ARCHIVE 07複合加工機・5 軸の系譜

複合加工機は、旋盤の「工作物を回して削る」と、マシニングセンタの「刃物を回して削る」を 1 台にまとめた工作機械です。工作物を一度つかんだら(ワンチャッキング)、外径・端面の旋削から、側面の穴あけ・フライス削り、斜めの穴、裏側まで、つかみ直さずに削り終えます。5 軸加工機は、X・Y・Z の 3 つの直線の動きに、工作物か刃物を傾ける・回す 2 つの軸を足し、工具をどの向きからでも当てられるようにした機械です。どちらも「何台もの機械を渡り歩いていた工程を 1 台に集める(工程集約)」ための機械で、日本のメーカーが早くから力を入れてきた分野です。当時の技術書・業界誌・社史(国立国会図書館)と論文、国立科学博物館の資料、メーカーの沿革で 1 つずつ確かめ、出来事ごとに出典を付けました。

1 回つかんだら
最後まで
削るんだ!

マスコットのチップス
1970 年代ターニングセンタ1980 年代ミルセンタ付きの旋盤1990 年代5 軸のマシニングセンタ今B 軸の複合加工機と自動化
複合加工機と 5 軸加工機の移り変わり(イメージ図。特定の機種ではありません)

この章は、工程を 1 台に集める機械の側からたどる機種別の最後の章です。NC 旋盤そのものの歩み(1968 年のマザックターニングセンター MTC、1983 年 4 月の SLANT TURN 40N ATC ミルセンタの完成、1997 年の INTEGREX 200Y、2005 年の森精機製作所の NT)は第 1 章、マシニングセンタの 5 軸の始まり(1970 年の新日本工機の同時 5 軸の試作機、1991 年の松浦機械製作所の 5 軸 MC、1999 年の VARIAXIS 200)は第 2 章、ホブ盤とスカイビングは第 4 章で書いています。5 軸の動きそのものは5 軸加工の基本でどうぞ。

ターニングセンタの始まり(1966〜1979 年)

NC 旋盤が広まり始めたころ、「旋盤の上でも回る刃物を使えないか」という試みが始まります。1981 年の『旋盤マニュアル』は、中ぐり・フライス系の複合の NC 工作機械をマシニングセンタ、旋削系の複合の NC 工作機械をターニングセンタと呼ぶ、と整理したうえで、1966 年にフロリープ(Froriep)社が発表した立旋盤形式の KE8 Universal を、旋削と回転カッタの作業を組み合わせた最初の工作機械として紹介しています[1・コマ72]。1970 年には、マシニングセンタを生んだ米国のカーネイ&トレッカー社が複合加工機 TURN-12 を IMTS(シカゴ)に出しましたが、1 億円の機械として注目されたものの 3 台で終わり、商品にはなりませんでした。国内でも池貝鉄工と大隈鉄工所が見本市に出しましたが、刃物と工作物の干渉や値段の問題で、すぐには商品になりませんでした[3]。

池貝の FT500NA と、ターニングセンタの機能

国産で早い例が池貝鉄工です。1972 年 12 月の『機械振興』の新製品紹介にターニングセンタ FT500NA が載り[4・コマ47]、『旋盤マニュアル』は「わが国では池貝鉄工が 1973 年にターニングセンタを発表し、シリーズを完成させた」と書いています。同書によれば、ターニングセンタは NC 旋盤の機能に、①工作物の正面で回転工具の加工、②側面で回転工具の加工、③主軸を割り出す C 軸(X・Z・C の 3 軸制御)、④回転工具の主軸を上下させる Y 軸(4 軸制御)を足した機械です[1・コマ73]。大隈鉄工所(今のオークマ)は 1975 年に、旋削・穴あけ・フライス削りを 1 台でこなす最初の複合加工機 LM70-AT を出したとしています[5]。

1979 年:日立精機の 5LC と、マザックのミルセンタ

1979 年、日立精機は回転工具を備えて工程を集約する本格的なターニングセンタ5LCを開発します。X・Y・Z・C の 4 軸制御で 20 本の ATC を持ち、中形の複合加工機として長く各種のシステムに組み込まれました[6・コマ17]。同じ年、山崎鉄工所(1985 年からヤマザキマザック)は、タレット旋盤にフライス削りの工具を組み合わせた「スラントターン 30 ミルセンタ」を EMO(ミラノ)に出しました。開発は 1977 年、桃井昭二を中心に、自社の工作機械の主軸を削る工程と工数を減らそうとして始まったものです[3]。

