ITALY 03FMS・CNC と輸出大国へ

1970 年代の半ばから、イタリアの工作機械は「自動化」で世界に出ていきます。Torino では Fiat のための機械を作る会社が集まって Comau になり、Piacenza の Mandelli はマシニングセンタを搬送とコンピュータでつないだ FMS を作りました。Vicenza 県の Salvagnini は板金を自動で曲げるパネルベンダを生み、Torino の Fidia は NC 装置、Prima Industrie はレーザ加工機の専業メーカーとして育ちます。1988 年、イタリアの工作機械の生産は米国を上回りました。その後も、家族経営の中小企業が多い産地のまま、生産の 6〜7 割を輸出する国になり、2017 年には機械への投資を税で強く後押しする Industria 4.0 の制度が国内の受注を押し上げます。この章は、国連工業開発機関(UNIDO)や米国標準局(NBS)の報告、イタリアの法令と統計、工作機械工業会(UCIMU)の発表、メーカーの沿革と目論見書、日本の会社の発表などで1 つずつ確かめ、出来事ごとに出典を付けました。

小さな会社が
得意を磨いて
世界へ!

マスコットのチップス

この章は「時代の章」です。戦後の復興、工作機械工業会 UCIMU のはじまり、Olivetti の NC と DEA の三次元測定機は第 2 章「経済の奇跡と工作機械」で扱います。機械ごとの仕組みの移り変わりは機種の章にまとめていて、NC 旋盤は第 4 章「イタリアの旋盤の系譜」、マシニングセンタ・5 軸・高速フライス盤は第 5 章、トランスファーライン・レーザ加工機・板金機・大形の中ぐり盤は第 8 章「その他の機械」で詳しく扱います。

FMS とロボット、専業メーカーの誕生(1973〜1989 年)

Fiat のそばで生まれた Comau

イタリアの自動化の中心にいたのは、自動車の Fiat です。1973 年、Fiat グループに機械を納めていた Torino の小さな会社がまとまり、工作機械の共同体(Consorzio Macchine Utensili)として Comau ができました[1]。自動車の工場には、エンジンの部品を削るトランスファーライン(専用の加工機を一列に並べ、部品を自動で次の機械に送るライン)や、車体を溶接する設備が欠かせません。親会社の工場が、そのまま試しの場になりました。

1978 年、Fiat は『Robogate』という 18 分の記録映画を作っています[11]。Robogate は、ロボットで車体を溶接して組み立てる仕組みの名前で、平田光弘(1988、Hitotsubashi Journal)は、車体の Robogate とエンジンの自動ライン LAM を Fiat の自動化の柱として挙げています[12]。Comau の沿革は 1984〜1993 年を「最初の FMS、高速加工、最初のレーザロボット」の時期と書き、のちの「Open Robogate」も自社の製品に数えています[1]。1980 年代の終わり、米国の業界誌の大手の表で Comau は工作機械の売上 3 億 8,000 万ドル・従業員 3,500 人の会社で、国連工業開発機関(UNIDO)の報告はイタリアと欧州で最大の工作機械会社としています。米国の Digital Equipment と合弁で、制御の仕事もしていました[2]。

Piacenza の Mandelli と FMS

同じころ、ミラノの南東にある Piacenza では、1932 年に精密加工の工場として始まった Mandelli が工作機械のメーカーになっていました。1965 年に最初の工作機械を作り、マシニングセンタの基本を備えた EGO で株式会社になります。同社の沿革によれば、1975 年に最初の FMS を作り、ドイツとフランスに販売・サービスの会社を置きました[5]。

FMS(Flexible Manufacturing System、柔軟な生産システム)は、何台かのマシニングセンタと、部品を載せたパレットを運ぶ台車、パレットを並べて待たせる棚、工具の管理、それらを指揮するコンピュータを一つにまとめた仕組みです。トランスファーラインは 1 つの部品を大量に流すのは得意ですが、品種が変わると作り直しになります。FMS なら、パレットごとに違う部品を載せ、プログラムを切り替えて同じ機械で削れます。1986 年に米国標準局(NBS)がまとめた世界の FMS の一覧を見ると、Mandelli の FMS はフランスの Alsthom(電動機の部品)、Caterpillar(建設機械)、オーストリアの Steyr、イタリアの IBM や Nuovo Pignone(タービン)、Rockwell(トラックの差動装置)にも入っていました[13]。

いちばん大きかったのは、1984 年に Maranello の Ferrari に納めたエンジン部品の FMS です。マシニングセンタ 9 台と洗浄機 2 台、29 種類の部品を、1 日 13 台分のエンジンの数だけ削り、制御には Mandelli が 1980 年に出した自社の NC「Plasma」を使っていました[13][5]。1985 年には自社の工場にも FMS を入れ、マシニングセンタ 5 台・三次元測定機・20 パレットの棚・120 本の工具で、3 交替のうち 1 交替は人がいないまま工作機械の部品を削っています[13]。

現場で何が変わったか。FMS の工場では、段取りは「機械の上」でなく「機械の外」でするものになりました。作業者はパレットに部品を取り付けて棚に置き、機械は順番が来たパレットを自分で取り込んで削ります。工具は本数の多いマガジンで共用し、寿命が来たら予備に替え、削ったあとは測定機やプローブ(触れて位置を測るセンサ)で寸法を確かめます。夜の無人運転は、この「段取りの外出し」と「工具と寸法の自動管理」ができて初めて成り立ちました。今のパレットチェンジャ付きのマシニングセンタの使い方の多くは、この時代の FMS から来ています(今の MC はマシニングセンタのページ)。

NBS の一覧に載るイタリアの FMS は約 25 件で、米国・日本・西ドイツに次ぐ 4 番目の多さでした。納めた会社は Mandelli と Comau のほか、大形の機械の Berardi(Milano の Nuova Innocenti、Genova の Piaggio Gilera など)、計算機の Olivetti(Modena の Maserati にマシニングセンタ 10 台の FMS)、Jobs などです[13]。Comau は Fiat の工場(ホイールハブ、自在継手、トラクタの変速機ケース)だけでなく、東ドイツのトラックの VEB Robur やベルギーの DAF にも FMS を出していました[13]。

板金を自動で:Salvagnini のパネルベンダ

削る機械だけではありません。1963 年に Milano で潤滑装置の会社として始まった Salvagnini は、1974 年に Vicenza 県の Sarego へ移り、1977 年に創業者の Guido Salvagnini がパネルベンダ P4 を考えて作ります[6]。プレスブレーキ(上下の型で板を挟んで曲げる機械)では、曲げるたびに人が板を持ち替えます。パネルベンダは板を台の上で押さえ、機械が板を回しながら 4 辺を順に曲げるので、冷蔵庫の外板や制御盤の扉のような箱の形を、人の手を借りずに続けて作れます。翌 1978 年には穴あけと切断を 1 台で行うパンチ・シャー S4 を出し、S4 と P4 をつないで、板から曲げた部品までを自動で流すラインにしました[6]。1985 年には General Electric のために、このラインを何本も組み合わせて夜も無人で動く板金の工場を作っています。停電のあとの立ち上げまで自動で、27 年使われて 2012 年に役目を終えました[6]。

