長さを測る
ノギスVernier caliper / Calliper
別名:キャリパ、バーニヤキャリパ、M形ノギス、デジタルノギス、ダイヤルノギス(ダイヤルキャリパ)

≡規格・測定範囲・精度
- 規格
- JIS B 7507:2022 製品の幾何特性仕様(GPS)―寸法測定機―ノギス(ISO 13385-1:2019 を基に改正)
- ISO 13385-1:2019 Design and metrological characteristics of callipers
- ASME B89.1.14 Calipers
- 測定範囲
- 一般 0〜150 / 0〜200 / 0〜300 mm が標準。長尺は 0〜1000 mm 以上(ミツトヨ M形は 0〜1000 mm まで、長尺で 2000 mm まで)
- byMaker
- ミツトヨ 530シリーズ(M形) 0〜100、0〜150、0〜200、0〜300、0〜600、0〜1000 mm
- テクロック SSC-650/750/850(デジタル) 0〜150、0〜200、0〜300 mm
- 最小表示量・目量
- バーニヤ 最小読取値 0.05 mm(一般的)または 0.02 mm
- ダイヤル 目量 0.01 mm または 0.02 mm
- デジタル 最小表示量 0.01 mm
- バーニヤの作り
- 0.05 mm:本尺 39 mm を 20 等分(ロングバーニヤ)。古い形は 19 mm を 20 等分
- 0.02 mm:本尺 49 mm を 50 等分
- 本尺目盛 0.5 mm の場合:12 mm を 25 等分(0.02 mm)、24.5 mm を 25 等分(0.02 mm)
- 原理 バーニヤ n 目盛の長さを本尺 (n−1) 目盛に合わせると、1目盛ごとに 1/n だけずれる。そのずれを一致線で読む
- 精度(器差・最大許容誤差)
- 考え方
- JIS B 7507(2016年改正以降)は『器差』を『指示誤差』に改め、最大許容誤差 MPE(=許容値)で上限を決める
- 外側測定面での誤差を『部分測定面接触誤差 E』、内側・深さ・段差など外側測定面以外での誤差を『スケールシフト誤差 S』として分けて規定する
- 2019年の ISO 13385-1 と 2022年の JIS で、試験点の数と位置が具体的になった。150 mm のノギスでは試験点は 5 点以上で、最大・最小付近とジョウの根元・先端を含める
- E と S はゲージブロック(またはそれ以上のゲージ)をはさんで、指示値からゲージの寸法を引いて求める
- byMaker
- ミツトヨ 530-101(M形 0〜150 mm、0.05 mm) E_MPE ±0.05 mm、S_MPE ±0.07 mm
- ミツトヨ 530-109(M形 0〜300 mm) E_MPE ±0.08 mm、S_MPE ±0.10 mm
- テクロック SSC-650(デジタル 0〜150 mm、0.01 mm) 指示誤差 ±0.02 mm(0〜100 mm)、±0.03 mm(100〜150 mm)
- 注意 JIS の数表は丸写ししていない。値はメーカー公表値
- 考え方
▦種類
M形(標準ノギス)
外側・内側・段差・深さの4通りに使える最も一般的な形。内側用ジョウ(くちばし)が上に付く。M形で小さな穴を測ると、内側用ジョウの厚みとすき間による構造上の誤差が出る[5][6][3]資料1件・参考
CM形・C形
内側測定面がジョウの先端にある形。スライダの上下に目盛があり、内側寸法と外側寸法を直読できる。内側測定面の寸法を足した値より小さい穴は測れない。先端で測るので測定力に注意[6][3]資料1件・参考
ダイヤル付き(ダイヤルノギス)
本尺に付いたラックの動きを目盛板の指針で読む。メートル系は目量 0.01 mm または 0.02 mm、指針1回転 1 mm または 2 mm[8][3][10]資料1件・参考
微動送り付き・自動ストップ付き
[6]資料1件・参考
◎各部の名称と役目
| # | 名称 | 英語 | 役目 |
|---|---|---|---|
| 1 | 本尺 | Beam / Main scale | 目盛(1 mm)を刻んだ主軸。外側用・内側用ジョウの固定側が付く。[11][12][3] |
| 2 | スライダ | Slider | 本尺に沿って動く部分。バーニヤ目盛とジョウの可動側を持つ。[11][12][3] |
| 3 | 外側用ジョウ(外側測定面) | Outside jaws / Outside measuring faces | 2枚で品物をはさんで外側寸法を測る。先端は細溝を測るため薄い。[11][12][3][5] |
