歯切り盤の不調の早見表

症状から、考えられる原因・点検する所・処置を引く。周期・油種・数値は機械メーカー・工具メーカーの指定と、手元の機械の取扱説明書が最優先。ここにある値は公開資料に載っていた例。油性切削油の貯蔵・取扱いは消防法と市町村の火災予防条例に従い、管轄の消防署の指導を受けること

歯形がうねる(波打つ歯形)ホブ盤

考えられる原因点検する所処置
ホブのボスが振れている(取付けの振れ)ボスの外周・端面の振れアーバとボスで芯出しし直す。振れが取れなければアーバ・カラー・センタを点検する[1][2][3]
刃付けの溝分割(切れ刃面のピッチ)がそろっていない溝分割の単一・累積誤差全溝を同じ量だけ研ぎ直す。刃付け時の振れ・割出し板の摩耗を確かめる[1][3][4]
ホブの穴径が大きい(アーバとのすきま)ホブ穴径とアーバ径穴とアーバのはめあいを直す。摩耗したアーバを替える[1][2]
ホブの歯すじ精度・歯形の不良、アーバへの取付け精度の不良ホブの検査成績・刃付け後の検査ホブを再研削・再生するか替える[1](資料1件・参考)

歯形が倒れる(圧力角が狂う・歯先が細い/太い)ホブ盤

考えられる原因点検する所処置
刃付けのすくい角の誤差・向心度(すくい面の中高・中凹)の不良向心度の測定、ホブ端面のすくい角・すくいオフセットの表示設計どおりのすくいで研ぎ直す。ねじれ溝は皿形といしの円すい側で研ぐ[5][1][3][4]
ホブのボスの振れ、ホブ歯形の不良ボスの振れ、ホブの検査成績取付けを直す。ホブを再生・交換する[1](資料1件・参考)
(見かけの不良)歯車を測るときのワークの振れ測定機へのワークの取付け取付けを直して測り直す[1](資料1件・参考)

ピッチ誤差・累積ピッチ誤差が大きいホブ盤

考えられる原因点検する所処置
ホブのボスの振れ・アーバへの取付け精度の不良ボスの振れ芯出しし直す[1][2]
刃付けの溝分割の不良、ホブの歯すじ精度の不良刃付け後の検査研ぎ直す[1](資料1件・参考)
(見かけの不良)測定時のワークの振れ測定機への取付け測り直す[1](資料1件・参考)

歯すじ(リード)誤差が大きいホブ盤

考えられる原因点検する所処置
ホブ盤の精度の不良幾何精度(JIS B 6216・ISO 6545)、メーカーの定期点検軸のアライメント・幾何精度を調整する[1][6]
ホブの歯すじ精度の不良ホブの検査成績ホブを再生・交換する[1](資料1件・参考)
ワーク取付け治具の精度不良・剛性不足、ワークの剛性不足(ニデックマシンツールはシェーパ加工のリード不良の要因として挙げている)治具の振れ・当たり面、クランプ治具を点検・調整し、摩耗部品を替える[7][8]
(見かけの不良)測定時のワークの振れ測定機への取付け測り直す[1](資料1件・参考)

歯厚(オーバーピン寸法)・外径・歯底径が狂う、ばらつくホブ盤

考えられる原因点検する所処置
ホブの取付角の間違い、歯面傷の対策で取付角を変えた取付角の設定正規の取付角に戻すか、歯厚の減少分を織り込む(取付角 1° で歯厚が約 32 µm 減る例がある)[1][9][10](資料1件・参考)
歯切りの追い込み寸法の不良、ホブの歯厚・歯丈の不良、向心度の不良追い込み量の設定、ホブの検査成績追い込みを直す。ホブを研ぎ直す[1](資料1件・参考)
ホブのシフトにつれて寸法が変わる(刃付けの溝リードの誤差による先細り、マルチシフトでの振れの影響)シフト位置ごとの歯厚溝リードを正しく研ぎ直す。シフト方式を見直す(1ピッチシフトは振れの影響を受けにくい)[2][3][11]
主軸・テーブルの発熱による熱変位(冷えた状態からの始動)始業後の時間と歯厚の記録熱変位の補正・冷却の機能を確かめる。初品の測定を決める[12][13]

