ケズリバ(kezuriba.net)/maintenance/gear-cutting/troubles/ より印刷
歯切り盤の不調の早見表
症状から、考えられる原因・点検する所・処置を引く。周期・油種・数値は機械メーカー・工具メーカーの指定と、手元の機械の取扱説明書が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例。油性切削油の貯蔵・取扱いは消防法と市町村の火災予防条例に従い、管轄の消防署の指導を受けること
歯形がうねる(波打つ歯形)ホブ盤
歯形が倒れる(圧力角が狂う・歯先が細い/太い)ホブ盤
ピッチ誤差・累積ピッチ誤差が大きいホブ盤
歯すじ(リード)誤差が大きいホブ盤
歯厚(オーバーピン寸法)・外径・歯底径が狂う、ばらつくホブ盤
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| ホブの取付角の間違い、歯面傷の対策で取付角を変えた | 取付角の設定 | 正規の取付角に戻すか、歯厚の減少分を織り込む(取付角 1° で歯厚が約 32 µm 減る例がある)[1][9][10](資料1件・参考) |
| 歯切りの追い込み寸法の不良、ホブの歯厚・歯丈の不良、向心度の不良 | 追い込み量の設定、ホブの検査成績 | 追い込みを直す。ホブを研ぎ直す[1](資料1件・参考) |
| ホブのシフトにつれて寸法が変わる(刃付けの溝リードの誤差による先細り、マルチシフトでの振れの影響) | シフト位置ごとの歯厚 | 溝リードを正しく研ぎ直す。シフト方式を見直す(1ピッチシフトは振れの影響を受けにくい)[2][3][11] |
| 主軸・テーブルの発熱による熱変位(冷えた状態からの始動) | 始業後の時間と歯厚の記録 | 熱変位の補正・冷却の機能を確かめる。初品の測定を決める[12][13] |
面取り量が大きすぎる・小さすぎる、左右や歯ごとに違うホブ盤
ドライホブ切りで歯面に傷・むしれが出るホブ盤
全部の歯の同じ位置に傷があるか(生成中の切りくずで傷つく)、傷のある歯とない歯が混じるか(切り離された切りくずが噛み込む。溶着が見えることもある)を見る(ニデックマシンツール)[10]
ホブが欠ける(欠損)ホブ盤
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| 刃付け・歯形研削のときの研削割れ(割れが起点の欠損) | 欠損面に割れの起点があるか | 研削焼けを出さない刃付けにする(高い溝に軽く当ててから送る、ドレス・スパークアウト)[1][4] |
| 早送りのままの突っ込み | プログラム・段取り | プログラムと工具位置の補正値を実加工の前に確かめる[1][14] |
| ワーククランプのゆるみで加工中にワークが回される | クランプ力・取付具 | クランプを点検し、摩耗部品を替える[1](資料1件・参考) |
| 切削油の吐出量不足・当たり方の不良で刃溝に切りくずが詰まる | 吐出量・ノズルの向き | 供給量を確保し、ノズルを加工点に向ける[1][14] |
| 治具など硬い物を削った、ホブ母材の不良(硬すぎ・もろい)、切削熱でクレータ付近が割れた | 干渉の有無、欠損の形 | 干渉をなくす。工具メーカーに調査を依頼する[1](資料1件・参考) |
ホブが早く・異常に摩耗するホブ盤
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| ホブシフトのばらつき(クレータ摩耗がばらつく) | シフトの設定・間欠個数 | シフトの範囲・量・方向を設定し直す[1][11](資料1件・参考) |
| 刃付けの時期が遅い(クレータ摩耗から切れ刃が崩れる) | 二番摩耗・クレータ摩耗の量 | 二番摩耗 0.1〜0.2 mm(コーティングホブ)を目安に刃付けする[5](資料1件・参考) |
| コーティングのはく離(処理の不良) | 摩耗部のはく離 | 工具メーカーに調査を依頼する[1](資料1件・参考) |
| 刃溝の容積が小さい、切削油の不足で刃溝に切りくずが詰まった状態で摩耗している | 刃溝の切りくず | 切削油の供給を確保する。工具の設計を見直す[1][14] |
| (均一に摩耗)ホブ母材の硬さ・材料・熱処理の不良、(刃先の丸みのつなぎ部の摩耗)丸みのつなぎが角ばっている | 摩耗の形 | 工具メーカーに相談する[1](資料1件・参考) |
歯車形削り(ギヤシェーパ)で歯形・ピッチ・リードが悪い、1刃に段が出る歯車形削り盤
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| カッタの歯形不良、すくい角・刃付け角の不良 | カッタの検査・刃付けの記録 | すくい角(ふつう 5°)と刃付け角を守って研ぎ直す[7][15](資料1件・参考) |
| (1刃に段・歯溝の振れ)カッタの歯溝の振れ・累積ピッチの不良、カッタとワークの取付け精度の不良 | カッタ・ワークの取付けの振れ | 取付けを直す。カッタを再生・交換する[7](資料1件・参考) |
