熱による伸び

長さ・温度差・線膨張係数から伸びを計算。ボールねじの伸びの目安、工作機械の熱変位の原因と対策。

鋼は 1 m で 1℃
上がると
約 12 µm 伸びるよ。

マスコットのチップス

÷熱による伸び ΔL = α × L × ΔT

ベッド・コラムに使う鋳鉄やアルミニウム合金の線膨張係数は、公開されている一次資料で確認できなかったため選択肢に入れていません。材料の資料の値を α に入れてください。

熱による伸びの式

ΔL = α × L × ΔT
ΔL
伸び(mm)
α
線膨張係数(1/℃)
L
長さ(mm)
ΔT
温度変化(℃)

日本精工は ΔLθ = ρ・θ・L、THK は Δℓ = ρ・Δt・ℓ と書く(記号が違うだけで同じ式)。[1][2]

ボールねじ軸の線膨張係数と伸びの目安

[1][2]

計算例(日本精工の例題)

ねじ軸長 1,300 mm、温度上昇 3℃ のとき ΔL = 12.0×10⁻⁶ × 3 × 1,300 ≒ 0.047 mm。例題ではこの分の予張力(引張り)をかけ、基準移動量の目標値を −0.047/1,300 mm にしている。[1](資料1件・参考)

ボールねじの温度上昇への対策

予張力・目標値の目安は資料で違う。日本精工は温度上昇 2〜3℃ 相当の予張力が普通とし、THK は 2〜5℃ の温度上昇を見込んで基準移動量を −0.02〜−0.06 mm/m にするのが一般的とする。日本精工の表では NC 旋盤の目標値は X 軸 −0.02〜−0.05、Z 軸 −0.02〜−0.03(1 m あたり)。[1][2]

工作機械の熱変位の原因

加工精度は『機械の周りの温度変化』『機械から出る熱』『加工で出る熱』で大きく変わる。主軸の熱変位は回転中だけでなく止めたときにも大きく変化し、回転速度を頻繁に変える加工や、切削液の温度でも変わる。機械構造の熱変位は、マシニングセンタではテーブル上のワークの位置、旋盤ではワークの大きさによって加工寸法への出方が変わる。[3](資料1件・参考)

工作機械メーカーの熱変位対策の例

オークマは、熱で素直に(ねじれや傾きなく)伸び縮みする構造(左右対称の熱対称構造、箱を積み上げた構造、温度の伝わり方をそろえる配置)にしたうえで、主軸の温度や回転状態、機械各部の温度センサと軸の位置から熱変位を推定して制御で補正する方式を採る。メーカー固有の技術の紹介であり、一般論ではない。[3](資料1件・参考)

軸受の温度差によるしめしろの減少(参考)

Δdt = (0.10〜0.15) × Δt × α × d ≒ 0.0015 × Δt × d × 10⁻³
Δdt
しめしろの減少量(mm)
Δt
軸受内部とハウジング周囲の温度差(℃)
α
軸受鋼の線膨張係数 ≒ 12.5×10⁻⁶ /℃
d
軸受の呼び内径(mm)

[4](資料1件・参考)

線膨張係数(保全で使う代表値)

材料値補足
ボールねじ軸(鋼)12.0 × 10⁻⁶ /℃[1][2]
軸受鋼(SUJ2)12.5 × 10⁻⁶ /℃[4][5]
セラミックス球(窒化ケイ素 Si3N4)3.2 × 10⁻⁶ /℃[5](資料1件・参考)
ノギスの本尺(ステンレス)(10.2 ± 1) × 10⁻⁶ /K(ミツトヨは『最も一般的なワーク材の鋼と同じ』と説明)[6](資料1件・参考)

『鋼』の値は資料によって 10.2〜12.5 × 10⁻⁶ と幅がある。計算機では材料を選べるようにし、出典の値をそのまま出す。[1][2][4][5][6]

📚出典

印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。製品の数値は各メーカーの資料が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。

  1. 日本精工「精機製品カタログ(NSKリニアガイド・ボールねじ・モノキャリア、CAT.No.3162)」
  2. THK「Studying the Positioning Accuracy(Ball Screw Selection)」
  3. オークマ「サーモフレンドリーコンセプト(精度安定支援)」
  4. ジェイテクト「ボール&ローラーベアリング 技術解説(CAT.NO.B2001-8、Koyo)」
  5. 不二越「精密転がり軸受 カタログ(3205)」
  6. ミツトヨ「Quick Guide to Precision Measuring Instruments(Catalog No. E11003(7))」