新しい専業メーカー:Fidia・Prima・Jobs・MCM

1970 年代の後半、イタリアでは自動化の一つの分野に絞った会社が次々に生まれます。1974 年、Torino で創業した Fidia は、フライス盤のための NC 装置を設計・製造しました。金型や航空機の部品のような自由な曲面を削る制御が得意で、1984 年にはドイツと米国に販売会社を置いています[3]。1977 年には Torino 近くの Collegno で Prima Industrie が生まれ、レーザを使う加工機を専門にしました。名前は「製造の自動化の進歩(PRogress In MAnufacturing)」から取っています[7]。

Piacenza では 1978 年に Jobs が産業用の自動化機械の会社として生まれ、1979 年に重い物を運ぶロボット、1981 年に主軸が毎分 18,000 回転の移動コラム形 5 軸フライス盤 Jomach 16、1982 年に移動門形の高速 5 軸機 Jomach 25 を出しました。自動車のデザインモデルや航空機の部品を削るための機械です[9]。同じ 1978 年に生まれた MCM(Machining Centers Manufacturing)は、1979 年に横形の最初のマシニングセンタを出し、1985 年に英国のブレーキメーカーへ最初の FMS を納めました[10]。ロボット・NC・レーザ・板金・高速 5 軸と、それぞれが一つの技術に絞り、その分野で国外の大きな工場に売り込む形です。

米国を上回る:1980 年代の数字

UNIDO の報告によれば、イタリアは 1978 年から世界 5 位の工作機械の生産国でした。戦後の Marshall 計画と政府の助けで生まれた工作機械メーカーが、1970 年代に国境の外へ売り始めたと報告は書いています[2]。1980 年代の前半は不況で生産が落ちますが、1988 年には 26 億 3,900 万ドルとなり、米国の 25 億 1,900 万ドルを上回りました。世界の約 7.5% で、NC 工作機械の生産では欧州で 2 位です[2]。日本と同じように、中小の工場が柔軟に使える NC 機を求めたことが、イタリアの NC 機の増産を支えた、と UNIDO は見ています[2]。

作り手の側も小さな会社が中心でした。UCIMU が 450 社のうち 300 社を調べた結果では、72% が従業員 50 人未満で、200 人未満の会社が雇用の 65%、生産の 64%、輸出の 57.6% を占めていました。ドイツの工作機械メーカーの平均の規模はイタリアの 5 倍です。そして産業の 71% が Lombardia(ミラノの州)と Piemonte(トリノの州)に集まっていました[2]。

世界の中の順位5 位(1978 年〜)1988 年に生産で米国を上回る[2]
1989 年の生産30.7 億ドル世界の 7.3%、輸出 15.4 億ドル[2]
NBS の FMS の一覧約 25 件米・日・西独に次ぐ 4 番目[13]

危機と再編、得意分野へ(1990〜2008 年)

1993 年の危機と Mandelli

FMS の先頭を走った Mandelli は、1989 年 12 月に株式を上場し、IBM Italia と合弁会社 Spring をつくりました[5]。ところが 1990 年代の初めの世界的な不況で工作機械の注文が落ち込み、1993 年に経営に行き詰まって、裁判所の管理の手続きに入ります。1994 年 3 月には、Rovereto の FMS-Pama(中ぐりフライス盤の PAMA)や Brescia の Innse Macchine Utensili を含むグループの会社が、国の特別管理の下に置かれました[15][16]。1994〜95 年にイタリアの実業家のグループが引き継ぎ、1995 年 5 月に Milano で開かれた国際見本市 EMO で新しい機械を出して立て直しました[5]。大きなシステムは、1 件の注文が大きいぶん、不況で注文が止まると打撃も大きくなります。

速く、5 軸で、大きく

1990 年代から 2000 年代、イタリアのメーカーは「速く削る」「5 軸で削る」「大きな物を削る」に磨きをかけます。NC 装置の Fidia は 1990 年代の初めに自社の制御を積んだ高速フライス盤(HSM)を作り始め、のちに小形から大形の門形まで揃えました[3]。高速フライス盤は、主軸を速く回して切り込みを浅くし、送りを速くして削る機械です。焼入れした金型を、放電加工や手仕上げの前に、細い工具で直接仕上げに近い面まで削れるようにしました。制御は、たくさんの短い直線の指令を先読みして滑らかにつなぐ力が問われ、NC 装置のメーカーが機械まで作る理由になりました(CAM と工具の動き方はCAD/CAMのページ)。

Jobs は 1990 年に 37 kW の主軸とヘッドの自動交換を持つ Jomach 245 を、2000 年には軸をリニアモータで動かす LinX Compact を出します。ボールねじの代わりに、磁石の力で直接テーブルや主軸頭を動かすので、大きな部品でも速く送れます[9]。Mandelli は 2000 年に横形の 5 軸マシニングセンタ SPARK の開発を始め、2008 年には Boeing 787 向けの長さ 6 m のチタン部品を削る大形 5 軸機のラインを受注しました[5]。MCM は 1995 年にフランスの Dassault Aviation へ 5 軸のセル 4 つの FMS を納めています[10]。航空機の構造部品は、材料の塊から大部分を削り取って薄い壁やリブを残すので、速く大量に削れる 5 軸機が求められました(5 軸加工の考え方は5 軸加工のページ)。

板金でも、Salvagnini が 1993 年に工場の生産を計画して機械に仕事を割り振るソフト OPS を初めて納め、2007〜08 年にはファイバレーザを熱源にした板金のレーザ加工機を出しています[6]。ファイバレーザは、細いガラスの繊維の中で光を強めるので、炭酸ガスレーザより装置が小さく、電気を光に変える効率も高い熱源です。

上場、合弁、そしてグループへ

1990 年代の終わりから、会社の形も変わります。Fidia は 1993 年に中国の航空の研究所などと北京に合弁会社を、2005 年には中国最大の工作機械メーカー瀋陽機床と 51% 出資の合弁会社をつくり、中国で NC 装置と高速フライス盤を作り始めました[3]。Prima Industrie は 1999 年に Milano の株式市場に上場し[18]、2008 年にはパンチングと曲げのフィンランドの Finn-Power と一つになって、切る(レーザ・パンチ)から曲げるまでの板金の機械を揃えました。これが今の Prima Power のはじまりです[7]。

大形の機械では、Milano の Innse(1887 年)と Berardi(1926 年)が一つになった Innse-Berardi が 1999 年に Brescia の Camozzi グループに入ります[17]。Camozzi は 2003 年に、米国 Rockford の大形 5 軸機の Ingersoll Machine Tools も買いました。工場は米国に残っています[22](米国側から見た話はアメリカ第 5 章「輸入の波と再生」)。