旋削と回転工具の最初の機械1966 年フロリープ社 KE8 Universal(『旋盤マニュアル』)[1・コマ72]
国産の早いターニングセンタ1972 年 12 月池貝鉄工 FT500NA が新製品として紹介[4・コマ47]
Y 軸付きのターニングセンタ1979 年日立精機 5LC(X・Y・Z・C、ATC 20 本)[6・コマ17]

旋盤から生まれた複合加工機(1981〜1996 年)

旋盤に回転工具を足す流れを、商品として形にしたのがマザックです。1981 年の「スラントターン 40N ミルセンタ」はミル駆動を油圧モータから出力の大きい直流モータに替えて 4 インチの正面フライス削りをこなし、同じ年に三菱電機と組んで対話型 NC 装置「マザトロール T-1」を完成させました[3]。1983 年には工具 30 本の ATC を自社で作って載せた「スラントターン 40N ATC ミルセンタ」を EMO(パリ)に出し、鈴木信貴(2010)はこれを本格的に商品化された世界で最初の複合加工機としています。米国の航空機・石油の産業から取引の依頼が来ました[3]。ただ値段は NC 旋盤の 2.5 倍以上で、1984 年の「スラントターン 25ATC ミルセンタ」は工具 16 本のチェーン式にして NC 旋盤の 1.5 倍ほどに抑え、日本のユーザーにも広まりました[3]。

1988 年:Y 軸と INTEGREX、2 スピンドル 2 タレット

それまでのミルセンタは X(直径)・Z(軸方向)・C(主軸の回転)の 3 軸で、旋削が中心でした。1988 年、ヤマザキマザックはY 軸を足して 4 軸にした「インテグレックス 40ATC ミルセンタ」を IMTS(シカゴ)に出します。工作物の側面も削れるようになり、複合加工機の仕事がマシニングセンタの領域に大きく広がりました[3]。1991 年の『自動化技術』では、同社がこのインテグレックス 40 を 3 台並べた旋盤の FMS ラインを紹介しています[11・コマ64]。1994 年の「インテグレックス 50・70」は大径テーパの工具と 30 本(60・80 本も可)の ATC でマシニングセンタ並みに削れる本格的な複合加工機になり、旋削よりフライス削りの時間が長い工作物まで受け持つようになります[3]。

別の方向からの工程集約もありました。中村留精密工業は 1988 年 4 月に、主軸 2 本と刃物台 2 つを向かい合わせた TW-20 を発表し、表と裏を同時に削って 1 台で完品に仕上げる形をつくります。これがのちの WT シリーズ・Super NT シリーズの原型になりました[9]。大物では、1974 年から立旋盤に回転工具を足してきたオーエム製作所が、1993 年に旋回・割出しテーブルでマシニングの加工まで済ませる立形ターニングセンタ TMM-35/45N(テーブル直径 3.5m)を、1996 年に ATC・APC 付きの VC シリーズを出しています[12][14]。

ATC 付きミルセンタ1983 年工具 30 本、EMO パリに出品[3]
Y 軸の INTEGREX1988 年インテグレックス 40ATC ミルセンタ(4 軸)[3]
2 スピンドル 2 タレット1988 年 4 月中村留精密工業 TW-20[9]

マシニングセンタの 5 軸が広まる(1968〜2009 年)

マシニングセンタの側からの工程集約が 5 軸です。X・Y・Z の同時 3 軸に、回転の A・B(または B・C)の 2 軸を足すと、工具を好きな向きから当てられ、段取り替えと工数を減らせます[15]。考え方は早くからあり、1968 年の『マシナリー』には、X・Y・Z に A・B を足した同時 5 軸制御用のテープフォーマットの解説が載っています[2・コマ24]。機械では 1970 年に新日本工機で同時 5 軸の試作機が生まれ(第 2 章)、1984 年の『豊田工機技報』の製品一覧には「同時 5 軸制御マシニングセンタ」が並びます[8・コマ23]。

5 軸を強く求めたのは航空機です。1986 年の日本機械工業連合会の報告書は、部品の一体化で形が複雑になった機体の外形や斜めの取付け面を仕上げるには同時 5 軸制御の NC 機が是非とも必要だとし、荒・中仕上げは 3 軸、仕上げは 5 軸と分けて FMS を考えています[10・コマ21][10・コマ22]。

