びびり回転数の計算(安定ポケットの候補・今の領域)
びびっているときの振動の周波数(びびり周波数 fc)と刃数・今の回転数から、びびりにくい回転数(安定ポケット)の候補と、今の回転数が「回転数を変えて効く領域」かどうかを出します。
びびり回転数の計算
候補 n0(k = 0)—min⁻¹
候補 n1(k = 1)—min⁻¹
候補 n2(k = 2)—min⁻¹
候補 n3(k = 3)—min⁻¹
候補 n4(k = 4)—min⁻¹
今の刃の通過周波数—Hz
今の k(1 刃のあいだの波の数)—
今の領域—
n(k) = 60 × fc ÷ (N × (k + 1)) k = 0, 1, 2 … 刃の通過周波数 = N × n ÷ 60 今の k = fc ÷ 刃の通過周波数 領域:k > 10 低速域(A)/ 3〜10 中間域(B)/ 0.5〜3 高速域(C)/ 0.5 未満 さらに高速(D)
線より上(赤み)がびびる範囲、下(緑)が安定。縦軸は無条件安定限界を 1 とした比です。線図は固有振動数 985 Hz・減衰比 0.03・4 枚刃の 1 自由度の仮の値で計算した模式図で、実際の形は工具・ホルダ・突き出し・機械ごとに違います。びびり周波数 fc は固有振動数より少し高いので、候補(縦の点線)は山(安定ポケット)の少し右に出ます。
計算例
びびり周波数 fc(測った値) = 1,000 Hz、刃数 N(旋削・ボーリングは 1) = 4枚、今の主軸回転数 n = 6,000 min⁻¹ のとき:
- 候補 n0(k = 0):15,000 min⁻¹
- 候補 n1(k = 1):7,500 min⁻¹
- 候補 n2(k = 2):5,000 min⁻¹
- 候補 n3(k = 3):3,750 min⁻¹
- 候補 n4(k = 4):3,000 min⁻¹
- 今の刃の通過周波数:400.0 Hz
- 今の k(1 刃のあいだの波の数):2.50
- 今の領域:高速域(C)
使うときの注意
- 低速域(A、k が 10 より大きい):候補どうしの間隔が狭すぎて、回転数を選んでも効きません。回転数を下げる(刃の逃げ面が細かい波にこすれて振動を吸う「プロセスダンピング」が効く)、切込みを減らす、のどちらかです。旋削のびびりの多くはこの領域です。
- 中間域(B、k が 3〜10):限界はほぼ「無条件安定限界」(どの回転数でもびびらない切込み)なので、回転数より、切込みを減らす・突き出しを短くする・保持を固くする、が効きます。
- 高速域(C、k が 0.5〜3):安定ポケットが広いので、候補の回転数を試す価値があります。エンドミルの高速加工では、回転数を「上げて」ポケットに入れるとびびりが止まることがあります。
- さらに高速(D、k が 0.5 未満):刃の通過周波数が、びびり周波数の 2 倍より高い領域です。候補はすべて今の回転数より低くなります。
- fc は機械の共振(固有振動数)より少し高いので、候補は本当のポケットより少し高めに出ます。回転数を変えると fc も動きます。候補に変えたら、もう一度 fc を測って計算し直し、少しずつ合わせ込んでください。
- 候補は「その切込みで必ず安定」という意味ではありません。切込みが深すぎると、どの回転数でもびびります。また、ポケットに入れても刃の通過周波数(やその整数倍)が共振に重なると、強制振動が面に出ることがあります。
- 主軸の最高回転数や、工具・ホルダの許容回転数を超える候補は使えません。高速側では、工具のアンバランスによる振れが別の振動を起こすことがあります(動バランスを確かめる)。
- fc の測り方:スマートフォンのマイクと周波数分析(FFT)のアプリ、または機械のびびり検知の機能で、削っている音・振動の山を見ます。主軸の回転周波数(n ÷ 60)や刃の通過周波数とその整数倍に乗っている山は強制振動です。それらから外れた山が出ていれば、その周波数が fc です。
- 式は、主な振動のモードが 1 つで、びびり周波数がその固有振動数に近いときの考え方です(社本 2011「切削加工におけるびびり振動の発生機構と抑制」電気製鋼 82(2)、Altintas ほか 2020「Chatter Stability of Machining Operations」J. Manuf. Sci. Eng. 142(11)、Munoa ほか 2016「Chatter suppression techniques in metal cutting」CIRP Annals 65(2))。
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よくある質問
- 安定ポケットとは?
- 同じ切込みでも、びびる回転数とびびらない回転数があります。横軸に回転数、縦軸にびびらずに削れる切込みの上限をとった図(安定限界線図)では、限界が山と谷をくり返し、山の部分を安定ポケットと呼びます。ポケットは刃の通過周波数が固有振動数の整数分の 1 になる回転数の近くにあり、高速側ほど広くなります。
- 計算の例は?
- エンドミル:fc 1,000 Hz・4 枚刃・6,000 min⁻¹ なら、候補は 15,000/7,500/5,000 min⁻¹、今の k は 2.5 で高速域(回転数を変えて効く領域)です。長尺エンドミル:fc 180 Hz・6 枚刃・5,000 min⁻¹ なら、候補は 1,800/900/600 min⁻¹、k は 0.36 で、刃の通過周波数(500 Hz)がびびり周波数より高い「さらに高速」の領域です。旋削:fc 500 Hz・1 刃・1,000 min⁻¹ なら k は 30 の低速域で、候補(30,000/15,000/10,000 min⁻¹)は使えません。回転数を下げるか切込みを減らします。
- 回転数を下げるのと上げるのは、どちらが正しい?
- どちらも条件しだいです。k が大きい低速域(旋削に多い)では、回転数を下げると刃の逃げ面が細かい波にこすれて振動を吸う効果(プロセスダンピング)が強まり、びびりが止まりやすくなります。k が 3 以下の高速域(エンドミルの高速加工など)では、回転数を上げて安定ポケットに入れるほうが効くことがあります。