2007 年、イタリアの工作機械工業の生産は 53 億 3,000 万ユーロ、雇用は 2 万 8,560 人で、生産の 55.7% を輸出していました。2007〜2011 年の平均で、イタリアは世界 4 位の生産国(世界の 6.5%)、3 位の輸出国(9.2%)です。会社の平均の従業員は約 200 人で、Lombardia と Emilia-Romagna に多く集まっていました[23]。

グループ化と 4.0、外国資本(2009 年〜)

2009 年の落ち込みと、輸出で生きる形

2009 年、世界の不況でイタリアの工作機械の生産は前の年より 29.6% 減り、37 億 7,000 万ユーロになりました。落ち込みの多くは国内の注文で、国内への納入は 25.2% 減ります。その一方で輸出の比率は上がり、2011 年には生産の 72.2% が輸出でした[23]。国内の景気が悪くても、外で売れる会社が生き残る、という形がはっきりします。

この時期、中小のメーカーはグループにまとまっていきます。Jobs は 2009 年に Reggio Emilia のフライス盤メーカー Sachman を取り込み、2012 年には立形マシニングセンタの Sigma の過半を取って、Jobs・Sachman・Rambaudi・Sigma をまとめる持株会社 FFG EUROPE ができました。台湾の FFG グループの機械の販売も、Piacenza の Jobs の工場で始まっています[9]。

Industria 4.0:機械を買うと税が軽くなる

2016 年 12 月 11 日、2017 年の国家予算法(法律第 232 号)が成立しました。その第 1 条第 9 項は、「Industria 4.0」の形の技術とデジタルの変化を進めるため、法律の付属表 A に挙げた新しい機械を買うと、取得の費用を 150% 上乗せして償却できる、と定めています[24]。会社は費用の 2.5 倍を経費として利益から差し引けるので、ハイパー償却(iper-ammortamento、250%)と呼ばれました。普通の新しい機械には 140% の超償却(super-ammortamento)があり、ネットワークにつながる CNC の機械やロボットは、より手厚い 250% の対象になります[25]。目的は、古い機械を、ロボットや自動化とつながる新しい機械に替えてもらうことでした[25]。町工場にとっても、古い汎用機を新しい CNC 機に替える強い理由ができたのです。

効果はすぐ受注に出ました。UCIMU の受注指数で、2017 年の国内からの工作機械の受注は前の年より 45.9% 増え、10〜12 月は 86.2% 増です。UCIMU の会長は、超償却とハイパー償却の効果がはっきり出たと述べています[26]。経済発展省の集計では、2017 税年度にハイパー償却を使って約 1 万 5 千社が機械などに約 100 億ユーロを投資しました[27]。Istat の調査でも、製造業の会社の 53% が、ハイパー償却はデジタル技術への投資を決めるのに大きいかある程度の役割を果たしたと答えています[25]。優遇は 2018 年の予算法で「Impresa 4.0」として続き(超償却は 130% に下がる)[26]、2020 年からは税額控除に切り替える案が示されました[27]。工作機械・ロボット・自動化の生産は 2018 年に 67 億 7,500 万ユーロまで伸びています[28]。

現場で何に効くか。この制度で「つながる機械」が一気に増えたことは、イタリアの機械を買う側の町工場にも関係します。機械の状態や稼働を外へ送る仕組みが、標準の装備として付いてくるようになりました。ドイツで同じころ始まったインダストリー 4.0 と機械の通信の標準(umati)は、ドイツ第 4 章「NC・メカトロニクスとインダストリー 4.0」で扱っています。

名門の再建と、外国資本

2020 年代には、名門の持ち主が次々に替わります。Fidia は自動車と航空の不況と新型コロナで売上が落ち、2020 年 11 月に再建の手続き(concordato preventivo)を申し立てました。2022 年に新しい投資家の出資で計画が認められ、2024 年 12 月に手続きを終えています[4]。Mandelli は 2021 年に Allied International のグループに入りました[5]。Prima Industrie は 2022 年、投資ファンドの会社 Femto Technologies が議決権の過半を取り、上場の廃止を目指すと伝えられ[18]、2026 年にグループの名前を Prima Power に一本化しています。約 1,700 人、売上は約 5 億ユーロの会社です[8]。Comau は 2024 年、米国の投資会社 One Equity Partners が過半を持ち、Fiat の流れをくむ Stellantis は少数株主に残りました[36][37]。

日本の会社も入ってきます。2023 年 2 月、Nidec は Rovereto の PAMA と関係会社の全株を取得しました。PAMA は 1926 年創業の中ぐりフライス盤(主軸が前後に伸びて深い穴をくり、面も削る大形の横形機)のメーカーで、従業員は約 430 人です[31][32](後の「日本とのつながり」)。

今のイタリア:生産 5 位、輸出 4 位

米 Gardner の世界調査(2024 年分)では、イタリアの工作機械の生産は 66 億ドルで、中国・ドイツ・日本・米国に次ぐ世界 5 位、輸出は 45 億ドルで中国・ドイツ・日本に次ぐ 4 位、消費は 5 位でした[34]。UCIMU の速報では、2024 年は国内の消費が 34.8% 減って生産も 11.4% 減ったものの、輸出は 44 億 9,000 万ユーロの過去最高で、生産の 66.6% が輸出です[33]。ハイパー償却の大きな波のあとの反動も見えます。

産地の形は 1980 年代と変わったところもあります。イタリア貿易振興機構(ICE)によれば、2025 年の生産 63 億 2,700 万ユーロのうち、Lombardia が 46.6%、Veneto などの北東部(Triveneto)が 20.5%、Emilia-Romagna が 17%、Piemonte が 13.6% です。会社の 67% は中小企業で、家族経営が多い一方、残り 33% の大きな会社が生産の 78%、輸出の 84% を担っています[38]。1980 年代の終わりに「71% が Lombardia と Piemonte」だったのと比べると[2]、Veneto と Emilia-Romagna の重みが増しました。Salvagnini の Sarego、Breton の Castello di Godego(石材の機械から始まり、創業 60 年で約 1,000 人)、Piacenza の Jobs・MCM・Mandelli は、その北東・中北部の産地の代表です[6][30]。

数字で見る:生産・輸出・輸入

イタリアの工作機械の生産・輸出・輸入と、そこから計算した消費(生産−輸出+輸入)と輸出比率(輸出÷生産)です。系列によって単位と範囲が違います。1978〜1989 年は UNIDO の表(百万ドル、工作機械)、2007〜2011 年は UCIMU の 2011 年の資料(百万ユーロ)、2017 年からは UCIMU の工作機械・ロボット・自動化の合計(百万ユーロ)で、系列をまたいで比べないでください。2023・2024 年は年末の速報で、のちの確定値と少し違います。

