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旋盤の保全作業の安全
止めて・錠を掛けて・札を付ける。法令と規格が求めること。周期・油種・数値は機械メーカー・機種ごとの指定が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例で、手元の機械の取扱説明書・給油表を必ず確かめること
⚠法令・規格が求めること
- 労働安全衛生規則 第107条(掃除等の場合の運転停止等)
機械(刃部を除く)の掃除・給油・検査・修理・調整で危険があるときは機械を止める。止めたら起動装置に錠を掛け、表示板を付けるなどして、ほかの人が動かせないようにする。運転中でないとできない作業は、危険な所に覆いを付けるなどの措置をとれば例外
旋盤の清掃・給油・点検・修理は原則として止めて行う。ロックアウト・タグアウト(錠と札)の法令上の根拠。米国 OSHA の規則も、保守の前に止めてエネルギー源を切り離し、錠や札を付け、残ったエネルギーを抜いて、切れていることを確かめる手順を求めている。Hurco も機械の中で保守するときはロックアウト・タグアウトをするよう書いている[1][2][3][4]
- 労働安全衛生規則 第108条(刃部の掃除等の場合の運転停止等)
刃部の掃除・検査・修理・取替え・調整は運転を止めて行い、起動装置に錠・表示板などの措置をする(構造上危険がない場合を除く)。運転中の刃部で切りくずを払う・切削剤を使うときは、ブラシなどの用具を使わせる
バイト・チップの交換や刃物台まわりの清掃も止めて錠と札が原則。切りくずを素手や布で払わない[1](資料1件・参考)
- 労働安全衛生規則 第28条・第29条(安全装置等の有効保持)
事業者は安全装置・覆い・囲いが有効に働くよう点検・整備する。労働者は外したり機能を失わせたりしない。臨時に外すときは前もって許可を受け、終わったらすぐ戻す
保全で覆いやインタロックを外すときの手続き(許可→作業→元に戻す)の根拠[1](資料1件・参考)
- 労働安全衛生規則 第101条(原動機、回転軸等による危険の防止)
原動機・回転軸・歯車・プーリー・ベルトなどの危険な部分には覆い・囲い・スリーブなどを設ける
点検で外したベルトカバーや換え歯車のカバーは必ず戻す[1](資料1件・参考)
- 労働安全衛生規則 第103条(動力しや断装置)
機械ごとにスイッチ・クラッチなどの動力しゃ断装置を設ける
機械ごとに主電源・遮断器があり、施錠できることがロックアウトの前提[1](資料1件・参考)
- 労働安全衛生規則 第104条(運転開始の合図)
運転を始めるときに危険があるなら、合図を決めて合図者を指名し、合図させる
保全のあとの試運転や、複数人で点検したあとに動かすときの合図[1](資料1件・参考)
- 労働安全衛生規則 第105条(加工物等の飛来)・第106条(切削屑の飛来等)
加工物や切削屑が飛んで危険なときは覆い・囲いを設ける。難しい場合は保護具を使わせる
扉・窓・チャックガードの点検の根拠。Hurco は窓のポリカーボネートが年に最大10%耐衝撃性を失うとして3年以内の交換をすすめる[1][3]
- 労働安全衛生規則 第110条(作業帽等の着用)
動力で動く機械に頭髪・衣服が巻き込まれるおそれがあるときは、作業帽・作業服を着させる
袖口をまとめ、ポケットを閉じ、帽子に髪を収める(厚労省の NC 旋盤マニュアル)。Hardinge も保護めがねと安全靴をいつも着けるよう求めている[1][5][6][7]
- 労働安全衛生規則 第111条(手袋の使用禁止)
ボール盤・面取り盤などの回転する刃物に手が巻き込まれるおそれがあるときは手袋を使わせない
条文の例示は旋盤ではないが、厚労省の NC 旋盤マニュアルは手袋を使わない(段取り時を除く)としている。回転中のワークに軍手で紙やすりを当てて巻き込まれた死亡事例がある RÖHM はチャックを止めて潤滑剤を扱う保守では手袋・保護めがねを着けるよう求めている。回転中か止めているかで分けて考える[1][5][8][9][10]
- 労働安全衛生規則 第113条(突出した加工物の覆い等)
立旋盤・タレット旋盤などから突き出て回る加工物が危険なときは、覆い・囲いなどを設ける
主軸の後ろから長い棒材・パイプを出して回し、遠心力で曲がって作業者に当たった事故が複数ある。機械には警告表示があったが守られず、覆いもなかった[1][11][12](資料1件・参考)
- 機械の包括的な安全基準に関する指針(平成19年7月31日 基発第0731001号)
保守点検は、①ガードを外さず危険な区域に入らずにできるように、②外す・入る必要があるなら機械を止めてできるように、③止めてできないなら専用の運転モード(低速・寸動など)で、の順にできるようにする(別表第2)。すべての動力源を切れて、切ったまま施錠でき、残ったエネルギーを安全に抜けること(別表第4)
旋盤では主電源の施錠に加え、油圧チャック・心押台の油圧、エア、主軸の惰性回転などの残りのエネルギーを確かめる[13][14](資料1件・参考)
- ロックアウト・タグアウトの手順
厚労省の資料は、主電源を切ったあと、作業する人がそれぞれ自分の錠を掛けて保全中であることを示す方法を図で紹介している。OSHA は、錠や札は付けた本人だけが外し、再起動の前に周りの人に知らせることを求めている
- 災害事例:旋盤の修理中の感電
電源を入れたままリミットスイッチのカバーを外して離れた。「修理中」の札は下げていたが、別の人が球切れの表示灯を見て通電していないと思い込み、触れて感電した
札だけでは足りない。離れるときは電源を切って施錠する。表示灯で通電を判断しない[15](資料1件・参考)
- 保全のあとの確認
Hardinge は、とくに保全作業のあとに機械と周りに工具・部品の置き忘れがないか確かめるよう求めている。OSHA もロックアウトを外す前に、作業域の不要な物を片付け、部品が元どおりか確かめるとしている
- 災害事例:自動運転中の旋盤でタレットとチャックの間に挟まれ死亡
前面の柵にインタロックがなく、柵を開けたまま加工する運用になっていた。非常停止が作業位置から遠く、異常時の手順書や教育もなかった
インタロックの働きを点検し、清掃・点検・異常時の手順書をつくる[16](資料1件・参考)
- 災害事例:普通旋盤で油差しを取ろうとして袖が巻き込まれた
回転中の鉄棒に注油しようと、横送り台の上の油差しを取ろうとして袖が巻き込まれ、手首を切断した。油差しの置き場所が決まっていなかった
