ケズリバ(kezuriba.net)/maintenance/lathe/lubrication/ より印刷
旋盤の給油・潤滑
給油する場所・油の種類と粘度(ISO VG)・交換の目安。周期・油種・数値は機械メーカー・機種ごとの指定が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例で、手元の機械の取扱説明書・給油表を必ず確かめること
⛽給油する場所と油
| 場所 | 機械 | 油(例) | 間隔の目安 |
|---|---|---|---|
| 案内面(すべり案内・リニアガイド) | 共通 | しゅう動面油 ISO VG68 が多い。Haas の手動旋盤は VG68、Hardinge は Mobil Vactra No.2(VG68)、Hurco は自動給油に ISO VG68 のウェイ油Haas の NC 旋盤の送り軸は ISO VG1500 の合成ギヤ油を自動給油する。機種で大きく違うので取説が優先 | 汎用は手押しポンプで毎日、NC は自動給油(タンクは毎月補給)[1][3][4][5] |
| 主軸軸受 | 共通 | 機種で違う。Hardinge の HLV-H は予圧玉軸受にグリースを封入した一生給脂不要。Haas の NC 旋盤は合成エンジン油 0W-20 を専用タンクから。一般の高速主軸用の主軸油は ISO VG2〜22(モービル)「主軸=スピンドル油」と決めつけず、機械メーカーの指定に従う | Haas は主軸潤滑タンクの油量を毎月見る[3][6][7] |
| チャック(爪の摺動部・くさび) | 共通 | チャックメーカー指定のグリース。豊和工業と Hurco はモリブデン系の極圧グリース(モリコート EP)、SCHUNK は自社の LINOMAX、北川鉄工所は専用グリースをすすめ、一般のリチウムグリースは高い荷重で逃げやすいとしている | 詳しくはチャックの節[9][4][10][11] |
| 主軸台(ギヤ・軸受の油溜め) | 汎用 | Haas の手動旋盤は ISO VG32(7 L)。Colchester は油圧作動油タイプの潤滑油(シェル Tellus 33)を指定ギヤ油らしい高粘度ではなく、中粘度の循環・油浴用の油を使う例 | 油面は運転前(Colchester は週1回)。交換は初回を早めに、以後6か月〜1年[1][2] |
| 送り箱(ギヤボックス) | 汎用 | ISO VG32(Haas 手動旋盤で 1.3 L) | 必要に応じて補給、6か月〜1年で交換[1](資料1件・参考) |
| エプロン(油溜め) | 汎用 | Haas の手動旋盤は ISO VG68(1.1 L)。Hardinge はモービルの Mobilfluid 350 を指定Hardinge は油面計の窓が油で満たされていれば満杯としている | Haas は慣らしのあとに交換し、以後年1回(酷使するなら6か月)[1][3] |
| 親ねじ・送りねじナット・ラック | 汎用 | Hardinge は Mobil Velocite No.6 を油差しで。Haas の手動旋盤は VG68 をはけ塗り油の粘度が資料で大きく違う(Velocite No.6 は低粘度の主軸油系) | Hardinge は少なくとも週1回、Haas は毎日か必要なとき[3][1] |
| 心押台・横送り台のオイラー | 汎用 | ISO VG68 を手差し | 毎日か必要なとき 2〜3 滴[1](資料1件・参考) |
| 換え歯車 | 汎用 | グリース(銘柄の指定なし)古いグリースを落とし、歯の両面に薄く塗る。かみ合いのバックラッシは約 0.0127 mm | 記載なし[1](資料1件・参考) |
| 油圧ユニット(チャック・タレット・心押台の油圧源) | NC | ISO VG32 の油圧作動油(Hurco の TM 系、Haas とも)Hurco の TM 系のタンクは 40〜90 L。Haas は 30〜38 L | 油面は毎月〜3か月、交換は年1回(Hurco)〜2年(Haas)[4][6] |
| タレット(刃物台) | NC | Hurco の TM 系は ISO VG100〜150 の油。Haas は機種により VG32 の油圧作動油か、半流動グリース(NLGI 00)機種で油の種類まで違う | Hurco は毎月油量を見る[4][6] |
| 主軸ギヤボックス(NC) | NC | Haas は自動車用の合成ギヤ油 SAE 75W-90(2.4〜3.0 L) | 油面は毎月、交換は年1回[6][8](資料1件・参考) |
| 心押台(NC) | NC | Haas はグリース(Mobilith SHC 460) | Haas の資料どうしで「6か月ごとにフルストローク1回」と「毎月給脂」に分かれる[6](資料1件・参考) |
🛢油の種類と選び方
- しゅう動面油(スライドウェイ油・ウェイ油)ISO VG32〜220
