ケズリバ(kezuriba.net)/maintenance/lathe/accuracy/ より印刷
旋盤の精度の点検
水平出し・主軸の振れ・ボールバーなど。規格と測り方。周期・油種・数値は機械メーカー・機種ごとの指定が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例で、手元の機械の取扱説明書・給油表を必ず確かめること
⌖点検のしかた
- 据付けと水平出し共通
道具精密水準器、くさび・レベリングボルト
やり方Colchester:鋼のくさびを台の縁の下に入れ、床とすき間なく当たるようにしてから、ボルトで固定し必要ならグラウトを入れる。Haas の ST 系:4隅のねじで持ち上げて張りを均等にし、一部のねじを浮かせて3点で支え、Z 方向とタレット面方向の水準器の気泡をそれぞれ別のねじで中央に合わせ、タレットを Z の両端に動かしながらねじれが消えるまで調整する。浮かせたねじは手で接地させてから 10° だけ締める
許容値Hurco:分解能 0.020 mm/m の水準器で、9か所それぞれ 0.020 mm/m を超えないこと(超えたらサービスへ)。旋盤ではタレットにボルトで付けた水準器の台に置く
Haas の手順は気泡を中央に、ねじれが消えるまでとしていて数値の許容値は書いていない
- 水準器の感度と、水準器そのものの確かめ方(反転法)共通
道具精密水準器(JIS B 7510 A 級)
やり方定盤に置いて気泡を読み、同じ場所で 180° 回して読む。同じ位置なら調整不要。左右に同じ目盛だけ動けば水準器のゼロ点、動かず外れていれば台の傾き。ばらばらなら誤差の大きい側から、最大誤差の半分を水準器の調整ねじで直してから台を直す。読みは気泡の両端の平均をとる。使う場所の温度になじませる。手で長く持つと 0.02 mm/m の水準器は体温でゼロ点がずれる
許容値感度:1目盛=0.02 mm/m(約4秒)、0.05 mm/m(約10秒)、0.1 mm/m(約20秒)。角度1秒は 1 m につき約 4.85 µm
- 主軸中心線と往復台(Z 軸)の運動の平行度共通
道具テストバー(アライメントバー)、0.002 mm 読みのインジケータ、マグネットベース
やり方Hardinge:テストバーを主軸に付け、インジケータを刃物台の上に固定する。バーの先端で振れの中央に主軸を合わせてゼロにし、往復台を主軸側へ 152.4 mm(6 インチ)動かして読む。上下(垂直)と前後(水平)の2方向で行う。Haas:Z 軸を送りながらバーの上面と側面で読みの変化を見る
許容値Hardinge HLV-H:垂直 0〜+0.012 mm(先端が低い側)、水平 0〜−0.002 mm(先端が手前側)。Haas ST/DS:上面・側面とも 254 mm あたり 0.010 mm
どちらもメーカー・機種ごとの社内基準。JIS B 6202・JIS B 6331-1 の許容値は本文が有料で確かめられなかった
- 心押台の芯合わせ共通
道具テストバー(両センタ間に支持)、0.002 mm 読みのインジケータ
やり方Hardinge:主軸にセンタを付け、心押軸を 88.9 mm 出し、テストバーを両センタで軽く支える(手で回せる程度)。心押台は締付けレバーを 17 N·m で固定し、心押軸も固定する。主軸側の端で振れの中央にゼロを合わせ、往復台を心押台側へ 152.4 mm 動かして読む。横(水平)と縦(垂直)の2方向で行う
許容値Hardinge HLV-H:水平 0〜+0.0025 mm(心押台側が手前)、垂直 +0.013〜+0.025 mm(心押台側が高い)。Haas:心押軸と Z 軸の平行度は側面・上面とも 102 mm あたり 0.025 mm、心押台と主軸の同心度は各端で 0.025 mm
Hardinge は、水平がずれるときはまず切りくずやかえりがないか見るとしている。心押台側をわずかに高くする向きの許容値になっている
- インジケータを斜めに当てたときの補正共通
道具てこ式(テスト)インジケータ
やり方測定子は測る方向に直角に当てるのが原則。できないときは 真の値 ≒ 読み × 補正係数
許容値補正係数:10°=0.98、20°=0.94、30°=0.86、40°=0.76、50°=0.64、60°=0.50
[33](資料1件・参考)
- ベッドの真直度の測り方と許容値共通
道具—
やり方公開の一次資料で手順・許容値を見つけられなかった
許容値未確認
(公開資料で確認できず)
- JIS B 6202・JIS B 6331-1 の各試験の許容値(主軸の振れ、主軸と往復台の平行度、心押台の芯高さの差など)共通
道具—
やり方規格本文は有料で、公開の解説にも見つからなかった
許容値未確認
(公開資料で確認できず)
- 試し削りで水平を追い込む汎用
道具よく切れるバイト、マイクロメータ、ダイヤルゲージ