中小企業の工場へ

1990 年代に入ると、5 軸は大企業の特別な機械から、中小企業の工場の機械になっていきます。1994 年に第 24 回中小企業向け自動化機械開発賞を受けたキタムラ機械の横形 MC「H-400 スーパーセル」は、A 軸・B 軸を足して 1 回の取付けで取付面以外の 5 面を 5 軸で削り、パレットの自動交換とワークの自動判別、ハンドリングロボットまで 1 台にまとめた機械です。受賞の座談会で同社は、本機の発表で業界の 5 軸 MC への関心が高まり、他社も開発に動き出したと述べています[13・コマ18][13・コマ5]。

機械工業デザイン賞の受賞機を見ると広がり方がわかります。1999 年に松浦機械製作所の 5 軸立形 MAM72-3VS、2003 年にキタムラ機械のトラニオン形 Mytrunnion、2004 年にオークマの MU-400VA が受け、2006 年には受賞 5 機種のうち 4 機種が 5 軸 MC か複合加工機になりました(三井精機工業の Vertex550-5X、松浦機械製作所の 5 軸複合 CUBLEX-25 など)[15][18][17]。森精機製作所も同じ 2006 年に 5 軸の NMV5000 DCG を開発し[19]、2009 年にはヤマザキマザックの HYPER VARIAXIS 630 が受賞しています[15]。

同時 5 軸のテープ1968 年『マシナリー』に解説[2・コマ24]
5 面・5 軸と自動化1994 年キタムラ機械 H-400 スーパーセルが受賞[13・コマ18]
デザイン賞の 5 機種中4 機種2006 年、5 軸 MC か複合加工機[15]

B 軸とワンチャッキング・工程集約(1997〜2013 年)

旋盤から来た複合加工機と、MC から来た 5 軸は、1990 年代の終わりに 1 台の中で出会います。1997 年、ヤマザキマザックは X・Y・Z・C にB 軸(工具主軸を傾ける軸)を足した「インテグレックス 200SY」を開発しました。5 軸制御で航空機のタービンブレードのような立体の形を削れ、第 2 主軸に工作物を持ち替えて裏側まで続けて削れる機械です[3]。同社の資料では、複合加工機は従来 3 台の工作機械で行っていた加工を 1 台にし、生産リードタイムを 16 分の 1 まで縮めたとされます[3]。

2000 年代はこの形が各社に広がります。中村留精密工業は 2000 年に専用の工具主軸と ATC を持つ「超複合加工機」STW-40 を[9]、ヤマザキマザックは 2001 年に、マシニングセンタのプログラムのまま複合加工機を動かせる NC 装置を積んだ INTEGREX e シリーズを出しました[7][3]。オーエム製作所の立形ターニングセンタ OMega 60YB(2002 年)は、割出しのできる工具主軸(B)とテーブル(C)を足した 5 軸制御で、大物の工程を 1 台に集めます[16]。森精機製作所は 2005 年の NT(第 1 章)から 2010 年の NTX へ[19]、オークマは 2013 年に複合加工機と NC 旋盤を一貫して作る工場 DS1 を本社に建てています[20]。

鈴木(2010)は、日本の市場は旋盤中心、米国はマシニングセンタ中心で開発が進んだこと、米国の航空機・石油の産業が少量で複雑な部品を早く作る方向に変わったことが、旋盤から出発した日本の複合加工機を育てたと分析しています[3]。

自動化:パレット・ロボットと組む(1982 年〜)

工程を 1 台に集めた機械は、工作物の出し入れまで自動にすれば、夜も人なしで動けます。日立精機は 1982 年に自社製のロボット RP-10(空圧式)と RE-20(電気式)を作り、ターニングセンタと組む自動化セルを作りやすくしました[6・コマ17]。マザックは 1983 年ごろ、複合加工機で FMS を組むため、チャックの爪を自動で替える AJC をチャックのメーカーと共同で開発し、工作物を着け外しする専用ロボットも作っています[3]。中村留精密工業は 1985 年に、小さな工場でも入れやすい自動化の「下町の FA シリーズ」を出しました[9]。(NC 旋盤のオートローダとファナックのロボットは第 1 章、MC の FMS は第 2 章)