- 案内面・テーブル・送り機構の専用油。低速で送るときに起きるスティックスリップ(くっつく・すべるを繰り返してガタガタ動く現象)を防ぎ、位置決めの精度を保つ[12][13][14][5][15]
- しゅう動面油が効くしくみ
- 案内面の速さは毎分 100 m の高速から毎分 0.001 mm の極低速まである。速いときは流体潤滑で粘度が効き、遅いときは境界潤滑で添加剤(硫黄系・リン系の極圧剤と油性剤)が効く。だから低速での動きは製品ごとに差が出る[12](資料1件・参考)
- 案内面の種類と油への注文
- すべり案内面は剛性が高く振動を吸収するが摩擦が大きく、油の摺動特性が位置決め精度に効く。ころがり案内面は摩擦が小さく速く送れ、水溶性切削液を使う生産ラインに多いので切削液と分かれやすい油が要る。静圧案内面は油圧で浮かせるのでスティックスリップが起きず、油圧作動油としての性能も要る[12](資料1件・参考)
- しゅう動面油の粘度の選び方68(水平)/220(垂直)
- 小〜中型機の水平な案内面は VG68、大型機・高面圧・垂直や傾いた面は VG150〜220[5][15][16]
- 水溶性切削液と分かれやすいこと
- 多くの機械ではしゅう動面油が切削液のタンクに流れ込む。混ざると腐敗菌のえさになり切削液が早く傷む。分かれやすければ浮いた油を取り除ける。Hurco も、しゅう動面油が溶け込まずに浮く切削液を使うよう求めている ENEOS は、摺動特性と分離性は一般に両立しにくいと説明している[12][17][5][4]
- 垂れにくさ(粘着性)
- コラムなど垂直の摺動面で油が流れ落ちて油膜が切れると焼き付く。粘着剤を入れて垂れにくくしている[12][14][5]
- 主軸油(スピンドル油・軸受油)ISO VG2〜22
- 主軸軸受などに使う低粘度の油。モービルは高速主軸軸受用に ISO VG2〜22 をそろえ、すき間がごく小さい軸受には VG2 をすすめる。出光は VG10 を旧名「60スピンドル油」、VG22 を「150スピンドル油」の相当としている[7][18][19]
- ギヤ油(工業用ギヤ油)ISO VG32〜460
- 中くらいの荷重の密閉歯車(平歯車・かさ歯車)は ISO 記号 CKB の VG32/68/150、高荷重の密閉歯車(ウォームなど)は極圧型の CKC の VG150/320/460[18](資料1件・参考)
- 油圧作動油ISO VG32〜68
- 一般の油圧は HL(VG32/46/68)、耐摩耗性は HM(VG32/46/68)、油圧と案内面の兼用は HG(VG32/68)。油静圧の案内面には油圧兼用しゅう動面油を使う例がある[18][20][21]
- 多目的油(工作機械用)
- 軸受・歯車・油圧・案内面を1種類でまかない、工場で使う油の種類を減らすための油 出光は、多目的油を市販のしゅう動面油と混ぜて使わないよう注意している[18][22]
- ISO VG(粘度グレード)とは
- 工業用潤滑油を 40℃ の動粘度で区分した番号。ISO 3448 と JIS K 2001(工業用潤滑油―ISO粘度分類)で決まっている[23][24]
- ISO 6743-13 の G 系(しゅう動面油の分類)
- ISO 6743-13 は工業用潤滑油の分類のうち、しゅう動面(G 系)を定める。出光は製品の相当として G-32・G-68・G-220 などを示している[25][18][17]
- 工作機械用潤滑油の ISO 記号の一覧(MAS 規格との対応)
- 出光の相当表では、歯車 CKB・CKC、軸受 FD、しゅう動面 G、油圧 HL・HG・HM の各 ISO 記号と、日本工作機械工業会規格(MAS)にその区分があるかどうかを並べている MAS 規格そのものの番号・題名は公開資料で確認できなかった[18](資料1件・参考)
用途 ISO記号 中荷重の密閉歯車 CKB 32 / 68 / 150 高荷重の密閉歯車(極圧型) CKC 150 / 320 / 460 軸受(耐摩耗性) FD 2 / 5 / 10 / 22 しゅう動面(スティックスリップ防止) G 32 / 68 / 150 / 220 一般の油圧 HL 32 / 46 / 68 油圧と案内面の兼用 HG 32 / 68 耐摩耗性の油圧 HM 32 / 46 / 68 - ISO 19378(工作機械用潤滑剤の区分と仕様)
- 工作機械用潤滑剤の区分の選び方と仕様を定める。前身は ISO/TR 3498 と ISO/TR 10481(どちらも廃止)[26](資料1件・参考)
- 給油指示・潤滑システムの規格
- 機械メーカーが給油の指示を示す方法は ISO 5169 と JIS B 6016-1(潤滑指示図の表示方法)、潤滑システムは ISO 5170 と JIS B 6016-2。旧 JIS B 6016:1990(工作機械―潤滑通則)は1998年に廃止[27][28][29][30][31]
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- Haas Automation「HML Manual Lathe Operator's/Service Manual 5 - Maintenance(Rev B 08/2026)」
