歯切り盤の給油・潤滑

給油する場所・油の種類と粘度(ISO VG)・交換の目安。周期・油種・数値は機械メーカー・工具メーカーの指定と、手元の機械の取扱説明書が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例。油性切削油の貯蔵・取扱いは消防法と市町村の火災予防条例に従い、管轄の消防署の指導を受けること

⛽給油する場所と油

場所機械油(例)間隔の目安
しゅう動面(コラム・サドルなどの案内面)ホブ盤機械メーカーの指定(しゅう動面油、またはグリース)カシフジのホブ盤は、しゅう動面に低粘度グリースの潤滑給油システムを使い、油の給油より給油の周期を延ばして潤滑油の消費を減らしている。同社はしゅう動面をきさげ仕上げとし、きさげの浅いくぼみが油だまりになってすべりの潤滑がよくなるとしている。工作機械の潤滑システムの規格に JIS B 6016-2(ISO 5170 を修正採用)がある。油性切削油を使う機械では、しゅう動面油が切削油に混ざることを前提に互換性のある油を選ぶ方法がある(DGUV)自動給油の機種が多い。量と周期は機種の取扱説明書による[1][2][3]
テーブル(ワーク軸)の軸受と駆動部ホブ盤機械メーカーの指定油(公開資料に油種の記載は見つからなかった)テーブルの構造は機種で大きく違う。Liebherr の大形ホブ盤はテーブル主軸に静圧のラジアル・スラスト軸受を使い、テーブル駆動は2本のウォームによる駆動かダイレクトドライブで、駆動モータは水冷。カシフジはテーブル軸に油圧式の2つ割りウォームのバックラッシュ除去装置を使う。三菱重工業(現ニデックマシンツール)はダイレクトドライブを採った機種を出している機種による[4][1][5]
油圧ユニット(ワーククランプ、テーブルのバックラッシュ除去装置など)共通機械メーカーの指定の作動油Liebherr のホブ盤はテーブルの大きな穴に油圧のクランプシリンダを入れ、ワーク取付具を動かしている油面・油温は毎日。水抜きは月1回程度。性状の検査は、はじめの半年は3か月ごと、その後は6か月ごと(油研工業の一般油圧ユニットの目安)[6][4][1]

🛢油の種類と選び方

不水溶性切削油(油性切削油)加工に必要な粘度の中で、引火点がいちばん高く蒸発損失が小さいものを選ぶ(DGUV)
ホブ切り・歯車形削りなどで、潤滑と切りくずの排出を担う。燃える油なので火災の対策が要る 消防法では引火点で区分が変わる:引火点 70℃以上 200℃未満は第3石油類(非水溶性の指定数量 2,000 L)、200℃以上 250℃未満は第4石油類(6,000 L)、250℃以上の液体は危険物ではなく指定可燃物の可燃性液体類(2 m³ 以上)。ENEOS の高引火点タイプの切削油(リライアカット AE)は第4石油類に区分されている。粘度が高いほど、ろ過しにくく、流せる量も減る(DGUV)[7][8][9][3]
水溶性切削油—(希釈して使う)
火災の危険を下げられる。高速の歯切りにも使われる 日本工作機械工業会は、火災の可能性を下げ延焼を防ぐ観点から、できるだけ水溶性切削油を使うよう推奨している。ただしマグネシウムなど発火しやすい金属は、水溶性だと水素が出て爆発的な火災になる危険があるので、専用か油性の油を使う。不二越は水溶性切削油で 300 m/min を超える高速のホブ切りに向くコーティングのホブを出している。カシフジは、水溶性切削油で高速加工するには機械側に水溶性対策の仕様が別に要るとしている[10][11][1]
ドライカット(切削油を使わない加工)—
切削油の費用と火災・ミストの元をなくす。ホブ盤・ギヤシェーパで実用化されている 三菱重工業(現ニデックマシンツール)は 1997 年に切削油を一切使わない歯車加工システムを完成させ、ホブ盤とギヤシェーパにドライカットを広げた。カシフジは切削速度 300 m/min の超高速ドライ加工ができるホブ盤を出している。ドライでは切りくずの噛み込みによる歯面の傷が出やすく、エアノズルを加工点に近づけて切りくずを寄せ付けない対策がある(ニデックマシンツール)[12][13][1][14]
多機能油(切削油と互換性のある潤滑油・作動油)機械メーカー・油剤メーカーと相談して決める
作動油・しゅう動面油・ギヤ油・主軸油を切削油と互換性のある組合せにそろえ、漏れて混ざっても切削油の性能が落ちにくくする DGUV は、切削油の工程の信頼性が上がり、切削油の寿命が延び、保守の手間も減るとしている[3](資料1件・参考)
作動油機械メーカーの指定による
ワーククランプ、テーブルのバックラッシュ除去装置、静圧軸受などを動かす 石油系作動油の更油の目安は、40℃ 動粘度の変化 ±10%、全酸価の変化 0.5〜1.0 mgKOH/g、水分 0.2 vol% 以上(油研工業の一般油圧ユニット)[6](資料1件・参考)

📚出典

印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。

  1. カシフジ「6軸CNCホブ盤 KE201/251(製品ページ。テーブルのバックラッシュ除去装置・摺動面きさげ・潤滑・歯厚安定装置)」
  2. 日本規格協会(JSA)「JIS B 6016-2:1998 工作機械―潤滑システム(書誌)」
  3. ドイツ法定災害保険(DGUV)「BGI/GUV-I 719 E(現 DGUV Information 209-027)Machine Tool Fire and Explosion Prevention and Protection(2009年、2012年更新)」
  4. Liebherr-Verzahntechnik「Gear Hobbing Machines LC 600 - LC 2000(カタログ PDF)」
  5. 三菱重工業「プレスリリース(2020)ロボット用歯車工作機械「FR シリーズ」を開発(ダイレクトドライブ・高精度ウォームホイル)」
  6. 油研工業「YA パック(低騒音標準小形油圧ユニット)取扱説明書 JM-1028」
  7. 総務省消防庁「消防法(昭和23年法律第186号)別表第一 備考・第9条の4・第10条 e-Gov 法令検索」
  8. 総務省消防庁「危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)別表第三・別表第四 e-Gov 法令検索」
  9. ENEOS「非塩素系高引火点タイプ不水溶性切削油 リライアカット AE シリーズ(製品資料 PDF)」
  10. 日本工作機械工業会「技術資料 60-2014「工作機械の火災安全指針(ユーザ向け)」(同会サイトの掲載は終了。インターネットアーカイブの保存版)」
  11. 不二越(NACHI)「Hyper AP1/Hyper DuAl SP/GP/DuAl EX/VX ホブ カタログ No.2302-4 (2023)」
  12. 三菱重工業「三菱重工技報 Vol.43 No.3 (2006) 自動車用ミッションギヤの生産を支える歯車加工機と精密切削工具」
  13. 三菱重工業「プレスリリース(2012)歯車工作機械の累計出荷1万台を達成(1997年に切削油を使わないドライカット歯車加工システムを完成)」
  14. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ドライホブ切りの歯面傷対策」」