プレス機械の不調の早見表

症状から、考えられる原因・点検する所・処置を引く。点検の周期・判定の数値・油種は、プレスメーカーの取扱説明書と、機械・安全装置の銘板の表示が最優先。特定自主検査は資格のある人か登録検査業者が行う。安全装置の取付け・調整は特別教育の対象業務。ここにある法令の要点は 2026-10-06 に e-Gov と厚生労働省の公開資料で確かめたもので、改正に注意すること

止まる位置がずれる・止まるまでが長くなる(停止性能の低下)機械プレス

一行程で止めたときの停止角度、停止性能測定装置での最大停止時間[6][1]

考えられる原因点検する所処置
クラッチ・ブレーキのライニングの摩耗、押し板のストロークの増加押し板のストローク、ライニングの摩耗量整備して本来の停止時間に戻す。ライニングはメーカー指定品に替える[1][2](資料1件・参考)
断続運転の回数が多すぎてブレーキが発熱した断続運転の回数(毎分)と、機械の許容断続 SPM許容断続 SPM の範囲で使う。スライド速度を上げるほど停止時の発熱が増え、許容回数は下がる停止で出た熱を1サイクルごとに逃がせないとブレーキが温まり、停止性能の低下や発熱の不具合を起こす(アイダ)[3](資料1件・参考)
クラッチ・ブレーキ用の空圧の低下、電磁弁の不良圧力計・圧力スイッチの作動圧力、電磁弁の給排気音と作動圧力をメーカー指定値に戻す。電磁弁を交換する(アイダの目安は連続使用 5 年・単発使用 3 年)[2][4][5]
乾式ブレーキの摩擦面への油の付着ライニングへの油の付着油の侵入元を直し、ライニングを替える[4][2](資料1件・参考)

製品の寸法が運転開始後の時間や季節でばらつく機械プレス

考えられる原因点検する所処置
機械の発熱と室温変化による下死点の変位運転開始からの下死点位置の推移(初めは下がり、30分ほどで上がる)。冷暖房の風が機械に当たっていないか空調の風を直接当てない。プリヒート、油温制御装置の温度設定で安定させる[7](資料1件・参考)
静的精度の劣化、偏心荷重JIS B 6402 の項目での精度測定、金型の荷重中心の位置定期メンテナンスで静的精度を戻す。偏心荷重を抑える[7][8](資料1件・参考)

抜き型の摩耗・チッピングが多い、打抜き時の騒音・振動が大きい機械プレス

考えられる原因点検する所処置
ブレークスルー(材料が破断した瞬間に、たわんでいたプレスが一気に戻る衝撃)。連結部の総合すきまが大きいほど大きい連結部上下の総合すきま、ボルスターの落とし穴の大きさ可動ストリッパーで逆向きの力をかける。ボルスターの落とし穴を小さくするか、インサートプレートで下型の受け面を広げる。摩耗したすきまはオーバーホールで戻す放置すると、スライド・コンロッド・クランク軸の損傷、メインギアの裏歯の摩耗、ボルトのゆるみ、フレームの割れにつながる(アイダ)[9][8](資料1件・参考)

サーボプレスで、今まで加工できたものが加工できない。減速時・停止時に過電圧で止まる機械プレス

考えられる原因点検する所処置
蓄電用アルミ電解コンデンサーの劣化(静電容量の減少、内部抵抗の増加、電解液の漏れ)圧力弁の膨らみ(目視)、LCR メーターでの静電容量プレス専用のコンデンサーに交換する。年1回の点検を勧める(アイダ)[10](資料1件・参考)

油圧プレスのスライドが、止めているのに自重で下がる油圧プレス

考えられる原因点検する所処置
スライド落下防止装置の不良作業上限で止めたときの落下量、自動保持と解除の働きメーカーに修理を依頼する。修理中は安全ブロックでスライドを支える[2][4](資料1件・参考)
主操作弁のばね・ばね受けの損傷やへたり主操作弁を分解して見るばね等を交換する[2](資料1件・参考)

作動油の温度が上がる、油が早く劣化する油圧プレス

考えられる原因点検する所処置
油面の低下油面計基準油面まで補給し、漏れを直す[11](資料1件・参考)
油冷却器(クーラ)の伝熱部の汚れ運転数か月後から徐々に油温が上がっていないかクーラを点検・清掃する[11](資料1件・参考)
作動油への水の混入・劣化油の乳化・変色・あわ立ち、性状の検査(動粘度・全酸価・水分)タンクのドレンを抜く。更油基準を超えたら油を替える[11][2]

軸受が焼き付く、すき間が広がって精度が落ちる共通

考えられる原因点検する所処置
劣化した潤滑油の使用、給油不良潤滑系統の給油状態、油の交換時期指定油を使い、定期的に交換する[12][2]
指定外の油の使用(同じ粘度でも添加剤が違う)使っている油の銘柄と取扱説明書の指定油取扱説明書の指定油に戻す[12](資料1件・参考)

安全装置があるのにスライドで手を挟まれた(災害事例からの教訓)共通

考えられる原因点検する所処置
安全装置をオフにし、切替えキーを差したままにしていた切替えキーの保管、安全装置の状態キーは作業主任者が保管する。金型と安全装置が干渉するなら作業主任者と相談して別の安全措置を取る。異常時・非定常作業の作業標準を作る[13][14](資料1件・参考)
光線式起動装置(PSDI)の有効範囲の下から腕が外れ、起動した有効範囲の上下・側面のガードやテーブルの有無有効範囲から身体が外れないよう、上下・側面にガードを設ける。起動装置だけでなく、有効な安全装置を別に付ける[15](資料1件・参考)

加工条件・工具の側の原因は 加工トラブル事典 にまとめています。

📚出典

印のない項目は、別々の発行元の資料 2 つ以上で一致したものです。数値・周期は機種ごとの指定が優先します。文はケズリバの言葉でまとめています。

  1. 厚生労働省「別表2 プレス機械におけるリスク低減対策の例(光線式安全装置の主な事例)」
  2. 厚生労働省「動力プレス特定自主検査基準(令和7年厚生労働省告示第323号、令和8年1月1日適用)」
  3. アイダエンジニアリング「アイダプレス情報館「許容断続SPMってなに?」」
  4. 厚生労働省「動力プレス機械構造規格(昭和52年労働省告示第116号。厚生労働省 法令等データベース)」
  5. アイダエンジニアリング「電装品の交換又はオーバーホールの目安(PDF)」
  6. 日本鍛圧機械工業会(JFMA)「パンフレット「鍛圧機械 予防・保守保全のおすすめ」」
  7. アイダエンジニアリング「アイダプレス情報館「その不具合、スライドの下死点変位が原因かも?」」
  8. アイダエンジニアリング「アイダプレス情報館「プレスの精度とは?」」
  9. アイダエンジニアリング「アイダプレス情報館「プレス機・金型に悪影響を及ぼす『ブレークスルー』とは?」」
  10. アイダエンジニアリング「アイダプレス情報館「点検してますか?サーボプレス機用アルミ電解コンデンサー」」
  11. 油研工業「YA パック(低騒音標準小形油圧ユニット)取扱説明書 JM-1028」
  12. アイダエンジニアリング「アイダプレス情報館「プレス機に使用される潤滑油について」」
  13. 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例「プレス機械で加工中に材料を取出そうとしたとき、スライドが下降し被災」」
  14. 厚生労働省「労働安全衛生規則(e-Gov 法令検索。第36条・第86条・第108条の2・第131条〜第137条)」
  15. 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例「光線式起動装置を取り付けたプレス機械に挟まれる」」