年生産輸出輸入消費輸出比率系列出典
19781,06059619465856.2%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19791,35468925692150.9%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19801,7288483801,26049.1%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19811,5137953001,01852.5%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19821,13864020370156.2%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19831,03759311255657.2%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
198499655811355156.0%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19851,11570719660463.4%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19861,62397134799959.8%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19872,5851,0485662,10340.5%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19882,6391,3097072,03749.6%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
19893,0671,5378452,37550.1%UNIDO・百万ドル(工作機械)[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.91]
20075,3302,9691,4033,76455.7%UCIMU・百万ユーロ(2011 年の資料)[23・PDF p.2]
20085,3523,2061,4703,61759.9%UCIMU・百万ユーロ(2011 年の資料)[23・PDF p.2]
20093,7702,3996422,01363.6%UCIMU・百万ユーロ(2011 年の資料)[23・PDF p.2]
20103,7892,4626912,01865.0%UCIMU・百万ユーロ(2011 年の資料)[23・PDF p.2]
20114,2503,0708061,98672.2%UCIMU・百万ユーロ(2011 年の資料)[23・PDF p.2]
20176,0853,3851,7644,46455.6%UCIMU・百万ユーロ(ロボット・自動化を含む)[28]
20186,7753,6632,0525,16454.1%UCIMU・百万ユーロ(ロボット・自動化を含む)[28]
20196,5103,5991,9444,85555.3%UCIMU・百万ユーロ(ロボット・自動化を含む)[28]
20205,1822,8611,2403,56155.2%UCIMU・百万ユーロ(ロボット・自動化を含む)[28]
2023速報7,5603,825——50.6%UCIMU・百万ユーロ(ロボット・自動化を含む)[29]
2024速報6,7454,4901,5403,79566.6%UCIMU・百万ユーロ(ロボット・自動化を含む)[33]

1990〜2006 年と 2012〜2016 年の年ごとの値は、UCIMU の統計を一次資料で確かめられた分がまだ無いため載せていません。2025 年の値は資料によって違いがあり(生産 63〜64 億ユーロ)、確定値を待って足します。世界の順位は、1978 年から 5 位(UNIDO)、2007〜2011 年の平均で生産 4 位・輸出 3 位(UCIMU)、2024 年は生産 5 位・輸出 4 位(Gardner)です。

⛩日本とのつながり

同じ「中小企業と NC」の国

UNIDO の 1991 年の報告は、イタリアと日本を並べて書いています。どちらの国でも、中小の工場が柔軟に使える NC 機を求めたことが NC 機の増産を支え、大きく柔軟な下請けの網があることが NC 工作機械の普及の高さと結びついている、という見方です[2]。ただし規模は大きく違い、1989 年の生産は日本が 98 億 1,700 万ドルで世界の 23.3%、イタリアは 30 億 6,700 万ドルで 7.3% でした[2]。日本の工作機械の生産は 1982 年に世界 1 位になり、2008 年まで首位を続けます(数字で見る工作機械の歴史)。日本の FMS とマシニングセンタの広がりは、国産アーカイブ第 2 章「フライス盤・MC の系譜」の年表で見られます。

Amada と Mandelli、そして Piacenza

Mandelli の沿革によれば、同社は 1980 年に日本の Amada と生産のライセンス契約を結んでいます。中身は沿革に書かれていません[5]。Amada は翌 1981 年に Milano に販売会社 AMADA Italia を設け、1987 年に Piacenza のプレスブレーキのメーカー Schiavi Macchine Industriali と合弁会社 AMADA Schiavi をつくり、2004 年にそれを買い取りました。今の AMADA Italia は Piacenza 県に本拠と 1 万 5 千 m² を超える技術センターを持っています[14]。板金の機械では、Salvagnini や Prima Power と同じ市場で競う相手です。

Nidec と PAMA

2022 年 11 月、Nidec は PAMA と 9 つの関係会社の株を買う契約を結び、2023 年 2 月 1 日に全株を取得しました。Nidec は 2021 年に三菱重工業の工作機械の会社(今の Nidec Machine Tool)を、2022 年に OKK(今の Nidec OKK)を傘下に入れていて、大形機・複合加工・5 軸の品揃えと、欧州・米国・中国での販売を強めるのが狙いだと説明しています[31][32]。2026 年 7 月の PAMA の創業 100 年の催しには、UCIMU の事務局長も出席しています[39]。

今の位置を日本と比べる

2024 年の Gardner の調査で、日本の生産は 79 億ドルで 3 位、イタリアは 66 億ドルで 5 位、輸出は日本 57 億ドル(3 位)、イタリア 45 億ドル(4 位)です[34]。国内の消費はイタリア(34 億ドル、5 位)が日本(29 億ドル、6 位)を上回りました[34]。2024 年の Milano の見本市 BI-MU には日本の会社も出展しています[35]。

⑂メーカーの系図

この章に出てくる主な会社の名前と持ち主の移り変わりです。帯の色が変わるところで名前や持ち主が変わり、赤い矢印は合併の行き先です。1960 年より前からある会社(Mandelli は 1932 年、PAMA は 1926 年、Innse は 1887 年、Berardi は 1926 年の創業)は 1960 年から描いています。帯の右端の › は今も続く会社です。

1960198020002020Comau(Fiat グループ、のち Stellantis)Comau(One Equity Partners が過半)Officina MandelliMandelli S.p.A.(1989 上場)Mandelli(新しい株主)Mandelli(Allied International)Fidia再建FidiaPrima IndustriePrima Industrie(Prima Power)Prima Industrie(Femto の傘下)Prima PowerFinn-Power(フィンランド)2008 Prima と一つにSalvagniniJobsJobs(FFG EUROPE)MCMInnse・Berardi(のち合併)Innse-Berardi(Camozzi)PAMA(1980 年代に Rovereto へ)FMS-Pama(Mandelli グループ)Pama S.r.l. → PAMA S.p.A.PAMA(Nidec)AMADA Italia(日本の Amada の子会社)帯の区切りが社名の変更。赤い矢印は合併・事業の譲渡の行き先。右端の › は今も続く会社。
出典:各社の沿革と社史 [1][2][36][37][5][3][4][7][18][8][6][9][10][17][31][32][15][14]