- Clausing-Colchester「13 inch Geared Head Lathe Instruction Manual(Internet Archive が公開している写し)」
- Hardinge「HLV-H / TFB-H Maintenance Manual M-10C(2007年改訂。カリフォルニア大学バークレー校 機械工学科が公開している写し)」
- Hurco「Maintenance and Safety Manual for i-Series Machines v573EN(2017年12月。TM 系 NC 旋盤を含む)」
- ExxonMobil(モービル)「Mobil Vactra Oil Numbered Series 製品データシート(日本語、2024年5月)」
- Haas Automation「Lubricant, Grease, and Sealant Tables for Haas Machine Components - RD0040(Rev Q 08/2026)」
- ExxonMobil(モービル)「Mobil Velocite Oil Numbered Series」
- Haas Automation「Lathe Maintenance Schedule - RD0035(Rev A 04/2026)」
- 豊和工業「パワーチャック H011MC 取扱説明書(2015-04-20 版)」
- SCHUNK「Pneumatic power chuck ROTA TB Assembly and Operating Manual(04.00)」
- 北川鉄工所「Keep Your Chuck Performing at its Best(Kitagawa Europe、2026-06-09)」
- ENEOS「ENEOS Technical Review 第53巻第3号(2011年10月)高性能摺動面油ユニウェイXSについて」
- ENEOS「商品紹介 IND-2509-2405 ユニウェイ XS(2024年5月)」
- 出光興産「潤滑油製品資料 ダフニー マルチウェイC」
- シェル「Technical Data Sheet Shell Tonna S3 M 68(v2.4、2022-12-30、ブラジルのライセンス会社 Raízen 発行・ポルトガル語)」
- ExxonMobil(モービル)「Mobil Vactra Slideway Series 製品データシート(2025年3月)」
- 出光興産「潤滑油製品資料 ダフニー マルチウェイMT(2021-07-15)」
- 出光興産「潤滑油製品資料 ダフニー スーパーマルチオイル(2024-01-25)」
- ENEOS「商品紹介 IND-2510-2405 ハイスピードフルード」
- ENEOS「商品紹介 IND-2504-2405 ユニウェイ D」
- ENEOS「商品紹介 IND-2502-2405 ユニウェイ SF」
- コスモ石油ルブリカンツ「工作機械用潤滑油(製品一覧)」
- ISO「ISO 3448:1992 Industrial liquid lubricants — ISO viscosity classification」
- 日本規格協会(JSA)「JIS K 2001:1993 工業用潤滑油―ISO粘度分類 書誌」
- ISO「ISO 6743-13:2002 Lubricants, industrial oils and related products (class L) — Classification — Part 13: Family G (Slideways)」
- ISO「ISO 19378:2003 Lubricants, industrial oils and related products (class L) — Machine-tool lubricants — Categories and specifications」
- ISO「ISO 5169:1977 Machine tools — Presentation of lubrication instructions」
- ISO「ISO 5170:1977 Machine tools — Lubrication systems」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6016-1:1998 工作機械―潤滑指示図の表示方法 書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6016-2:1998 工作機械―潤滑システム 書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6016:1990 工作機械―潤滑通則(1998年廃止)書誌」