やり方チャックでつかんだ2つの円板(12 インチ離す)か棒を、ごく軽い切込みで削り、両方の径をマイクロメータで測る。差があれば、径の差の半分が消えるまでレベリングねじを調整し、もう一度削って確かめる
許容値2か所の径が同じになること
工具室の仕事などでより高い精度がいるときの方法として紹介されている
[27](資料1件・参考)
- 両センタ間の中心線とベッドの平行度(ねじ切り精度との関係)汎用
道具テストバー、インジケータ、オートコリメータ
やり方往復台を送りながら両センタで支えたテストバーを読み、主に心押センタ側を調整する。往復台の傾きはオートコリメータで両方向に送って読む
許容値研究での到達値(許容値ではない):水平面内 約1 µm、鉛直面内 約8 µm、往復台の傾き 約1〜3秒
水平面内の不平行がねじのピッチ誤差に大きく効く、と結論している
[32](資料1件・参考)
- ジブ(すべり板)の調整汎用
道具六角レンチ
やり方Hardinge:テーパジブの大端側の調整ねじを1回転ゆるめ、反対側のナットをわずかに締めてから固定し直す。往復台を動かして手ごたえを見る
許容値少し重さを感じるが引っかからないこと。締めすぎても性能は上がらない(Hardinge)
Colchester は、びびりが出たらまずすべり板(スライドストリップ)が正しく調整されているかを見るとしている
- 送りねじのバックラッシ汎用
道具ハンドルの目盛
やり方送りねじナットの調整ナットを締めてバックラッシを小さくし、ロックナットで固定する
許容値Hardinge HLV-H:刃物送り台の送りねじは目盛2つまで、心押台は目盛3つまで
[30](資料1件・参考)
- 水平を見直す周期NC
道具精密水準器(分解能 0.020 mm/m)
やり方据付け時にサービス員が出した値を基準に、据付け後6か月は毎月、その後は6か月ごとに確かめる
許容値9か所で 0.020 mm/m 以内(Hurco の3軸機の値)
[28](資料1件・参考)
- 主軸の振れ(端面・半径方向)NC
道具インジケータ(タレット面に固定)、主軸用アライメントバー
やり方インジケータを主軸端面に当てて1回転させ、振れの総量を読む。半径方向はバーの根元と先端で読む
許容値Haas ST/DS:端面の軸方向の振れ 最大 0.005 mm、バーの各端で 0.005 mm
「主軸端と 300 mm 先」という規格の測定位置と許容値は確認できなかった
[31](資料1件・参考)
- 円運動精度(ボールバー)NC
道具ボールバーと旋盤用アクセサリ(タレット用アームと主軸用バー)
やり方ZX 平面で円弧補間させ、時計回りと反時計回りの2周を測る(前後に加減速の弧を足す)。旋盤用キットで半径 100 mm の 360°、ストロークが足りなければ 220° の部分円弧や半径 50 mm の小円キット
許容値機械側の許容値は ISO 230-4・ISO 13041 の本文(有料)で未確認
Renishaw の旋盤用キットは、主軸中心から X 方向に 220 mm 以上のすき間、主軸径 25 mm、20 mm か 25 mm のシャンクを付けられる刃物台、ZX 平面の円弧補間機能が要る
- 位置決め精度・繰返し性NC
道具(規格本文は未確認)
やり方各軸を直接測り、各位置で繰り返し測る(ISO 230-2 の概要)。旋盤向けは ISO 13041-4/JIS B 6331-4
許容値未確認(規格本文が有料)
- 熱変位NC
道具—
やり方熱変位は、機械の周りの温度変化・機械から出る熱・加工で出る熱で起きる(オークマ)。試験方法は ISO 230-3/JIS B 6190-3 が通則、旋盤向けは ISO 13041-8/JIS B 6331-8
許容値未確認
≡関係する規格
- 汎用ISO 1708:1989 普通旋盤の受入れ条件―精度試験/JIS B 6202:1998 普通旋盤―精度検査(ISO 1708 を修正して採用=MOD)ISO 1708 は2022年に見直し・確認され現行。精度試験だけを扱い、振動・異音・スティックスリップなどの運転試験は精度試験の前に行うものとして対象外[1][2]
- NCISO 13041-1:2020/JIS B 6331-1:2022 数値制御旋盤及びターニングセンタ―試験条件―第1部:水平主軸をもつ機械の幾何精度(一致=IDT)JIS の目次は、機械の水平出し・試験の順序・測定器・許容値のあと、工作主軸、運動の真直度、直進軸と主軸の関係、心押台、工具タレットの順に試験が並ぶ[3][4][5]
- NCJIS B 6331-2:2022(垂直主軸の機械の幾何精度、ISO 13041-2:2020 IDT)、JIS B 6331-3:2013(逆さ工作主軸の機械、ISO 13041-3:2009 MOD)[6][7](資料1件・参考)
- NCISO 13041-4:2004/JIS B 6331-4:2006 直進及び回転運動軸の位置決め精度(IDT)[8][9]