見に行ける所

自動化の時代の記録と、今の機械が見られる所です。公開日・見学の可否は、行く前にそれぞれの施設・会社の案内で確かめてください。

Archivio Nazionale Cinema d'Impresa(企業映画の国立アーカイブ)Ivrea, Piemonte(ピエモンテ州)2006 年に Olivetti の元の保育園の建物に開いた企業映画の書庫。Fiat の記録映画『Robogate』(1978)を含む Fiat の映画を保管し、一部はオンラインの CinemaimpresaTV で見られる[40][11]
BI-MU(fieramilano Rho)Rho, Lombardia(ロンバルディア州、Milano の近く)UCIMU が後押しする工作機械・ロボット・自動化の国内見本市。2 年ごと。2024 年は 750 社を超える出展。EMO が Milano で開かれる年もある[35]
Salvagnini CampusSarego, Veneto(ヴェネト州、Vicenza 県)パネルベンダ P4 の Salvagnini の本拠にある、訪問者に開いた技術センター。見学は会社の案内で確かめてください[6]
AMADA Italia Technical CentrePontenure, Emilia-Romagna(エミリア=ロマーニャ州、Piacenza 県)Amada のイタリアの技術センター(1 万 5 千 m² 超)。2024 年に溶接のショールーム Welding Technical Center を開いた。訪問は事前に問い合わせを[14]

⌛年表

この章で確かめた出来事のすべてです。番号は出典で、押すとその資料が開きます。「PDF p.」は PDF のページ、「p.」は誌面のページです。

FMS とロボット危機と再編グループ化と 4.01970198019902000201020202030197319751977198019841988200820162023黄色の点は大事な出来事(下の表の ★、年は混み合うところを省略)。時代の区切りの年は目安です。

FMS とロボット、専業メーカーの誕生1973〜1989 年

年出来事メーカー・機種出典
1973年★Fiat グループに機械を納めていた Torino の小さな会社がまとまり、工作機械の共同体(Consorzio Macchine Utensili)として Comau が生まれる。1980 年代の終わりにはイタリアと欧州で最大の工作機械会社と数えられたComau[1][2・PDF p.39]
1974年★Torino で Fidia が創業し、フライス盤のための NC 装置を作り始める。金型や航空機の部品のような複雑な形を削る制御が得意分野になる創業者は Ing. Giuseppe Morfino(目論見書の記述)。会社の所在は今は San Mauro TorineseFidia[3][4・PDF p.84]
1975年★Piacenza の Mandelli が最初の FMS(複数のマシニングセンタを搬送装置とコンピュータでつないだ、品種を替えて流せる生産システム)を作り、ドイツとフランスに販売・サービスの会社を置く年は Mandelli の公式の沿革による。1983〜85 年の Mandelli の FMS の納入先は NBS の調査で確かめられるMandelli[5]
1977年★Salvagnini の創業者 Guido Salvagnini が、板の 4 辺を自動で曲げて箱や扉の形にするパネルベンダ P4 を考えて作る。1963 年に Milano で潤滑装置の会社として始まり、1974 年に Vicenza 県の Sarego へ移っていたSalvagniniP4[6]
1977年Torino 近くの Collegno で Prima Industrie が生まれる。名前は「製造の自動化の進歩(PRogress In MAnufacturing)」の頭文字で、レーザを使う加工機が専門になるPrima Industrie[7][8]
1978年Salvagnini がパンチ・シャー(穴あけと切断を 1 台で行う板金機)S4 を出す。のちに S4 と P4 をつなぎ、板から曲げた部品までを自動で流す同社の最初の FMS になるSalvagniniS4[6]
1978年Piacenza で Jobs が産業用の自動化機械のメーカーとして生まれ、翌 1979 年に重い物を運ぶロボットを出して 5・6 軸の搬送ロボットの生産を始めるJobs[9]
1978年MCM(Machining Centers Manufacturing)が設立され、1979 年に横形主軸とカルーセル(回転式)の工具マガジンを持つ最初のマシニングセンタ PROGRESS を出すMCMPROGRESS[10]
1978年★Fiat の記録映画『Robogate』(18 分)が作られる。Robogate はロボットで車体を溶接して組み立てる仕組みで、Fiat はこれとエンジンの自動ライン LAM を自動化の柱にした稼働の開始年と最初の車種は確かめられなかった。Comau の沿革には後の「Open Robogate」が出てくるFiat・ComauRobogate[11][12・PDF p.12][1]
1978年★UNIDO の集計では、イタリアはこの年から世界 5 位の工作機械の生産国になる。1978 年の生産は 10 億 6,000 万ドル、そのうち 5 億 9,600 万ドルが輸出だった—[2・PDF p.63][2・PDF p.52][2・PDF p.90]
1980年★Mandelli が日本の Amada と生産のライセンス契約を結ぶ。同じ年、自社の NC 装置「Plasma」とマシニングセンタ QUASAR を出す契約の中身と期間は確かめられなかった(Mandelli の沿革だけの記述)Mandelli・AmadaPlasma・QUASAR[5]
1980年大形の機械の Berardi が、Milano の自動車会社 Nuova Innocenti にエンジンのシリンダヘッドを削る FMS(マシニングセンタ 4 台)を納めるBerardi[13・PDF p.86]
1981年Olivetti が Modena の Maserati に、マシニングセンタ 10 台と洗浄機をつないだエンジン部品の FMS を納める。1 日 200 個の生産で、自動検査とプローブ(タッチセンサ)での測定を備えたOlivetti[13・PDF p.85]
1981年Jobs が移動コラム形の 5 軸フライス盤 Jomach 16 を出す。主軸は毎分 18,000 回転で、1980 年代の初めから高速・高出力のフライス加工機を作り始めるJobsJomach 16[9]
1981年(日本)Amada がイタリアに販売会社 AMADA Italia を Milano に設立するAMADA Italia[14]
1982年Jobs が移動門形の高速 5 軸フライス盤 Jomach 25 を出す。自動車のデザインモデルや航空機の部品を削るための機械JobsJomach 25[9]
1983年Comau が東ドイツの VEB Robur(トラック)に FMS を納める。NBS の一覧では、Comau の FMS はベルギーの DAF Trucks(1985 年)などにも出ているComau[13・PDF p.66][13・PDF p.53]
1983年Mandelli が France の Alsthom Unelec(Orléans)に電動機の部品の FMS を納める。マシニングセンタ 3 台、工具 60 本の ATC、レールを走る台車 1 台、DEC のミニコン PDP-11/24 で管理し、2 人で動かしたMandelli[13・PDF p.68]
1984年★Mandelli が Maranello の Ferrari にエンジン部品の FMS を納める。マシニングセンタ 9 台・洗浄機 2 台・29 品目、1 日 13 台分のエンジンの部品を削り、制御は Mandelli の「Plasma」Mandelli[13・PDF p.80]
1984年Comau が Torino の Fiat(ホイールハブ・自在継手)、Modena の Fiat Trattori(変速機ケース)、Bologna の Bonfiglioli に FMS を納める。ロボットで部品を載せ降ろしし、自動検査を備えたComau の沿革は 1984〜1993 年を「最初の FMS、高速加工、最初のレーザロボット」の時期とするComau[13・PDF p.81][13・PDF p.82][13・PDF p.79][1]
1985年★Salvagnini が General Electric のために、S4 と P4 のラインを何本も組み合わせて夜も無人で動く板金の工場を作る。停電のあとの再起動まで自動で、27 年使われて 2012 年に役目を終えたSalvagniniS4+P4[6]
1985年Mandelli が自社の工場に FMS を入れる。マシニングセンタ 5 台・三次元測定機 1 台・20 パレットのカルーセル・120 本の工具を持ち、3 交替のうち 1 交替は無人で工作機械の部品を削ったMandelli[13・PDF p.85]
1985年MCM が英国の Lucas Girling(ブレーキ)に最初の FMS を納める。翌 1986 年に FMS の監視ソフト FMX を作る部門 MCE を設けるMCM[10]
1986年米国標準局(NBS)が世界の FMS の導入例をまとめる。一覧ではイタリアは約 25 件で、米国・日本・西ドイツに次ぐ 4 番目に多く、納めた会社は Mandelli・Comau・Berardi・Olivetti・Jobs など件数は一覧を数えた値(米国 64・日本 62・西ドイツ 27・イタリア 25・スウェーデン 21・英国 19)—[13・PDF p.79][13・PDF p.91]
1987年(日本)Amada が Piacenza のプレスブレーキのメーカー Schiavi Macchine Industriali と合弁会社 AMADA Schiavi をつくるAMADA Schiavi[14]
1988年★イタリアの工作機械の生産が 26 億 3,900 万ドルになり、米国(25 億 1,900 万ドル)を上回る。世界の約 7.5% で、NC 工作機械の生産では欧州 2 位だった—[2・PDF p.52][2・PDF p.63]
1988年American Machinist の大手の表で、Comau は工作機械の売上 3 億 8,000 万ドル・従業員 3,500 人。Fiat グループの会社で、Digital Equipment と合弁で制御の仕事もしていたComau[2・PDF p.38][2・PDF p.39][2・PDF p.31]
1989年イタリアの工作機械の生産は 30 億 6,700 万ドルで世界の 7.3%(5 位)、輸出は 15 億 3,700 万ドル。UCIMU の調べでは 300 社のうち 72% が従業員 50 人未満で、産業の 71% が Lombardia と Piemonte に集まっていた—[2・PDF p.52][2・PDF p.90][2・PDF p.33][2・PDF p.40]
1989年12月Mandelli が 12 月 18 日に株式を上場し、IBM Italia と合弁会社 Spring をつくるMandelli[5]