| 4 | 内側用ジョウ(くちばし・内側測定面) | Inside jaws / Inside measuring faces | 穴や溝に差し込み、外向きに当てて内側寸法を測る。損耗しやすい。[11][12][3][5] |
| 5 | 本尺目盛 | Main scale | 1 mm ごとの目盛。バーニヤのゼロ線が指す位置で 1 mm 単位を読む。[11][12][3] |
| 6 | バーニヤ目盛(副尺) | Vernier scale | スライダ側の目盛。本尺目盛と一致した線で 1 mm 未満を読む。ミツトヨの標準品はバーニヤ面を 14° 傾けて読みやすくしている。[11][12][3] |
| 7 | 止めねじ | Locking screw | スライダを固定する。保管時はゆるめておく。[11][12][3] |
| 8 | 指かけ(親指ローラ) | Finger rest / Thumb-roller | スライダを親指で送るところ。デジタル形はローラのものがある。[11][12][3] |
| 9 | デプスバー | Depth bar | スライダと一緒に本尺の端から突き出て、深さを測る。先端に逃げ(面取り)がある。[11][12][3] |
| 10 | デプスの基準面(本尺端面) | Depth measuring faces / reference end face | 深さ測定で品物の上面に当てる本尺の端面。[11][12][3] |
| 11 | 段差測定面 | Step measuring faces | 本尺の左端とスライダの左端。段差を測るときに使う。[5][3] |
| 12 | 基準面(摺動面) | Reference surface | スライダが滑る本尺の面。少量のマイクロメータ油で拭く。[10][3] |
| 13 | ORIGIN/ZERO・ABS ボタン、表示部、出力コネクタ(デジタル形) | ORIGIN / ZERO-ABS button, display, output connector | 原点設定・相対ゼロ・データ出力。電池交換後は ORIGIN で原点を取り直す。[10][8] |
◷目盛りの読み方
- バーニヤのゼロ線が指す本尺目盛を 1 mm 単位で読む例:ゼロ線が 73 と 74 の間 → 73 mm[11][5][12]
- 本尺の目盛線とぴったり一致しているバーニヤの線を探し、その値を読む例:0.05 mm バーニヤで 0.5 の線が一致 → 0.50 mm[11][5][12]
- 両方を足したものが測定値例:73 + 0.50 = 73.50 mm(新潟精機 測定例2)。同じく 73.00 / 73.55 / 73.52 mm(0.02 mm バーニヤ)の例が資料にある[11][5][12]
- 19 mm を 20 等分したバーニヤの例例:ゼロ線が 73〜74 mm の間、一致線 65(0.65 mm)→ 73.00 + 0.65 = 73.65 mm[12]
- ミツトヨの読み取り例(最小読取値 0.05 mm)例:本尺 16 mm + バーニヤ 0.15 mm = 16.15 mm[3]
- ダイヤルノギス(目量 0.01 mm)例:本尺 16 mm + 目盛板 0.13 mm = 16.13 mm[3]
- 0.02 mm のバーニヤは、先に 0.05 mm 側でおおよその値をつかんでから読むと楽[11]
- 一致線は真正面から見て判断する(斜めから見ると視差でずれる)[5][10][3]
本尺 73 mm + バーニヤ 0.65 mm(13 本目の線が一致)= 73.65 mm
赤い線が本尺とぴったり重なるバーニヤの線です。黄色の三角がバーニヤの 0。スライダーや「練習」で値を変えて読む練習ができます。
本尺 73 mm + バーニヤ 0.52 mm(26 本目の線が一致)= 73.52 mm
✋使い方の手順
- 準備:測定面・本尺の摺動面・目盛面を拭いて切粉やごみを取る摺動面(基準面)は少量のマイクロメータ油を含ませて拭く(ミツトヨ)。新潟精機は摺動面にきれいな油を塗るよう書いている[11][5][10]
- 作動確認:スライダを全範囲動かし、引っかかり・ムラ・上下のがたがないか見る[5][10]
- すき間確認:外側用測定面を閉じて光にかざし、光が漏れないか(または均一な淡い光か)を見る。内側用測定面は少し光が見えるのが正常[11][5][10]
- ゼロ点確認:外側用測定面を閉じ、本尺とバーニヤのゼロ線が合うか確認する。デジタル形は電池交換後に ORIGIN で原点を取り直す[11][5][10][3]
- 外側測定:外側用ジョウで品物を静かにはさみ、適正で均一な力で密着させ、はさんだまま読む品物の中心線とジョウが直角になるようにし、品物はできるだけ本尺(ジョウの根元)に近い位置ではさむ[5][12][10]