- NCJIS B 6331-5:2019 速度及び補間運動の精度(ISO 13041-5:2015)、-6:2013 工作精度検査(ISO 13041-6:2009)、-7:2006 座標平面内の輪郭性能の評価(ISO 13041-7:2004)。いずれも IDT[10][11][12](資料1件・参考)
- NCISO 13041-8:2004/JIS B 6331-8:2006 熱変形試験(IDT)[13][14]
- 共通ISO 230-1:2012/JIS B 6190-1:2016 工作機械試験方法通則―第1部:幾何精度試験(IDT)JIS B 6190-1 の制定で旧 JIS B 6191:1999 は廃止。目次に「試験前の機械の据付け」「試験前の機械の条件」「回転部品の振れ」がある[15][16][17]
- NCISO 230-2:2014/JIS B 6190-2:2016 数値制御による位置決め精度試験(IDT、追補 Amd 1:2016 を含む)各軸を直接測り、各位置で繰り返し測る方法。受入れ・定期点検・補正などに使える[18][19]
- NCISO 230-3:2020/JIS B 6190-3:2023 熱変形試験(IDT)[20][21]
- NCISO 230-4:2022/JIS B 6190-4:2025 数値制御による円運動精度試験(IDT)[22][23]
- 共通JIS B 6190-7:2019 回転軸の幾何精度試験(ISO 230-7:2015 IDT)。主軸の振れ(回転軸の誤差運動)に関係[24](資料1件・参考)
- 共通JIS B 7510:1993 精密水準器(大菱計器の取説は A 級品として JIS マーク表示)[25][26]
規格の本文は有料のため、許容値は機械メーカーが公開している社内基準などで書いています。規格の対応は 規格の対応表 も見てください。
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- ISO「ISO 1708:1989 Acceptance conditions for general purpose parallel lathes — Testing of the accuracy」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6202:1998 普通旋盤―精度検査(対応 ISO 1708:1989 MOD)書誌」
- ISO「ISO 13041-1:2020 Test conditions for numerically controlled turning machines and turning centres — Part 1: Geometric tests for machines with horizontal workholding spindle(s)」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6331-1:2022 数値制御旋盤及びターニングセンタ―試験条件―第1部:水平主軸をもつ機械の幾何精度(対応 ISO 13041-1:2020 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6331-1:2022 プレビュー(表紙・目次・序文・適用範囲)」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6331-2:2022 同―第2部:垂直主軸をもつ機械の幾何精度(対応 ISO 13041-2:2020 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6331-3:2013 同―第3部:逆さ工作主軸をもつ機械の静的精度(対応 ISO 13041-3:2009 MOD)書誌」
- ISO「ISO 13041-4:2004 同 — Part 4: Accuracy and repeatability of positioning of linear and rotary axes」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6331-4:2006 同―第4部:直進及び回転運動軸の位置決め精度(対応 ISO 13041-4:2004 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6331-5:2019 同―第5部:速度及び補間運動の精度(対応 ISO 13041-5:2015 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6331-6:2013 同―第6部:工作精度検査(対応 ISO 13041-6:2009 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6331-7:2006 同―第7部:座標平面内における輪郭性能の評価(対応 ISO 13041-7:2004 IDT)書誌」