危機と再編、得意分野へ1990〜2008 年

年出来事メーカー・機種出典
1990年Jobs が 37 kW の主軸とヘッドの自動交換を持つ Jomach 245 を出す。1980 年代に金型・エネルギー・ジェットエンジンの部品へ用途を広げていたJobsJomach 245[9]
1990年代初めNC 装置の Fidia が、自社の制御を積んだ高速フライス盤(HSM)を作り始める。のちに小形の HS664 から大形の門形 GTF まで揃える「1990 年代の初め」とだけ書かれ、年は特定できないFidia[3]
1993年世界の不況で Mandelli が経営に行き詰まり、会社の管理の手続き(amministrazione controllata)に入る。1994〜95 年にイタリアの実業家のグループが引き継ぎ、1995 年 5 月の EMO Milano で新しい STORM と ROCK を出すMandelli[5]
1993年Salvagnini が板金の工場の生産を計画・配分する管理ソフト OPS を初めて納めるSalvagniniOPS[6]
1993年Fidia が中国の航空技術の輸出入公社・北京の航空製造技術研究所と合弁会社 Beijing Fidia をつくり、中国で NC 装置を組み立てるFidia[3]
1994年3月国が Mandelli グループの会社を特別管理(amministrazione straordinaria)の下に置く。グループには Rovereto の FMS-Pama(中ぐりフライス盤)、Brescia の Innse Macchine Utensili、Padova の Saimp Sistemi、立て旋盤の Omba、Oerlikon Macchine なども入っていた多くの会社は 1994 年 3 月 15 日に手続きに入った。1996 年、Rovereto の事業は Pama S.r.l. が、Piacenza の工場は Mandelli Industrie が引き継いだMandelli グループ[15][16]
1995年Dassault Aviation(仏)が、MCM の 5 軸マシニングセンタ Clock 900 のセル 4 つからなる FMS を選ぶMCMClock 900[10]
1999年大形の中ぐり盤・門形機の Innse-Berardi が、Brescia の Camozzi グループに入る。Innse(1887 年)と Berardi(1926 年)が一つになった会社Innse-Berardi[17]
1999年10月Prima Industrie が、成長企業のための Milano の新しい株式市場 Nuovo Mercato に上場する(公開価格 1 株 30 ユーロ)Prima Industrie[18][19]
2000年Jobs がリニアモータで軸を動かす高速フライス盤 LinX Compact を出す。大きな部品を高速で削る新しい世代の機械JobsLinX Compact[9]
2000年Mandelli が横形の 5 軸マシニングセンタ SPARK の開発を始める(2005 年に SPARK X)MandelliSPARK[5]
2000年NC 装置と高速フライス盤の Fidia が Milano の証券取引所に上場する。9 月の臨時株主総会で、成長企業向けの市場 Nuovo Mercato への上場の手続きを始めると決めていたFidia[20][21]
2003年Camozzi グループが、米国 Rockford の大形 5 軸機の Ingersoll Machine Tools を買う。工場は米国に残ったCamozzi・Ingersoll[22][17]
2004年(日本)Amada グループが AMADA Schiavi を買い取り、AMADA Italia は Piacenza 県の Vigolzone に本拠を置くAMADA[14]
2005年Fidia が中国最大の工作機械メーカー瀋陽機床(Shenyang Machine Tool)と合弁会社 Shenyang Fidia NC&M をつくる(Fidia が 51%)。高速フライス盤と NC 装置を作るFidia[3]
2007年イタリアの工作機械工業の生産は 53 億 3,000 万ユーロ、輸出比率 55.7%、雇用 2 万 8,560 人。世界 4 位の生産国(世界の 6.5%)、3 位の輸出国(9.2%)だったUCIMU の 2011 年の資料による(2007〜2011 年の値)—[23・PDF p.2]
2008年★Prima Industrie がフィンランドの Finn-Power(1969 年創業、パンチングと曲げ・FMS)と一つになり、板金の機械をレーザから曲げまで揃える Prima Power の形ができるPrima Industrie・Finn-Power[7][8]
2007〜08年Salvagnini がファイバレーザを熱源にした板金のレーザ加工機 L1Xe を出す(2007〜08 年に研究)SalvagniniL1Xe[6]
2008年Mandelli が、Boeing 787 向けの長さ 6 m のチタン部品を削る大形 5 軸機 RUMBLE のラインを受注するMandelliRUMBLE[5]