- 内側測定:内側用ジョウをできるだけ深く差し込み、測定面を密着させる。穴は目盛が最大になったところ、溝幅は最小になったところを読むジョウの測定面を結ぶ線が穴の直径と一致し、穴の中心線と平行になるようにする[5][3][12]
- 段差測定:本尺側の段差測定面を品物に密着させ、スライダ側の段差測定面が段の面に当たるまで動かして読む段差測定面の全体を品物に密着させる。デプスバーでの段差測定は接触面積が小さく姿勢が不安定なので、ミツトヨは推奨していない[5]
- 深さ測定:本尺端の深さ測定面を品物の上面に密着させ、デプスバーが底に当たるまでスライダを動かして読むノギスの深さ測定面は狭く不安定なので、品物に直角に当てる。傾けない。デプスバー先端の逃げのある面を品物側に向けると、隅の丸み(R)があっても正しく測れる。深さは最小値を読む。ミツトヨはデプスベースアタッチメント(オプション)を紹介している[5][12][3]
- 記録:読み取った値をそのまま記録する。デジタル形はデータ出力を使える[8]
ケズリバ(kezuriba.net)/gauges/vernier-caliper/ より印刷
!よくある測定ミスと対策
✓手入れ・保管と点検・校正
手入れ・保管
- 使用後は水分・油・汚れを拭き取り、防錆油を薄く塗って保管する(防水形も拭く)[5][3][10]
- 保管時は外側用ジョウを 0.2〜2 mm ほど開け、止めねじはゆるめておく。完全に閉じたまま保管しない[10][3]
- 直射日光・高温・低温・多湿・ほこりやオイルミストの多い場所を避ける[5][3][10]
- 落としたりぶつけたりしない。ジョウは鋭いので取り扱いに注意する[11][3]
- デジタル形は 3 か月以上使わないとき電池を外す。スケールに電気ペンで刻印しない[3][10]
- 水溶性切削油がかかる場所で使ったら、清掃後に必ず防錆処理をする[10]
点検・校正
- 日常点検:外側用測定面のすき間(光)とゼロ点を毎回確認する[11][5][10]
- 定期検査:ゲージブロック(またはそれ以上のゲージ)をはさみ、指示値からゲージ寸法を引いて部分測定面接触誤差 E を求める。内側・深さ・段差はゲージを組んでスケールシフト誤差 S を求める[3]
- ISO 13385-1:2019 / JIS B 7507:2022 では、測定範囲の 90 % 以上の範囲を試験し、最大・最小付近でジョウの根元と先端も試験する。150 mm 品の試験点は 5 点以上[3]
- 基準器は、測る器具の最小目盛の 10 倍以上の精度で寸法が分かっているものが望ましい(例:0.001 インチ目盛のノギスには 0.0001 インチまで分かる基準)[8]
- 校正証明書には、器具の識別・使用した基準と温度・トレーサビリティ・実測値と許容誤差・不確かさ・合否を書く[8]
ノギスはアッベの原理に従わない構造(目盛軸と測定点が一直線上にない)。マイクロメータとの精度差の説明に使える。名称『ノギス』はバーニヤを考案したとされるノニウスに由来するとミツトヨは説明している。
⇄関連する器具
📚出典
印のない内容は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。手順や注意は資料をもとにケズリバの言葉でまとめ、図はケズリバが描いたものです。精度の値は JIS の数表ではなく、メーカーの公表値です。
- 日本規格協会「JIS B 7507:2022 製品の幾何特性仕様(GPS)―寸法測定機―ノギス(書誌)」
- ISO「ISO 13385-1:2019 Design and metrological characteristics of callipers」
- ミツトヨ「Quick Guide to Precision Measuring Instruments(Catalog No. E11003(7)、2024年8月時点)」
- ASME「ASME B89.1.14 Calipers」
- ミツトヨ「ノギスの正しい使い方、読み方と注意点」
- ミツトヨ「M形標準ノギス N 530シリーズ 仕様」
- ミツトヨ「測定とは? 測定と計測の違い」
- ミツトヨ「Mitutoyo Product Fundamentals(Bulletin No. 2180、Mitutoyo America)」
- テクロック「総合カタログ 6 ノギス」
- ミツトヨ「Check Points for Measuring Instruments(Catalog No. E12024)」
- 新潟精機「ノギス 取扱説明書(各部名称・目盛の読み方・測定例1〜4)」
- 新潟大学「新潟大学工学部 技術職員 実習テキスト 第1章 工作測定」
- ミツトヨ「マイクロメータの正しい使い方と注意点」