面取り量が大きすぎる・小さすぎる、左右や歯ごとに違うホブ盤

考えられる原因点検する所処置
ホブの面取り高さの不良、ワーク外径の寸法不良、追い込み寸法の不良、向心度の不良ホブとワークの寸法、追い込み量原因の寸法を直す[1](資料1件・参考)
ホブの取付角の間違い・変更(歯厚を補うために切込みを控えると歯先の面取りが減る)取付角取付角を正規に戻す[1][9](資料1件・参考)
(歯ごとに違う)ボスの振れ、(左右・歯ごとに違う)ホブの歯すじ精度の不良ボスの振れ、ホブの検査芯出しし直す。ホブを再生する[1](資料1件・参考)

ドライホブ切りで歯面に傷・むしれが出るホブ盤

全部の歯の同じ位置に傷があるか(生成中の切りくずで傷つく)、傷のある歯とない歯が混じるか(切り離された切りくずが噛み込む。溶着が見えることもある)を見る(ニデックマシンツール)[10]

考えられる原因点検する所処置
生成中の切りくずで歯面が傷つく(全歯の同じ位置)傷の位置傷のある歯面側のホブ切れ刃の進入角が大きくなる向きに、取付角を 15′〜1° ほど変える(歯厚が減るので注意)[10][9](資料1件・参考)
切り離された切りくずが加工点に噛み込む(傷のある歯とない歯が混じる)傷の分布、切りくずの溶着進入角が小さくなる向きに取付角を変え、エアノズルを加工点に近づけて切りくずを寄せ付けない[10](資料1件・参考)
(歯形面・外周のむしれ)ホブの刃尻の切上り部の干渉ホブの設計工具メーカーに相談する[1](資料1件・参考)

ホブが欠ける(欠損)ホブ盤

考えられる原因点検する所処置
刃付け・歯形研削のときの研削割れ(割れが起点の欠損)欠損面に割れの起点があるか研削焼けを出さない刃付けにする(高い溝に軽く当ててから送る、ドレス・スパークアウト)[1][4]
早送りのままの突っ込みプログラム・段取りプログラムと工具位置の補正値を実加工の前に確かめる[1][14]
ワーククランプのゆるみで加工中にワークが回されるクランプ力・取付具クランプを点検し、摩耗部品を替える[1](資料1件・参考)
切削油の吐出量不足・当たり方の不良で刃溝に切りくずが詰まる吐出量・ノズルの向き供給量を確保し、ノズルを加工点に向ける[1][14]
治具など硬い物を削った、ホブ母材の不良(硬すぎ・もろい)、切削熱でクレータ付近が割れた干渉の有無、欠損の形干渉をなくす。工具メーカーに調査を依頼する[1](資料1件・参考)

ホブが早く・異常に摩耗するホブ盤

考えられる原因点検する所処置
ホブシフトのばらつき(クレータ摩耗がばらつく)シフトの設定・間欠個数シフトの範囲・量・方向を設定し直す[1][11](資料1件・参考)
刃付けの時期が遅い(クレータ摩耗から切れ刃が崩れる)二番摩耗・クレータ摩耗の量二番摩耗 0.1〜0.2 mm(コーティングホブ)を目安に刃付けする[5](資料1件・参考)
コーティングのはく離(処理の不良)摩耗部のはく離工具メーカーに調査を依頼する[1](資料1件・参考)
刃溝の容積が小さい、切削油の不足で刃溝に切りくずが詰まった状態で摩耗している刃溝の切りくず切削油の供給を確保する。工具の設計を見直す[1][14]
(均一に摩耗)ホブ母材の硬さ・材料・熱処理の不良、(刃先の丸みのつなぎ部の摩耗)丸みのつなぎが角ばっている摩耗の形工具メーカーに相談する[1](資料1件・参考)

歯車形削り(ギヤシェーパ)で歯形・ピッチ・リードが悪い、1刃に段が出る歯車形削り盤

考えられる原因点検する所処置
カッタの歯形不良、すくい角・刃付け角の不良カッタの検査・刃付けの記録すくい角(ふつう 5°)と刃付け角を守って研ぎ直す[7][15](資料1件・参考)
(1刃に段・歯溝の振れ)カッタの歯溝の振れ・累積ピッチの不良、カッタとワークの取付け精度の不良カッタ・ワークの取付けの振れ取付けを直す。カッタを再生・交換する[7](資料1件・参考)
ギヤシェーパの精度不良(ピッチ・歯形・リード)メーカーの精度点検調整・修理を依頼する[7][16](資料1件・参考)
(リード不良)ワーク・取付治具の剛性不足・精度不良、ヘリカルガイドのリードがカッタに合っていない治具、ヘリカルガイドのリードの計算治具を直す。合ったヘリカルガイドに替える[7][17](資料1件・参考)