いまは機械に組み込むロボットや、人のそばで動ける協働ロボットのセルが主流になりつつあります。オークマの ARMROID(2018 年)、ヤマザキマザックの Ez LOADER 10(2021 年)、DMG森精機の Robo2Go Open とワーク・パレットを運ぶ MATRIS WPH(2025 年)などです[20][7][19]。

★今:付加製造・歯車加工まで 1 台に(2002 年〜)

工程集約は、削る以外の加工も取り込み始めました。松浦機械製作所は 2002 年に、レーザーで金属の粉を固める金属光造形とマシニングセンタの切削を 1 台にした金属光造形複合加工機を開発し、2003 年に売り出します。2004 年には M-PHOTON25C が日本産業技術大賞を受け、LUMEX 25C を発表しました[17]。金属を盛る積層造形と切削を 1 台にする「ハイブリッド」は、2014 年にヤマザキマザックが 2 機種を発表し、2016 年にはオークマがレーザー複合加工機 LASER EX シリーズを 5 機種にそろえ(焼入れもできる)、2020 年には DMG森精機が LASERTEC 6600 DED hybrid を出しています[7][21][19]。

歯車も 1 台で削る時代です。ヤマザキマザックは 2018 年に、複合加工機と歯車加工の専用機を融合した INTEGREX AG シリーズを完成させました[7]。ホブ盤・スカイビング盤の歩みは第 4 章にあります。使う人の育成も課題になり、中村留精密工業は 2023 年に独自の「複合加工機検定」を始めています[9]。オークマの欧州法人は 2025 年に、1975 年の LM70-AT から数えて「複合加工機の 50 年」とうたいました[5]。

現場で何に効くか。複合加工機・5 軸加工機の仕様書を読むときは、「旋盤から来た機械か MC から来た機械か(主軸が工作物か工具か)」「Y 軸・B 軸の有無と B 軸の割出しか同時制御か」「第 2 主軸・下刃物台の有無」「ATC の本数と工具のシャンク(大径テーパか)」「5 軸ならトラニオン(テーブルが傾く)か主軸が傾くか」「パレット・ロボットとつなげるか」を見ると、その機械の世代と、どこまでの工程を任せられるかがわかります。

⑂メーカーの系図

この章に出てくる主なメーカーの、社名の移り変わりです。帯の色が変わるところで社名が変わっています。日立精機は 2002 年に営業の一部を森精機製作所に譲りました(矢印)。三井精機工業は 1950 年にいったん東洋精機の名で今の会社をつくり、1952 年に今の社名に戻っています。キタムラ機械・オーエム製作所は社名の変更を確かめられなかったので載せていません。

18801900192019401960198020002020池貝工場池貝鉄工所池貝鉄工池貝大隈麺機商会大隈鐵工所オークマ山崎鉄工所ヤマザキマザック津上製作所東洋精機三井精機工業松浦(創業)松浦機械製作所国産精機日立精機営業の一部を譲渡森精機製作所DMG森精機中村鉄工所中村留精密工業帯の区切りが社名の変更。赤い矢印は合併・事業の譲渡の行き先。右端の › は今も続く会社。
出典:各社の沿革と社史 [24][20][7][18][17][25][19][9]

見に行ける機械

国立科学博物館の産業技術史資料データベースで「公開」とされている会社の資料と、複合加工機まで動く状態で並ぶ博物館です。公開日・見学の可否は、行く前にそれぞれの施設・会社の案内で確かめてください。旋盤の章・フライス盤・MC の章の見に行ける機械もあわせてどうぞ。

オーエム製作所 長岡工場新潟県長岡市立形ターニングセンタの系譜がそろう。普及型の複合機 TDC-12N(1984 年)、テーブル直径 3.5m の TMM-35/40N(1993 年)、ATC・APC 付きの VC シリーズ(1996 年)、工具主軸の割出し(B 軸)を持つ 5 軸制御の OMega 60YB(2002 年)。国立科学博物館の産業技術史資料データベースではいずれも「公開」。見学は会社に問い合わせを[23][12][14][16]
ヤマザキマザック工作機械博物館岐阜県美濃加茂市2019 年開館。弓旋盤の複製から最新のマシニングセンタ・CNC 旋盤・複合加工機まで、国内外の工作機械約 80 点を動く状態で展示(加工品を含めて約 200 点)。休館日・入館料は施設の案内で[22]