| ギヤシェーパの精度不良(ピッチ・歯形・リード) | メーカーの精度点検 | 調整・修理を依頼する[7][16](資料1件・参考) |
| (リード不良)ワーク・取付治具の剛性不足・精度不良、ヘリカルガイドのリードがカッタに合っていない | 治具、ヘリカルガイドのリードの計算 | 治具を直す。合ったヘリカルガイドに替える[7][17](資料1件・参考) |
ピニオンカッタが欠ける・異常に摩耗する、歯面がむしれる歯車形削り盤
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| 切削条件が不適切(切削速度・送りが高い)、早送りのままの突っ込み | 条件表、プログラム | 条件を見直す[7](資料1件・参考) |
| カッタ・ワークのクランプ力不足、ワークの硬さが高い | クランプ、ワークの硬さ | クランプを直す[7](資料1件・参考) |
| リリービング(戻り行程の逃げ)の干渉、肩(ショルダー)にカッタが当たるか間に切りくずが詰まる | 逃げ量・ストローク位置 | 逃げとストロークの設定を直す[7](資料1件・参考) |
| 再刃付け時の切込み過大、刃付け時期の遅れ(逃げ面摩耗と溶着の進行) | 刃付けの記録、摩耗幅 | 摩耗幅 0.2〜0.3 mm を目安に、一度に深く研がない[7][15](資料1件・参考) |
| (むしれ)被削材がねばい、切削油が不適切・劣化している、ヘリカルピニオンの歯底残り・段差の追い込みすぎ | 切削油の状態、カッタの形 | 切削油を見直す・替える。カッタの仕様を工具メーカーと見直す[7](資料1件・参考) |
シェービングで歯形が出ない・早く崩れる、カッタの寿命が短い・欠けるシェービング盤
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| (判定のずれ)測定機の違い、測った歯の違い、歯形の管理点の違い | 測定条件 | 同じ測定機・同じ歯・同じ管理点で比べる[18](資料1件・参考) |
| (試し削りと量産の差)機械の違い、条件の違い、前加工(下切り)の精度の違い | 前工程の歯車の精度 | 前加工の精度をそろえる[18](資料1件・参考) |
| (ワークの歯形が早く崩れる)カッタの硬さが低い、カッタの歯形が複雑、シェービング代が大きすぎる、ワークの硬さが高い | 取り代、カッタの仕様 | 取り代を見直す。カッタの仕様を工具メーカーと見直す[18](資料1件・参考) |
| (刃付けできる回数が少ない)セレーションが浅い(左右・歯先と歯元・円周上の差、全体に浅い) | 再研削の記録・線図 | 工具メーカーに再研削と記録を依頼する[18][19] |
| (加工中の欠損)ショルダーギヤとの干渉、仕様の違うワークを削った、加工数が多い(摩耗)、カッタの歯元の強度不足、セレーションの配列が不適切 | 干渉・ワークの仕様 | 干渉をなくす。工具の寿命を決める[18](資料1件・参考) |
油性切削油が発火する・機内で火災が起きる共通
火災の多くは油性切削油を使った長時間の無人運転中に起きている(日本工作機械工業会)。着火源は多くが赤熱した切りくず、研削の火花、過熱した工具で、800℃ 以上の熱い面がとくに有効な着火源(DGUV)[14][20]
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| 工具の折損・異常摩耗で刃先が発熱・発火する | 工具の状態、負荷 | 工具寿命を管理し、異常負荷検知の機能で加工を止める[14][20] |
| 切削油が加工点に十分届いていない(液面低下・吐出圧低下・ノズルの向き) | 液面・圧力・流量・ノズル | 補充し、ノズルを直す。液面・吐出の検知を付ける[14][20] |
| 機内に切りくずがたまって過熱する、切りくず容器での自然発火 | 機内・容器の切りくず | こまめに清掃し、容器を空ける[14][20] |
| 厳しすぎる切削条件、干渉する工具経路・段取りのミスによる過負荷 | 条件・プログラム・段取り | 被削材と工具に合った条件にし、実加工前にプログラムを確かめる[14](資料1件・参考) |
| (消火後の再着火)冷えないうちに扉を開けた・再起動した、消火剤の容器が空 | 消火後の手順、消火剤の量 | 冷えるまで扉を開けず、再起動を急がない。消火剤の量を監視する[21][20](資料1件・参考) |
オイルミストが多い・機外に漏れる共通
| 考えられる原因 | 点検する所 | 処置 |
|---|---|---|
| 切削油の温度が上がっている(10℃ 上がるとミストがおよそ倍) | 油温 | 油量を十分にとり、じゃま板や冷却で室温程度に保つ[20](資料1件・参考) |
| ノズルの圧力・形・向きが合っていない(高い圧力・速い切削速度・飛散の当たり方で霧になる) | ノズル | 低い圧力で大量に流し、加工点に向ける[20](資料1件・参考) |