ピニオンカッタが欠ける・異常に摩耗する、歯面がむしれる歯車形削り盤

考えられる原因点検する所処置
切削条件が不適切(切削速度・送りが高い)、早送りのままの突っ込み条件表、プログラム条件を見直す[7](資料1件・参考)
カッタ・ワークのクランプ力不足、ワークの硬さが高いクランプ、ワークの硬さクランプを直す[7](資料1件・参考)
リリービング(戻り行程の逃げ)の干渉、肩(ショルダー)にカッタが当たるか間に切りくずが詰まる逃げ量・ストローク位置逃げとストロークの設定を直す[7](資料1件・参考)
再刃付け時の切込み過大、刃付け時期の遅れ(逃げ面摩耗と溶着の進行)刃付けの記録、摩耗幅摩耗幅 0.2〜0.3 mm を目安に、一度に深く研がない[7][15](資料1件・参考)
(むしれ)被削材がねばい、切削油が不適切・劣化している、ヘリカルピニオンの歯底残り・段差の追い込みすぎ切削油の状態、カッタの形切削油を見直す・替える。カッタの仕様を工具メーカーと見直す[7](資料1件・参考)

シェービングで歯形が出ない・早く崩れる、カッタの寿命が短い・欠けるシェービング盤

考えられる原因点検する所処置
(判定のずれ)測定機の違い、測った歯の違い、歯形の管理点の違い測定条件同じ測定機・同じ歯・同じ管理点で比べる[18](資料1件・参考)
(試し削りと量産の差)機械の違い、条件の違い、前加工(下切り)の精度の違い前工程の歯車の精度前加工の精度をそろえる[18](資料1件・参考)
(ワークの歯形が早く崩れる)カッタの硬さが低い、カッタの歯形が複雑、シェービング代が大きすぎる、ワークの硬さが高い取り代、カッタの仕様取り代を見直す。カッタの仕様を工具メーカーと見直す[18](資料1件・参考)
(刃付けできる回数が少ない)セレーションが浅い(左右・歯先と歯元・円周上の差、全体に浅い)再研削の記録・線図工具メーカーに再研削と記録を依頼する[18][19]
(加工中の欠損)ショルダーギヤとの干渉、仕様の違うワークを削った、加工数が多い(摩耗)、カッタの歯元の強度不足、セレーションの配列が不適切干渉・ワークの仕様干渉をなくす。工具の寿命を決める[18](資料1件・参考)

油性切削油が発火する・機内で火災が起きる共通

火災の多くは油性切削油を使った長時間の無人運転中に起きている(日本工作機械工業会)。着火源は多くが赤熱した切りくず、研削の火花、過熱した工具で、800℃ 以上の熱い面がとくに有効な着火源(DGUV)[14][20]

考えられる原因点検する所処置
工具の折損・異常摩耗で刃先が発熱・発火する工具の状態、負荷工具寿命を管理し、異常負荷検知の機能で加工を止める[14][20]
切削油が加工点に十分届いていない(液面低下・吐出圧低下・ノズルの向き)液面・圧力・流量・ノズル補充し、ノズルを直す。液面・吐出の検知を付ける[14][20]
機内に切りくずがたまって過熱する、切りくず容器での自然発火機内・容器の切りくずこまめに清掃し、容器を空ける[14][20]
厳しすぎる切削条件、干渉する工具経路・段取りのミスによる過負荷条件・プログラム・段取り被削材と工具に合った条件にし、実加工前にプログラムを確かめる[14](資料1件・参考)
(消火後の再着火)冷えないうちに扉を開けた・再起動した、消火剤の容器が空消火後の手順、消火剤の量冷えるまで扉を開けず、再起動を急がない。消火剤の量を監視する[21][20](資料1件・参考)

