軸受・ボールねじの寿命

基本動定格荷重と荷重・回転数から、軸受の L10 寿命時間とボールねじの寿命時間・走行距離を計算。荷重係数と必要寿命の目安。

荷重が半分なら
玉軸受の寿命は
8 倍だよ。

マスコットのチップス

÷寿命の計算

転がり軸受:L10 = (C / P)^p、L10h = 10⁶ / (60n) × (C / P)^p

ボールねじ:L = (Ca / (fw × Fa))³ × 10⁶

荷重が変わるときは、平均荷重 Fm(下の式)を Fa に入れてください。予圧をかけたボールねじは予圧荷重も考える必要があります。

基本定格寿命 L10 とは

同じ軸受の一群を同じ条件で回したとき、そのうち 90% が転がり疲れによるはくり(フレーキング)を起こさずに回れる総回転数。疲れ寿命には大きなばらつきがあるので、平均ではなくこの値を使う。[1][2][3]

基本動定格荷重 C とは

基本定格寿命がちょうど 100 万回転になる、向きと大きさが一定の荷重。ラジアル軸受は Cr、スラスト軸受は Ca と書く。値は各社の寸法表に載っている。[1][2][3]

軸受の寿命(総回転数)

L10 = (C / P)^p
L10
基本定格寿命(×10⁶ 回転)
C
基本動定格荷重(N)
P
動等価荷重(N)
p
玉軸受 3、ころ軸受 10/3

[1][3][2]

軸受の寿命(時間)

L10h = 10⁶ / (60 × n) × (C / P)^p
L10h
基本定格寿命(h)
n
回転速度(min⁻¹)

[3][2]

荷重が半分になると

玉軸受は寿命が 8 倍(2³)、ころ軸受は約 10 倍(2^(10/3))になる。[1](資料1件・参考)

寿命係数 fh と速度係数 fn

fn = (0.03 × n)^(−1/p) / fh = fn × C / P / L10h = 500 × fh^p

500 時間を基準にした書き方で、式 L10h = 10⁶/(60n)(C/P)^p と同じ内容。ジェイテクトはノモグラムで簡易に求める方法も載せる。[3](資料1件・参考)

軸受の荷重係数 fw

F = fw × Fc
条件fw
振動・衝撃がほとんどない(電動機、工作機械、計器類)1.0〜1.2
普通の運転・軽い衝撃(鉄道車両、自動車、送風機、コンプレッサなど)1.2〜2.0
強い振動・衝撃(圧延機、粉砕機、建設機械など)2.0〜3.0

計算した荷重 Fc に掛けて、実際にかかる荷重 F とする。[3](資料1件・参考)

機械ごとの軸受の必要寿命の目安

用途必要寿命
家電・電動工具・農業機械など(短時間・断続)4,000〜8,000 h
工場電動機、一般歯車装置12,000〜20,000 h
工作機械、振動スクリーン、クラッシャ20,000〜30,000 h
コンプレッサ、ポンプ、重要な歯車装置40,000〜60,000 h

ジェイテクトのカタログの『経験的に採用されている必要寿命時間(参考)』からの抜粋。寿命を必要以上に長くとるのは経済的でないとしている。[3](資料1件・参考)

ボールねじの寿命(総回転数)

L = (Ca / (fw × Fa))³ × 10⁶
L
定格疲れ寿命(回転)
Ca
基本動定格荷重(N)
Fa
軸方向荷重(N)
fw
荷重係数

THK は fw を入れない L10 = (Ca/Fa)³ × 10⁶ と、修正係数 α = 1/fw を入れた L10m = (α × Ca/Fa)³ × 10⁶ を分けて書く(中身は同じ)。予圧をかけたボールねじは予圧荷重も考える必要がある。[4][5]

ボールねじの荷重係数 fw(資料で区分が違う)

資料条件fw補足
日本精工衝撃のない円滑な運転1.0〜1.2[4][6](資料1件・参考)
日本精工普通の運転1.2〜1.5[4][6](資料1件・参考)
日本精工衝撃・振動を伴う運転1.5〜3.0[4][6](資料1件・参考)
THK振動・衝撃がごく弱い、速度 V ≦ 0.25 m/s1〜1.2[5](資料1件・参考)
THK弱い、0.25 < V ≦ 1 m/s1.2〜1.5[5](資料1件・参考)
THK中程度、1 < V ≦ 2 m/s1.5〜2[5](資料1件・参考)
THK強い、V > 2 m/s2〜3.5[5](資料1件・参考)

[4][6][5]

ボールねじの寿命時間

Lt = L / (60 × n)
Lt
寿命時間(h)
n
回転数(min⁻¹)

往復運動なら THK の式 Lh = L10 × Ph / (2 × 60 × n × ℓs)(Ph:リード mm、n:毎分の往復回数、ℓs:ストローク mm)でも出せる。[4][5]

ボールねじの走行距離寿命

Ls = L × l / 10⁶
Ls
走行距離寿命(km)
l
リード(mm)

[4][5]

荷重が変わるときの平均荷重

Fm = ∛( (Fa1³·ℓ1 + Fa2³·ℓ2 + … + Fan³·ℓn) / ℓ )
Fm
平均軸方向荷重(N)
Fan
各区間の荷重(N)
ℓn
その荷重で動いた距離
ℓ
総移動距離

距離の代わりに回転数×時間で求めてもよい(THK)。日本精工も荷重と回転数が段階的に変わる場合の平均荷重・平均回転数の求め方を載せている。[5][4]

ボールねじの疲れ寿命の目標値(日本精工の参考値)

用途必要寿命
工作機械20,000 h
産業機械10,000 h
自動制御装置15,000 h
計測装置15,000 h

[4](資料1件・参考)

静的な安全の確認(止まっているとき・低速のとき)

止まっているときや 10 rpm 以下の低速では、寿命ではなく基本静定格荷重 C0a で考える(日本精工)。静的安全係数 fs = C0a / Famax の下限は、THK が振動・衝撃なしで 2、ありで 5、日本精工が普通荷重 1〜2、衝撃荷重 2〜3 としていて、資料で違う。[6][5]

転走面の硬さが低いとき

焼入れしたボールねじの転走面は HRC58〜62。HRC58 未満では硬さ係数を掛けて基本動定格荷重・静定格荷重を下げて計算する(日本精工)。[6](資料1件・参考)

📚出典

印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。製品の数値は各メーカーの資料が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。

  1. 日本精工「ベアリングのABC 4. 基本動定格荷重と疲れ寿命」
  2. 不二越「精密転がり軸受 カタログ(3205)」
  3. ジェイテクト「ボール&ローラーベアリング 技術解説(CAT.NO.B2001-8、Koyo)」
  4. 日本精工「精機製品カタログ(NSKリニアガイド・ボールねじ・モノキャリア、CAT.No.3162)」
  5. THK「Ball Screw General Catalog A15-46〜A15-50(Selecting a Model Number / Considering the Service Life)」
  6. 日本精工「精機製品・技術レポート:寿命計算における係数」