グループ化と 4.0、外国資本2009 年〜

年出来事メーカー・機種出典
2009年世界の不況で、イタリアの工作機械の生産が前の年より 29.6% 減って 37 億 7,000 万ユーロに。国内の納入は 25.2% 減ったが、輸出比率は 63.6% に上がった—[23・PDF p.2]
2009年10月Jobs が 10 月 1 日、Reggio Emilia の横形・立形のフライス盤のメーカー Sachman を取り込むJobs・Sachman[9]
2012年Jobs が立形マシニングセンタの Sigma の過半を取得し、Jobs・Sachman・Rambaudi・Sigma をまとめる持株会社 FFG EUROPE ができる。台湾の FFG グループの機械の販売も Jobs の工場で始まる2014〜15 年に Sachman・Rambaudi・Sigma の生産は Piacenza の Jobs の工場へ移ったJobs(FFG EUROPE)[9]
2016年12月★2017 年の国家予算法(12 月 11 日、法律第 232 号)が「Industria 4.0」のための投資を優遇する。指定した機械(付属表 A)を買うと、取得の費用を 150% 上乗せして償却できる(ハイパー償却、合わせて 250%)2017 年中の投資が対象(年内に注文と 20% 以上の前払いがあれば翌年まで)。普通の機械の 140% の超償却(super-ammortamento)と組み合わさる—[24][25・p.78]
2017年★UCIMU の受注指数で、国内からの工作機械の受注が前の年より 45.9% 増える。10〜12 月は 86.2% 増。UCIMU の会長は、超償却とハイパー償却の効果がはっきり出たと述べた—[26]
2017年2017 税年度、ハイパー償却で約 1 万 5 千社が機械などに約 100 億ユーロを投資した(経済発展省の集計)—[27・PDF p.2]
2018年2018 年の予算法で、優遇は「Impresa 4.0」の名で続く。普通の機械の超償却は 140% から 130% に下がった—[26]
2018年イタリアの工作機械・ロボット・自動化の生産が 67 億 7,500 万ユーロ(前年比 11.3% 増)、消費は 51 億 6,400 万ユーロに伸びる—[28]
2019年経済発展省が、2020 年からハイパー償却を税額控除(credito d'imposta)に切り替え、中小企業も使いやすくする案を示す(のちの「Transizione 4.0」)—[27・PDF p.6][27・PDF p.11]
2020年新型コロナの年、イタリアの工作機械・ロボット・自動化の生産が 20.4% 減って 51 億 8,200 万ユーロ、輸入は 36.2% 減る—[28]
2020年11月Fidia が経営の行き詰まりから Ivrea の裁判所に再建の手続き(concordato preventivo)を申し立てる。2022 年 6 月に計画が認められ、新しい投資家の出資で立て直し、2024 年 12 月に手続きが終わるFidia[4・PDF p.83][4・PDF p.84]
2021年6月Mandelli が 6 月、Allied International のグループに入るMandelli[5]
2022年8月Alpha と Peninsula の投資ファンドの Femto Technologies が Prima Industrie の議決権の 50.1% を取得し、1 株 25 ユーロの公開買い付けで上場の廃止を目指すと伝えられるPrima Industrie[18]
2023年UCIMU の速報で、イタリアの工作機械・ロボット・自動化の生産が 75 億 6,000 万ユーロの過去最高に。輸出は 38 億 2,500 万ユーロ(10.3% 増)で、最大の輸出先は米国—[29]
2023年石材の機械と金属・複合材の加工機の Breton(Castello di Godego)が創業 60 年を祝う。1963 年 1 月 5 日に従業員 6 人の Brevetti Toncelli として始まり、今は約 1,000 人、特許は 1,700 件を超えるBreton[30]
2023年2月★(日本)Nidec が Rovereto の PAMA(1926 年創業、中ぐりフライス盤)と 9 つの関係会社の全株を取得する。2022 年 11 月に契約。工作機械の Nidec Machine Tool・Nidec OKK とともに、大形機・5 軸と海外の販売を強める狙いPAMA の従業員は約 430 人、2021 年の売上 1 億 1,830 万ユーロ(Nidec の発表)PAMA・Nidec[31][32]
2024年UCIMU の速報で、生産は 67 億 4,500 万ユーロ(11.4% 減)。国内の消費は 34.8% 減ったが、輸出は 44 億 9,000 万ユーロの過去最高で、輸出比率は 66.6% に上がった—[33]
2024年★Gardner の世界調査で、イタリアの生産は 66 億ドルで世界 5 位(中国・ドイツ・日本・米国に次ぐ)、輸出は 45 億ドルで 4 位(中国・ドイツ・日本に次ぐ)、消費は 5 位—[34・p.64][34・p.66]
2024年10月Milano 近くの fieramilano Rho で第 34 回 BI-MU(工作機械の国内見本市)。750 社を超える出展の 37% が外国からで、日本の会社も並んだ—[35]
2024年12月米国の投資会社 One Equity Partners が Comau の過半を取得し、Stellantis(旧 Fiat)は少数株主に残る。7 月に契約、12 月 30 日に完了Comau[36][37]
2025年イタリアの工作機械の生産は 63 億 2,700 万ユーロ。地域別では Lombardia が 46.6%、Veneto などの北東部(Triveneto)が 20.5%、Emilia-Romagna が 17%、Piemonte が 13.6%—[38]
2026年7月PAMA が創業 100 年を Rovereto で祝い、UCIMU の事務局長らが出席するPAMA[39]
2026年9月Prima Industrie から続くグループが、名前を Prima Power に一本化する。約 1,700 人・売上約 5 億ユーロ・据え付け 1 万 5 千台Prima Power[8]

よくある質問

イタリアは工作機械の生産で世界何位ですか?
米 Gardner の世界調査(2024 年分)では、生産 66 億ドルで中国・ドイツ・日本・米国に次ぐ 5 位、輸出は 45 億ドルで 4 位です。国連工業開発機関(UNIDO)の報告によれば 1978 年から 5 位の生産国で、1988 年には生産で米国を上回りました。生産の 6〜7 割を輸出するのが特徴です。
Industria 4.0 のハイパー償却とは何ですか?
2017 年の国家予算法(2016 年 12 月 11 日の法律第 232 号)で始まった、機械への投資の優遇です。工場のシステムとつながる新しい機械(法律の付属表 A に挙げたもの)を買うと、取得の費用を 150% 上乗せした 250% 分を償却でき、税が軽くなりました。2017 年の工作機械の国内受注は前の年より 45.9% 増えています。
イタリアの FMS はいつから作られていますか?
Piacenza の Mandelli は、1975 年に最初の FMS を作ったと沿革に書いています。米国標準局の 1986 年の調査では、Mandelli・Comau・Berardi・Olivetti・Jobs などが Ferrari・Fiat・Maserati や海外の工場に FMS を納め、イタリアの件数は米国・日本・西ドイツに次ぐ 4 番目でした。
日本の会社とイタリアの工作機械メーカーの関係はありますか?
あります。Mandelli は 1980 年に Amada と生産のライセンス契約を結び、Amada は 1981 年に AMADA Italia を設けて、のちに Piacenza の Schiavi との合弁会社を買い取りました。2023 年には Nidec が中ぐりフライス盤の PAMA(Rovereto、1926 年創業)の全株を取得しています。