| ミストコレクタ・ダクトの汚れ・詰まり | ミストコレクタ・ダクト | 清掃する。保守計画に従ってフィルタを替える[14][20] |
| 蒸発しやすい・霧になりやすい油剤 | 油剤の性状(引火点・蒸発損失) | 低エミッションの油剤(蒸発しにくい基油・ミスト防止剤入り)を油剤メーカーと選ぶ。ミスト防止剤は使ううちに効きが落ち、細かいフィルタを詰まらせることがある[20][22] |
テーブルにガタがある・回転がなめらかでない(振動)ホブ盤
加工条件・工具の側の原因は 加工トラブル事典 にまとめています。
📚出典
印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ホブ加工に関する不具合と要因」」
- Gear Technology(米国の歯車専門誌。現在は AGMA Media の発行)「B. W. Cluff(American Pfauter)Effects of Hob Quality and Resharpening Errors on Generating Accuracy, 1987年9/10月号」
- Gear Technology(米国の歯車専門誌。現在は AGMA Media の発行)「K. Liston(Pfauter-Maag Cutting Tools)Hob Basics Part II, 1993年11/12月号」
- Gear Technology(米国の歯車専門誌。現在は AGMA Media の発行)「R. Moderow(ITW Illinois Tools)The Right and Wrong of Modern Hob Sharpening, 1992年1/2月号」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ホブの刃付け研削について」」
- 国際標準化機構(ISO)「ISO 6545:1992 Acceptance conditions for gear hobbing machines — Testing of the accuracy」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス「シェーパ加工に関する不具合と要因」」
- Gleason「Workholding Services(クランプ治具の保守)」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ホブ取付角誤差が歯厚及び面取量に及ぼす影響」」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ドライホブ切りの歯面傷対策」」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ホブシフト方法」」
- カシフジ「6軸CNCホブ盤 KE201/251(製品ページ。テーブルのバックラッシュ除去装置・摺動面きさげ・潤滑・歯厚安定装置)」
- 三菱重工業「プレスリリース(2014)ホブ盤「GE10A」を開発(主軸とテーブル軸の冷却による熱変位対策)」
- 日本工作機械工業会「技術資料 60-2014「工作機械の火災安全指針(ユーザ向け)」(同会サイトの掲載は終了。インターネットアーカイブの保存版)」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ピニオンカッタの刃付け研削について」」
- 三菱重工業「プレスリリース(2020)ロボット用歯車工作機械「FR シリーズ」を開発(ダイレクトドライブ・高精度ウォームホイル)」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ピニオンカッタ加工時のヘリカルガイドの共用検討」」
- ニデックマシンツール「切削工具トピックス「シェービング加工に関する不具合と要因」」
- Gleason「Tool Services - A Total Solutions Approach(ホブ・シェーパカッタ・シェービングカッタの再研削、再コーティング)」
- ドイツ法定災害保険(DGUV)「BGI/GUV-I 719 E(現 DGUV Information 209-027)Machine Tool Fire and Explosion Prevention and Protection(2009年、2012年更新)」
- ドイツ法定災害保険(DGUV)「Fachbereich AKTUELL FBHM-087/E Interface machine tool/fire suppression system(2024年)」
- ENEOS「非塩素系高引火点タイプ不水溶性切削油 リライアカット AE シリーズ(製品資料 PDF)」
- Liebherr-Verzahntechnik「Gear Hobbing Machines LC 600 - LC 2000(カタログ PDF)」
- 油研工業「YA パック(低騒音標準小形油圧ユニット)取扱説明書 JM-1028」