- ISO「ISO 13041-8:2004 同 — Part 8: Evaluation of thermal distortions」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6331-8:2006 同―第8部:熱変形試験(対応 ISO 13041-8:2004 IDT)書誌」
- ISO「ISO 230-1:2012 Test code for machine tools — Part 1: Geometric accuracy of machines operating under no-load or quasi-static conditions」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-1:2016 工作機械試験方法通則―第1部:幾何精度試験(対応 ISO 230-1:2012 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-1:2016 プレビュー(表紙・目次・序文・適用範囲)」
- ISO「ISO 230-2:2014 Test code for machine tools — Part 2: Determination of accuracy and repeatability of positioning of numerically controlled axes」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-2:2016 工作機械試験方法通則―第2部:数値制御による位置決め精度試験(対応 ISO 230-2:2014 IDT)書誌」
- ISO「ISO 230-3:2020 Test code for machine tools — Part 3: Determination of thermal effects」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-3:2023 工作機械試験方法通則―第3部:熱変形試験(対応 ISO 230-3:2020 IDT)書誌」
- ISO「ISO 230-4:2022 Test code for machine tools — Part 4: Circular tests for numerically controlled machine tools」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-4:2025 工作機械試験方法通則―第4部(数値制御による円運動精度試験。対応 ISO 230-4:2022 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 6190-7:2019 工作機械試験方法通則―第7部:回転軸の幾何精度試験(対応 ISO 230-7:2015 IDT)書誌」
- 日本規格協会(JSA)「JIS B 7510:1993 精密水準器 書誌」
- 大菱計器製作所「精密平形水準器(JIS B 7510 A級)取扱説明書 AC301」
- Clausing-Colchester「13 inch Geared Head Lathe Instruction Manual(Internet Archive が公開している写し)」
- Hurco「Maintenance and Safety Manual for i-Series Machines v573EN(2017年12月。TM 系 NC 旋盤を含む)」
- Haas Automation「ST/DS Lathe Installation - NGC(水平出しの章)」
- Hardinge「HLV-H / TFB-H Maintenance Manual M-10C(2007年改訂。カリフォルニア大学バークレー校 機械工学科が公開している写し)」
- Haas Automation「Field Service Lathe Level and Alignment Checklist - ST - DS(サービス技術者向けの手順)」
- 信州大学「市川誠「ねじ切り旋盤におけるベッド滑り面精度が被削ねじのピッチ精度におよぼす影響について」工学部紀要 No.14」
- シンワ測定「ダイヤルテストインジケーター 品番73751 取扱説明書」
- Renishaw「QC20 ballbar(パンフレット)」
- オークマ「サーモフレンドリーコンセプト(熱変位の考え方と制御)」