⌛年表

この章で確かめた出来事のすべてです。時代の区切りは話の流れに合わせたもので、5 軸と自動化の節は年が前の節と重なります。番号は出典、「コマ」は国立国会図書館デジタルコレクションのページで、押すとその資料が開きます(個人送信の資料はログインが要ります)。

ターニングセンタ旋盤ベースの複合5 軸の普及B 軸・工程集約今:AM・自動化1960197019801990200020102020203019721979198819941997200220062018黄色の点は大事な出来事(下の表の ★、年は混み合うところを省略)。時代の区切りの年は目安です。

ターニングセンタの始まり1966〜1979 年

年出来事メーカー・機種出典
1966年昭和41年フロリープ(Froriep)社が立旋盤形式のターニングセンタ KE8 Universal を発表。1981 年の『旋盤マニュアル』は、これを旋削と回転カッタの作業を組み合わせた最初の工作機械としているフロリープ社KE8 Universal[1・コマ72]
1970年昭和45年マシニングセンタを生んだ米国のカーネイ&トレッカー社が、IMTS(シカゴ)に複合加工機 TURN-12 を出す。1 億円の工作機械として注目されたが、3 台作っただけで商品にはならなかった。国内でも池貝鉄工・大隈鉄工所が見本市に出したが、刃物と工作物の干渉や値段の問題で商品化に至らなかったカーネイ&トレッカー社TURN-12[3]
1972年12月昭和47年★『機械振興』の新製品紹介に池貝鉄工のターニングセンタ FT500NA が載る。1981 年の『旋盤マニュアル』は「わが国では池貝鉄工が 1973 年にターニングセンタを発表し、シリーズを完成させた」と書く池貝鉄工FT500NA[4・コマ47][1・コマ73]
1975年昭和50年大隈鉄工所が最初の複合加工機 LM70-AT を出す。旋削・穴あけ・フライス削りを 1 台でこなす機械(同社の欧州法人の 2025 年の発表による)大隈鉄工所LM70-AT[5]
1977年昭和52年山崎鉄工所(今のヤマザキマザック)で、桃井昭二を中心に複合加工機の開発が本格的に始まる。自社の工作機械の主軸を削る工程と工数を減らすことがきっかけで、タレット旋盤にフライス削りの工具を組み合わせる「タレットミル方式」で進めた山崎鉄工所[3]
1979年昭和54年山崎鉄工所が、ミル駆動に油圧モータを使った傾斜(スラント)ベッドの「スラントターン 30 ミルセンタ」を EMO(ミラノ)に出す(開発は 1978 年、1980 年に JIMTOF にも出品)山崎鉄工所SLANT TURN 30 ミルセンタ[3]
1979年昭和54年★日立精機が、回転工具を備えて工程を集約する本格的なターニングセンタ 5LC を開発。X・Y・Z・C の 4 軸制御で 20 本の ATC を持ち、中形の複合加工機として各種のシステムに組み込まれた日立精機5LC[6・コマ17]