オイルミストが多い・機外に漏れる共通

考えられる原因点検する所処置
切削油の温度が上がっている(10℃ 上がるとミストがおよそ倍)油温油量を十分にとり、じゃま板や冷却で室温程度に保つ[20](資料1件・参考)
ノズルの圧力・形・向きが合っていない(高い圧力・速い切削速度・飛散の当たり方で霧になる)ノズル低い圧力で大量に流し、加工点に向ける[20](資料1件・参考)
ミストコレクタ・ダクトの汚れ・詰まりミストコレクタ・ダクト清掃する。保守計画に従ってフィルタを替える[14][20]
蒸発しやすい・霧になりやすい油剤油剤の性状(引火点・蒸発損失)低エミッションの油剤(蒸発しにくい基油・ミスト防止剤入り)を油剤メーカーと選ぶ。ミスト防止剤は使ううちに効きが落ち、細かいフィルタを詰まらせることがある[20][22]

テーブルにガタがある・回転がなめらかでない(振動)ホブ盤

考えられる原因点検する所処置
テーブル駆動のウォームのバックラッシメーカーの点検(運動精度の試験)バックラッシュ除去装置の点検・調整、部品交換をメーカーに依頼する[12][23]
油圧式のバックラッシュ除去装置に油圧が正しくかかっていない作動油の油面・圧力油圧ユニットを点検する[12][24]

加工条件・工具の側の原因は 加工トラブル事典 にまとめています。

📚出典

印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。

  1. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ホブ加工に関する不具合と要因」」
  2. Gear Technology(米国の歯車専門誌。現在は AGMA Media の発行)「B. W. Cluff(American Pfauter)Effects of Hob Quality and Resharpening Errors on Generating Accuracy, 1987年9/10月号」
  3. Gear Technology(米国の歯車専門誌。現在は AGMA Media の発行)「K. Liston(Pfauter-Maag Cutting Tools)Hob Basics Part II, 1993年11/12月号」
  4. Gear Technology(米国の歯車専門誌。現在は AGMA Media の発行)「R. Moderow(ITW Illinois Tools)The Right and Wrong of Modern Hob Sharpening, 1992年1/2月号」
  5. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ホブの刃付け研削について」」
  6. 国際標準化機構(ISO)「ISO 6545:1992 Acceptance conditions for gear hobbing machines — Testing of the accuracy」
  7. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「シェーパ加工に関する不具合と要因」」
  8. Gleason「Workholding Services(クランプ治具の保守)」
  9. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ホブ取付角誤差が歯厚及び面取量に及ぼす影響」」
  10. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ドライホブ切りの歯面傷対策」」
  11. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ホブシフト方法」」
  12. カシフジ「6軸CNCホブ盤 KE201/251(製品ページ。テーブルのバックラッシュ除去装置・摺動面きさげ・潤滑・歯厚安定装置)」
  13. 三菱重工業「プレスリリース(2014)ホブ盤「GE10A」を開発(主軸とテーブル軸の冷却による熱変位対策)」
  14. 日本工作機械工業会「技術資料 60-2014「工作機械の火災安全指針(ユーザ向け)」(同会サイトの掲載は終了。インターネットアーカイブの保存版)」
  15. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ピニオンカッタの刃付け研削について」」
  16. 三菱重工業「プレスリリース(2020)ロボット用歯車工作機械「FR シリーズ」を開発(ダイレクトドライブ・高精度ウォームホイル)」
  17. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「ピニオンカッタ加工時のヘリカルガイドの共用検討」」
  18. ニデックマシンツール「切削工具トピックス「シェービング加工に関する不具合と要因」」
  19. Gleason「Tool Services - A Total Solutions Approach(ホブ・シェーパカッタ・シェービングカッタの再研削、再コーティング)」
  20. ドイツ法定災害保険(DGUV)「BGI/GUV-I 719 E(現 DGUV Information 209-027)Machine Tool Fire and Explosion Prevention and Protection(2009年、2012年更新)」
  21. ドイツ法定災害保険(DGUV)「Fachbereich AKTUELL FBHM-087/E Interface machine tool/fire suppression system(2024年)」
  22. ENEOS「非塩素系高引火点タイプ不水溶性切削油 リライアカット AE シリーズ(製品資料 PDF)」
  23. Liebherr-Verzahntechnik「Gear Hobbing Machines LC 600 - LC 2000(カタログ PDF)」
  24. 油研工業「YA パック(低騒音標準小形油圧ユニット)取扱説明書 JM-1028」