給油の道具は安全な定位置に置く。回転中に手を伸ばさない[6](資料1件・参考)
- ISO 23125(工作機械―安全―旋盤)/JIS B 6031:2014
旋盤を4つのグループ(手動、簡易 NC 付き手動、NC 旋盤・ターニングセンタ、単軸・多軸自動旋盤)に分け、危険源と安全の要求を定める。JIS B 6031:2014 は ISO 23125:2010+追補1:2012 と一致
保全のあとにインタロックやガードなどの安全機能を確かめる枠組みになる ISO の現行は 2015 年版で、さらに ISO/DIS 23125-1 への置き換えが進んでいる。JIS は旧版のまま[17][18][19][20]
- ISO 23125 の値(チャックメーカーの取説での紹介)
すきまが 25 mm 未満になる動きは手足を挟む危険があり、近づき合う部品の速さを毎分 2 m 以下にする(調整・保守でも同じ)、という規定を RÖHM が ISO 23125 にそったものとして紹介している
保守中に寸動・調整モードで動かすときの速さの目安 ISO 本文では確かめていない[10](資料1件・参考)
- ISO 14118:2017(予期しない起動の防止)
電気・油圧・空圧などの動力や、重力・ばねなどにたまったエネルギーによる、予期しない起動を防ぐ設計上の手段を定める
ロックアウト・タグアウトの設計側の国際規格[21](資料1件・参考)
- チャックの安全(JIS B 6150 とチャックメーカーの注意)
許容最高回転数・許容入力を超えない。必要な把握力と回転数は試し削りで決め、加工前に把握力が出ていることを確かめる。ロックバルブ付きのシリンダと、電気が切れても把握を保つ電磁弁の回路を使う
- 機械による労働災害の割合(厚労省のパンフレット)
休業4日以上の死傷者のうち約4分の1、死亡災害の約3分の1が機械によるもので、原因の8割は機械の安全対策が足りなかったことによる(平成26年の統計)
機械の安全対策と、安全に使うことの両方が大切[26](資料1件・参考)
条文は要点をケズリバの言葉でまとめたものです。正確な文言は e-Gov 法令検索の原文で確かめてください。
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- 厚生労働省「労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)e-Gov 法令検索」
- 米国労働安全衛生局(OSHA)「29 CFR 1910.147 The control of hazardous energy (lockout/tagout)」
- Hurco「Maintenance and Safety Manual for i-Series Machines v573EN(2017年12月。TM 系 NC 旋盤を含む)」
- 厚生労働省「4-5-2 エネルギー遮断・除去機能(ロックアウト・タグアウトの図を含む資料)」
- 厚生労働省「ものづくりマイスター 人材育成マニュアル(初級)数値制御旋盤作業編」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:旋盤で回転中の鉄棒に手が巻き込まれた」
- Hardinge「HLV-H / TFB-H Maintenance Manual M-10C(2007年改訂。カリフォルニア大学バークレー校 機械工学科が公開している写し)」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:CNC旋盤に巻き込まれて死亡」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:旋盤で回転する部品に紙やすりを当てていて巻き込まれた」
- RÖHM「Power chuck DURO-A RC Operating Manual(英語)」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:NC旋盤でねじ切り中、遠心力で突出したパイプが変形し頭部に激突」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:NC旋盤で長尺の金属材料がぶれて変形し激突」
- 厚生労働省「機械の包括的な安全基準に関する指針(指針本文)」
- 厚生労働省「「機械の包括的な安全基準に関する指針」の改正について(平成19年7月31日 基発第0731001号)」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:修理中の機械に触れて感電(旋盤の修理中)」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例:樹脂製品を旋盤加工中にはさまれて死亡」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6031:2014 工作機械―安全性―旋盤(対応 ISO 23125:2010 IDT、同 Amd.1:2012 IDT)書誌」
- ISO「ISO 23125:2015 Machine tools — Safety — Turning machines」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6031:2014 プレビュー(表紙・目次・序文・適用範囲)」
- ISO「ISO/DIS 23125-1.2 Machine tools safety — Turning machines — Part 1: Safety requirements(審議中)」
- ISO「ISO 14118:2017 Safety of machinery — Prevention of unexpected start-up」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6150:2015 工作機械の安全性―工作物把握用チャックの設計及び構造に関する安全要求事項(対応 ISO 16156:2004 IDT)書誌」
- 北川鉄工所「【チャック】パワーチャック使用上の注意(2026-02-03)」
- 豊和工業「パワーチャック H011MC 取扱説明書(2015-04-20 版)」
- 北川鉄工所「【チャック】パワーチャックの把握力の設定方法(2026-02-03)」
- 厚生労働省「機械メーカー・機械据え付け業者・機械ユーザーの皆さまへ(産業機械の安全に関する規格等のまとめ)」