旋盤から生まれた複合加工機1981〜1996 年

年出来事メーカー・機種出典
1981年昭和56年山崎鉄工所が、ミル駆動を出力の大きい直流モータにした「スラントターン 40N ミルセンタ」を開発。4 インチの正面フライス削りができるようになる。同じ年、三菱電機と共同で対話型 NC 装置「マザトロール T-1」を開発(ハードを三菱電機、ソフトを自社で)山崎鉄工所SLANT TURN 40N ミルセンタ[3]
1983年昭和58年工具 30 本の ATC を自社で作り、「スラントターン 40N ATC ミルセンタ」を EMO(パリ)に出す。鈴木 2010 は、本格的に商品化された世界で最初の複合加工機とする。米国の航空機・石油の産業から取引の依頼が来た完成の年月(1983 年 4 月)は第 1 章の年表にもあります山崎鉄工所SLANT TURN 40N ATC ミルセンタ[3][7]
1984年昭和59年40ATC は NC 旋盤の 2.5 倍以上の値段だったため、工具 16 本のチェーン式にして値段を NC 旋盤の 1.5 倍ほどに抑えた「スラントターン 25ATC ミルセンタ」を開発。対話型 NC マザトロール T-3 で現場の作業者がプログラムを作れ、日本のユーザーにも多く納入された山崎鉄工所SLANT TURN 25ATC ミルセンタ[3]
1988年昭和63年★ヤマザキマザックが「インテグレックス 40ATC ミルセンタ」を IMTS(シカゴ)に出す。ユーザーの要望だった Y 軸を足して 4 軸にし、工作物の側面も削れるようにした。複合加工機の削れる範囲がマシニングセンタの領域へ大きく広がったヤマザキマザックINTEGREX 40ATC ミルセンタ[3]
1988年4月昭和63年★中村留精密工業が、主軸 2 本と刃物台 2 つを向かい合わせた 2 スピンドル・2 タレット機 TW-20 を発表。同時加工と、1 台で仕上げまでの完品加工を実現し、のちの WT シリーズ・Super NT シリーズの原型になった中村留精密工業TW-20[9]
1991年4月平成3年『自動化技術』でヤマザキマザックが、複合加工旋盤インテグレックス 40 を 3 台並べた旋盤の FMS ラインを紹介。ATC とミルセンタで旋削のほか穴あけなども 1 台でこなすヤマザキマザックインテグレックス 40[11・コマ64]
1993年平成5年1974 年から立旋盤に回転工具を足す複合機械を開発してきたオーエム製作所が、旋回・割出しテーブルを前後させてマシニングの加工まで済ませる立形ターニングセンタ TMM-35/45N(テーブル直径 3.5m)を完成し、TMM 形をシリーズにするオーエム製作所TMM-35/40N[12]
1994年平成6年ヤマザキマザックが「インテグレックス 50・70」を開発。大径テーパの工具と標準 30 本(60・80 本も可)の ATC で、マシニングセンタの機能と切削の力を持つ本格的な複合加工機になり、旋削よりフライス削りの時間が長い工作物も対象になったヤマザキマザックINTEGREX 50・70[3]
1996年平成8年オーエム製作所が、ATC・APC の自動化をレベルアップした小形の NC 立旋盤 VC シリーズを開発。刃物台とテーブルの割出し装置の組み合わせで、タレット(T)・ラム(R)・ターニングセンタ(M)の仕様にできるオーエム製作所VC-6NM[14]

マシニングセンタの 5 軸が広まる1968〜2009 年

年出来事メーカー・機種出典
1968年8月昭和43年『マシナリー』に、同時 5 軸制御用のテープフォーマット(OKIPATH25)の解説が載る。X・Y・Z の 3 軸に回転の A・B 軸を足した 5 軸の NC プログラムが、すでに語られていた—[2・コマ24]
1984年8月昭和59年『豊田工機技報』の製品一覧に「同時 5 軸制御マシニングセンタ」が並ぶ豊田工機[8・コマ23]
1986年昭和61年日本機械工業連合会の航空機・宇宙産業の生産技術の報告書が、複雑な機体の外形や斜めの面をもつ部品の仕上げには同時 5 軸制御の NC 機が是非とも必要とし、FMS の NC 機を 3 軸(荒・中仕上げ)と 5 軸(仕上げ)に分けて考える—[10・コマ21][10・コマ22]
1994年3月平成6年★キタムラ機械の横形マシニングセンタ「H-400 スーパーセル」が第 24 回中小企業向け自動化機械開発賞を受ける。A 軸・B 軸を足し、1 回の取付けで取付面以外の 5 面を 5 軸で削れる機械で、パレットの自動交換とワークの自動判別、ハンドリングロボットを組み合わせた。同社は、本機の発表で業界の 5 軸 MC への関心が高まり、他社も開発に動き出したと述べているキタムラ機械H-400 スーパーセル[13・コマ18][13・コマ19][13・コマ5]
1999年平成11年松浦機械製作所の 5 軸立形マシニングセンタ MAM72-3VS が機械工業デザイン賞を受ける松浦機械製作所MAM72-3VS[15]
2003年平成15年キタムラ機械の 5 軸立形マシニングセンタ Mytrunnion(テーブルを傾けるトラニオン形)が機械工業デザイン賞を受ける。2004 年にはオークマの 5 軸立形 MU-400VA が続くキタムラ機械Mytrunnion[15]
2006年平成18年★機械工業デザイン賞の受賞 5 機種のうち 4 機種が 5 軸 MC か複合加工機になる(三井精機工業の 5 軸立形 Vertex550-5X、松浦機械製作所の 5 軸複合 CUBLEX-25 ほか)。同じ年、森精機製作所が 5 軸の NMV5000 DCG を開発三井精機工業・森精機製作所・松浦機械製作所Vertex550-5X・NMV5000 DCG・CUBLEX-25[15][18][17][19]
2009年平成21年ヤマザキマザックの 5 軸立形 HYPER VARIAXIS 630 が機械工業デザイン賞を受ける。設計の初めから工業デザイナーが加わった機械ヤマザキマザックHYPER VARIAXIS 630[15]

