある。厚労省はこの事例の対策として、低速の確認モードのときだけ覆いを開けられるインタロックを組み込むことが望ましいとしている[1][10][11]
- 労働安全衛生規則 第107条・第108条(掃除等・刃部の掃除等の場合の運転停止等)
機械の掃除・給油・検査・修理・調整、刃部(研削盤ではといし)の掃除・検査・修理・取替え・調整では、危険があるときは機械を止め、起動装置に錠を掛ける・表示板を付けるなどして他の人が動かせないようにする
といしの交換、チャック面の清掃、研削液タンク・ろ過装置の清掃、油圧・静圧部の整備は、止めて錠と札(ロックアウト・タグアウト)をしてから行う。残圧のある油圧回路は圧を抜く[1][12][13][14]
- 粉じん障害防止規則(別表第1 第7号・別表第2 第7号、第3条、第4条、第17条)
研磨材を用いて動力で金属を研磨する場所の作業は粉じん作業。屋内で研削盤など回転体を持つ機械で金属を研磨する箇所は特定粉じん発生源で、局所排気装置か湿潤に保つ設備が要る。設備で注水・注油しながら研磨する作業には第2章〜第6章の規定は適用されない
注水・注油の設備なしで(乾式で)研削する場合は、局所排気装置などの対策と、その装置の年1回の自主検査(記録3年保存)が要る。ノリタケも粉じんの発散防止と十分な換気をすすめている[15][4]
- JIS B 6033:2018 工作機械―安全性―据付け形研削盤(ISO 16089:2015 を修正採用)
主に金属を研削する据付け形研削盤の危険源をなくし、リスクを減らす要求事項。手動機(グループ1)、動力駆動軸をもつ手動機(グループ2)、数値制御機(グループ3)に分けている
作業者が見やすくするためにインタロックを無効にすることを見込み、段取りと同じ程度の安全方策をもつ特別な運転モードを用意する考え方を採っている。ISO 16089 は 2025 年版(第2版)が出ている[16][10][17]
- 米国 29 CFR 1910.215(研削といしを使う機械)
覆いの露出角の上限(円筒研削盤 180°、といしの外周を使う平面研削盤 150°、卓上・床上用 90°)、フランジ、ラベル、取付け前の点検と打音検査、穴とといし軸のはめあい、接触面に異物がないこと
日本の構造規格は露出角などを図で示している。比べるときの参考に[3](資料1件・参考)
- 厚労省の災害事例 101102(CNC 円筒研削盤のドレッシング中の破裂)
新しいといしを付けて5分間試運転したあと、ドレッシング中にといしが破裂した。覆いを開けていたため破片が飛び散った。フランジとといしの間に金属片の異物があり、締付けにトルクレンチではなく六角レンチとハンマーを使っていた
試運転で異常がなくても、組付けの不良は後で破裂につながる。異物の確認、トルクレンチでの均等な締付け、覆いを閉じてのドレッシングを徹底する[11](資料1件・参考)
- 厚労省の災害事例 101224(平面研削盤でといしが破裂)
マグネットで並べて固定したスタンドのうち端の2個がずれて浮き上がり、といしに局所的に過大な力がかかって破裂した。スタンドのマグネットのスイッチがゆるんで OFF になっていた。といしは最高使用周速度を超えて回されていた
研削の前に工作物の固定を確かめること、周速度を計算して確かめること、作業者への安全衛生教育が対策に挙げられている[6](資料1件・参考)
- 保護具と火花・飛来物の対策
作業中は保護メガネ・防じんマスクなどの保護具を着ける。火花の飛散をしゃへい板などで防ぐ。火花の飛ぶ範囲に入らない。回転中のといしに直接触れない。工作物を無理にといしに押しつけない
安衛則 第105条は、加工物などが飛来する危険のある機械に覆い・囲いを設け、それが難しいときは保護具を使わせるよう定めている[4][1]
- 油性研削液の火災対策(メーカーの注意)
油性の研削液を使う機械には消火設備(自動消火装置)と油の冷却装置が要る。引火点の高い研削油を使う
UNITED GRINDING は、新しい機械の据付けで消火装置の接続と立ち上げを確かめ、地域の規則に合った消火器を備えるよう書いている[18][19](資料1件・参考)
- 卓上用・床上用研削盤のワークレストと調整片(研削盤等構造規格 第5条・第28条)
ワークレストはといしの周面とのすきまを 3 mm 以下に調整できること。覆いは調整片などで、研削に必要な部分のといしの周面と覆いのすきまを 10 mm 以下に調整できること
平面・円筒などの研削盤と同じ工場で使われる両頭グラインダなどの規定。調整片を付けずに使っていた床上用研削盤で、割れたといしの破片が胸に当たった死亡災害がある(厚労省)。ノリタケはワークレストのすきま 3 mm 以下、調整片とのすきま 3〜10 mm を推奨している[2][4][3][20]
条文は要点をケズリバの言葉でまとめたものです。正確な文言は e-Gov 法令検索の原文で確かめてください。
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- 厚生労働省「労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)e-Gov 法令検索」
- 厚生労働省「研削盤等構造規格(昭和46年労働省告示第8号)法令等データベース」
- 米国労働安全衛生局(OSHA)「29 CFR 1910.215 Abrasive wheel machinery」
- ノリタケ「テクニカルサポート:研削砥石の安全な使い方(すべきこと・してはいけないこと)」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:研削砥石の破裂災害」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:平面研削盤で研削作業中、といしに過大な力が加わって、といしが破裂し飛散」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:平型といしが破裂」
- 厚生労働省「安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)法令等データベース」
- 厚生労働省「労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)e-Gov 法令検索」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6033:2018 プレビュー(序文・適用範囲)」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:研削砥石が破裂して負傷(CNC 円筒研削盤)」
- 厚生労働省「4-5-2 エネルギー遮断・除去機能(ロックアウト・タグアウトの図を含む資料)」
- 米国労働安全衛生局(OSHA)「29 CFR 1910.147 The control of hazardous energy (lockout/tagout)」
- 油研工業「YA パック(低騒音標準小形油圧ユニット)取扱説明書 JM-1028」
- 厚生労働省「粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号)e-Gov 法令検索」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6033:2018 工作機械―安全性―据付け形研削盤(書誌)」
- 国際標準化機構(ISO)「ISO 16089:2025 Machine tools — Safety — Stationary grinding machines」
- UNITED GRINDING(STUDER・BLOHM などの親会社)「Motion blog: Choosing the right cooling lubricant」
- UNITED GRINDING(STUDER・BLOHM などの親会社)「Motion blog: Six Tips for Optimizing the Performance of Your Grinding Machine」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:床上用研削盤で研磨作業中、といしが割れて破片が胸部を直撃」