この先と関係するページ

出典

報告・法令・発表・目論見書・業界誌は、UNIDO・米国標準局(NIST)・Normattiva・各社と団体の公式サイト・BI-MU のサイト・Modern Machine Shop のデジタル版などで 2026 年 10 月に確かめ、使ったページを書いています。「PDF p.」は PDF のページです(UNIDO 1991 と NBS 1986 は PDF のページで、印刷のページとは違います)。UCIMU の統計は、工作機械工業会のサイトが自動の取得を受け付けないため、UCIMU の発表を載せた資料から引いています。2011 年までと 2017 年からで集計の範囲(ロボット・自動化を含むか)が違うことがあります。

  1. Comau「History」(公式の沿革)
  2. UNIDO『The World Machine-Tool Industry』(第 4 回資本財産業協議の背景資料、1991 年 6 月)PDF p. 31・33・38・39・40・52・63・90
  3. Fidia「Company overview」(投資家向けの会社概要と子会社の一覧)
  4. Fidia『Prospetto Informativo』(目論見書、2025 年 6 月 19 日)PDF p. 83・84
  5. Mandelli「Azienda」(公式の沿革)
  6. Salvagnini「La nostra storia」(公式の沿革)
  7. Prima Power「Our history」(公式の沿革)
  8. Prima Power「Prima Power becomes the Group's single identity, reinforcing Evolve by integration」(2026 年 9 月 23 日の発表)
  9. Jobs「Azienda」(公式の沿革)
  10. MCM「History」(公式の沿革)
  11. Sergio Toffetti「Uno sguardo dal carroponte」La Valle dell'Eden(トリノ大学、2026。Fiat の記録映画の解説)
  12. 平田光弘「Internationalization Strategy and Globalization of European Carmakers」Hitotsubashi Journal of Commerce and Management 23(1988)pp.1–19PDF p. 12
  13. William P. Darrow『A Survey of Flexible Manufacturing Systems Implementations』(NBSIR 86-3413、米国標準局 NBS、1986 年 7 月)PDF p. 53・66・68・79・80・81・82・85・86・91
  14. AMADA「AMADA Italia Company Profile」(沿革)
  15. Gazzetta Ufficiale 1996 年 7 月 31 日 n.178(工業省 1996 年 7 月 24 日の命令。Mandelli グループ各社の特別管理の継続)
  16. Gazzetta Ufficiale 2003 年 4 月 30 日 n.99(Mandelli Industriale と関連会社の特別管理の清算人の任命。各社の手続きの開始日の一覧)
  17. Innse-Berardi「The Camozzi Group」(公式の会社紹介)
  18. Emma Bonotti「Arriva l'opa su Prima Industrie」MF Milano Finanza 2022 年 8 月 19 日(162 号 p.9)
  19. Borsa Italiana 発表「Borsa Italiana: settimana record per le matricole: 5 nuove società quotate」(1999 年 10 月 29 日)
  20. Fidia「Company profile」(投資家向けの会社紹介、2013 年 3 月)p.3
  21. 「Fidia punta al Nuovo Mercato」La Stampa(Torino の日刊紙)2000 年 9 月 27 日
  22. U.S. Department of Commerce, Bureau of Industry and Security『Critical Technology Assessment: Five Axis Simultaneous Control Machine Tools』(2009 年 7 月。DTIC ADA513765)
  23. Paolo Rizzi・Fabio Campanini・Serena Costa「Hybrid Innovation. The Italian Machine Tool Industry Case」Symphonya. Emerging Issues in Management 2012 年 1 号 pp.45–56(doi 10.4468/2012.1.04rizzi.campanini.costa)PDF p. 2
  24. Legge 11 dicembre 2016, n. 232(2017 年の国家予算法)第 1 条第 9 項(Normattiva)
  25. Giulio Perani・Stefano Costa・Stefano De Santis「The Italian Industry/Enterprise 4.0 Plan: Ex-ante identification of potential beneficiaries and ex-post assessment of the use of incentives」fteval Journal for Research and Technology Policy Evaluation 47(2019)pp.78–86p. 78
  26. UCIMU-SISTEMI PER PRODURRE「Ordini di macchine utensili: nel quarto trimestre 2017 deciso incremento (+21,5%)」(工作機械工業会の発表、2018 年 1 月。ADAPT の掲載)
  27. 『Transizione 4.0』(経済発展省 MISE の Impresa 4.0 の説明資料、2019 年。informazionefiscale.it の掲載)PDF p. 2・6・11
  28. UCIMU-SISTEMI PER PRODURRE 統計部「L'industria italiana della macchina utensile, automazione e robotica」(2021 年 3 月の表。Innovation Post の掲載)
  29. Alessandra Lucchini「Un'industria che vale」Tecnè 2024 年 2 月号 p.36(UCIMU の 2023 年の速報。BI-MU のサイトの掲載)
  30. Breton「Breton S.p.A.: 60 anni di storia con spirito pioneristico」(2023 年の発表)
  31. Nidec「Nidec to Execute a Share Transfer Agreement on Italian Machine Tool Manufacturer PAMA and Its Affiliates」(2022 年 11 月 30 日の発表)
  32. Nidec「Nidec Completes the Acquisition of the Shares of Italian Machine Tool Manufacturer PAMA and its Affiliates」(2023 年 2 月 2 日の発表)
  33. 「Ucimu-Sistemi Per Produrre: Growth At Modest Pace In 2025」Asia Pacific Metalworking Equipment News 2025 年 1 月 16 日(UCIMU の 2024 年の速報)
  34. Evan Doran「World Machine Tool Report 2024: Contractions in Domestic and Global Markets」Modern Machine Shop 2025 年 8 月号(Gardner Intelligence、2024 年のデータ)p. 64・66
  35. UCIMU・EFIM「Presentata 34.BI-MU dal 9 al 12 ottobre a fieramilano Rho」(2024 年 10 月 1 日の発表)
  36. Stellantis「One Equity Partners Invests in Comau to Foster Greater Growth in the Italian Industrial Automation Leader」(2024 年 7 月 25 日の発表)
  37. Comau「One Equity Partners completes majority investment in Comau」(2024 年 12 月 30 日の発表)
  38. ICE(イタリア貿易振興機構)「Macchine utensili」(業種の紹介、2026 年に確認)
  39. PAMA「Cento anni di storia: un anniversario condiviso」(2026 年 7 月 21 日)
  40. Fondazione Centro Sperimentale di Cinematografia「Archivio Nazionale Cinema d'Impresa」(Ivrea)