B 軸とワンチャッキング・工程集約1997〜2013 年

年出来事メーカー・機種出典
1997年平成9年★ヤマザキマザックが X・Y・Z・C 軸に B 軸(工具主軸の旋回)を足した「インテグレックス 200SY」を開発。5 軸制御でタービンブレードのような立体の複雑な形が削れ、第 2 主軸で工作物を持ち替えて裏側まで続けて削れるY 軸付きの INTEGREX 200Y の完成(1997 年 9 月)は第 1 章の年表にありますヤマザキマザックINTEGREX 200SY[3]
2000年5月平成12年中村留精密工業が、専用の工具主軸と ATC を持ち、旋削とマシニングセンタの加工を 1 台でこなす「超複合加工機」STW-40 を発表中村留精密工業STW-40[9]
2001年9月平成13年ヤマザキマザックが「インテグレックス e シリーズ」を出す。新しい NC 装置マザトロール フュージョン M640MT で、マシニングセンタのプログラムのまま複合加工機を動かせるようにしたヤマザキマザックINTEGREX e シリーズ[7][3]
2002年平成14年オーエム製作所が立形ターニングセンタ OMega 60YB を作る。X・Y・Z の直線軸に、割出しのできる工具主軸(B)とテーブルの割出し(C)を足した 5 軸制御で、中・大物の複雑な部品の工程を集約するオーエム製作所OMega 60YB[16]
2007年9月平成19年ヤマザキマザックが小形の複合加工機 INTEGREX i-150 を完成(2008 年に機械工業デザイン賞)ヤマザキマザックINTEGREX i-150[7][15]
2010年平成22年森精機製作所が X クラスの機械(NLX・NVX・NHX・NTX)を開発。複合加工機は NT から NTX へ森精機製作所NTX[19]
2013年平成25年オークマが本社に、複合加工機と NC 旋盤を一貫して作る工場 DS1(ドリームサイトワン)を建てるオークマ[20]

自動化:パレット・ロボットと組む1982 年〜

年出来事メーカー・機種出典
1982年昭和57年日立精機が自社製のロボット RP-10(空圧式)と RE-20(電気式)を開発し、ターニングセンタと組む自動化セルを作りやすくする日立精機RP-10・RE-20[6・コマ17]
1983年昭和58年複合加工機で FMS を組むため、チャックの爪を自動で替える AJC をチャックのメーカーと共同で開発し、工作物を着け外しする専用ロボットも作る山崎鉄工所[3]
1985年9月昭和60年中村留精密工業が、小さな工場でも入れやすい自動化・省力化の「下町の FA シリーズ」を発表中村留精密工業[9]
2018年平成30年オークマが、機械の中に組み込むロボットシステム ARMROID を開発オークマARMROID[20]
2021年6月令和3年ヤマザキマザックが協働ロボットの自動化セル Ez LOADER 10 を完成(2023 年に Ez LOADER 30)ヤマザキマザックEz LOADER 10[7]
2025年10月令和7年DMG森精機が Robo2Go Open を出す。9 月には多品種変量生産のためにワークとパレットを柔軟に運ぶ MATRIS WPH もDMG森精機Robo2Go Open[19]

今:付加製造・歯車加工まで 1 台に2002 年〜

年出来事メーカー・機種出典
2002年平成14年★松浦機械製作所が、レーザーで金属の粉を固める金属光造形と、マシニングセンタの切削を 1 台にした金属光造形複合加工機を開発。2003 年に生産・販売を始め、2004 年に M-PHOTON25C が日本産業技術大賞を受け、LUMEX 25C を発表松浦機械製作所金属光造形複合加工機[17]
2014年10月平成26年ヤマザキマザックがハイブリッド複合加工機(金属の積層造形と切削)2 機種を発表。2016 年 11 月に VARIAXIS j-600 AM を完成ヤマザキマザック[7]
2016年10月平成28年オークマがレーザー複合加工機 MU-6300V LASER EX と MULTUS U3000 LASER EX を発表し、LASER EX シリーズを 5 機種にする。削る・旋削・研削のほか、焼入れと金属の積層造形まで 1 台でオークマMULTUS U3000 LASER EX ほか[21]
2018年9月平成30年★ヤマザキマザックが、複合加工機と歯車加工の専用機を融合した INTEGREX AG シリーズを完成ヤマザキマザックINTEGREX AG シリーズ[7]
2019年11月令和元年ヤマザキマザック工作機械博物館(岐阜県美濃加茂市)が開館。弓旋盤の複製から最新の MC・CNC 旋盤・複合加工機まで約 80 点を動く状態で展示ヤマザキマザック[22]
2020年8月令和2年DMG森精機が、金属を盛る積層造形(DED)と切削を組み合わせた LASERTEC 6600 DED hybrid を出すDMG森精機LASERTEC 6600 DED hybrid[19]
2023年6月令和5年中村留精密工業が、複合加工機を使う人向けの独自の「複合加工機検定」を始める中村留精密工業[9]
2025年令和7年オークマの欧州法人が「複合加工機の 50 年」をうたい、1975 年の LM70-AT から続く MULTUS シリーズを紹介オークマ[5]
2025年9月令和7年ヤマザキマザックが INTEGREX i NEO シリーズを完成し、DMG森精機が NTX の第 3 世代を出すヤマザキマザック・DMG森精機INTEGREX i NEO・NTX 第 3 世代[7][19]

この先と関係するページ

出典

国立国会図書館の資料は、個人向けデジタル化資料送信サービスの全文検索で 2026 年 10 月に確かめ、使ったコマを書いています。J-STAGE の 2 本の論文は全文を読んで確かめました。鈴木(2010)のマザックの年表は、同社の資料と聞き取りをもとに著者が作ったものです。データベースとメーカーの沿革は同じ月に確かめました。「世界初」「世界で最初」は、本文で「〜としています」と書いたものは、その資料自身の記述です。

  1. 『旋盤マニュアル 構造・精度編』大河出版(1981)コマ 72・73
  2. 『マシナリー』31巻470号 マシナリー刊行会(1968年8月)コマ 24
  3. 鈴木信貴「モジュール型産業におけるインテグリティーの獲得 ―日本工作機械産業の事例―」『赤門マネジメント・レビュー』9巻9号 pp.635-662(2010年)
  4. 『機械振興』5巻12号(通巻55号)機械振興協会(1972年12月)「新製品紹介シリーズ」コマ 47
  5. Okuma Europe プレスリリース「Increased flexibility and efficiency at lower cost」(2025年、複合加工機の 50 年)
  6. 日立精機『人にやさしい先進技術:知恵と創意の55年』(1991)コマ 17
  7. ヤマザキマザック「沿革」
  8. 『豊田工機技報』25巻1号(通巻90号)豊田工機(1984年8月)コマ 23
  9. 中村留精密工業「沿革」
  10. 日本機械工業連合会『生産技術高度化に関する調査研究報告書 航空機・宇宙産業用生産技術 昭和60年度』(1986)コマ 21・22
  11. 『自動化技術』23巻4号 工業調査会(1991年4月)コマ 64
  12. 国立科学博物館 産業技術史資料データベース「立型ターニングセンタ TMM-35/40N」
  13. 『機械振興』27巻3号(通巻310号)機械振興協会(1994年3月)「第24回中小企業向け自動化機械開発賞」コマ 5・18・19
  14. 国立科学博物館 産業技術史資料データベース「立型ターニングセンタ VC-6NM」
  15. 梅本良作・石村眞一「日本におけるNC工作機械のデザインに関する変遷 ―マシニングセンタを中心として(2)―」『技術と文明』19巻2号 pp.43-58(2015年)
  16. 国立科学博物館 産業技術史資料データベース「立型ターニングセンタ OMega 60YB」
  17. 松浦機械製作所「沿革について」
  18. 三井精機工業「沿革」
  19. DMG森精機「History」
  20. オークマ「沿革」
  21. MONOist「オークマ、レーザー複合加工機 2 機種」(2016年11月14日)
  22. ニュースイッチ(日刊工業新聞)「ヤマザキマザック工作機械博物館」(2019年12月24日)
  23. 国立科学博物館 産業技術史資料データベース「立型ターニングセンタ TDC-12N」
  24. 池貝「企業情報(沿革)」
  25. 『工作機械業界』教育社(1978)